2012年12月30日日曜日

ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:交響曲第3番

フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が48・49歳のときに(1977・78)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した

同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)
交響曲第3番と組曲《ペレアスとメリザンド》を聴きました。

ペレアスは今回初めて聴きました。


ジャン・シベリウス
1) 交響曲 第3番 ハ長調 作品52
  第1楽章 アレグロ・モデラーと
  第2楽章 アンダンテ・コンモート、クワジ・アレグレット
  第3楽章 モデラート - アレグロ・ノン・タント

2) 組曲《ペレアスとメリザンド》作品46
  第1曲 城門にて
  第2曲 メリザンド
  第3曲a 海辺にて
  第3曲b 庭園の噴水
  第4曲 3人の盲目の姉妹
  第5曲 パストラーレ
  第6曲 糸を紡ぐメリザンド
  第7曲 間奏曲
  第8曲 メリザンドの死

パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1977年6月20-21日(交響曲)、1978年5月6-7日(組曲)
サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16013】


交響曲 第3番 ハ長調 作品52 は、

シベリウスが41歳のとき(1907.9)に初演された交響曲です。

36歳(1902.3)のときに
第2番が初演されてから5年を経て、

新たな独自の世界へと足を踏み入れた、
画期となる交響曲です。


初めて聴いたわけではありませんが、
これまでは今ひとつ、つかみきれないところがありました。

しかし今回のベルグルンドさんのCDで、
ようやく開眼したようです。


心の中の鬱蒼とした霧が、
ゆるやかに晴れわたっていくような1・3楽章と、
悲しいワルツをより深化させたような2楽章。

計3楽章からなる小ぢんまりとした構成も好ましく、

ああこんなに美しかったんだと、
心洗われる、めったにない感動を味わうことができました。


今は第1・2番よりも遥かに素敵な作品に思えます。



組曲《ペレアスとメリザンド》作品46は、

ベルギーの劇作家
モーリス・メーテルリンク(1862-1949)の
戯曲『ペレアスとメリザンド』にもとづく管弦楽組曲です。

この戯曲は、
1892年にフランス語で発表されましたが、

1905年にヘルシンキで、
スウェーデン語版が上演されるのにともない、

シベリウスによって劇付随音楽が作曲され、

劇の上演後、
8曲からなる組曲に編曲しなおされたそうです。

つまり交響曲第3番とほぼ同時期、
40歳のころの作品ということになります。


『ペレアスとメリザンド』は、
他の作曲家も取り上げている題材なので、
もっと昔の作品かと思っていましたが、

『青い鳥』で知られるメーテルリンクが書いた戯曲だとは、
今回初めて知りました。

しかしその『青い鳥』すらまだ読んでいない身ですので、
何も語る資格はありませんが、
とりあえずの印象を少し。


交響曲第3番の出だしを
よりロマンティックにしたような、
心浮き立つ、はなやかな開始から心を捕らえられ、

ほどほどに悲劇的な終曲へと、
実にわかりやすい音楽で、十分に楽しんで聴き終えることができました。


今回の全集では、
交響曲以外の管弦楽曲に、
意外に楽しめるものが多く、
新しい発見が出来てたいへんありがたいです。

《フィンランディア》や《悲しいワルツ》だけではないのですね。

《ペレアスとメリザンド》も、もっと取り上げられて良い名曲だと思いました。


※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」「交響曲第3番(シベリウス)」「ペレアスとメリザンド(シベリウス)」を参照。

ヘブラーのモーツァルト:ピアノ・ソナタ全集 その3(旧盤)

オーストリア出身のピアニスト
イングリット・ヘブラー(1926-)による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)の
ピアノソナタ全集、3枚目を聴きました。

モーツァルト: ピアノ・ソナタ全曲

モーツァルト
ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長調 K.311
ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 K.330
ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331《トルコ行進曲付き》

イングリット・ヘブラー(ピアノ)
録音:1963年4月(第9・11番)、1963年9月(第10番)
【PROC-1201/5】CD3

K.311(第9番)は、
モーツァルトが21歳のとき(1777年)、

母とともに
ザルツブルグからパリへと向かう途中で、
マンハイムに滞在した折、

K.309(第7番)とともに作曲されています。

この翌年(1778年)7月にパリで母を亡くしますが、
その悲しみを反映させた可能性のある
K.310(第8番)と組み合わせて、

「作品4」(K.309-311)として、
1781年にパリで出版されています。


K.330(第10番)
K.331(第11番)は、

27歳(1783年)のときに、
K.332(第12番)とともに作曲され、

「作品6」(K.330-332)として、
翌年(1784年)ウィーンで出版された作品です。


作品4と6の間に、
大きな作風の変化はないようですが、
聴き方によっては、少し深まりを見せているようにも感じられます。

K.331 《トルコ行進曲付き》 は、
第3楽章を先によく知っていたため、
しばらく第1・2楽章の魅力がわからなかったのですが、

今回聴き直してみて、
ようやく全体がバランスよく、頭に入って来るようになりました。

そうしてみると、
やはりこれは名曲だな、と再認識しました。


   ***

さて演奏ですが、
1、2枚目と変わることなく、

私の中で、
一番モーツァルトらしいと思える演奏で、
聴き込むにつれ、味わいの増す名演だと思います。


典雅で清楚な雰囲気の中で、
次々とうつりゆく曲想に、
若々しいリズム感で答える演奏です。

あとほんの少し、
踏み込んだところがあっても良いのかな、
とも思いますが、

モーツァルトのピアノ・ソナタは、
演奏者の作為的な解釈を拒絶するようなところがあって、

作為が耳につくと、
モーツァルトの魅力がたちまちのうちに消え失せてしまいます。


実際にいろいろ聴いてみると、
なかなかこれだけ無理のない解釈で、
モーツァルトの魅力を伝えてくれる演奏にはなかなか出会えないと思います。



※Wikipediaの「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」「イングリット・ヘブラー」「ピアノ・ソナタ第9番(モーツァルト)」「ピアノ・ソナタ第10番(モーツァルト)」「ピアノ・ソナタ第11番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2012年12月22日土曜日

ボッセ&新日本フィルのシューベルト&モーツァルト&ベートーヴェン

すばらしいバッハを聴かせてくれた
ゲルハルト・ボッセ(1922.1-2012.2)さんの追悼盤、

新日本フィルとのライブ録音が
廉価980円で再販されていましたので、
購入し聴いてみたところ、

予想をはるかに上回る名演で、
びっくりしました。


1) シューベルト(1797-1828)
  劇附属音楽「ロザムンデ」序曲

2) モーツァルト(1756-91)
  交響曲第39番変ホ長調Kv.543

3) ベートーヴェン(1770-1827)
  交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」

ゲルハルト・ボッセ(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
録音:2011年5月13・14日(1・2)、2010年4月2・3日(3)
   すみだトリフォニーホール
【ALT231】

まず何より、
オーケストラから引き出される響きが魅力的でした。

肩の力の抜けた、濁りのない、
明るい響きを旨としながら、

ここぞという所での凄み、力強さにも欠けておらず、
オケの清新な響きだけで、十分心地良く、満ち足りた気持ちになりました。

こうした経験は、
サヴァリッシュ&ドレスデン国立管弦楽団の
シューマンを聴いて以来のことです。

日本のオケも、振る人が振れば、
こんな響きになるんだなと、感心しました。


 ***

シューベルトは、
これまでそれほど意識して聴いて来なかったので、
他と比べてどうなのかは良くわかりませんが、

シューベルトらしい、
典雅で明るく楽しい曲だと思いました。
他の演奏も聴いてみたくなりました。


モーツァルトは、
これまでそれなりに聴き込んできたはずですが、
その中では明らかにベストの出来で、
初めて聴くような感動を覚えました。

オケの明るく清々しい響きも39番には合っており、
これしかないと思われる絶妙な間合いで
曲が新たに紡ぎ出されていくさまは、

出会えたことに心から感謝したい、
融通無碍の名演奏でした。


ベートーヴェンは、
これまで幾度となく聴いてきた曲なので、
今さら「運命」でも、と思っていたのですが、

これが実に若々しく、
清新な響きに満ちた、
心洗われる、躍動的な演奏で、

それを特別に趣向をこらした解釈によらず、
オーソドックスな解釈の中で実現しているのは、
ボッセさんの類まれな実力によるものでしょう。


この追悼盤、
ボッセさんの指揮者としての実力を知るのに十分な、
すばらしい内容だと思います。


 ***

新日本フィルとのCDは、このほか
J.C.バッハとブラームスを取り上げた
2009年のコンサートを収録した1枚があったので、
手に入れてみましたが、

肝心の録音が
うすいヴェールをかぶせたようで、
オケの魅惑的な響きが伝わって来ず、
もどかしい思いがしました。

リマスタリングでどうにかなるのであれば、
再販を期待したいです。

もう一つ、DVDで
ベートーヴェンの交響曲全集も出されているので、
購入すべきかどうか、迷っているところです。

ふだんあまりDVDは観ないので、
CDで、廉価版で出たらいいなと思っています。

2012年12月18日火曜日

ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:交響曲第2番

フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が47歳のときに(1976)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した

同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の交響曲第2番を聴きました。


ジャン・シベリウス
交響曲 第2番 ニ長調 作品43
 第1楽章 アレグレット
 第2楽章 テンポ・アンダンテ、マ・ルバート
 第3楽章 ヴィヴァチッシモ
 第4楽章 フィナーレ(アレグロ・モデラート)

パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1976年11月23-24日、サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16013】


交響曲 第2番 ニ長調 作品43は、

シベリウスが36歳のとき(1902.3)に初演され、
第1番に続いて大成功を収めた交響曲です。

気分の晴れないときなどに聴くと、
前向きな方へと気持ちを押し上げてくれる作品で、

久しぶりに聴き直して、
やはり大いに感動しました。


クレルヴォ交響曲から3曲続いてきた、
民族感情を高揚させるタイプの交響曲の中でも、
良くできた名曲だと思います。


第3番からはシベリウス独自の、
内省的な世界へと深まりを見せていきますが、

誰にでもわかりやすい
シベリウスの交響曲といえば、
まずこの第2番をあげるのが穏当なところでしょう。



ベルグルンドとボーンマス交響楽団は、

時に荒々しさを感じさせるほど、
非常によくオーケストラを鳴らした演奏で、

その分、完成度では
ヘルシンキ・フィルとの録音に一歩譲るでしょうが、

バリバリにオケを鳴らしたボーンマス響との録音も、
若々しい魅力があって楽しめました。


ただしシベ2は、
他の指揮者、オーケストラの録音も数多くあるので、
これだけが飛びぬけて良いとは思いませんでした。

時に金管が荒々しく響きすぎるのは、
欠点とみることもできるでしょう。


先にブログで取り上げた
朝比奈隆&大阪フィルのライブ録音も同じ方向の演奏ですが、

朝比奈盤のほうが、より洗練されていて、
感動的な名演だったといえば、どんな演奏かイメージできるでしょうか。


それでは、第3番に進みます。

2012年12月11日火曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その2

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集、

2枚目は、
ウィーン原典版の通し番号で、
第11~16・18番の7曲を聴きました。


フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)

