2013年1月31日木曜日

ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:交響曲第4番(1975年)

フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)が46・47歳のときに(1975・76)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した

同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の
交響曲第4番と交響詩《吟遊詩人》を聴きました。

《吟遊詩人》を聴いたのは、これが初めてです。



シベリウス
1) 交響曲 第4番 イ短調 作品63
  第1楽章 テンポ・モルト・モデラート、クワジ・アダージョ
  第2楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
  第3楽章 イン・テンポ・ラルゴ
  第4楽章 アレグロ

2) 交響詩《吟遊詩人》作品64

パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1975年6月3-4日(交響曲)、1976年6月24日(組曲)
サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16015】


交響曲 第4番 イ短調 作品63 は、

シベリウスが45歳のときに初演(1911.4)された交響曲です。

41歳のときに第3番が初演(1907.9)されて間もなく、
1908年に喉の腫瘍を摘出する手術を受けました。

幸い腫瘍は良性で、無事に回復できたのですが、
この時期の作品には、病の影響が色濃く出ているようです。


実際聴いてみると、
第1番のようにほの暗い色調のなか、
物思いに沈み込んだまま、浮かび上がってこない感じの曲です。

楽章の切れ目もわかりにくく、
わかりやすいメロディも影を潜めているので、

恐らく1度聴いただけでは、
何やらよくわからない方がほとんどではないでしょうか。


私も今回の録音で、今まで以上に、
曲の本質に近づけてきた感じはするのですが、

恐らくまだどんな曲なのか、
つかみ切れていない部分は残っているように思います。

でも曲の構造は大体頭に入ってきたので、
次に聴きなおすときには、

完全にわかった!と言えるような気がします。

ボーンマス響の演奏は、
金管が多少強めに聴こえるところが
個人的にはマイナスなのですが、

聴き慣れてくると、
むしろ爽快な感じにもなって来たので、
好みの問題かもしれません。



  ***

交響詩《吟遊詩人》作品64は、

シベリウス47歳のときに初演された作品です(1913.3)。
翌年に改訂が施され、1916年に初演されたものが最終稿になっています。


第4番と曲想がよく似ているので、

第4番に続けて聴くと、
曲の切れ目がわからずに、

いつの間にか《吟遊詩人》が始まっていることも
時々ありました。


しばらく聴いていると、
第4番より多少ロマンティックなところがあって
わかりやすい音楽なので、

こちらを聴きこんでから、
第4番に進むと良いのかもしれません。


ずいぶん聴き込みましたので、
とりあえず次に進みましょうか。



※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」「交響曲第4番(シベリウス)」「吟遊詩人(シベリウス)」を参照。

2013年1月27日日曜日

ヴァルヒャのバッハ:オルガン作品全集(旧盤)CD8

ヘルムート・ヴァルヒャ(1907 - 1991)による
ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685.3 - 1750.7)の作品全集、
8枚目を聴きました。


J.S.バッハ:オルガン作品全集
CD-8

18のコラール(ライプツィヒ・コラール)BWV651~668 より
 1) われ神より去らじ BWV658
 2) いざ来たれ、異教徒の救い主よ BWV659
 3) いざ来たれ、異教徒の救い主よ BWV660
 4) いざ来たれ、異教徒の救い主よ BWV661
 5) いと高きところにいます神にのみ栄光あれ BWV662
 6) いと高きところにいます神にのみ栄光あれ BWV663
 7) いと高きところにいます神にのみ栄光あれ BWV664
 8) われらの救い主なるイエス・キリスト BWV665
 9) われらの救い主なるイエス・キリスト BWV666
10) 来たれ、創り主にして聖霊なる神よ BWV667
11) 汝の御座の前に、われ進み出で BWV668/668a

クラーヴィア練習曲集第3巻(ドイツ・オルガン・ミサ)より
 12) 前奏曲 変ホ長調「聖アン」BWV552-1

大オルガンのためのコラール編曲集
 13) 永遠の父なる神よ BWV669
 14) すべての世の慰めなるキリストよ BWV670
 15) 聖霊なる神よ BWV671
 16) いと高きところにいます神にのみ栄光あれ BWV676

