2014年5月31日土曜日

メータ&LAPOのチャイコフスキー:交響曲第5番(1977年録音)

インド出身の指揮者
ズービン・メータ(1936.4-)が
41歳の時(1977.8)と33歳の時(1939.8)に、

アメリカのオーケストラ
ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
を指揮して録音した

ロシアの作曲家
ピョートル・チャイコフスキー(1840.5-1893.11)の
交響曲第5番大序曲《1812年》を聴きました。


ピョートル・チャイコフスキー
1) 交響曲 第5番 ホ短調 作品64
2) 大序曲《1812年》作品49

ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
ズービン・メータ(指揮)
録音:1977年8月24・26日(1)、1969年8月15・18日(2)、ロサンゼルス、ルイス・ホール
【UCCD-7227】


交響曲 第5番 ホ短調 作品64 は、
チャイコフスキー48歳の時(1888.11)に初演された作品です。

45歳の時(1886.3)に初演された
《マンフレッド交響曲》作品58 から2年8ヶ月をへての新作交響曲ということになります。


大序曲《1812年》変ホ長調 作品49 は、
チャイコフスキー42歳の時(1882.8)に初演された作品です。

同時期の作品として、
 弦楽のためのセレナーデ ハ長調 作品48
 ピアノ三重奏曲 イ短調《偉大な芸術家の思い出のために》作品50
が発表されています。


  ***

グルダのコンチェルトで音の良さに驚いた
「DECCA The Best 1200」(2013.5発売)の中に、

メータの若い頃の録音が
まとめて再販されていることに気がつき、
1枚手にとってみました。

メータの録音は
これまで注目して来なかったのですが、

3、40代の録音に飛び切り良いものが多いことを知り、
いずれまとめて聴いてみたいと思っていました。


実際聴いてみると、
若々しく情熱的な指揮ぶりで、
オケの鳴りっぷりの良いのが印象的です。

鳴りっぷりが良いとはいっても、
無機的に、暴力的に聴こえるということはなく、

音楽的に意味のある響きがいつも保たれていて、
独特の心地よさが感じられます。


曲の解釈自体は
変にもったいをつけることのない真っ当なものなので、
その分オケがよく鳴る結果につながっているのかもしれません。

チャイ5はよく知った曲のはずですが、
見通しの良いわかりやすい指揮で感動を新たにしました。

若々しく情熱的で、
無理のない解釈に支えられたチャイコフスキーとして、
他の曲も聴いてみたくなりました。


なお大序曲《1812年》は、
これまで苦手な曲でしたが、
初めて楽しんで聴くことができました。



※Wikipediaの「ズービン・メータ」「ピョートル・チャイコフスキー」「交響曲第5番(チャイコフスキー)」「1812年(序曲)」を参照。


2014年5月26日月曜日

〔昭和の名人 古典落語名演集〕柳家小三治〈1〉船徳・野ざらし(1978年5・6月)

