2014年4月29日火曜日

吉松隆作品集2/ピアノ協奏曲《メモ・フローラ》

田部京子(1967-)のピアノ、
藤岡幸夫(1962.6-)が指揮する
イギリスの室内オーケストラ
マンチェスター・カメラータの演奏で、

1998年5月録音の
「メモ・フローラ/吉松隆作品集2」を聴きました。

吉松氏45歳、
藤岡氏35歳の時の録音です。


吉松隆(1953.3-)
 ピアノ協奏曲《メモ・フローラ》Op.67(1997)*
 鳥は静かに… Op.72(1997)
 天使はまどろみながら… Op.73(1998)*
 夢色モビールⅡ Op.58a(1993/98)
 白い風景 Op.47a(1991/97)

田部京子(ピアノ)*
藤岡幸夫(指揮)
マンチェスター・カメラータ
録音:1998年5月10-11日、ニュー・ブロードキャスティング・ハウス、マンチェスター。
【CHAN 9652】

吉松隆氏の作品は、
シャンドスから一連の録音が発売された時に、
オーケストラ曲をまとめて聴いて以来、
しばらく聴いていなかったのですが、

2001年の交響曲第5番から14年をへて、
間もなく交響曲第6番のCDが出るようなので、
この機会にもう一度聴き直していこうと思います。

本当は、
交響曲第1番から順番に、
すべての交響曲を取り上げようと思っていたのですが、

最初の《カムイチカプ交響曲》は、
今ひとつまとまりに欠けている感じがして、
今回聴き直してもやっぱり良くわからなかったので、

ざっと聴き直した中から、
いちばん新鮮な印象を受けた
ピアノ協奏曲《メモ・フローラ》を取り上げます。


  ***

ピアノ協奏曲《メモ・フローラ》Op.67は、

発売当時に聴いた時、

自分がこれまで抱いていた
ピアノ協奏曲のイメージとかけ離れていたからか、
何だか良くわからないまま終わっていました。


今回改めて聴き直してみて、

《水》をモチーフとした作品なのかなと思い、

春の微風にゆれる水面など、
いろいろな水のイメージが浮かんで来るようになると、

ストンと理解できるようになりました。


その後、作者の曲目解説をみると、
春の「花(フローラ)についての覚え書(メモ)」とのこと、
さらに想像がふくらみました。

わかってみると実にユニークな、
でも叙情性にあふれた美しいピアノ協奏曲だと思えるようになりました。


実演だとさらに聴き映えそうな曲なので、
いずれ実演で聴いてみたいと思っています。


 ***

後半の4曲は、
弦楽を中心とした似た色合いの曲なので、
4曲続けて聴くと、今どれを聴いているのかわからなくなって来ます。

鳥は静かに… Op.72(1997)※弦楽のみ
天使はまどろみながら… Op.73(1998)※弦楽+ピアノ
夢色モビールⅡ Op.58a(1993/98)※弦楽+ハープ+オーボエ
白い風景 Op.47a(1991/97)※弦楽+ハープ+フルート

個人的には、
オーボエが主旋律を奏でてくれる分、
「夢色モビールⅡ」の印象が良かったですが、

1曲ずつコンサートの間奏曲やアンコールなどで取り上げたら、
まったく別の印象になる可能性が高いと思います。


※「吉松隆 交響曲工房」〈http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/〉を参照。

バルシャイ&ケルン放送響のショスタコーヴィチ:交響曲第7番《レニングラード》

ロシア出身の指揮者
ルドルフ・バルシャイ(1924.8-2010.11)が
68歳から76歳にかけて(1992.9-2000.9)、
ドイツのケルン放送交響楽団と録音した

ロシアの作曲家
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
(1906.9-1975.8)の交響曲全集
4枚目を聴きました。


ショスタコーヴィチ
交響曲 第7番 ハ長調 作品60

ケルン放送交響楽団
ルドルフ・バルシャイ(指揮)