ヘルムート・ヴァルヒャ(オルガン)
録音:1952年(1-11)、1947年(12-16)
オルガン:カッペル、聖ペテロ=パウロ教会
【Membran 223489】CD-8


CD8枚目は、
「ライプツィヒ・コラール」(BWV651-668 全18曲)より
 後半の11曲(BWV651-668)と、

「ドイツ・オルガン・ミサ」とも呼ばれる、
「クラーヴィア練習曲集第3巻」の前半が演奏されています。


「ライプツィヒ・コラール」(BWV651-668)
30代初め(1708-17)までに作曲された旧稿をもとに、
最晩年にまとめられた作品集です。

前半を聴いたときにも感じたのですが、

CD8枚聴いてきた中では、
この「ライプツィヒ・コラール」が、
私の中で一番しっくり来るというか、
聴いていてふつうに良い曲だと思いました。

ぜひ他の方々の演奏も、
いろいろ聴いてみたいと思いました。


   ***

「クラーヴィア練習曲集」とは、
バッハが生前に出版した鍵盤楽器のための作品集であり、

 第1巻 パルティータ BWV825-830〔出版:1726-1730〕
 第2巻 フランス風序曲 BWV831、イタリア協奏曲 BWV971〔出版:1735年〕
 第3巻 〔出版:1739年〕
 第4巻 ゴールドベルク変奏曲 BWV988〔出版:1742年〕

の全4巻からなります。

このうち第3巻は、
50代半ばのときに出版された作品で、
「ドイツ・オルガン・ミサ」とも呼ばれ、

 前奏曲とフーガ 変ホ長調「聖アン」BWV552
 21のコラール BWV669-689
 4つのデュエット BWV802-805

という構成からなります。
(4つのデュエットのみ、ハープシコードで演奏。)

このCDでは、
ヴァルヒャさんの発案なのか、
用いた楽譜によるのか、次のような順番で演奏されています。
(次のCD9の分も含む。)

 1) 前奏曲 変ホ長調「聖アン」
   BWV552/1
 2) 大オルガンのためのコラール編曲集
   BWV669-671・676
  (以下CD9)
   BWV678・680・682・684・686・688
 3) ハープシコードのための4つのデュエット
   BWV802-805
 4) 小オルガンのためのコラール編曲集
   BWV672-675
   BWV677・679・681・683・685・687・689
 5) フーガ変ホ長調「聖アン」
   BWV552/2


さて演奏ですが、
立派な前奏曲に耳を奪われた後、
4つの充実したコラールが演奏されています。

はじめは少し取っつきにくい感じがしましたが、
3ヶ月も聴いてくると、しだいになじんできて、
そろそろ続きが聴きたくなってきました。

鈴木雅明氏の録音(2001年)もあるようなので、
近々聴いてみたいと思いました。


※Wikipedia の「ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品一覧」を参照。

2013年1月23日水曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その6

アメリカのピアニスト
マレイ・ペライア(1947-)と
イギリス室内管弦楽団による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ピアノ協奏曲全集、6枚目を聴きました。



モーツァルト
ピアノ協奏曲 第15番 変ロ長調 K.450
ピアノ協奏曲 第16番 ニ長調 K.451

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:1982年10月10日、セント・ジョン・スミス・スクエア、ロンドン
【SONY MUSIC 88691914112】CD6

K.449・450・451・453・456・459
(第14~19番)の6曲は、

すべてモーツァルトが28歳のとき(1784年)に作曲されました。

K.450(第15番)とK451(第16番)は、
1784年3月にモーツァルト自ら初演されたそうです。

実際聴いてみると、
独特の孤独な物悲しい側面は影を潜め、
明るく楽しい気分を満喫できる充実した作品でした。

もっと演奏されても良いように感じましたが、
20番台の作品と比べれば、強い個性には欠けるのかもしれません。


とくに第16番は
威風堂々としたリズムに特徴のある作品で、
この9年前(1775年)に作曲された

 ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K.218《軍隊》

を一層充実させたような趣がありました。


ペライアさんの演奏は、
はじめのうち多少押しが弱く感じられましたが、

くり返し聴くごとに味わいが増してきて、
モーツァルトにはこれ位がちょうど良いのかもしれないなあ、
と一人納得するのでした。


※Wikipediaの「マレイ・ペライア」
 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」
 「ピアノ協奏曲第15番(モーツァルト)」
 「ピアノ協奏曲第16番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2013年1月19日土曜日

