2013年12月31日火曜日

柳家小三治19 落語名人会43 「文七元結」(1990.10)

十代目柳家小三治
(やなぎやこさんじ 昭和14年〔1939〕12月-)
の落語CD19枚目は、

「文七元結(ぶんしちもっとい)」を聴きました。

小三治50歳の時(1990.10)の公演です。


落語名人会43
柳家小三治19
「文七元結」

録音:1990年10月31日、鈴本演芸場
第21回柳家小三治独演会
【SRCL-3615】


「文七元結(ぶんしちもっとい)」は、

初代三遊亭圓朝
(さんゆうていえんちょう 天保10年〔1839〕-明治33年〔1900〕)
の創作による人情噺の大ネタです。

ほかをほとんど聴いていないので、
ほかと比べてどうなのかはわからないのですが、
個人的にはこれで十分満足しています。
確かにこれは、笑いあり、涙ありの、
出来過ぎなくらいに良く出来たお噺です。

人情にホロリとさせられ、
終わりは明るくはなやか気持ちにさせられるので、

初めて聴いて以来、
好きな演目の一つになっています。


最初のうち、
おしまいの締めが思ったよりあっけなかったので
あれっと思うところもあったのですが、

今では、
クライマックスに至るまでの場面場面を楽しむお噺として、
全体のバランスをうまく理解できるようになって来ました。


繰り返し聴いて、
次に何を言うのかも覚えて来ましたので、
そろそろほかの落語家さんのも聴いてみようと思っています。


※WIkipediaの「柳家小三治」「文七元結」を参照。

古今亭志ん生 名演大全集1「火焔太鼓・黄金餅・後生うなぎ」

五代目古今亭志ん生
(ここんていしんしょう 明治23年〔1890〕6月-昭和48年〔1973〕9月)
は、落語にはまったきっかけになった方です。

音質があまり良くないものもあるので、
一回聞いただけでは何と言っているのかわからないこともあるのですが、

声質が聴き取りにくいわけではないので、

とぼけた感じの声だけでもけっこう面白いですし、
しばらく聴いているうちに細部がわかって来ると、なお一層面白い。

CDもいろいろなところから出ているのですが、
こちらの「名演大全集」は出処をかなり詳しく明らかにしてくれているので、
のんびりと1枚ずつ聴いていこうと思います。


五代目古今亭志ん生 名演大全集1

1) 火焔太鼓(かえんだいこ)
 〔ニッポン放送『志ん生十八番』昭和31年9月3日放送〕
  ※リマスタリング音源

2) 黄金餅(こがねもち)
 〔ニッポン放送『演芸くらぶ』昭和34年3月2日放送〕
  ※リマスタリング音源

3) 後生うなぎ(ごしょううなぎ)
 〔ニッポン放送『演芸お好み劇場』昭和36年11月1日放送〕
  ※本シリーズ初収録音源

4) どどいつ/小唄
 〔ニッポン放送、昭和35年5月録音〕
  ※本シリーズ初収録音源

【PCCG-00693】

「火焔太鼓」(かえんだいこ)[長屋噺・滑稽噺]は、

志ん生の前座時代、初代三遊亭遊三
(さんゆうていゆうざ 天保10年〔1839〕-大正3年〔1914〕)
の口演を聴き覚え、

昭和初期に自己流に仕立て直し、
現在のかたちが出来上がったそうです。

実際、志ん生の代名詞といってよい演目なので、
このほかにも数種類耳にして来ていますが、

どれも音質は今一つで、
細部が聴き取りにくいのが残念です。

それでも、繰り返し聴くに足る魅力、
愛嬌のある可笑しさにあふれていますので、

繰り返し聴いているうちに、
自然に細部も聴き取れるようになって来ます。

志ん生66歳の時(1956.9)の録音で、
多少もたつく感もあるのですが、志ん生の日常を切り取ってある、
普段着の「火焔太鼓」だと思いました。


「黄金餅」(こがねもち)[滑稽噺・圓朝作品]は、

初代三遊亭圓朝
(さんゆうていえんちょう 天保10年〔1839〕-明治33年〔1900〕)
による新作ですが、明治期までのものは古典落語に分類されるそうです。

志ん生が「黄金餅」を演るに至る経緯は、
CD解説には見えていませんが、志ん生得意の演目のようで、
これ以外にも何種類か聴いたことがあります。

人間の醜い部分を暴いている、
グロテスクな面もある落語なのですが、

飄々とした明るさを基調とする
志ん生の語り口に、

すべてを笑い飛ばす豪快さを感じる、
志ん生ならではの口演だと思いました。

志ん生68歳の時(1959.3)の録音です。


「後生うなぎ」(ごしょううなぎ)[滑稽噺・禁演落語]は、

このCDで初めて聴きました。