 ピアノ・ソナタ 第11番 変ロ長調 HOB.XVI- 2
 ピアノ・ソナタ 第12番 イ長調 HOB.XVI- 12
 ピアノ・ソナタ 第13番 ト長調 HOB.XVI- 6
 ピアノ・ソナタ 第14番 ハ長調 HOB.XVI- 3
 ピアノ・ソナタ 第15番 ホ長調 HOB.XVI- 13
 ピアノ・ソナタ 第16番 ニ長調 HOB.XVI- 14
 ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 HOB.XVI- deest

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1996年4月、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553824】

ウィーン原典版の通し番号を、
ホーボーケン番号に並べなおすと、
 Hob.XVI- 2  (第11番)
 Hob.XVI- 3  (第14番)
 Hob.XVI- 6  (第13番)
  *
 Hob.XVI- 12 (第12番)
 Hob.XVI- 13 (第15番)
 Hob.XVI- 14 (第16番)
  *
 Hob.XVI- deest(第18番)
となります。

最後の deest は
ラテン語で「欠けていること」を意味し、
ホーボーケン番号に載っていない作品であることを示しています。

ホーボーケン番号【Hob.XVI-1~52】は
1957年に発表されたので、それ以降に発見された作品ということになります。

これは1961年に、
ジョージ・フェダー(Georg Feder)によって、
チェコのライゲルン修道院(Raigern Abbey)で発見された
2つのソナタのうちの1曲であり、

ウィーン原典版において、
第17・18番の2曲として採用されました。

このとき第18番は第2楽章までしかなかったのですが、

1972年に改めて、
第3楽章まで完備した筆写譜が発見されました。

この筆写譜に、バイエルンの作曲家
イスフリート・カイザー(Isfrid Kayser 1712-1771)
の名が記されていたことから、

第18番はハイドンの作品ではない可能性が高くなり、
同時に発見された第17番のほうも真偽が怪しくなっています。

このCDでは、
ウィーン原典版のまま、
2楽章版で演奏されています(第18番)。

(※福田陽氏のホームページ「ハイドン研究室」上の、
 「ホーボーケン作品番号一覧」「クラヴィアソナタの部屋」の項目と、
  NAXOSのCD解説を参照しました。)

演奏を聴くと、
初期のハイドンの作品だといわれれば、
そのまま信じられる内容ですが、

さほど感銘を受けなかったことも確かです。

このCDでは最後にこの曲が来るのですが、

いつの間にかはじまって、
いつの間にか終わっている感じがあり、
特別に心は動かされませんでした。


  ***

さてCD全体の印象ですが、

1枚目と同じような、
ハイドンの明るくすなおな音楽が広がっていき、
それなりに楽しめたことは確かですが、

何となく雑然とし、
まとまり悪く感じました。

なぜだろうと思って聴き直してみると、

曲の様式がバラバラで、

第11・14番(Hob.XVI-2・3)のように、
第3楽章にゆったりしたメヌエットが来ると、
曲が終わったような気がせず、

かなり注意して聴いていないと、
曲の切れ目がわからなくなっていたようです。

 第11番 Hob.XVI-2〔Moderato/Largo/Menuet〕
 第12番 Hob.XVI-12〔Andante/Menuet/Finale:Allegro molto〕
 第13番 Hob.XVI-6〔Allegro/Minuet/Adagio/Finale:Allegro molto〕
 第14番 Hob.XVI-3〔Allegretto/Andante/Menuet〕
 第15番 Hob.XVI-13〔Moderato/Menuet/Finale:Presto〕
 第16番 Hob.XVI-14〔Allegro moderato/Menuet/Finale:Allegro〕
 第18番 Hob.XVI-deest〔Allegro/Menuetto〕

この1枚だけ聴いていると、
ホーボーケン番号のままの方がありがたいような気もします。

コンサートで、初期のソナタを
ウィーン原典版の順番のまま取り上げるのは、
確かに難しいだろうなと思いました。


  ***

このCDの中で、
特別に惹かれたのは、
第12番(Hob.XVI-12)です。

アンダンテからゆったりと始まるのですが、
この第1楽章が美しい。

この1曲を聴くために、
このCDを買ったのだと納得しました。

YouTube で
他の演奏を聴いてもさほど感心しなかったので、
ヤンドーさんの音楽性の勝利かもしれません。


同じような点から、
第13番(Hob.XVI-6) Adagio が美しく、
琴線に触れてきました。


第15・16番(Hob.XVI-13・14)は、
緩徐楽章が置かれておらず、小ぢんまりとした作品ですが、
それなりにまとまっていて、聴ける作品ではありました。

第11・14番(Hob.XVI-2・3)は、
ホーボーケン番号の通り、最初期のソナタとして聴けば
同じ様式でそれなりに楽しめますが、

この順番に置かれていることは正直不思議な感じがしました。

では次の1枚に参りましょうか。

2012年11月28日水曜日

ユボーのフォーレ:ピアノ作品全集 その1

フランスのピアニスト
ジャン・ユボー(1917-1992)
71-72歳のときに録音した

フランスの作曲家
ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
ピアノ曲全集(CD4枚)を聴いていきます。

まずはCD1・2に収録されている
「夜想曲」(全13曲)から。



フォーレ
ピアノ作品全集第1集より
CD1
夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(1883年)※38歳
夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(1883年)
夜想曲第3番 変イ長調 作品33-3(1883年)
夜想曲第4番 変ホ長調 作品36(1885年)※40歳
夜想曲第5番 変ロ長調 作品37(1885年)
夜想曲第6番 変ニ長調 作品63(1894年)※49歳
夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(1899年)※54歳
夜想曲第8番 変ニ長調 作品84-8(1902年)※57歳
夜想曲第9番 ロ短調 作品97(1908年)※63歳

CD2
夜想曲第10番 ホ短調 作品99(1909年)※64歳
夜想曲第11番 嬰ヘ短調 作品104-1(1913年)※68歳
夜想曲第12番 ホ短調 作品107(1916年)※71歳
夜想曲第13番 ロ短調 作品119(1922年)※77歳
(以下略)

ジャン・ユボー(ピアノ)
録音:1988年10月1989年4月、アル・アディアール、パリ
【WPCS-10982/3】


フォーレのピアノ曲との出会いは、
もう十年以上前のこと、

フランスのピアニスト、
エリック・ハイドシェック(1936- )さんが
24・26歳のときに収録した「夜想曲」全集を聴いたのが
初めてでした。


しかしそのときは、
ショパンの夜想曲のようなスタイルを想像していたため、
ずいぶん異質な音楽に戸惑い、

つかみどころがない感じがして、
よくわからないまま終わってしまいました。


美しいけれども
断片的に過ぎるメロディが浮かんでは消え、
調性も不安定な感じで、

いったいどこを楽しめばよいのだろう、
と思いました。


それから時折、
聴き返すことはありましたが、
同じ印象しか持ちませんでした。


しかし最近になって、ようやく
私の耳がフォーレに馴染んできたのか、

メロディでなく、和声のゆらぎを聴くんだなと、
ふと開眼する瞬間がありました。


音のかたまりをそのまま受け止めて、
絶妙にうつろいゆく和音のゆらぎを楽しむ感覚は、

バッハのオルガン曲を聴くとき、
和音のかたまりに身を委ねるのに似ているかもしれません。


そんな体験をしたのは、
最初のうちはよくわからなかった
ハイドシェックさんのCDだったのですが、



この録音、惜しむらくは音質があと一歩で、
ほかに良いCDはないかと探していたところ、

ユボーさんの録音に出会いました。

音質は極上、
演奏もゆったりとしたテンポで、
すべての音をいつくしみながら丁寧に表現されていて、

フォーレ独特の詩情あふれる名演奏です。


  ***

今回しばらく夜想曲を聴き直してみて、

どれもゆったりした曲調なので、
13曲続けて聴くのは若干しんどいように感じました。

コンサートなどで取り上げる場合、
次の4つのかたまりで弾かれると、
全体像がつかみやすいように思いました。

夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(1883年)※38歳
夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(1883年)
夜想曲第3番 変イ長調 作品33-3(1883年)

夜想曲第4番 変ホ長調 作品36(1885年)※40歳
夜想曲第5番 変ロ長調 作品37(1885年)
夜想曲第6番 変ニ長調 作品63(1894年)※49歳

夜想曲第7番 嬰ハ短調 作品74(1899年)※54歳
夜想曲第8番 変ニ長調 作品84-8(1902年)※57歳
夜想曲第9番 ロ短調 作品97(1908年)※63歳
夜想曲第10番 ホ短調 作品99(1909年)※64歳

夜想曲第11番 嬰ヘ短調 作品104-1(1913年)※68歳
夜想曲第12番 ホ短調 作品107(1916年)※71歳
夜想曲第13番 ロ短調 作品119(1922年)※77歳

第1~3番は、
もともと作品33でひとまとまりなのですが、
実際一番わかりやすいと思います。
ほんの少しショパンの影響も感じられるようでした。

第4~6番は、
恐らく夜想曲の中で最も充実した3曲で、
フォーレらしい高貴で親しみやすい音楽です。

第7番からは、
軽めの第8番をはさみながらも、
徐々に難渋さを増していく感じがあります。

とくに第11-13番は、
ユボーさんの演奏だと、
晩年の物寂しい情感がそのまま反映されているようで、
私にはまだ良くわかりかねるところもありました。


演奏は、
6番まではユボーさんの
ゆったりしっとりじっくりと歌わせる感じが
今のお気に入りです。

7番からは
一気呵成にかけぬける
ハイドシェックさんの方がわかりやすく、
強い説得力がありますが、

さすがに若さゆえ軽過ぎの感もあります。


恐らくまた少し年齢を重ねると、
より一層フォーレの音楽が身にしみるようになって来ると思うので、
また感想を改めたいと思います。


※Wikipediaの「ガブリエル・フォーレ」「ジャン・ユボー」「エリック・ハイドシェック」の各項目を参照。

※作品の成立年代は、



 藤井一興/フォーレ:夜想曲集【FOCD-3465】
 に収録されている西原稔氏のCD解説を参照しました。

 藤井さんの演奏は、
 楽譜に正確によく再現されていますが、
 フォーレ独特のむせ返るような詩情にはとぼしく、
 私には全体的に違和感がありました。

 決して無味乾燥な演奏ではないので、
 ユボーやハイドシェックを聴く前であれば、
 十分に楽しめると思います。

2012年11月20日火曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その7

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
7枚目を聴きました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS

1) ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55
2) グルック: 歌劇《アルチェステ》序曲
3) ヘンデル:12の合奏協奏曲集より第5番 ニ長調 作品6-5 HWV323

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1950年6月20日(1)、1951年9月5日(2)、
   1954年4月27日(3)、ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD7


1曲目はCD6の続きで、
1950年6月20日の演奏会から、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)の
交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55 が収録されています。