ケンプのモーツァルト:ピアノ・ソナタと幻想曲(1962年録音)

ドイツのピアニスト
ウィルヘルム・ケンプ
(Wilhelm Kempff 1895.11-1991.5)が
66歳のときに録音した

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart 1756.1-1791)の
ピアノ・ソナタ集を聴きました。


モーツァルト
 ピアノ・ソナタ第11番イ長調K.331(300i)《トルコ行進曲付き》
 幻想曲ニ短調K.397(385g)
 幻想曲ハ短調K.475
 ピアノ・ソナタ第8番イ短調K.310(300d)

ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)
録音:1962年1月、UFAスタジオ、ベルリン
【UCCG-5296】2012年5月発売

とある動画サイトで、

ケンプさんが弾く
モーツァルトのピアノ・ソナタを聴き、

まるでシューベルトのように
深い間合いで歌い込まれた独特の演奏に感動し、

元のCDを探して購入しました。


これは最近再販されたケンプの名盤を集めた
1,000円のシリーズの中にも入っていますが、

リマスタリングの加減か、
ケンプさんのタッチの微妙なところ、
深く美しいピアノの響きが消え去っており、

オススメ出来ません。

うっかり買ってしまったのですが、
まったく別の演奏かと思うほど、平凡に聴こえました。


私の記憶違いかとも思いましたが、
もう一枚、1,200円のを買い直してみたところ、
動画を観たときの感動が甦りました。


少し遅めのテンポで、
シューベルトを弾くときのように、
すべての音符に絶妙な歌を感じる演奏で、

その分、
ふだん聴くモーツァルトとは幾分違っていて、
ヘブラーさんよりよほど歌い込まれていますが、

造形を壊してしまうほどではなく、
彼のベートーヴェンよりよほど曲の本質を突いていると想います。

(歌に満ちたケンプさんのベートーヴェン、
 個性的で、私は好きです。)

収録曲のうち、
とくに感銘を受けたのは、
K.331《トルコ行進曲付き》の第1楽章です。

この曲は、
第3楽章の印象が強すぎて、
第1・2楽章はそのつけたしのように感じてしまうことが多いのですが、

ゆっくりと存分に歌い込まれた
ケンプさんの演奏で、初めて第3楽章に匹敵する名曲だと思えました。

2つの幻想曲は、
シューベルトの即興曲を2つ聴くよう。

速めのテンポで駆け抜けるイ短調のソナタも、
シューベルトを思い浮かべました。


こんな調子で、
ソナタ全集を完成してくれていたら!

私にとっては、
最高の全集になっていたと思いますが、

このときは、
これしか録音されなかったようです。


ほかにもライブ盤が数曲あるようなので、
いずれ機会があれば聴いてみようと思います。

2013年1月18日金曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲全集 その2

コダーイ四重奏団による

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732 - 1809)の弦楽四重奏曲全集、

2枚目です。


ハイドン
弦楽四重奏曲 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕第0番
弦楽四重奏曲 ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕第6番
弦楽四重奏曲 イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕第7番
弦楽四重奏曲 ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕第8番

コダーイ四重奏団
録音:1991年6月12-15日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550399】

はじめに、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲について。
(全集その1のときのブログと、ほぼ同内容です。)


フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732-1809)の弦楽四重奏曲は、

ハイドン生前中(1801年)に、
弟子のプレイエル(1757-1831)によって、
最初の全集が刊行されました〔プレイエル版〕。

 ※初版で80曲、第2版で82曲、第3版で83曲を収録。
 ※プライエル版に従い、第1番から83番まで
  通番で呼ぶこともあります


このとき初期の弦楽四重奏曲について、

 ◯作品1- 1~6〔Hob.Ⅲ- 1~6〕
 ◯作品2- 1~6〔Hob.Ⅲ- 7~12〕
 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