軽めの楽しいお噺です。

あら筋だけ聴くと、オチが残酷なので
戦時中「禁演落語」とされていたそうですが、

冗談であることがわかっているわけですから、
これくらいなら有りなのかなと。

でも確かに、
今でも小中学生を前にして、
これを演るわけにはいかない位の危なさはあると思います。

志ん生71歳の時(1961.11)の録音です。


「どどいつ」小唄[音曲噺]については、

何も知らないので何も語れません。
風流だな、と感じる小品でありました。

志ん生69歳の時(1960.5)の録音です。


※Wikipediaの「古今亭志ん生(5代目)」「初代三遊亭遊三」「三遊亭圓朝」「火焔太鼓」「黄金餅」「後生鰻」を参照。

※CDの解説(小島貞二氏)を参照。

Sonny Rollins の 『Worktime』(1955.12)


Worktime
Sonny Rollins Quartet

1) There's No Business Like Show Business(Irving Berlin)
2) Paradox (Sonny Rollins)
3) Raincheck (Billy Strayhorn)
4) There Are Such Thing (Adams-Baer-Meyer)
5) It's Alright With Me (Cole Parter)

Sonny Rollins, tenor sax
Ray Bryant, piano
Max Roach, drums
George Morrow, bass

Recorded December 2,1955
【VICJ2052】

ソニー・ロリンズ(1930.9-)のCD、
9月末に『サキソフォン・コロッサス』について書いてから、
だいぶ時間がたってしまいました。

書く内容は決めてあったのですが、
ありがたいことに、仕事が忙しかったのです。

家に買ってあったのを何枚か聴き直してみて、
そういえばこれはとても良かったんだよな、
と思い出したのが、

25歳の時(1955.12)

ピアノにレイ・ブライアント、
ベースにジョージ・モロウ、
ドラムにマックス・ローチを迎えて収録した

アルバム『ワークタイム』です。


これはカッコイイ!

カッコ良さではアルバム『サキソフォン・コロッサス』より上です。

それも決して上っ面に終わることのない、
聴く人の心をしっかり掴んで離さない、
中身が感じられるのはロリンズならではでしょうか。


疾走感あふれる
「ショウほど素敵な商売はない」(1曲目)と
「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」(5曲目)を挟んで、

若干「セント・トーマス」に似た趣きのある
ロリンズのオリジナル曲「パラドックス」(2曲目)に、

自由な感じの「レインチェック」(3曲目)をへて、

渾身のバラード「ゼア・アー・サッチ・シングス」(4曲目)は、
聴いていて恥ずかしくなるような演歌調のところがなく、
なぜだか心洗われるような歌があふれる名演です。


『サキソフォン・コロッサス』よりも、
全体的な曲調は似ている感じがするので、
バランスの取れた1枚だと思います。

1曲目「ショウほど素敵な商売はない」と
5曲目「ゼア・アー・サッチ・シングス」が、私は特に気に入りました。

2013年12月30日月曜日

シュナーベルのベートーヴェン:ピアノソナタ全集 その4

オーストリア出身のピアニスト
アルトゥール・シュナーベル
(Artur Schnabel 1882.4-1951.8)が、
50歳から53歳にかけて(1932-35)録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven 1770.12-1827.3)の
ピアノソナタ全集の4枚目です。


ベートーヴェン・ピアノソナタ録音協会全集第4集

ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノソナタ 第11番 変ロ長調 作品22
ピアノソナタ 第12番 変イ長調 作品26《葬送》
ピアノソナタ 第13番 変ホ長調 作品27-1《幻想風》

アルトゥル・シュナーベル(ピアノ)
録音:1933年4月12・13日〔11番〕、1934年4月25-27日・5月7日〔12番〕、1932年11月1日〔13番〕、EMIアビー・ロード第3スタジオ、ロンドン
【Naxos 8.110756】