録音:1992年9月。フィルハーモニー、ケルン
【BRILIANT 6324-4】


交響曲 第7番 ハ長調 作品60《レニングラード》 は、

ショスタコーヴィチが35歳の時(1942.3)に初演された作品です。

1941年6月、
ドイツ国防軍がソ連を侵攻し、
いわゆる独ソ戦がはじまりますが、

その戦闘の一つとして、
同年9月から900日続く レニングラード包囲戦 が行われました。

この包囲下にあるレニングラードで完成(1941.12)されたのが
交響曲第7番でした。

当初は、ファシズムに対する
社会主義の勝利を宣伝するための曲として、
政治的に利用される面もあったようです。


 ***

第7番をじっくり聴いたのは、ほぼ初めてのことです。

第5番と同じ路線にある曲で、
5番についでわかりやすい曲だと思いました。

誰にでもわかりやすく語りかけようとすることは、
それ自体別に責められるべきことではないので、

第5・7番のような曲があることはありがたいです。


今回聴いてみて、
特に驚いたのは第3楽章です。

弦楽合奏で、
強く心に響く音楽が奏でられていて、
深く感動しました。

弦楽によるレクイエムのようでした。

他の楽章は、
気をつけて演奏しないと、
軽めのわかりやすいだけの曲に感じられそうですが、

バルシャイさんの指揮は、
大げさに煽り立てて表面的な効果をねらうことはせず、

やるべきことをきちんとしながら
曲の本質をとらえていく、ずしりと聴き応えのある演奏でした。


このCDで初めて、
第7番の真価がわかりましたので、
改めてほかの演奏も聴いてみたいと思いました。


※Wikipediaの「ルドルフ・バルシャイ」「ドミートリイ・ショスタコーヴィチ」「交響曲第7番(ショスタコーヴィチ)」「独ソ戦」「レニングラード包囲戦」を参照。

2014年4月27日日曜日

横山幸雄のショパン:ピアノ独奏曲全集 その7(2011年録音)

横山幸雄(1971-)氏による

ポーランド出身の作曲家
フレデリック・フランソワ・ショパン
(1810-1849)のピアノ独奏曲全集
7枚目を聴きました。


プレイエルによる
ショパン・ピアノ独奏曲全曲集〈7〉

1) パリ時代初期の遺作のワルツ2曲
  ワルツ 変ト長調 WN42(1832)
  ワルツ 変イ長調 WN47(1835)

2) パリ時代初期の遺作の小品4曲
  カンタービレ 変ロ長調 WN43(1834)
  前奏曲 変イ長調 WN44(1834)
  ラルゴ 変ホ長調(1837)
  “春”ト短調 WN53a(1838)

3) 即興曲 第1番 変イ長調 作品29(1837)
  即興曲 嬰ハ短調 WN46
 (幻想即興曲 1834-35 作品66)

4) 4つのマズルカ 作品30(1837)
  第1番 ハ短調
  第2番 ロ短調
  第3番 変ニ長調
  第4番 嬰ハ短調

5) スケルツォ 第2番 変ロ短調 作品31(1837)

6) 24の前奏曲 作品28(1839)
  第1番 ハ長調
  第2番 イ短調
  第3番 ト長調
  第4番 ホ短調
  第5番 ニ長調
  第6番 ロ短調
  第7番 イ長調
  第8番 嬰ヘ短調
  第9番 ホ長調
  第10番 嬰ハ短調
  第11番 ロ短調
  第12番 嬰ト短調
  第13番 嬰ヘ長調
  第14番 変ホ短調
  第15番 変ニ長調「雨だれ」
  第16番 変ロ短調
  第17番 変イ長調
  第18番 ヘ短調
  第19番 変ホ長調
  第20番 ハ短調
  第21番 変ロ長調
  第22番 ト短調
  第23番 ヘ長調
  第24番 ニ短調

横山幸雄(ピアノ)
使用楽器:プレイエル(1910年製)
録音:2011年4月18・19日
上野学園 石橋メモリアルホール
【KICC-919】


CD7には、
ショパン22歳から29歳、
1832年から39年にかけて作曲された作品を収録しています。

21歳の時(1831)に
ウィーンからパリに移住し大成功をおさめた後、

呼吸器系の疾患によって、
ポーランド人貴族の娘マリアとの婚約が破棄され(1837)、

その後知り合った
フランスの女流作家ジョルジュ・サンドとの、
マジョルカ島への逃避行(1838)あたりまでの作品が収められています。


「幻想即興曲」
「スケルツォ第2番」
「24の前奏曲」など有名曲が目白押しですが、

個人的には、
1938年にパリで発見・出版された

「ラルゴ変ホ長調(1837)」

という作品を初めて聴いて、好きになりました。

1分半ほどのスケッチといっても良いくらいの小品ですが、
美しいメロディに心動かされました。


横山氏のピアノ、
全体に若々しい覇気に満ちた演奏です。

無骨というよりは
万全のテクニックによる洗練された、
ほどほどにロマンティックな表現です。


最初のワルツのみ、
ワルツらしくなくて違和感があったのですが、
あとは十分満足しました。

「スケルツォ第2番」と「24の前奏曲」の演奏が特に優れていたと思います。



※Wikipediaの「横山幸雄」「フレデリック・ショパン」「ショパンの楽曲一覧」を参照。

2014年4月23日水曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲全集 その5

久しぶりですが、
コダーイ四重奏団による

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732.3 - 1809.5)の
弦楽四重奏曲全集5枚目です。