という整理が行われました。

 作品1・2はハイドンが33・34歳のとき(1765・66年)、
 作品3は45歳のとき(1777年)に、
 個別に出版されていたそうです。

この作品1・2・3は、
ハイドン最晩年(1805年)の「ハイドン目録」でも、
本人が認めていたはずなのですが、


その後の研究によって、

 ◯作品3- 1~6〔Hob.Ⅲ- 13~18〕

は、ハイドンの信奉者
ロマン・ホフシュテッター(1742-1815)の贋作が
紛れ込んだと考えられるようになりました。


そのほか、

 ◯作品1- 5〔Hob.Ⅲ- 5〕は、
  交響曲「A」変ロ長調〔Hob.Ⅰ- 107〕の編曲、

 ◯作品2- 3〔Hob.Ⅲ- 9〕は、
  6声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 21〕の編曲、

 ◯作品2- 5〔Hob.Ⅲ- 11〕は、
  6声のディベルティメント ニ長調〔Hob.Ⅱ- 22〕の編曲

であることが明らかにされています。


つまり作品1・2・3の計18曲のうち、
初期の弦楽四重奏曲として確実なのは、

 ◎作品1- 1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
 ◎作品2- 1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕

の9曲のみということになります。


さらに本来、
初期の弦楽四重奏曲とすべき1曲が、

 ◎5声のディベルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕

に誤って分類されていたことも明らかにされています。

これはプレイエル版の全集から欠落しているので、
第0番と呼ばれることがあります。


つまり現在は、第0番を含めた計10曲を、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲と考えるのが通説になっているようです。

これらの作曲年代は、
ハイドン25歳から30歳(1757-62)のころと推定されています。

プレイエル版の通番とともにまとめておきます。

 第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
 第1番 変ロ長調 作品1- 1〔Hob.Ⅲ- 1〕
 第2番 変ホ長調 作品1- 2〔Hob.Ⅲ- 2〕
 第3番  ニ長調 作品1- 3〔Hob.Ⅲ- 3〕
 第4番  ト長調 作品1- 4〔Hob.Ⅲ- 4〕
 第6番  ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
 第7番  イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
 第8番  ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕
 第10番  ヘ長調 作品2- 4〔Hob.Ⅲ- 10〕
 第12番 変ロ長調 作品2- 6〔Hob.Ⅲ- 12〕

本CDには、このうち

 第0番 変ホ長調〔Hob.Ⅱ- 6〕
 第6番 ハ長調 作品1- 6〔Hob.Ⅲ- 6〕
 第7番 イ長調 作品2- 1〔Hob.Ⅲ- 7〕
 第8番 ホ長調 作品2- 2〔Hob.Ⅲ- 8〕

の4曲が収録されています。

なおこのCDのケース裏面では、

 変ホ長調「作品1- 5」
 ハ長調 作品1- 6
 「ニ長調」作品2- 1
 「ト長調」作品2- 2

の4曲を収録曲とし、作品番号と調性に誤りがあります。
CD解説の方は正確です。


   ***

さて曲の内容および演奏ですが、

0番も含めて、
1枚目と同じ路線の、

瑞々しい若い感性に支えられた、
軽めの明るい曲が続きます。

ただし1枚目のように、
心洗われる清新な印象は多少弱まったようで、

特定の一楽章に心を奪われることもなく、
平穏な明るい音楽が流れていきました。

若い感性だけで勝負するには限界があって、
多少足踏みをしている感がありました。


これは単に、
私の好みの問題かもしれませんし、
演奏の加減もあるかもしれません。

コダーイ四重奏団は、
曲の内実にまで踏み込んだ充実した演奏で、
曲の魅力を十分に伝えられていると思います。


数ヶ月聴いて、
昨日次の1枚が届きましたので、
3枚目に進みましょうか。


※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
 「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。

※JAIRO でインターネット上に公開されている
 飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
 (『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。

※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。

2013年1月16日水曜日

バルシャイ&ケルン放送響のショスタコーヴィチ:交響曲第1・2・3番

ロシア出身の指揮者
ルドルフ・バルシャイ(1924.8-2010.11)

68歳から76歳にかけて(1992.9-2000.9)、
ドイツのケルン放送交響楽団と録音した

ロシアの作曲家
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906.9-1975.8)の
交響曲全集をようやく手に入れましたので、
1枚ずつのんびりと聴いていこうと思います。