ピアノ・ソナタ第11番 変ロ長調 作品22 は、

 29歳の時(1800)に作曲され、
 31歳の時(1802.3)に出版された作品です。

ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 作品26《葬送》 は、

 30歳の時(1801.4以降)に完成され、
 31歳の時(1802.3)に出版された作品です。

ピアノ・ソナタ第13番 変ホ長調 作品27-1《幻想風》 は、

 30歳の時(1801.4以降)に完成され、
 第14番《月光》とともに作品27として、
 31歳の時(1802.3)に出版された作品です。


3曲とも同時期に完成しているだけあって、
似た雰囲気です。

はじめのころのような、
古典的なたたずまいからは相当逸脱しているのですが、
この後の《テンペスト》や《熱情》のような強烈な個性は、
まだ感じません。

元気溌剌とした青春の明るさにつらぬかれた中で、
最大限、ベートーヴェンの個性が発揮された作品であるように感じました。


さらっと聴くだけだと、
あまりピンと来ないのですが、
シュナーベルの雄弁な演奏で聴き込むと、
それぞれに独特の個性をもった名曲であることがわかって来ました。


この中で第12番《葬送》は、
ゆるやかで慈しむような出だしが心地良く、
お気に入りの1曲になりました。

第11番は、演奏効果の高い、
聴き映えのする1曲だと思いますが、
これだけが孤立して存在している感じで、
位置付けが難しいように思いました。

第13番は、
かたちがだいぶ崩れていて不思議な感じがしましたが、
第14番《月光》とセットになっていると言われたら、
わかるように思いました。



※L.v.ベートーヴェン全作品目録(国立音楽大学 音楽研究所)
 【http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/bdb/bdb_index.html】を参照。

※ペティナ・ピアノ曲事典「ベートーヴェン」
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/61/】を参照。

※Wikipedia の「アルトゥル・シュナーベル」
 「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
 「ベートーヴェンの楽曲一覧」を参照。

2013年12月10日火曜日

グルダのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1・2番(1970・71年)

オーストリアのピアニスト、
フリードリヒ・グルダ(1930.5-2000.1)が
40歳の時(1970.6/1971.4)に、

ドイツの指揮者
ホルスト・シュタイン(1928.5-2008.7)、

オーストリアのオーケストラ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とともに録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の
ピアノ協奏曲第1・2番を聴きました。


ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品19

フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ホルスト・シュタイン(指揮)

録音:1971年4月19-21日(第1番)、1970年6月9-17日(第2番)、ウィーン、ゾフィエンザール
【UCCD-7258】2013年発売

ベートーヴェンが30・31歳のときに出版された作品です。

出版順に、
 ピアノ協奏曲第1番(1801.3 出版)
 ピアノ協奏曲第2番(1801.12 出版)
とされていますが、

作曲に取りかかったのは第2番のほうが先で、
完成まで改稿を重ねたため出版が遅れたそうです。

実際、第1番のすぐ後に第2番を聴くと、
多少まとまりの悪さが感じられるのですが、

第2番→第1番の順に聴くと、
わずかですが成長の跡が感じられ、
違和感なく聴き進めることができるのに気がついたのは最近のことです。

若々しい感情がほとばしり、
聴いていて明るく元気にさせてくれる名曲だと思います。


グルダとシュタイン&ウィーン・フィルの演奏、
以前に1,000円で出たときにも購入していたのですが、

ピアノはまだしも
オケの響きが耳にうるさく、

こんな筈ではないと思って聴くのを止めておりました。

今回、リニューアル版が登場したので、
それほど期待せずに1枚聴いてみたところ、

ウィーン・フィルの有機的な響きに絡みあう
ピアノの美しい音色を隅々まで聴き取ることができ、
とても満足しました。

ジャケットは前回のと同じですが、
音質はかなり向上していると思います。


グルダの録音、これまでは
それほど共感するものに出会って来なかったのですが、

定評あるピアノ協奏曲全集で、
その実力を大いに見直すことができそうです。

自由で若々しい演奏ではありますが、
私には、ウィーンの流儀を逸脱しない範囲での、
節度ある自由が、彼の魅力であるように思いました。


※Wikipediaの「フリードリヒ・グルダ」
「ホルスト・シュタイン」
「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」
「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
「ベートーヴェンの楽曲一覧」