2012年6月28日木曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その3

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
(1886-1/25生 1954-11/30没)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集
3枚目を聴きました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) シューベルト:交響曲第8番ロ短調 D759
2) ブラームス : 交響曲第4番ホ短調 作品98

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1948年10月24日
ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD3


CD3枚目には、

1948年10月24・25・26日に行われた
ベルリン・フィルの演奏会から、
初日(24日)の演奏が収録されています。

この日に演奏されたのは、
 1) バッハ:管弦楽組曲第2番
 2) シューベルト:交響曲第8番「未完成」
 3) ブラームス:交響曲第4番
の3曲であり、

バッハは【CD2】の方に収録されています。


演奏の内容ですが、

1曲目の「未完成交響曲」は、
残念ながら録音が今ひとつで、

何となくぼやけた感じの、
輪郭がはっきりしない音質だったので、

特別なんということもなく、
聴き終えておりました。

私には今一つの出来でした。


この日の演奏会、
曲ごとに録音の仕方を変えていたのか、
もしくは曲ごとに何も調整を行わなかったからなのか、

3曲とも、異なった感じのする録音で、

バッハ>ブラームス>シューベルト

の順で聴きやすかったです。


さて2曲目のブラ4ですが、
こちらは荒々しさの目立つ録音で、
決して聴きやすくはないのですが、

荒々しい分、かえって
フルトヴェングラーのやろうとしていることは
よく伝わってきて、十分楽しめました。

方向性としては、
品格を失わない範囲で、
とびきり熱いブラ4だと思います。


本来はもう少し、
枯れた味わいの中に熱さもある、
円熟味で聴かせる曲だと思いますが、

表現が徹底しているからか、
不思議と説得力のある演奏で、
思わず引き込まれておりました。


今のコンサートで、指揮者が
無理やりこのような棒を振ったとしても、
オケからこれだけ熱い音は引き出せないと思います。

フルトヴェングラーという指揮者の凄みを知る上で、
よい録音だと思いました。



※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】

2012年6月24日日曜日

柳家小三治14 落語名人会38 「味噌蔵・小言念仏」(1987)


落語名人会38
柳家小三治〈14〉

「味噌蔵」(みそぐら)
(1987年1月31日 鈴本演芸場 第4回柳家小三治独演会)
「小言念仏」(こごとねんぶつ)
(1987年3月31日 鈴本演芸場 第5回柳家小三治独演会)

〔お囃子〕樋口ひさ/小口けい
〔ディレクター〕京須偕充
【SONY RECORDS/SRCL-3580】


小三治さんの
「味噌蔵」と「小言念仏」です。

47歳の時の口演です。

お薦めです。


「味噌蔵」は、味噌蔵を営む、
しみったれな(ケチな)旦那さんをめぐる滑稽話です。

質素倹約も度をこえれば笑いの対象になるわけで、

噺のあらすじがつかめるまでは、
笑いどころがあちこちにちらばっていて、
若干まとまりがつかないようにも感じていたのですが、

噺が頭に入って来ると、
場面場面をよく作り込んであって、
お腹いっぱいに楽しめる大作です。


小三治さん口演は、
八代目三笑亭可楽さんのを
ベースにしているとのこと、

まだ聴いたことがないので、
近々聴いてみたいと思っております。



「小言念仏」は、
初めてCDを聴いたときには、
あまりピンと来なかったのですが、

テレビで小三治さんの口演を拝見し、
笑いどころを押さえてからは、

好きなお話しです。

お念仏を唱えながら
ほかごとをするという、

よくありそうなイケナイ日常がおかしく、
最後に殺生すら笑い飛ばしてしまうオチも秀逸です。



柳家小三治「味噌蔵」(87-1/31)◎
柳家小三治「小言念仏」(87-3/31)◎

2012年6月22日金曜日

朝比奈隆&東響のブルックナー:交響曲第5番(1995年録音)