最近2500円ほどに値下がりしたのに気がついて、
購入しました。

ショスタコーヴィチの交響曲は、
Naxos の最新録音を1枚ずつ聴いていこうかと思っていたのですが、

バルシャイさんのほうが、
よりオーソドックスな演奏であろうと期待し、
先にこちらを番号順に聴いていきます。
ではまず1枚目。


ショスタコーヴィチ
交響曲 第1番 ヘ短調 作品10

交響曲 第2番 ロ短調 作品14
(合唱と管弦楽のための)「10月革命」

交響曲 第3番 変ホ長調 作品20
(合唱と管弦楽のための)「メーデー」

ケルン放送合唱団
ケルン放送交響楽団
ルドルフ・バルシャイ(指揮)

録音:1994年9月30日-10月3日(1・3番)
1995年1月23日(2番)、フィルハーモニー、ケルン
【BRILIANT 6324-1】

第1番はラジオなどで
何度か聴いたことがあります。

第2・3番は
単一楽章で終わりにかけて合唱を用いてあり、
めったに演奏されない作品なので、

初めて聴きます。


   ***

交響曲第1番ヘ短調作品10 は、
19歳のときに初演(1926.5)された作品で、
1924年から1925年にかけて作曲されたそうです。

レニングラード音楽院の卒業作品で、
初演と同時に大きな評判を勝ち得たそうです。

あふれんばかりの才気の感じられる
カッコイイ音楽です。

さすがに深みには乏しい感もありますが、
年齢を考えればそれは当然のことなので、

現代っ子のずばぬけた才能の切れ味を、
爽快に楽しめば良いのだろうと思いました。


バルシャイさんの指揮は、
表面だけをなぞることなく、
曲の実質をしっかりと伝えるもので、

改めて、この曲の魅力を認識することができました。


   ***

交響曲第2番ロ短調「十月革命に捧げる」作品14は、
21歳のときに作曲、初演(1927.11)された作品。

交響曲第3番変ホ長調「メーデー」作品20 は、
23歳のときに作曲、初演(1930.1)された作品です。

初めて聴くからかもしれませんが、

正直なところ、
まだ習作としてもかまわないような、
聴き通すのが辛い作品でした。

第2番は、
実験的な要素が多く、
部分的にはさすがと思わせるところもありますが、

最後にこじつけで合唱を持ってきて、
無理やり終わらせている感じがしました。

第3番は、第2番より
わかりやすい作品ですが、

これもまた、どうしても聴きたい音楽ではありませんでした。


もしかしたら、
ドイツの合唱団を使っているからかもしれませんが、

最後に合唱が出てくると、
途端に陳腐な感じがして、

あれ、こんなので終わっちゃって良いの?
と思いました。

オケの演奏自体は、
十分に納得いくレベルだったと思います。

今後、ほかの演奏も聴いていくうちに、
変わる可能性もありますが、

最初の感想はこんな感じです。


※Wikipediaの「ルドルフ・バルシャイ」
 「ドミートリイ・ショスタコーヴィチ」
 「交響曲第1番(ショスタコーヴィチ)」
 「交響曲第2番(ショスタコーヴィチ)」
 「交響曲第3番(ショスタコーヴィチ)」を参照。

2013年1月15日火曜日

辛島美登里 『Love Letter』


辛島美登里 『Love Letter』

 1. 生まれ来る子供たちのために
 2. さよなら
 3. I LOVE YOU
 4. 君住む街へ
 5. 倖せなんて
 6. Yes-No
 7. 愛を止めないで
 8. ラブ・ストーリーは突然に
 9. たしかなこと
10. Love Letter