ハイドン
弦楽四重奏曲第15番 ト長調 作品3-3〔Hob.Ⅲ-15〕
弦楽四重奏曲第16番変ロ長調作品3-4〔Hob.Ⅲ-16〕
弦楽四重奏曲第17番 ヘ長調 作品3-5〔Hob.Ⅲ-17〕
弦楽四重奏曲第18番 イ長調 作品3-6〔Hob.Ⅲ-18〕

コダーイ四重奏団
録音:2000年6月26-29日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.555704】

このCDには、
作品3の6曲から後半4曲が収録されています。


  ***

作品3の6曲は、
ハイドン45歳の時(1777)に出版されました。

ホーボーケン番号では、
Hob.Ⅲ-13~18 に分類されていますが、

これはハイドン69歳の時(1801)に、
弟子のプレイエル(1757-1831)がまとめた
最初の全集(全83曲)における通番(第13~18番)に従ったものです。


6曲まとめて、
楽章数のデータとともに掲げてみます。

 ホ長調  作品3-1〔Hob.Ⅲ-13〕※4楽章
 ハ長調  作品3-2〔Hob.Ⅲ-14〕※3楽章
 ト長調  作品3-3〔Hob.Ⅲ-15〕※4楽章
変ロ長調 作品3-4〔Hob.Ⅲ-16〕※2楽章
 ヘ長調  作品3-5〔Hob.Ⅲ-17〕※4楽章
 イ長調  作品3-6〔Hob.Ⅲ-18〕※4楽章

全体的に楽章の構成がバラバラです。

特に 作品3-4 は2楽章しかなく、
完成された作品と見なすのは難しいです。

実際聴いてみても、
明らかに曲想がバラバラですので、

6曲からなる一連の曲集として、
一気に作曲されたとは考えられません。


そこで現在の有力な学説では、

出版譜の原版(作品3-1・2)において、
作曲者「ロマン・ホフシュテッター」の名を消した跡が見つかったことから、

ハイドンではなく、
修道士ホフシュテッターの作品であろうと推測されています。


ただし耳から聴くだけで、
ハイドンの作品ではないと判断できるのかといえば、
それは少々難しいように思われます。

出版譜の原版に
「ホフシュテッター」とあったとしても、
それが実際の作曲者を示していたと本当に断言できるのか。

もう詳しい判断材料がほしいと思いました。

出版社が主導して、
ハイドンが若いころに作った
弦楽四重奏曲を6曲集めてきて、
作品3 として出版してしまったのだと言われれば、
特に違和感はないようにも思われます。


  ***

ここまでで、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲を聴き終わったことになりますので、
ざっとまとめておきます。


ハイドンの弦楽四重奏曲は、
ハイドン生前中(1801年)に
弟子のプレイエル(1757-1831)によって
計83曲が全集としてまとめられました。

このプレイエル版において、
ハイドン初期の弦楽四重奏曲は、

 ◯第 1~ 6番 作品1-1~6〔Hob.Ⅲ-1~6〕
 ◯第 7~12番 作品2-1~6〔Hob.Ⅲ-7~12〕
 ◯第13~18番 作品3-1~6〔Hob.Ⅲ-13~18〕

と整理されました。

作品1・2はハイドンが33・34歳のとき(1765・66)、
作品345歳のとき(1777)に個別に出版され、

ハイドン最晩年(1805)の「ハイドン目録」でも、
ハイドン本人が認めていた作品なのですが、

その後の研究で、

 ◎作品1-1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
 ◎作品2-1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕

の計9曲と、

 ◎5声のディヴェルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ-6〕

の1曲を合わせた計10曲のみが、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲として認められるようになりました。


  ***

コダーイ四重奏団の全集で、
作品1 から作品3 まで聴いてくると、

時々キラリと光る曲も紛れているものの、

全体として今ひとつ、
惹きつけられる魅力に乏しいように感じられました。

演奏会で全曲を取り上げる場合、
初期のものは計10曲のみに絞って取り上げるのも、
現実路線としてありだと思いました。


コダーイ四重奏団の演奏自体は、
曲の再現としてまずは申し分のない出来だったと思いますが、

初期の弦楽四重奏曲を続けて聴くのは、
少々退屈なところがありました。


次はまず作品9の6曲(第19-24番)を聴くことになりますが、

この時期からは、
ハイドン自らの意志で、
6曲ひとまとめになる曲集を作っている点、
それまでとは異なっています。

聴いてすぐにわかる違いがあるかどうか、
またじっくり聴いていこうと思います。


※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
 「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。

※JAIRO でインターネット上に公開されている
 飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
 (『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。

※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。