ベートーヴェン30代半ばの作品で、
1804年に完成、翌年に公開初演されています。

演奏は最上レベルです。

私にとって「英雄」は、
全体的にまとまりがつかない感じがして、
特別に好きな曲とは言えないのですが、
こうした別格の演奏で聴くと、やはり名曲だと思えます。

どこまでも有機的な響きのもと、
若々しいまでの情熱で一気に駆け抜けていくさまは、

第1・2番に続く、
若き日のベートーヴェンの強い意志を
伝えてくれているようで、

「英雄」の新たな魅力を発見することができました。


残念なのは、録音が今一つなことです。

フルトヴェングラーの遺産としては、
まずまず聴きやすい部類に入ると思いますが、
最近の鮮明な録音を聴きなれた耳には、
多少辛いものがありました。


   ***

2曲目は、1951年9月5日の演奏会から、

ドイツ出身の作曲家
クリストフ・ヴィリバルト・グルック(1714-1787)の
歌劇《アルチェステ》序曲 が収録されています。

グルック50代前半、
1767年にウィーンで初演されたイタリア語の歌劇(Wq.37)です。

十年後の1776年にパリで、
フランス語への改訂版(Wp.76)が初演されています。

通常は改訂版をもとに、
イタリア語で演奏されることが多いようなので、
フルトヴェングラーも改訂版を用いた可能性が高いですが、
楽譜を見ていないので確かなところはわかりません。


さてこの録音、
びっくりするくらい良い音です。

下手なステレオ録音よりもずっと美しく聴こえます。

そして当然のことながら、
やはりいい音で聴くとより一層、
フルトヴェングラーの凄さが際立ちます。

演奏スタイルが一昔前のものなので、

身近にこの曲を聴く機会は
もうほとんどないと思いますが、

オケの有機的な深い響きに包まれた大演奏で、
ぜひ聴いてほしい1曲です。


なおこの9月5日のコンサート、
グルックの後、ベートーヴェンの第九が演奏されていますが、
このCDには収録されていません。


  ***

3曲目には、
1954年4月25-27日のコンサートから、
3日目(27日)の演奏で、

ドイツ生まれの作曲家
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
(1685-1759)の

12の合奏協奏曲集より
 第5番ニ長調作品6-5 HWV323

が収録されています。

ヘンデル54歳のとき(1739)の作品です。

CD6にも同曲集の第10番が収録されていて、

それに比べると、
はるかにいい音で録れているのですが、

やはり大オーケストラのぶっとい響きが、
強い違和感を感じさせて、変でした。

いい音で録れている分、

何度か聴いていると、
それなりにありかなとも思えて来ますが、

これを聴いて、
ヘンデルっていいな、
とは残念ながら思えませんでした。


なおこの三日間のコンサート、

最初にヘンデルが演奏された後、

 ブラームス:交響曲第3番【CD11】
 ブラッハー:管弦楽のための協奏的音楽【CD9】
 シュトラウス:交響詩《ドン・ファン》【CD11】
 ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》前奏曲【CD11】

が演奏されました。この全曲が、
それぞれ【CD9・11】に収録されています。



※Wikipediaの「クリストフ・ヴィリバスト・グルック」
 「Alceste(Gluck)」「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル」
 「ヘンデルの楽曲一覧」の各項目を参照。

※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
 仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照。
 【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】

※グルックについては、
 石井宏『反音楽史』(新潮文庫)232-255頁も参照。

2012年11月15日木曜日

ボッセ&神戸市室内合奏団のバッハ:ブランデンブルク協奏曲(2011年録音)

ドイツの指揮者
ゲルハルト・ボッセ(1922.1-2012.2)が、
神戸市室内合奏団を指揮したライブCD、

ドイツの作曲家
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685.3-1750.7)が

36歳のとき(1721年5月)に
ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯
クリスティアン・ルートヴィヒに献呈した合奏協奏曲

「ブランデンブルク協奏曲 BWV1046-1051」を聴きました。


J.S.バッハ
ブランデンブルク協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV1046
ブランデンブルク協奏曲 第2番 ヘ長調 BWV1047
ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048
ブランデンブルク協奏曲 第4番 ト長調 BWV1049
ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 BWV1050
ブランデンブルク協奏曲 第6番変ロ長調 BWV1051

ゲルハルト・ボッセ指揮
神戸室内管弦楽団
録音:2011年3月10日、神戸文化ホール・中ホール
(神戸市演奏協会第336回公演 神戸室内管弦楽団定期演奏会)
【ALT-227/8】


ボッセさんが亡くなる1年前、
89歳のときの録音です。

本来2日後の3月12日に、
東京の紀尾井ホールで、

 神戸市演奏協会第337回公演
 神戸室内管弦楽団定期演奏会
 第21回東京公演

が同じ演目で行われる予定でしたが、
11日の震災によって中止となりました。

その折の経緯について、
ボッセさん自らCD解説に一文を記されています。


半年ほど前に、
ボッセさんが60歳前後のとき(1981・83年)に
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス・バッハ管弦楽団と録音した
ブランデンブルク協奏曲のCDを聴き、
大きな感銘を受けていました。

この旧盤があまりに良すぎたので、
神戸室内管弦楽団との新盤はまたの機会に
と思っていたのですが、

最近、980円で再販されたのを知って、
購入し聴いてみることにしました。

ちょうど旧盤の記憶が消えたころに、
ひと月ほど繰り返し聴いてみた感想です。

録音はどちらも秀逸です。

よく聴くと、
新盤のほうがより自由度が増し、
バッハの軽やかで、楽しく明るい側面が
よくわかる演奏になっていると思います。

しかし旧盤と大きく異なっているわけではなく、

斬新さとか、目新しさを強調することなく、
誠実だけれど軽やかな、飛翔する精神性を感じさせる演奏です。


旧盤がセッション録音で
じっくり仕上げてあるのに対し、

新盤がライブの一発録りである点が大きく違うので、

完成度にこだわりのある方は、
旧盤のほうを高く評価されるかもしれません。


また少し時間を置いて、
旧盤も聴き直してみますが、
今は多少の傷があっても、

新盤の軽やかで、明るく楽しいバッハの魅力にはまっています。



※Wikipediaの「ゲルハルト・ボッセ」
 「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」「ブランデンブルク協奏曲」の項目を参照。

※「財団法人 神戸市演奏協会:神戸市室内合奏団」のHP
 〈http://www.kobe-ensou.jp/ensemble/index.html〉を参照。

2012年11月13日火曜日

ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:交響曲第1番

フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が45・46歳のとき(1974・75)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した

同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865-1957)の交響曲第1番と、
組曲《歴史的情景》第1番を聴きました。


ジャン・シベリウス
1) 交響曲 第1番 ホ短調 作品39
  第1楽章 アンダンテ・マ・ノン・トロッポ(アレグロ・エネルジコ)
  第2楽章 アンダンテ(マ・ノン・トロッポ・レント)
  第3楽章 スケルツォ(アレグロ)
  第4楽章 フィナーレ クワジ・ウナ・ファンタジア(アンダンテ~アレグロ・モルト)

2) 組曲《歴史的情景》第1番 作品25
  第1曲 序曲風に
  第2曲 ある場面
  第3曲 祭り

パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1974年9月9・10日〔交響曲第1番〕、1975年7月15日〔歴史的情景〕、サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16019/20】


交響曲 第1番 ホ短調 作品39は、

シベリウスが34歳のとき(1899年)に
完成し、初演された交響曲です。

クレルヴォ交響曲と同じ路線の、
民族感情を高揚させる作品ですが、
管弦楽のみでより洗練された感じがあります。

全体的にほの暗くはありますが、
わかりやすく美しいメロディに満ちており、

もう少し演奏の機会が多くても良いように思います。

ただ第2番と比べれば
まだ少しまとまりに欠ける所があるのか、

時折ライブを耳にしても、
なんだかまとまりが付かなくなって、
今ひとつ感動できないことが多いです。


このCDでは、
まずオケの凄い鳴りっぷりに驚きました。

シベリウスといえば、
寒々ひんやりとした感触で、
オケもそんなにバリバリに鳴らさない印象があったのですが、

ここまで思い切って鳴らしてもいいんだ、
と嬉しい驚きの演奏でした。

それでもシベリウスらしさを全く失わないのは、

どんなに強奏しても、
オケの音ににごりがないからなのかな、
と推測しますが、

何よりベルグルンドさんの
シベリウスへの共感度が尋常でないレベルに達していたからだろうな、と思います。


完成度の上では、
のちのヘルシンキ・フィルとの演奏の方が優れていると思いますが、

ボーンマス響との演奏は、
この曲から全く別の魅力を引き出していて、
とても感動しました。



組曲《歴史的情景》第1番 作品25は、

交響曲と同じ1899年に作曲された
歴史劇「愛国記念劇」のための音楽から、
1912年に編曲、初演された組曲(全3曲)です。

この「愛国記念劇」の音楽から、
1900年に交響詩《フィンランディア》作品26
が編曲されたことはよく知られています。

作品25と同時(1912年)に、
組曲《歴史的情景》第2番 作品66
が作曲、初演されていますが(全3曲)、

こちらは「愛国記念劇」の音楽からでなく、
改めて作曲されたものだそうです。


このCDで初めて聴いたので、
ほかと比べてどうなのかはわかりませんが、

オケの小品集として、
3曲ともふつうに楽しむことができました。

ただしあっという間に終わって、
少々軽い感じがするので、コンサートでは取り上げにくいようにも思いました。

組曲《歴史的情景》第2番

と一緒に取り上げるとちょうど良いのかもしれません。

第1・2番を収録したCDもあるようなので、
近々聴いてみようと思います。



※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」「交響曲第1番(シベリウス)」

※S.suda様の「シベリウスのページ」
 〈http://members.jcom.home.ne.jp/tapiola/sibelius/index.html〉
 を参照させていただきました。


2012年11月8日木曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その5

アメリカのピアニスト
マレイ・ペライア(1947-)と
イギリス室内管弦楽団による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ピアノ協奏曲全集、5枚目を聴きました。


モーツァルト
ピアノ協奏曲 第13番 ハ長調 K.415(387b)
ピアノ協奏曲 第14番 変ホ長調 K.449

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:1979年4月4日、Abbey Road Studio、ロンドン(第13番)
  1975年9月12・13・15日、EMI Studio、ロンドン(第14番)
【SONY MUSIC 88691914112】CD5


K.415(第13番) のピアノ協奏曲は、
27歳のとき(1783年3月)に初演された作品です。

K.413~415(第11~13番)のピアノ協奏曲〔3曲〕は、
ウィーンに定住してすぐ1782年から翌年にかけて、
自らの予約演奏会用に作曲されたと考えられています。