アントン・ブルックナー
交響曲 第5番 変ロ長調(原典版)

朝比奈隆(指揮)
東京交響楽団
録音:1995年4月12日、サントリーホール、東京
【PCCL-00326】CD1

朝比奈隆氏のブルックナー:交響曲第5番、

手もとにはもう一枚、
1995年に東京交響楽団をふったときの録音があります。

これがなかなかの名演奏です。


オケが替わると、
やはり響き方がかなり異なります。

大阪フィルと比べて、
どちらが良いとは一概にいえませんが、

東響の長所は、
金管がオルガンのようにやわらかく共鳴して、
耳に心地よく鳴り響くところです。

その分、男性的な荒々しさは、
大阪フィルに一歩譲るところがありますが、

オケの響きが耳に心地よいということは、

ブルックナーを聴く上では、
大きな魅力だと思います。


演奏の内容は、
大阪フィルとの1994年録音と
特に違いはありませんが、

ブルックナーの響きの魅力を堪能できる、
東響1995年録音の価値は大きいと思います。



朝比奈隆氏による
ブルックナー:交響曲第5番の録音、
勝手に出来を評価すると、

大フィル1973年◎
大フィル1994年◯(初出盤は△)
大フィル2001年◎
東 響 1995年◎

といった感じでしょうか。

どれが一番という聴き方はしていません。
個人的に聴いて、感動できたかどうかです。

得意曲だけあって、
指揮の内容が不出来なものには
今のところ出会っておりません。

一枚聴くとつい、
他の録音も手に取ってみたくなる、
魅力のある指揮者だと思います。

2012年6月19日火曜日

朝比奈隆&大阪フィルのブルックナー:交響曲第5番(1973&1996&2001)