1-9 作詞作曲:小田和正
 10 作詞作曲:辛島美登里
【TECG-30066】2012年9月発売

辛島美登里さんも、
小田和正さんも、好きな歌手です。

辛島さんが、
小田さんの楽曲を歌ったら、
さぞや素敵だろうなと、

ひそかに思い描いていた
わが身にとって、

辛島さん自身が
かねてから小田さんのファンで、

ここに満を持して、
小田さんの名曲をまとめて取り上げられたことは、

嬉しい驚きでした。


こうした試みは、
慎重になりすぎて案外つまらなかったり、
編曲に幻滅することも少なくないのですが、

一言一言を大切にしながらも、
ほどよく広がりのある、透明感のある歌声で、

すっと心の深いところに届いてきました。

アコースティックな編曲も心地よく、
小さな会場のライブを聴いているような
臨場感が良く出ていて、

期待通り、いやそれ以上の
贅沢な時間を送らせてもらいました。


小田さんよりも小田さんらしい、
というのは変ですが、

今しばらくは、
小田さん本人のよりも好きかもしれない。

辛島さんらしさがいっぱいの、
魅力満載のアルバムだと思います。

おすすめです。


個人的に今は、
「君住む街へ」と「たしかなこと」
の2曲が大好きです。

2013年1月3日木曜日

シュナーベルのベートーヴェン:ピアノソナタ全集 その1

オーストリア出身のピアニスト
アルトゥル・シュナーベル
(Artur Schnabel 1882.4-1951.8)が、
50歳から53歳にかけて(1932-35)録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven 1770.12-1827.3)の
ピアノソナタ全集を聴いていきます。

ベートーヴェンのピアノソナタ全集を最初に録音したのが、
シュナーベルというピアニストであったことは
以前から知っていましたが、

その演奏を聴く機会はありませんでした。


Documents から2009年に、
格安で発売された10枚組の全集(1000円台前半)を聴いたのが、
私の初シュナーベル体験だったと思います。



お昼時にBGMのつもりで
1枚ずつ流しはじめたのですが、

志ん生の落語を聴くような、
独特の雄弁な語り口にすぐに魅了されました。

少々荒っぽいところもありますが、
テクニックに欠けるわけではなく、

聴かせどころのツボを良く心得ていて、
どの曲も実におもしろく聴かせてくれました。


Documents 盤は、
針音がきれいに取り除かれていて、
1930年代の録音とは信じられないくらいなのですが、

その分、
緩徐楽章の微妙な雰囲気まで、
きれいに取り除かれているようでした。


改めてNaxos 盤を取り寄せてみると、

針音がほどほどに残されてるおかげで、
その場で弾かれているような臨場感はこちらの方が上でした。

とくに急ぐつもりはないので、今回は、
Naxos 盤を1枚ずつ聴き進めることにします。


   ***

それでは1枚目です。


ベートーヴェン・ピアノソナタ録音協会全集第1集

ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノソナタ 第1番 ヘ短調 作品2-1
ピアノソナタ 第2番 イ長調 作品2-2
ピアノソナタ 第3番 ハ長調 作品2-3

アルトゥル・シュナーベル(ピアノ)
録音:1934年4月23・24・28日〔1番〕、1933年4月9日〔2番〕、1934年4月26-27日〔3番〕、EMIアビー・ロード第3スタジオ、ロンドン
【Naxos 8.110693】

25歳のとき(1796年3月)に、
ウィーンで出版されたのが、
3曲からなる作品2のピアノソナタです。

作曲は1974-75年にかけて行われたと考えられていますので、
20代前半の作品ということになります。


私の母がピアノの先生をしていたので、
第1番は何度もくりかえし聴いた記憶があります。

ほかの2曲もこれまで何度も聴いていますが、
今回初めて、ベートーヴェンってすごい、と思いながら、
3曲を聴き通すことができました。

確かにこれは、
ハイドンやモーツァルトとは異質の音楽で、
新しい才能が瑞々しく花開いているさまを聴くことができました。


シュナーベルのベートーヴェンは、

一聴あっさりとした印象で、
細部にこだわりぬくよりは、

全体の造形をしっかり保ちつつ、
その中でほどほどに自由にふるまって、

コンサートでお客さんに実際に語りかけているような、
雄弁な演奏を聴かせています。


非常な聴かせ上手というか、
ベートーヴェンとの、非常な相性の良さを感じました。

ここふた月ほど、
ずっとこればかり聴いて来ましたので、
1月からは次の1枚にうつります。



※L.v.ベートーヴェン全作品目録(国立音楽大学 音楽研究所)
 【http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/bdb/bdb_index.html】を参照。

※ペティナ・ピアノ曲事典「ベートーヴェン」
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/61/】を参照。

※Wikipedia の「アルトゥル・シュナーベル」
 「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
 「ベートーヴェンの楽曲一覧」を参照。