K.449(第14番) のピアノ協奏曲は、
28歳のとき(1784年2月3日)に完成された作品です。

弟子のバルバラ・プロイヤー嬢のために作曲されたので、
《プロイヤーのための協奏曲》 第1番と呼ばれることもあります。

同様のピアノ協奏曲としてもう1曲 K.453(第17番) があり、
こちらは 《プロイヤーのための協奏曲》 第2番と呼ばれることがあります。


K.449・450・451・453・456・459(第14~19番)の6曲は、
すべて1784年に、ウィーンで作曲されたと考えられています。


実際聴いてみると、
第13番と第14番のあいだには、
わずかですが明らかな深まりの跡が感じられようです。

第11~13番までは、
愉悦感に包まれた明るいモーツァルトの一面を現しているものの、
まだ深みには乏しく、ほんの少し軽い感じがありました。

しかし第14番では、
モーツァルト独特の孤独感が影を挟むようになり、
充実度がぐっと増したように感じられました。


ペライアの演奏は、
より一層の押しの強さがあっても良いかな、
とも思いますが、

聴いて飽きるようなところは全くなく、
曲本来の美しさは十分に引き出せていると思います。


楽しく美しく、時に物悲しい、
モーツァルトの音楽にひたることが出来ました。



※Wikipediaの「マレイ・ペライア」
 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」
 「ピアノ協奏曲第13番(モーツァルト)」
 「ピアノ協奏曲第14番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2012年11月7日水曜日

横山幸雄のショパン:ピアノ独奏曲全集 その6(2011年録音)

横山幸雄(1971-)さんによる

ポーランド出身の作曲家
フレデリック・フランソワ・ショパン
(1810-1849)のピアノ独奏曲全集
6枚目を聴きました。


プレイエルによる
ショパン・ピアノ独奏曲全曲集〈6〉

1) パリ時代初期の遺作のマズルカ5曲
  マズルカ ニ長調(1832)
  マズルカ 変ロ長調 WN41(1832)
  マズルカ ハ長調(1833)
  マズルカ 変イ長調 WN45(1833)
  マズルカ ハ長調 WN48(1835)

2) 4つのマズルカ 作品17(1833作曲)
  第1番 変ロ長調
  第2番 ホ短調
  第3番 変イ長調
  第4番 イ短調

3) 4つのマズルカ 作品24(1835作曲)
  第1番 ト短調
  第2番 ハ長調
  第3番 変イ長調
  第4番 変ロ短調

4) 12の練習曲 作品25(1832-36作曲)
  第1番 変イ長調「エオリアンハープ」
  第2番 ヘ短調
  第3番 ヘ長調
  第4番 イ短調
  第5番 ホ短調
  第6番 嬰ト短調
  第7番 嬰ハ短調
  第8番 変ニ長調
  第9番 変ト長調「蝶々」
  第10番 ロ短調
  第11番 イ短調「木枯らし」
  第12番 ハ短調「大洋」

横山幸雄(ピアノ)
使用楽器:プレイエル(1910年製)
録音:2011年3月9・10日
上野学園 石橋メモリアルホール
【KICC-918】

CD6では、
ショパン22歳から26歳、
1832年から36年にかけて作曲された
マズルカと練習曲をまとめて取り上げています。

ショパンは
20歳(1830年)のときにワルシャワからウィーン、
21歳(1831年)のときにウィーンからパリに移住し、
パリで大成功をおさめます。

パリに移住し数年のうちに作曲された
20代前半の作品ということになります。


CD5では、
同じ時期に作曲された
ノクターンとポロネーズとバラードを取り上げていました。

このときは、
横山さんとノクターンの組み合わせが、
ほんの少しミスマッチな印象を受けたのですが、


CD6のマズルカも練習曲も、
横山さんと相性がとても良いようで、
感心しながら全体を聴き終えることができました。

マズルカは、
ポーランド特有のリズムにこだわるよりは、
横山さんが心に感じるところをすなおに表現してある演奏で、
わかりやすく、曲本来の美しさに感動しました。

これまでマズルカ集を聴いて
いいなと思えたことはなかったのですが、
横山さんのマズルカは、どれも曲そのものの良さが引き出されていて、楽しめました。


練習曲は、もう完全に
曲が横山さんの中に入っているようで、

完璧なテクニックに支えられた
驚くほど詩情にあふれる演奏で、

技術的なことを忘れて、
曲そのものの美しさに聴き入りました。


それでは次はCD7に進みましょう。

※Wikipediaの「横山幸雄」「フレデリック・ショパン」「ショパンの楽曲一覧」

2012年11月4日日曜日

ヘブラーのモーツァルト:ピアノ・ソナタ第6-8番(旧盤)

オーストリア出身のピアニスト
イングリット・ヘブラー(1926-)による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)の
ピアノソナタ全集、2枚目を聴きました。


モーツァルト: ピアノ・ソナタ全曲

モーツァルト
ピアノ・ソナタ 第6番 ニ長調 K.284
ピアノ・ソナタ 第7番 ハ長調 K.309
ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 K.310

イングリット・ヘブラー(ピアノ)
録音:1967年6月(第6番)、1964年12月(第7番)、1963年4月(第8番)
【PROC-1201/5】CD2


K.284(第6番)は、
モーツァルトが19歳のとき(1775年)、
デュルニッツ男爵のために作曲した
《デュルニッツ・ソナタ》(全6曲)の最後を締めくくる1曲です。

この1曲のみをさして《デュルニッツ》と呼ぶこともあります。


K.309(第7番)は、
モーツァルトが21歳のとき(1777年)、
母アンナとともにザルツブルグからパリへと向かう
旅の途中で滞在したマンハイムで作曲されました。

CD3に収録の K.311(第9番)も、
ほぼ同時に作曲されたことが確認されています。


K.310(第8番)は、
珍しく短調で書かれた作品で、
1778年7月に母アンナをパリで亡くした
経験が反映されたと推測されていますが、
史料の確証はありません。

K.309~311(第7~9番)のソナタは、
まとめて「作品4」として1781年に
パリで出版されているので、

K.310 もそれまでに作曲されたことは確かです。


第1~6番までは、
モーツァルト10代最後に書かれたソナタ、

第7~9番までは
20代前半に書かれたソナタとして、

まとめて考えることができそうです。


   ***

さて実際に聴いてみると、

第6番と第7番とのあいだに、
それほど明瞭な違いが聴き取れるわけではありませんが、

何となく成長しているようでもあります。


第8番は、明らかに
モーツァルトの内面的な深まりを見せている作品で、
それまでとは異質な世界が描かれているように感じます。

モーツァルトの絶望と孤独とが、
ピアノ・ソナタの簡素な様式の中で、
花開いているように感じました。


ヘブラーのピアノは、
ほんの少し迫力不足に聴こえるところもありますが、

古典の枠をはみ出さない範囲で、
最大限自由に、モーツァルトの楽譜を活かした演奏で、

清楚で典雅な雰囲気の中で、
聴くごとに味わいを増す絶妙な演奏に仕上がっていると思います。


それではCD3へと進みましょう。


※Wikipediaの「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」「イングリット・ヘブラー」
 「ピアノ・ソナタ第6番(モーツァルト)」「ピアノ・ソナタ第7番(モーツァルト)」
 「ピアノ・ソナタ第8番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2012年10月31日水曜日

柳家小三治16 落語名人会40 「鼠穴」(1987.10)

十代目柳家小三治(1939.12 - )の落語CD、
16枚目「鼠穴(ねずみあな)」を聴きました。

小三治47歳の時(1987.10)の口演です。


落語名人会40
柳家小三治16
「鼠穴(ねずみあな)」
  録音:1987年10月31日、
  鈴本演芸場、第8回柳家小三治独演会

〔お囃子〕植田ひさ/小口けい
【SRCL-3582】

「鼠穴(ねずみあな)」というお噺、
6代目三遊亭圓生(1900-1979)得意の演目だそうですが、
私はこのCDで初めて聴きました。


小三治さんも
「圓生師匠のままですけどね」と仰られていたそうですが、

もとは上方の人情噺であったものが、
3代目三遊亭圓馬(1882-1945)によって東京に伝えられ、
圓馬から5代目立川ぜん馬(1885-1960)を介して、
圓生(1900-1979)へと伝えられたお噺だそうです。
(京須偕充氏のCD解説を参照)


あらすじもわからぬまま
聴きはじめたわけですが、

兄弟のもともと冷めた間柄が、
お金が絡んでよりいっそうどろどろしていくお噺は、

お腹を抱えて笑うでもなく、
親子愛、兄弟愛にほろりと涙するわけでもなく、

いったいどこを楽しめば良いのだろう、
と思いました。


小三治さんの口演自体は、
迫真に迫った非の打ち所のないもので、
その点かえって精神的に追いつめられるようなところがあって、

確かにこれは、
圓生さんのように、
あとほんの少し飄々としたところがあった方が、
肩の力をぬいて楽しめるように思いました。


まだ圓生さんのは聴いていないので、
近々耳にしてみたいと思います。


※柳家小三治
「鼠穴」87-10/31◯

2012年10月30日火曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲第1 - 4番

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732 - 1809)の弦楽四重奏曲全曲を、
コダーイ四重奏団の演奏で聴いていきます。

それではまず1枚目です。


ハイドン
弦楽四重奏曲 第1番 変ロ長調 作品1-1〔Hob.Ⅲ-1〕
弦楽四重奏曲 第2番 変ホ長調 作品1-2〔Hob.Ⅲ-2〕
弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 作品1-3〔Hob.Ⅲ-3〕
弦楽四重奏曲 第4番 ト長調 作品1-4〔Hob.Ⅲ-4〕

コダーイ四重奏団
録音:1991年4月8-11日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550398】


フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732-1809)の弦楽四重奏曲は、

ハイドン生前の1801年に、
弟子のイニャス・プレイエル(1757-1831)によって、
最初の全集が刊行されました。

 ※初版で80曲、第2版で82曲、第3版で83曲を収録。
  プライエル版に従って、第1番から83番まで、
  通番をつけて呼ぶこともあります。


このとき初期の弦楽四重奏曲について、

 ◯作品1- 1~6〔Hob.Ⅲ- 1~6〕
 ◯作品2- 1~6〔Hob.Ⅲ- 7~12〕
 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

という整理が行われていました。

作品1・2は 1765・66年(ハイドン33・34歳)、
作品3は 1777年(ハイドン45歳)に、
個別に出版されていたそうです。

この分類は、
最晩年(1805年)に作成させた「ハイドン目録」で、
ハイドン自身が認めたものでもあったのですが、


その後の研究によって、

 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)の作品が
紛れ込んだ贋作であると考えられるようになりました。


そのほか、

 ◯作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕は、
  交響曲「A」変ロ長調〔Hob.Ⅰ- 107〕からの編曲、

 ◯作品2- 3〔Hob.Ⅲ- 9〕は、
  6声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 21〕からの編曲、

 ◯作品2- 5〔Hob.Ⅲ- 11〕は、
  6声のディベルティメント ニ長調〔Hob.Ⅱ- 22〕からの編曲

であることが明らかにされています。


つまり作品1・2・3の計18曲のうち、
初期の弦楽四重奏曲として確実なのは、

 ◎作品1- 1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
 ◎作品2- 1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕

の9曲のみということになります。


さらに本来、
初期の弦楽四重奏曲とすべき1曲が、

 ◎5声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕

に誤分類されていたことも明らかにされています。

これはプレイエル版の全集から欠落しているので、
第0番と呼ばれることがあります。

 ※コダーイ四重奏団の全集では、CD2で、
  作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕とさしかえて録音しています。


   ***

つまり現在は、第0番を含めた計10曲を、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲と考えるのが通説になっているようです。

作曲年代は、
ハイドン25歳から30歳(1757-62)のころと推定されています。

プレイエル版の通番とともにまとめておきます。

 第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
 第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
 第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
 第3番  ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
 第4番  ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
 第6番  ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
 第7番  イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
 第8番  ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕
 第10番  ヘ長調 作品2- 4〔Hob.Ⅲ- 10〕
 第12番 変ロ長調 作品2- 6〔Hob.Ⅲ- 12〕

コダーイ四重奏団による弦楽四重奏曲全集では、
CD1で、このうち

 第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
 第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
 第3番  ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
 第4番  ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕

が演奏されていることになります。


   ***

この全集で演奏を担当した
コダーイ四重奏団(Kodaly Quarte)は、

1966年に、
ブダベストのフランツ・リスト・アカデミーの
学生4名が結成した「セベスチェン四重奏団」がもとになり、
1971年から「コダーイ四重奏団」として活動するようになりました。

1980年に第1ヴァイオリンが、
 アッティラ・ファルヴェイ
に替わり、それまでのメンバー、
 タマーシュ・ザボ(第2ヴァイオリン)、
 ガボール・フィアス(ヴィオラ)、
 ヤーノシュ・デヴィチ(チェロ)
とともに世界的に活躍するようになりました。

このメンバーで、NAXOS の
ハイドン全集の録音が行われています。

 ※CD解説(1991年発売)と
  コダーイ四重奏団のHP〈http://www.kodalyquartet.com/〉を参照。
  現在は、第1ヴァイオリン以外、メンバーが変わっています。


   ***

さて肝心の演奏ですが、

しっかりした様式感の中に、
清々しく、明るい気持ちにさせられる
ハイドン独自の世界が描き出されており、

ふつうに楽しむことができました。

とくに Adagio の
清涼で深遠な感じは他にないもので、
第1番と第4番のそれは私のお気に入りになりました。


確かに全体として、
それほど個性を際立たせたところはないので、

一夜のコンサートで、作品1だけ
6曲続けて聴かされるとしたら少々退屈な気もしますが、


ベートーヴェンやシューベルト、
ショスタコーヴィチなどの濃密な曲の合い間に、
1曲選んで演奏したら、

清涼剤的な役割を果たしうる
素敵な作品だと思いました。


コダーイ四重奏団は、
楽譜の表面だけを追うことなく、
ほどほどに作品の内実に迫ろうとするバランスが好ましく、
ハイドンにはとても合っていると思いました。

ほんの少し、
音程で気になるところもあったのですが、
かなり神経質に聴かなければ大丈夫なレベルだと思います。

では、次に進みましょうか。



※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
 「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。

※JAIRO でインターネット上に公開されている
 飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
 (『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。
 日本語の一般書で、最新の研究を踏まえ、
 ハイドンの作品の全容を概観してあるものとしては、
 中野氏の本書が一番良いようです。
 たまたま出版時に購入し、手もとに置いてありました。


※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。


2012年10月25日木曜日

ヴァルヒャのバッハ:オルガン作品全集(旧盤)その7

ヘルムート・ヴァルヒャ(1907 - 1991)による
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685.3 - 1750.7)の作品全集(旧盤)、
7枚目を聴きました。


J.S.バッハ:オルガン作品全集
CD-7

オルガン小曲集 BWV599-644 より
  1) 救いはわれらに来れり BWV 638
  2) 主イエス=キリスト、われ汝を呼ぶ BWV639
  3) 主よ、汝によりてわれ希望をもつ BWV640
  4) われら悩みの極みにありて BWV641
  5) ただ神の摂理にまかす者 BWV642
  6) 人みな死すべきもの BWV643
  7) ああいかに空しく、いかにはかなきこと BWV644

6つのコラール(シュープラー・コラール)BWV645~650
  8) 目覚めよ、と呼ぶ声あり BWV645
  9) われいずこに逃れ行かん BWV646
 10) ただ愛する神の摂理にまかす者 BWV647
 11) わが魂は主をたたう BWV648
 12) ああわがもとにとどまれ、主イエス=キリストよ BWV649
 13) 汝イエスよ、今天より降りたもうや BWV650

18のコラール(ライプツィヒ・コラール)BWV651~668 より
 14) ファンタジア:来たれ精霊、主なる神 BWV651
 15) 来たれ精霊、主なる神 BWV652
 16) バビロン川のほとりに BWV653
 17) おお愛する魂よ、汝を飾れ BWV654
 18) 主イエス=キリスト、われらを顧みたまえ BWV655
 19) おお、穢れなき神の子羊 BWV656
 20) いざもろびと神に感謝せよ BWV657


録音:1947年(8-13)、1950年(2,3,14,18-20)、1952年(1,4-7,15-17)
オルガン:カッペル、聖ペテロ=パウロ教会
【Membran 223489】CD-6


CD7枚目は、

オルガン小曲集(BWV599-644)全46曲より
 残りの7曲(BWV639-644)

シュープラー・コラール(BWV645-650)全6曲、

ライプツィヒ・コラール(BWV651-668)全18曲より
 始めの7曲(BWV651-657)

の3部構成になっています。


オルガン小曲集(BWV599-644)は、
30代前後(1713-1716)の作品集、

シュープラー・コラール(BWV645-650)は、
晩年の63歳(1748年)の作品、

ライプツィヒ・コラール(BWV651-668)は
30代初め(1708-17)までに作曲された旧稿をもとに、
最晩年にまとめられた作品集です。


オルガン小曲集では、
素材がそのままのかたちで断片的に現れて、
まとまりがつかなくなっている感じがありましたが、

シュープラー・コラールは、
より肩の力を抜いた感じで、
晩年の枯淡の境地が表現されているように感じました。

ほどよい長さでまとめられているので、
演奏機会も多いようです。

ライプツィヒ・コラールは、
よりスケールが大きく、若いころの素材を元に、
より高い境地をめざしてまとめられているようでした。


ひと通り聴いてみて、
シュープラー・コラールのような
まとまりのよい小品のほうが、コラールとして模範的といえるように感じました。

しかし、若さと熟練の境地がうまく結合している
ライプツィヒ・コラールの方が、

コンサートなどではより聴き映えするようにも感じ、
今はこちらの方が好きです。

残りの11曲が楽しみです。


※Wikipedia の「ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品一覧」を参照。

2012年10月18日木曜日

ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:クレルヴォ交響曲

フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が41歳のとき(1970)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した

同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865-1957)の
クレルヴォ交響曲を聴きました。


ジャン・シベリウス(1865-1957)
1) クレルヴォ交響曲 作品7
  第1楽章 導入部(アダージョ・モデラート)
  第2楽章 クレルヴォの青春(グラーヴェ)
  第3楽章 クレルヴォとその妹(アレグロ・ヴィヴァーチェ)
  第4楽章 クレルヴォは戦場に行く(アラ・マルチア)
  第5楽章 クレルヴォの死(アンダンテ)

2) 劇付随音楽《クオレマ》より
  鶴のいる情景 作品44-2

3) 劇音楽組曲《白鳥姫》作品54より
  第2曲 ハーブ
  第3曲 薔薇を持った乙女たち
  第4曲 聞け、コマドリが歌っている
  第6曲 白鳥姫と王子

パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ライリ・コスティア(メゾソプラノ)
ウスコ・ヴィータネン(バス・バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団(エンスティ・ポヒョラ指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1970年11月21-22日、サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16019/20】

クレルヴォ交響曲 作品7 は、

フィンランドの民族叙事詩
「カレワラ」にもとづく合唱付きの管弦楽曲です。

原題は
「クレルヴォ ― 独唱者と合唱、管弦楽のための交響詩」ですが、
今は「クレルヴォ交響曲」の通称で呼ばれることの方が多いです。

シベリウスが27歳のとき(1892年)に初演されましたが、
その後、生前に全曲演奏されることはありませんでした。

交響曲第1番が完成するのは、
この7年後、34歳(1899年)のことなので、
シベリウスの最初の交響曲とみることもできます。

ベルグルンド指揮のこのCDが世界初録音となりました。


私は今回初めて聴きました。

『カレワラ』を読んだことがなく、
フィンランド語も解さない身なので、
深く理解するにはまだ時間がかかると思いますが、

荒削りながらも
聴く者の気持ちを高揚させる
魅惑的なメロディがたくさんあって、

「フィンランディア」や交響曲第1・2番が好きな方には
必聴の名曲だと思いました。


伊福部昭の世界をもっと洗練させた感じで、

直接の影響はないようですが、
チャイコフスキーのマンフレッド交響曲(1885年初演)を思い出しました。


構成面での弱さを、
若さでカバーしているような所もありますが、
シベリウスを語る上で外せない1曲だと思います。

わかりやすい曲なので、
もう少し演奏されても良いのでしょうが、
フィンランド語の独唱、合唱が入るのは
ネックになるのかもしれません。


  ***

劇付随音楽《クオレマ》より
「鶴のいる情景」作品44-2 は、

義兄アルヴィド・ヤルネフェルトの戯曲
「クオレマ」のために作られた劇付随音楽です。

1903年の戯曲初演に際して
まず全6曲のもの(初稿)が作られたのち、

1904年にその第1曲を改訂した
《悲しきワルツ》作品44 が上演され、
大好評を得たのを受けて、

1906年に第3・4曲を改訂した
《鶴のいる情景》が上演されましたが、
そのまま生前は再演されなかったそうです。

シベリウスが40歳前後のときに作曲された作品ということになります。


さすがに「クレルヴォ交響曲」よりこなれた筆致で、
コンサートのアンコールや、逆にコンサートの幕開けなどにふさわしい1曲かな、と思いました。

「悲しきワルツ」に似た曲想ですが、
それほど物悲しい感じはなく、もう少し情景描写の方に重きを置いてある作品です。



劇音楽組曲《白鳥姫》作品54 は、

スウェーデンの作家
ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(1849-1912)の
戯曲「白鳥姫」(1902年)のために作曲された
劇付随音楽にもとづく組曲(全7曲)です。

シベリウスが43歳のとき(1908年)に作曲されました。

こちらもわかりやすく、
楽しく美しい軽めの作品で、
それだけにコンサートでは取り上げにくいかもしれませんが、
聴けて良かったです。

このCDには、
全7曲の中から4曲選んで収録されています。
全曲聴けなかったのが残念です。


   ***

ボーンマス交響楽団、
フィンランドのオケだと思い込んでいましたが、
調べてみるとイギリスのオケでした。

異国の曲をこれだけハッキリくっきりと
確信を持って演奏できるのは、やはりベルグルンドの手腕によるところが大きいのでしょうか。

洗練さでは他に一歩譲りますが、
荒々しいまでの迫力の中に、寒々としたシベリウス独特の響きを実現できているのは、このオケの長所だと思いました。

次は交響曲第1番へと進みましょう。


※Wikipedia の「ジャン・シベリウス」「クレルヴォ交響曲」
「クオレマ」「白鳥姫(シベリウス)」の項目を参照。

2012年10月17日水曜日

ルービンシュタインのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1・2番(1975年録音)