朝比奈隆(1908生 2001没)&
大阪フィルハーモニー交響楽団で、
ブルックナーの交響曲第5番変ロ長調(原典版)を
3種類聴きました。

ブル5は魅力に気がつくまでに
少し時間がかかりましたが、今は大好きな曲の一つです。

朝比奈氏はブル5を得意にしており、
他にも聴いていない録音がありますが、
とりあえず聴いたところまでの報告です。


時間[21:47/16:18/14:27/26:06]
録音:1973年7月24日、東京文化会館
【TFMC-0005】



時間[22:50/18:51/13:57/24:59]
録音:1994年6月27日、大阪、フェスティバルホール
【PCCL-00473】




時間[23:03/18:12/14:32/25:36]最後30秒ほど拍手
録音:2001年4月21日、大阪、ザ・シンフォニーホール
【OVCL-00314】


まずは1枚目(1973年録音)。

私がブル5の魅力に開眼したのは、
この1973年の録音です(2003年発売)。

朝比奈氏65歳のときの演奏で、
一気呵成に先へ先へとかけぬけていくオケの推進力が凄まじく、
手に汗握る大演奏です。

大阪フィルも健闘しており、
録音もオケの荒々しさを残しつつ、
ブルックナーの魅力を損なわない透明感のある音質で、
よく録れていると思います。

熱いブル5が聴いてみたい方にはお薦めの演奏です。


次は2枚目(1994年録音)。

1994年の録音は、私が初めて買った
朝比奈隆&大阪フィルのブル5でした。

しかし私自身が、曲に不慣れであったこともありますが、
何よりオケの荒々しさを丸出しにした録音が耳障りで、
集中して聴き通すことはできませんでした。

ただし最近このCDを
どこかに無くしてしまったのに気がついて、
朝比奈氏の没後に再販されたものを買い直して聴いてみたところ、

かなり聴きやすく調整されてあって、
ふつうに聴き通すことができました。

これならば、
買って残念なことにはならない、
ブル5のオーソドックスな名演奏と思います。


ただし1973年録音ほどの熱さはなく、
2001年録音ほどの高音質でもないことから言えば、
特別な特徴には乏しい面があるかもしれません。


そして3枚目(2001年録音)。

2001年の録音は、
まず音質が圧倒的に良いです。

残響でごまかすところがないのに、
やわらかく耳に心地よい音質で統一されているのは、
見事だと思います。

そして演奏ですが、
この最晩年の一連のブルックナー録音は
速めのすっきりしたテンポを取ることが多かったのですが、

ブル5はむしろじっくりとしたテンポで、
堂々とした仰ぎみる建築物のようなブルックナーを聴かせてくれます。


1973年録音の方は、
聴いていて若干疲れるところもあるので、
繰り返し聴いて楽しむのは、もってこいの録音だと思います。

唯一惜しいのは、やはりオケの響きでしょうか。

金管がオルガンのように美しく共鳴した演奏には、
日本に限らず出会うことが稀ですが、
金管がほんの少し耳障りに響く点は残念でした。


しかしこの3枚の中から1枚選ぶとすれば、
曲のすべてを見極めた上に立つ、
2001年録音が一番好きです。

2012年6月17日日曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その2

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
(1886-1/25生 1954-11/30没)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集
2枚目を聴きました。

音質もよく、新鮮な感動のもと、
作品の魅力を存分に味わうことができました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) メンデルスゾーン:劇音楽「真夏の夜の夢」序曲 作品21
2) ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
 ※ユーディー・メニューイン(ヴァイオリン)
3) バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1947年9月28日(1・2)、1948年10月24日(3)
ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD2


CD2枚目には3曲収録されています。

第1・2曲目には、
1947年9月28・29日に行われた
ベルリン・フィルの演奏会から、
初日(28日)の演奏で、

メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲と、
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
(独奏、メニューイン)

が収録されています。

フルトヴェングラー61歳、
メニューイン(1916 - 1999)31歳のときの演奏です。

この演奏会では、後半にもう1曲、
ベートーヴェンの交響曲第7番が取り上げられていますが、
この録音集には未収録です。


第3曲目には、
1948年10月24・25・26日に行われた
ベルリン・フィルの演奏会から、
初日(24日)の演奏で、

バッハの管弦楽組曲第3番

が収録されています。

フルトヴェングラー62歳のときの演奏です。

この演奏会では、このあと
シューベルトの未完成交響曲と、
ブラームスの交響曲第4番が取り上げられており、
この録音集の【CD3】にすべて収録されています。


さて内容です。

第1曲目。
メンデルスゾーン(1809 - 1847)の
「真夏の夜の夢」序曲は1826年、
メンデルスゾーン17歳のときの作品です。

ふわりとした軽めの印象で、
さらさら流れていくだけの演奏が多く、
これまでそれほど魅力を感じて来なかったのですが、

今回の演奏を聴いて、
はじめて曲の魅力がわかったように思います。

録音はそれほど鮮明ではありませんが、
軽すぎず、しかし重々しすぎず、
聴いていてちょうど良い塩梅で心に響いていくる演奏で、
確かによくできた名曲であると
実感することができました。