ポーランド出身のピアニスト、
アルトゥール・ルービンシュタイン(1887-1982)が、
88歳のときに(1975年)、

アルゼンチン出身のピアニスト兼指揮者
ダニエル・バレンボイム(1942 - )の指揮する
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と録音した

ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の中から、
第1番と第2番を聴きました。


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
 ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
 ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19

アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ダニエル・バレンボイム(指揮)
録音:1975年4月9-11日、ロンドン、キングスウェイ・ホール
【09026-63077-2】


ピアノ協奏曲の第1番と第2番の成立について
少し調べてみましたが、諸説あるようでしたので、

今は、青木やよい著『ベートーヴェンの生涯』
(平凡社新書、平成21年12月)所収の「略年譜」によって、

25歳のとき(1795年)の成立としておきます。


第2番の方が第1番より
10年ほど早く作曲がスタートしたものの、
完成には苦心したようで、

第1番が1801年3月に出版されたのに続き、
同年12月に第2番が出版されたそうです。

 ※「国立音楽大学 音楽研究所 ベートーヴェン研究部門」
  〈http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/index.html〉掲載の
   「日本語版・ベートーヴェン作品目録」を参照。

実際よく聴いてみると、
第2番の方が多少まとまりが悪いようにも感じますが、

第3番以降の深化に比べれば、
わずかな違いのようにも思います。


なお、第1番第1楽章のカデンツァは、
ベートーヴェン自身によって3種類残されていますが、
ルービンシュタインは、3番目のを用いています。


   ***

ベートーヴェンのピアノ協奏曲は、
ルービンシュタイン(ピアノ)と
バレンボイム(指揮)による「皇帝」が飛び抜けて素晴らしく、
長らく愛聴盤になっているので、

機会があれば他の番号もと思っていたのですが、
国内盤では不思議と再販されず、
聴く機会がなかったので、

輸入盤で手に入れることにしました。

もしかしたら「皇帝」以外は
大したことがないのかもと心配しましたが、
聴いてみて安心しました。

「皇帝」と同じレベルの好調さを維持しており、

明るく穏やかで力強くもある
若々しいエネルギーにあふれた演奏で、
私がこれまで聴いてきた中では、
文句なしにベストの出来でした。

1音たりとも弾き飛ばさずに、
しっかりと弾き切っているところが好ましく、
しかし少しももたつかず、重さを感じさせない、
推進力のある演奏は、

第1・2番の魅力を余すところなく伝えてくれていると思います。



意外に良いのがバレンボイムの指揮です。

重すぎず、軽すぎずの充実した響きと、
力強い推進力に支えられた立派な伴奏で、
これも私の中ではベストの出来です。

バレンボイムの指揮は、
最近の良くなったと言われる録音でも、
私とは肌に合わないものがほとんどなのですが、

このルービンシュタインとの協奏曲は、
例外的に良いです。



近いうちに、第3・4番も聴いてみようと思います。

2012年10月11日木曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その4

マレイ・ペライア(1947 - )さんによる
モーツァルト(1756.1 - 1791.12)のピアノ協奏曲全集、
4枚目を聴きました。


モーツァルト
ピアノ協奏曲 第11番 ヘ長調 K.413(387a)
ピアノ協奏曲 第12番 変ホ長調 K.414(385p)

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:〔第11番〕1977年2・6月、〔第12番〕1979年6月、EMIスタジオ、ロンドン。【SONY MUSIC/8 86919 141122】CD4


ピアノ協奏曲の第11番(K.413)以降は、

ウィーン定住後の作品として、
それ以前のものとは分けて考えられています。

11~13番(K.413~415)は、
1782年末から1783年にかけて
モーツァルトが27歳になるときに
立て続けに作曲されたそうです。

確かに、
このCDの2曲は、
中庸な明るさに、ごくわずかなほの暗さもさし込む
同じタイプの曲だと感じました。

第10番から4年、
9番からは6年を隔てているからか、

曲としての完成度も高く、
ふつうに現在のコンサートの1曲に取り上げられても
楽しめると思いました。


第12番は、アシュケナージや
ハイドシェックの演奏で聴きなれていたからか、
第11番より親しみ深く聴こえましたが、

第11番は今回初めて聴いたので、
もう少し聴き込まないと、
第12番>第11番とも言い切れないでしょう。


ペライアさんのピアノ、
メリハリはあまりありませんが、
曲の美しさをよくひき出した素敵な演奏だと思います。

これより安定志向だと
面白みにかけることになりそうですが、
その三歩手前で止まっているので、
私にはありな演奏でした。


※作品の基本情報については、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】
 を参照しました。

2012年10月8日月曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その6

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
6枚目を聴きました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) ワーグナー:ジークフリートの葬送行進曲
2) ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~第1幕前奏曲
       ***
3) ヘンデル:合奏協奏曲 ニ短調 Op.6-10 HWV328
4) ブラームス: ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
5) ヒンデミット:管弦楽のための協奏曲 作品38

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1949年12月19日(1・2)、1950年6月20日(3~5)
ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD6


CD6枚目は、
〈前半〉2曲と〈後半〉3曲に分けられます。


   ***

まず〈前半〉2曲には、
1949年12月18・19・20日のベルリン・フィル演奏会から、
19日の演奏が収録されています。

このとき演奏会で取り上げられた5曲のうち、
はじめの3曲がCD5に収録されたので、
残る2曲がこのCD6に収録されたことになります。

その2曲とは、ドイツの作曲家
リヒャルト・ワーグナー(1813 - 1883)の作品で、

1曲目は、楽劇「神々の黄昏」より「ジークフリートの葬送行進曲」
2曲目は、
楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より第1幕への前奏曲

です。

音質、演奏ともに優れているのは、
「葬送行進曲」の方です。彫りの深さに度肝をぬきました。

「マイスタージンガー」前奏曲の方は、
演奏は良いはずですが、音質が今ひとつなので、
あえてこの録音でなければ、という特徴には乏しいように感じました。


   ***

続いて〈後半〉3曲には、
1950年6月20日のベルリン・フィル特別演奏会が収録されています。

演奏会の曲目4曲のうち、
最後の「英雄」交響曲をのぞく3曲が収録されています。
(「英雄」交響曲は、CD7に収録。)


1曲目は、
ドイツ生まれで、イギリスに帰化した作曲家、
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685 - 1759)の、
12の合奏協奏曲集 作品6 から 第10番ニ短調 HWV328 です。
ヘンデル54歳のとき(1739年)の作品です。

これは原曲を知らないからかもしれませんが、

聴いていても大オーケーストラが放つ音響への
違和感のほうが強く、感動以前に耳が受けつけないところがありました。


2曲目は、ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス(1833 - 1897)の、
ハイドンの主題による変奏曲 作品56a です。

ブラームス40歳のとき(1873年)の作品です。
交響曲第1番ができるのはこの3年後のことです。

これは名曲の名演奏。音質も良いです。
実はこれまでそんなに感動したことはなかったのですが、
初めて、ああこんなに良い曲だったのか、
と思えました。


3曲目は、ドイツの作曲家
パウル・ヒンデミット(1895 - 1963)の、
管弦楽のための協奏曲 作品38です。

ヒンデミット30歳のとき(1925年)の作品です。
これは今回初めて聴きました。

どちらかというと無調に近い印象があるので、
ヒンデミットはほとんど聴いていません。

でもこれは予想外に面白かったです。
短い中にも素材がぎゅっと凝縮されていて、

最後が明るい感じで
さわやかに終わるところも共感を持てました。

ヒンデミットを聴いて、
いいなあと思ったのも、初めてだった気がします。


ヒンデミットさん、
非常に多作な方のようで、
いろいろな曲を書かれているので、
いずれ時期をみて、聴いて行こうと思います。

※作品については、wikipedia の「リヒャルト・ワーグナー」「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル」「ヨハネス・ブラームス」「パウル・ヒンデミット」の各項目を参照。


※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
 仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
 【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】



2012年10月4日木曜日

ヘブラーのバッハ:フランス組曲(1979年録音)

 
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
 フランス組曲 第1番 BWV812
 フランス組曲 第2番 BWV813
 フランス組曲 第3番 BWV814
 フランス組曲 第4番 BWV815
 フランス組曲 第5番 BWV816
 フランス組曲 第6番 BWV817

イングリット・ヘブラー(ピアノ)
録音:1979年
【PROA-18/9】

オーストリア出身のピアニスト
イングリット・ヘブラー(1926 - )さんの名演をもう一つ。

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685 - 1750)の
フランス組曲 BWV812~817(全6曲)です。

バッハ30代半ばの
1722年頃に作曲されたと推定されています。

平成17年10月に、
TOWER RECORD から1500円(!)で再販された折に購入しました。

そのときは、
曲自体よく知らなかったからか、
あまり印象に残らなかったのですが、

最近久しぶりに聴き直してみたところ、

ゆったりのんびりした流れの中で、
よくピアノを歌わせた典雅な演奏で、
大好きになりました。


飛び跳ねるような
リズムには若干欠けるところがあるので、

はじめて聴く分には、
もう少し刺激のある演奏の方が楽しめるかもしれませんが、

ガチガチに
リズムを殺してしまうところもなく、
自然に呼吸をするように広がりゆくメロディに、

曲本来の美しさを体感し直すことができました。


聴き込むごとに、
味わい深くなって来る、
お薦めの演奏です。


※曲の成立については、
 ピティナ・ピアノ曲事典「バッハ」の項目を参照。
【http://www.piano.or.jp/enc/composers/47/】

2012年10月1日月曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その1

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集、

1枚目は、
ウィーン原典版の通し番号で、
第1番から第10番までを聴きました。


フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
 ピアノ・ソナタ 第1番 ト長調  Hob.XVI-8
 ピアノ・ソナタ 第2番 ハ長調  Hob.XVI-7
 ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ長調  Hob.XVI-9
 ピアノ・ソナタ 第4番 ト長調  Hob.XVI-G1
 ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調  Hob.XVI-11
 ピアノ・ソナタ 第6番 ハ長調  Hob.XVI-10
 ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調  Hob.XVII-D1
 ピアノ・ソナタ 第8番 イ長調  Hob.XVI-5
 ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長調  Hob.XVI-4
 ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調  Hob.XVI-1

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1996年2月、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553824】

ウィーン原典版の通し番号を、
ホーボーケン番号で並べなおすと、
 Hob.XVI-1(第10番)
  *
 Hob.XVI-4(第9番)
 Hob.XVI-5(第8番)
  *
 Hob.XVI-7(第2番)
 Hob.XVI-8(第1番)
 Hob.XVI-9(第3番)
 Hob.XVI-10(第6番)
 Hob.XVI-11(第5番)
  *
 Hob.XVI-G1(第4番)
 Hob.XVII-D1(第7番)
となります。