第2曲目。
ベートーヴェン(1770 - 1827)の
ヴァイオリン協奏曲は1806年、
ベートーヴェンが37歳のときの作品です。

交響曲でいえば、
第3番(1805)と第4番(1807)の間、
に位置する作品です。

フルトヴェングラーの指揮する、
深々としたオーケストラの響きに、
繊細ながらもしっかりと心に届いてくる、
明るく軽やかなヴァイオリンの音色が絶妙に絡みあって、

曲の魅力を十分に引き出した、
優れた演奏になっていると思います。

メニューインの演奏は、
わりと早くから技術的な問題が目立ち、
どれも今一歩の感があったのですが、

協奏曲ではほぼ初めて、
十分に満足のいく演奏に出会えました。


第3曲目。
バッハ(1685 - 1750)の管弦楽組曲第3番です。
有名な「G線上のアリア」を含む組曲です。

大オーケストラの分厚い響きは、
バッハの音楽をほどよく響かせるのには、
不似合いなところがありますので、

今ではもうほとんど聴かれなくなったタイプの演奏です。


しかし、これはすごい。

これほど、心を感じさせる演奏は、
初めて聴きました。

軽めの抜け切った響きの中に、
心のこもった静かで暖かな音楽が、
私の中に流れ込んできました。

特に「エア」は絶品です。
祈りの心に満たされたバッハは、
やはりいいものです。


※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】


2012年6月8日金曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その1

マレイ・ペライア(1947生)さんが
1975年から1988年にかけて、
イギリス室内管弦楽団と録音された名盤、

モーツァルトのピアノ協奏曲全集を
12枚組2,400円ほどで購入しましたので、
1枚ずつ聴いていこうと思います。
まずは1枚目です。



モーツァルト
ピアノ協奏曲 第1番 ヘ長調 K.37
ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 K.39
ピアノ協奏曲 第3番 ニ長調 K.40
ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 K.41

マレイ・ペライア(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
録音:1984年2月18日、ロスリン・ヒル教会、ロンドン
【SONY MUSIC/8 86919 141122】CD1


ペライアさん37歳のときの録音です。

ピアノ協奏曲の第1~4番は、
モーツァルトが11歳(1767年)のときに作曲されました。


年齢的に父レオポルドの補筆が推測されるほか、

同時代の作曲家の作品をもとにした編曲であることも、
20世紀はじめの研究によって明らかにされております。


ただし一曲まるっとそのまま
他人の作品を借用したわけでなく、


ピアノ協奏曲 第1番 ヘ長調 K.37
第1楽章 H・F・ラウパッハ:作品1-5の第1楽章
第2楽章 不明
第3楽章 L・ホーナウアー:作品2-3の第1楽章

ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 K.39
第1楽章 H・F・ラウパッハ:作品1-1の第3楽章
第2楽章 J・ショーベルト :作品17-2
第3楽章 H・F・ラウパッハ:作品1-1の第3楽章

ピアノ協奏曲 第3番 ニ長調 K.40
第1楽章 L・ホーナウアー :作品2-1の第1楽章
第2楽章 J・G・エッカルト:作品1-4の第1楽章
第3楽章 C・P・E・バッハ :クラヴィーア曲集Wq.117~《ボヘミアン》

ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 K.41
第1楽章 L・ホーナウアー :作品1-1の第1楽章
第2楽章 H・F・ラウパッハ:作品1-1の第2楽章
第3楽章 L・ホーナウアー :作品1-1の第3楽章


というように、各楽章それぞれ
違う作曲家の作品が想定されています。

ふつうに聴くかぎりは、
彼のオリジナルな作品と言われても気がつかない位に、
モーツァルトらしい曲想で統一されていて、

彼の個性が明瞭に刻印された、
魅力的な作品として楽しむことができました。


恐らくそれは、ペライアさんの
共感に満ちた演奏によるところも大きいのでしょう、

グランドピアノを使って、
後半の有名な曲を弾くのと同じように心をこめて、
若いモーツァルトの最良の部分をひき出した演奏だと思います。


原曲の影響をどの程度受けているのか、
比較できるようなCDがあれば面白いと思うのですが、

今のところ、
そうしたマニアックな録音はないようです。
(しっかりと探したわけではありません。)


J・C・バッハの原曲の跡が明瞭な
K.107のピアノ協奏曲3曲とともに取り上げたら、
楽しい企画になりそうです。


※モーツァルトが
 ピアノ協奏曲に取り組むときに参照したのが、
 大バッハこと、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(J.S.Bach)でなく、
 次男カール・フィリップ・エマヌエル(C.P.E)と、
 末子ヨハン・クリスティアン(J.C)の作品であったことは、
 バッハの受容史を考える上でも、興味深いなあと、

石井宏氏の『反音楽史』
(新潮文庫、平成22年10月。201頁以下)
の記述を思い出しました。


※作品の基本情報については、
ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」
【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】
を参照しました。



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