途中で抜けているのは、
 Hob.XVI-2(第11番)
 Hob.XVI-3(第14番)
 Hob.XVI-6(第13番)
の3曲です。(次のCDに収録。)

ほかと異なる番号の2曲、
 Hob.XVI-G1(第4番)
 Hob.XVII-D1(第7番)
は、真作である裏づけの取れない作品で、
特に〈D1〉は偽作とする研究があるそうです。

ただし実際に聴いてみて、
ほかと明らかな違いがあるわけではなく、
とくに〈G1〉は良くまとまった佳曲だと思います。


   ***

今回、ハイドンの初期のソナタを聴いてみて、

思い浮かんだのは、
毒気を抜いたスカルラッティ。

1楽章完結というわけではありませんが、

簡潔な構成の中で、
前向きで明るく楽しいメロディが次々と展開していき、
思っていた以上に楽しむことができました。


ヤンドーさんのピアノは、もったいぶらずに
どんどん曲の本質に切り込んでくるところが好ましく、
ハイドンにぴったりだと思いました。

これなら眠くなる暇がありません。


ハイドンの音楽には予定調和なところがあるので、
若いころは、今ひとつ良さがわからなかったのですが、

四十を過ぎ、辛いこと、苦しいこと、
悲しいことがたくさん起こる世の中で、

心に平穏をもたらし、
明るく暖かなものとする、
音楽の大切さに気がつくようになると、

ハイドンの音楽が身に染むようになって来ました。

日々こんなに明るく楽しく、透明な心であれたらいいな、と。


※なお、
 第4番(Hob.XVI- G1)の第3楽章は、
 第5番(Hob.XVI- 11)の第1楽章と同じ曲なので、

CDを聴いていると、突然
同じ楽章がリピートされることになり、
若干戸惑います。

おおむね同じ時期に作曲されたと考えて、
このように並べたのかもしれませんが、

同じ楽章を含む別個のソナタを、
同時に作曲したとも考えにくいので、

コンサートなどで全曲を取り上げる場合に、
頭を悩ますだろうな、と思いました。

今回聴いた印象では、
第4番の方が完成度が高く、
第5番は今ひとつな感じがしました。

(ただし、真作の確証があるのは第5番の方だそうです。)

2012年9月26日水曜日

シフのバッハ:イギリス組曲(1988年録音)



J.S.バッハ
イギリス組曲第1番イ長調BWV.806
イギリス組曲第3番ト短調BWV.808
イギリス組曲第5番ホ短調BWV.810
イギリス組曲第2番イ短調BWV.807
イギリス組曲第4番ヘ長調BWV.809
イギリス組曲第6番ニ短調BWV.811

アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
録音:1988年1月、UNIVERSITY MUSIC SCHOOL, Cambridge
【POCL-4361/2】

ハンガリー出身のピアニスト、
アンドラーシュ・シフ(1953年12月生)さんのバッハ、

一年前にブログで
「フランス組曲 BWV.813~817」を取り上げて、
それきりになっておりましたが、

今年早くに
「イギリス組曲BWV.806~811」を手に入れ、
じっくり聴き込んでおりました。

これは「フランス組曲」程ではありませんが、

ピアノで弾くバッハの魅力を十全に伝える
優れた演奏だと思います。

グールドのような
ぶっきら棒な引き飛ばしは全くなく、
しかし丁寧すぎてリズムが死んでしまうようなこともなく、

あくまで音楽的に、よい調和の中で
曲の魅力を最大限に活かした演奏だと思います。


ただし個人的には、さらにこの上を期待したい。

曲自体の問題があるのかもしれませんが、
より一層、魂が飛翔していくような、
得がたい演奏で聴ける日が来ることを期待しております。

2012年9月24日月曜日

柳家小三治15 落語名人会39 「提灯屋・かんしゃく」(1989・90)

十代目柳屋小三治(1939.12 - )の落語CD、
いつの間にか15枚目となりました。

小三治49歳と50歳の時(1989.10/1990.5)の口演です。


落語名人会39
柳家小三治15
1.「提灯屋(ちょうちんや)」
  録音:1989年10月31日、
  鈴本演芸場、第18回柳家小三治独演会

2.「かんしゃく」
  録音:1990年5月31日、
  鈴本演芸場、第20回柳家小三治独演会
〔お囃子〕植田ひさ/小口けい
【SRCL-3581】

「提灯屋(ちょうちんや)」も、
「かんしゃく」も、このCDで初めて聴きました。

どちらも、あらすじすら知らなかったので、
しばらくは笑いどころがわからなくてあたふたしておりました。

何度か聴いているうちに、
ようやく耳が慣れて、噺の流れも頭に入り、
笑いのツボがつかめてきた所です。

ですから、全然
正当な評価にはならないと思いますが、
とりあえず最初の感想を記しておきます。


「提灯屋(ちょうちんや)」は、
師匠の五代目柳家小さんのネタの中で、
小三治さんがたまらなく好きになって、
やりはじめた演目だそうです。
(京須偕充氏のCD解説参照)

文字が読めずに一騒動し、
家紋について謎かけするという
今ではまず起こりえない場面設定で、

話自体、現代では
すでにピンと来ないところがあって、
初めはあまり楽しめませんでした。


噺の流れが飲み込めて来て、
前半と後半のコントラストを楽しめるようになって来ると、

細かいことは置いておいて、
昔風の滑稽なお噺として楽しめばいいじゃないかと、
思えるようになって来ました。


「かんしゃく」は、
喜劇作家 益田太郎冠者
(1875 - 1953/三井物産の創始者 益田孝の次男)による新作落語です。

八代目桂文楽の得意なネタで、
それを小三治さんが好きになって、
やりはじめたそうです。
(京須偕充氏のCD解説参照)

わかりやすいお噺で、
小三治さんの迫真の演技もあって、
相当な好演だと思うのですが、

小三治さんの癇癪が
真に迫りすぎていているのか、

怒る場面でこちらもドキッとして、
あまり楽しむことが出来ませんでした。

録音の加減かもしれませんが、
もう少し、怒っているフリをするような、
遊びを感じさせる雰囲気が伝わると良かったと思います。


どちらも近々、
小さんと文楽にさかのぼって、
聴いてみようと思います。


※柳家小三治
 「提灯屋」89-10/31◯
 「かんしゃく」90-5/31◯

2012年9月18日火曜日

ハイドンのピアノ・ソナタの楽譜

近々、ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんのピアノで、
ハイドンのピアノ・ソナタ全曲を、
聴いていこうと思います。

ただし、いざ聴こうと思うと、
困るのが曲の番号の問題で、
なんだかわけのわからない状況でしたので、
必要な範囲で、勉強した内容を整理しておきます。

  ***

ヨーゼフ・ハイドンの作品は通常、
ホーボーケン番号(Hob.)によって分類されています。

ホーボーケン番号とは、オランダの音楽学者
アントニー・ヴァン・ホーボーケン(1887 - 1983)が作成した
「ヨーゼフ・ハイドン主題書誌学的作品目録」
にもとづく番号のことです。

器楽編は1957年に発表され、
ピアノ・ソナタは Hob.XVI:1-52
として整理されました。

この分類は1918年に出版された
ブライトコップ・ウント・ヘルテル社 による
世界初の「ピアノ・ソナタ全集」(カール・ペスラー校訂)
の通し番号にそのまま従ったものです。

この全集は全3巻からなり、
第1巻に第1-22番、
第2巻に第23-38番、
第3巻に第39-52番が収められました。

この順番がそのまま
ホーボーケン番号の Hob.XVI:1-52 に採用されたわけです。

この ブライトコップ・ウント・ヘルテル社 による
世界初の「ピアノ・ソナタ全集」 は、
アメリカのDover Publications 社から1984年に復刊されています(全2巻)。


Joseph Haydn
Complete Piano Sonatas
Volume I (Hoboken Nos.1-29)


Joseph Haydn
Complete Piano Sonatas
Volume II (Hoboken Nos.30-52)

各巻1700円ほどでAmazonで手に入れました。

円安の影響か多少高くなっていますが、
ほかのどの版よりも安く手に入れることができます。

そのまま演奏に使うのは難しいと思いますが、
とりあえず全曲の楽譜を揃えたい場合はおすすめです。

最新の研究でも、
まだ決定的といえる校訂譜にたどりついていない状況なので、
出版の原点を振り返る意味でも、有用な版だと思います。


  ***

実際に演奏する上で現在、入手しやすい
ハイドンの「ピアノ・ソナタ全集」の楽譜には、
クリスタ・ランドン校訂の【ウィーン原典版】と、
ゲオルグ・フェダー校訂の【ヘンレ社原典版】
2種類があります(1973・72年出版)。

ホーボーケン番号に寄りつつも、
新しい研究成果を取り入れ、
独自に分類、編集しなおされた楽譜になっております。


両者の大きな違いは、
ウィーン原典版では、
全62曲に通し番号を付けなおされているのに対して、

ヘンレ社原典版では、
通し番号をつけることを止め、
作曲年代、出版時期などの考証から、
10のグループに分け直しているところです。

学問的な精緻さでは、
ヘンレ社原典版のほうが上のようですが、

実際に演奏したり、聴いたりする場合、
通し番号がないのはやはり不便なようで、

ウィーン原典版による録音も少なくありません。


ウィーン原典版とヘンレ社原典版の収録曲を
参考に掲げておきます。


【ウィーン原典版】
クリスタ・ランドン校訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集 1a
(1973年)
ピアノ・ソナタ 第1番 ト長調  HOB.XVI - 8
ピアノ・ソナタ 第2番 ハ長調  HOB.XVI - 7
ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ長調  HOB.XVI - 9
ピアノ・ソナタ 第4番 ト長調  HOB.XVI - G1
ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調  HOB.XVI - 11
ピアノ・ソナタ 第6番 ハ長調  HOB.XVI - 10
ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調  HOB.XVⅡ- D1
ピアノ・ソナタ 第8番 イ長調  HOB.XVI - 5
ピアノ・ソナタ 第9番 ニ長調  HOB.XVI - 4
ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調  HOB.XVI - 1
ピアノ・ソナタ 第11番変ロ長調 HOB.XVI - 2
ピアノ・ソナタ 第12番 イ長調  HOB.XVI - 12
ピアノ・ソナタ 第13番 ト長調  HOB.XVI - 6
ピアノ・ソナタ 第14番 ハ長調  HOB.XVI - 3
ピアノ・ソナタ 第15番 ホ長調  HOB.XVI - 13
ピアノ・ソナタ 第16番 ニ長調  HOB.XVI - 14
ピアノ・ソナタ 第17番変ホ長調 HOB.DEEST
ピアノ・ソナタ 第18番変ホ長調 HOB.DEEST


【ウィーン原典版】
クリスタ・ランドン校訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集 1b
(1973年)
ピアノ・ソナタ 第19番 ホ短調 Hob.XVI - 47
ピアノ・ソナタ 第20番変ロ長調 Hob.XVI - 18
ピアノ・ソナタ 第21番 ニ短調 Hob.XVI - 2A(テーマのみ)
ピアノ・ソナタ 第22番 イ長調 Hob.XVI - 2B(テーマのみ)
ピアノ・ソナタ 第23番 ロ長調 Hob.XVI - 2C(テーマのみ)
ピアノ・ソナタ 第24番変ロ長調 Hob.XVI - 2D(テーマのみ)
ピアノ・ソナタ 第25番 ホ短調 Hob.XVI - 2E(テーマのみ)
ピアノ・ソナタ 第26番 ハ長調 Hob.XVI - 2G(テーマのみ)
ピアノ・ソナタ 第27番 イ長調 Hob.XVI - 2H(テーマのみ)
ピアノ・ソナタ 第28番 ニ長調 Hob.XVI - 5a
ピアノ・ソナタ 第29番変ホ短調 Hob.XVI - 45
ピアノ・ソナタ 第30番 ニ長調 Hob.XVI - 19
ピアノ・ソナタ 第31番変イ長調 Hob.XVI - 46
ピアノ・ソナタ 第32番 ト長調 Hob.XVI - 44
ピアノ・ソナタ 第33番 ハ短調 Hob.XVI - 20
ピアノ・ソナタ 第34番 ニ長調 Hob.XVI - 33
ピアノ・ソナタ 第35番変イ長調 Hob.XVI - 43
付録:ソナタ第28番 補筆の試み
※ソナタ第21~27番は、
ハイドンの自筆の作品目録通称〈革稿目録〉にもとづき、
紛失した作品の主題のみを掲載。


【ウィーン原典版】
クリスタ・ランドン校訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集 2
(1973年)
ピアノ・ソナタ 第36番 ハ長調  Hob.XVI - 21
ピアノ・ソナタ 第37番 ホ長調  Hob.XVI - 22
ピアノ・ソナタ 第38番 へ長調  Hob.XVI - 23
ピアノ・ソナタ 第39番 ニ長調  Hob.XVI - 24
ピアノ・ソナタ 第40番変ホ長調 Hob.XVI - 25
ピアノ・ソナタ 第41番 イ長調  Hob.XVI - 26
ピアノ・ソナタ 第42番 ト長調  Hob.XVI - 27
ピアノ・ソナタ 第43番変ホ長調 Hob.XVI - 28
ピアノ・ソナタ 第44番 へ長調  Hob.XVI - 29
ピアノ・ソナタ 第45番 イ長調  Hob.XVI - 30
ピアノ・ソナタ 第46番 ホ長調  Hob.XVI - 31
ピアノ・ソナタ 第47番 ロ短調  Hob.XVI - 32
ピアノ・ソナタ 第48番 ハ長調  Hob.XVI - 35
ピアノ・ソナタ 第49番嬰ハ短調 Hob.XVI - 36
ピアノ・ソナタ 第50番 ニ長調  Hob.XVI - 37
ピアノ・ソナタ 第51番変ホ長調 Hob.XVI - 38
ピアノ・ソナタ 第52番 ト長調  Hob.XVI - 39


【ウィーン原典版】
クリスタ・ランドン校訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集 3
(1973年)
ピアノ・ソナタ 第53番 ホ短調  Hob.XVI - 34
ピアノ・ソナタ 第54番 ト長調  Hob.XVI - 40
ピアノ・ソナタ 第55番変ロ長調 Hob.XVI - 41
ピアノ・ソナタ 第56番 ニ長調  Hob.XVI - 42
ピアノ・ソナタ 第57番 へ長調  Hob.XVI - 47
ピアノ・ソナタ 第58番 ハ長調  Hob.XVI - 48
ピアノ・ソナタ 第59番変ホ長調 Hob.XVI - 49
ピアノ・ソナタ 第60番 ハ長調  Hob.XVI - 50
ピアノ・ソナタ 第61番 ニ長調  Hob.XVI - 51
ピアノ・ソナタ 第62番変ホ長調 Hob.XVI - 52
付録1:アダージョ
付録2:ソナタ第60番第1楽章のために。


【ヘンレ社 原典版】
ゲオルグ・フェダ―校訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集第1巻
(1972年)
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVⅠ- 1
ピアノ・ソナタ変ロ長調 Hob.XVⅠ- 2
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVⅠ- 3
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVⅠ- 4
ピアノ・ソナタ イ長調  Hob.XVⅠ- 5
ピアノ・ソナタ ト長調  Hob.XVⅠ- 6
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVⅠ- 7
ピアノ・ソナタ ト長調  Hob.XVⅠ- 8
ピアノ・ソナタ ヘ長調  Hob.XVⅠ- 9
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVⅠ- 10
ピアノ・ソナタ イ長調  Hob.XVⅠ- 12
ピアノ・ソナタ ホ長調  Hob.XVⅠ- 13
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVⅠ- 14
ピアノ・ソナタ変ロ長調 Hob.XVⅠ- 18
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVⅠ- 19
ピアノ・ソナタ ト短調  Hob.XVⅠ- 44
ピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.XVⅠ- 45
ピアノ・ソナタ変イ長調 Hob.XVⅠ- 46
ピアノ・ソナタ ホ短調  Hob.XVⅠ- 47
ピアノ・ソナタ ト長調  Hob.XVⅠ- G1
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XIV - 5
ピアノ・ソナタ ニ長調. Hob.XVⅡ- D1
ピアノ・ソナタ(第8番)(Hob.なし)変ホ長調
ピアノ・ソナタ(第9番)(Hob.なし)変ホ長調
付録:7つの失われたピアノ・ソナタ
付録:単一楽章 ト短調 Hob.XVⅠ- 11Ⅱ
付録:単一楽章 ト長調 Hob.XVⅠ- 11Ⅲ
付録:単一楽章 ヘ長調 Hob.XVⅡ- F1
付録:単一楽章 嬰ヘ長調 Hob.IX - 26
付録:アレグロ・モルト(Hob.なし)ニ長調
付録:ピアノ・ソナタの最終楽章(第9番)(Hob.なし) 変ホ長調


【ヘンレ社 原典版】
ゲオルグ・フェダ―校訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集第2巻
(1972年)
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVI - 21
ピアノ・ソナタ ホ長調  Hob.XVI - 22
ピアノ・ソナタ ヘ長調  Hob.XVI - 23
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVI - 24
ピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.XVI - 25
ピアノ・ソナタ イ長調  Hob.XVI - 26
ピアノ・ソナタ ト長調  Hob.XVI - 27
ピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.XVI - 28
ピアノ・ソナタ ヘ長調  Hob.XVI - 29
ピアノ・ソナタ イ長調  Hob.XVI - 30
ピアノ・ソナタ ホ長調  Hob.XVI - 31
ピアノ・ソナタ ロ短調  Hob.XVI - 32
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVI - 35
ピアノ・ソナタ嬰ハ短調 Hob.XVI - 36
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVI - 37
ピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.XVI - 38
ピアノ・ソナタ ト長調  Hob.XVI - 39
ピアノ・ソナタ ハ短調  Hob.XVI - 20


【ヘンレ社 原典版】
ゲオルグ・フェダ―校訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集第3巻
(1972年)
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVI - 33
ピアノ・ソナタ ホ短調  Hob.XVI - 34
ピアノ・ソナタ ト長調  Hob.XVI - 40
ピアノ・ソナタ変ロ長調 Hob.XVI - 41
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVI - 42
ピアノ・ソナタ変イ長調 Hob.XVI - 43
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVI - 48
ピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.XVI - 49
ピアノ・ソナタ ハ長調  Hob.XVI - 50
ピアノ・ソナタ ニ長調  Hob.XVI - 51
ピアノ・ソナタ変ホ長調 Hob.XVI - 52


  ***

最近(日本では2013年)、
ウィーン原典版の改訂版が出ました。

これまで議論の的になっていた
ウィーン原典版の独特の曲順が放棄され、

原則としてホーボーケン番号の曲順に従い、
通番をつけることは止めているのが大きな変化です。

それでは旧版に従って録音された
ヤンドー盤はどうなるのかなと憂慮しつつも、

本家が看板をおろしてしまった以上、

今後ウィーン原典版の旧版にみられた
通番に従うことはなくなって来るのだろうと思います。


【ウィーン原典版 新版】
クリスタ・ランドン校訂
ウイリヒ・ライジンガー改訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集1
(2013年)
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 1
ピアノ・ソナタ 変ロ長調 Hob.XVI - 2
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 3
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 4
ピアノ・ソナタ イ長調 Hob.XVI - 5
ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI - 6
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 7
ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI - 8
ピアノ・ソナタ ヘ長調 Hob.XVI - 9
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 10
ピアノ・ソナタ イ長調 Hob.XVI - 12
ピアノ・ソナタ ホ長調 Hob.XVI - 13
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 14
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - 16
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - Es2
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - Es3
ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI - G1
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - D1
ピアノ・ソナタ ヘ長調 Hob.XVI - F3(Bozner Sonate)
ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI - 11


【ウィーン原典版 新版】
クリスタ・ランドン校訂
ウイリヒ・ライジンガー改訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集2
(2013年)
ピアノ・ソナタ 変ロ長調 Hob. XVI - 18
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 19
ピアノ・ソナタ ハ短調 Hob.XVI - 20
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 33
ピアノ・ソナタ 変イ長調 Hob.XVI - 43
ピアノ・ソナタ ト短調 Hob.XVI - 44
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - 45
ピアノ・ソナタ 変イ長調 Hob.XVI - 46
ピアノ・ソナタ ホ短調 Hob.XVI - 47bis
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 5a


【ウィーン原典版 新版】
クリスタ・ランドン校訂
ウイリヒ・ライジンガー改訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集3
(2013年)
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 21
ピアノ・ソナタ ホ長調 Hob.XVI - 22
ピアノ・ソナタ ヘ長調 Hob.XVI - 23
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 24
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - 25
ピアノ・ソナタ イ長調 Hob.XVI - 26
ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI - 27
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - 28
ピアノ・ソナタ ヘ長調 Hob.XVI - 29
ピアノ・ソナタ イ長調 Hob.XVI - 30
ピアノ・ソナタ ホ長調 Hob.XVI - 31
ピアノ・ソナタ ロ短調 Hob.XVI - 32
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 35
ピアノ・ソナタ 嬰ハ短調 Hob.XVI - 36
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 37
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - 38
ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI - 39


【ウィーン原典版 新版】
クリスタ・ランドン校訂
ウイリヒ・ライジンガー改訂
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集4
(2013年)
ピアノ・ソナタ ホ短調 Hob.XVI - 34
ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI - 40
ピアノ・ソナタ 変ロ長調 Hob.XVI - 41
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 42
ピアノ・ソナタ ヘ長調 Hob.XVI - 47
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 48
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - 49
ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI - 50
ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob.XVI - 51
ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI - 52

※ピティナ・ピアノ曲事典「ハイドン」の項目を参照。
〈http://www.piano.or.jp/enc/composers/45/〉

※wikipedia「ホーボーケン番号」「ハイドンのピアノソナタ一覧」の項目を参照。



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