十代目柳家小三治(やなぎやこさんじ 1939.12-)の落語、

前回のシリーズより10年程前に集中して録音された
「昭和の名人 古典落語名演集」を聴いていきます。

1枚目には
「船徳」と「野ざらし」が収録されています。

どちらも、38歳の時(1978年5・8月)の口演なので、

29歳の時(1969年9月)に真打に昇進し、
十代目柳家小三治を襲名してから約10年後の成果ということになります。


昭和の名人
古典落語名演集
十代目柳家小三治〈一〉

1) 船徳
2) 野ざらし

録音:1978年5月16日、安田生命ホール(1)、
1978年8月26日、横浜教育文化センター(2)。
【KICH-2521】


「船徳(ふなとく)」は、
「人情噺『お初徳兵衛浮名の浅橋』の発端を
 明治の人気者初代三遊亭円遊が一席の滑稽噺とした」演目で、

「八代目桂文楽の十八番として知られる」そうです。


「野ざらし」は、
「托善という名の僧侶から咄家になった
 二代目林家正蔵の作といわれる」演目で、

「怪談噺の要素が強い落語だったのを
 初代三遊亭円遊が笑いの多い咄に改めた」そうです。

(以上、布目英一氏のCD解説参照)。


このCD、
2009年3月に発売されてすぐに購入したので、
初めて聴いてから5年ほど経つことになります。

「船徳」も「野ざらし」も、
音だけでは面白さがわかりにくい所があるので、
最初のうちは今一つよくわからなかったのですが、

動画でもたまに観る機会があって
噺の流れがつかめてくると、

音だけでも映像が浮かんで
それなりに楽しめるようになって来ました。


小三治の口演は、

声が若々しくて非常に聴き取りやすく、
早めのテンポでどんどん切り込んでいく風で、

うまさを感じさせられる落語です。


上手さが嫌味に聴こえるかもしれない
ギリギリのところで踏み止まっている印象ですが、

これだけ話せるのであれば、
まだ朴訥飄々とした語りの魅力は必要ないのかもしれません。


噺自体、
何も深刻に考える必要のない、
軽めの芸を楽しむようなお噺で、

特別好きなわけではないのですが、
それなりに楽しい時間を過ごすことができました。


どちらもまだ他の噺家さんのはあまり聴いていないので、
そろそろ聴いてみようかな、とも思っています。


※Wikipediaの「柳家小三治」を参照。

2014年5月23日金曜日

愛知県美術館の企画展「シャガール展」

5月18日(日)に、
愛知県美術館まで企画展「シャガール展」を観に行ってきました。

昨年の6月から、
 北海道立近代美術館(2013.6.29-8.25)
 宮城県美術館(9.3-10.27)
 広島県美術館(11.3-12.25)
 静岡市美術館(2014.1.2-3.30)
と全国を巡回してきて、

愛知県美術館が最後の会場です(4.17-6.8)。

企画・構成は、
「北海道立近代美術館/北海道新聞/キュレイターズ」、

愛知県会場の主催は、
「愛知県美術館/中日新聞社」となっています(図録2頁)。


ロシア出身のフランスの画家
マルク・シャガール(Marc Chagall 1887.7-1985.3)は、
個人的に大好きな画家の一人です。

彼独特の「青色」の表現に惹かれていて、
明るく暖かく、やさしい雰囲気に包まれた作品が多く、

幻想的な色調の中に、
疲れた心をやんわりと癒してくれる作用があるようです。

現代の芸術家にありがちな、

暴力的なところや、
冷たいネクラな印象がないのも好ましく、

観ていると、
絵を描くのが大好きな人なんだろうな、
と感じさせられます。


今回、
パリ・オペラ座の天井画について、
スケッチから完成に至るまでの過程を体感できたのは貴重な体験でした。

オペラ座の完成された作品は、
大きすぎて何とも評価しかねるのですが、

絵画としてほどよい大きさの

「オペラ座天井画のための最終下絵」【図録42・43頁 1-005・006】
「オペラ座天井画のための下絵」【図録50・51頁 1-014・015】

には感銘を受けました。


  ***

版画集『ダフニスとクロエ』は、
【図録71-81頁 1-032~073】
これまでも何度か目にしているはずですが、
美しい幻想的な色彩にうっとり。

もともとは2世紀末に、
古代ギリシャの詩人ロンゴスによって、
古代ギリシャ語で書かれた恋愛物語です。

1912年に、
ラヴェルのバレエ音楽《ダフニスとクロエ》が初演され、

1958・59年にバレエが再演される際、
シャガールが舞台装置と衣装の制作を担当しました。

そのしばらく前から、
シャガールは《ダフニスとクロエ》の挿絵制作の以来を受けており、

1961年に、
シャガールの版画集《ダフニスとクロエ》として出版されました。
(以上、図録70・83頁参照)

こんな時代関係は今回初めて知ったので、
改めてラヴェルの《ダフニスとクロエ》に興味が出て来ました。
近々聴き直してみようと思います。


  ***

他にも《火の鳥》や《魔笛》の演出にも関わっていたことや、

宗教(ユダヤ教)をモチーフにした絵画もたくさん描いていたことは、
今回初めて知りましたが、

どの作品も観ても、
すぐにああシャガールだ!とわかる、
暖かさやユーモアが感じられました。

ただし宗教をモチーフにした作品は、
その宗教の当事者にとって大いに意味があるでしょうが、
部外者からみるとそれほど面白いものではありませんでした。


この展示会で、
個人的に一番大きく心動かされたのは、
そうした大きなモチーフに基づく作品ではなく、

花瓶に生けられた花々を描いた

「サン=ポールのアトリエ」【図録305頁 3-007】

でした。何よりパッと観、
明るく華やかな印象なのですが、

シャガールの特徴である「青」よりも、
「白」をうまく使っていて、

全体として洗練された穏やかな印象を受けました。


もう一つ、
「青」を基調とする中で、
静かで穏やかな暖かい雰囲気を醸し出している

「花」【図録297頁 3-011】

も気に入りました。

シャガールの描く静物も、
独特の味わいがあることを発見できました。


思いのほか楽しい時間が過ごせましたので、
次は名古屋ボストン美術館の「ミレー展」に足を運びたいなと思っています。


※今回の展覧会図録『Nouveaux regards sur Marc Chagall』を参照。

※Wikipediaの「マルク・シャガール」「ダフニスとクロエ(ロンゴス)」「ダフニスとクロエ(ラヴェル)」を参照。

2014年5月10日土曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その6

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )の
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集

6枚目は、
ウィーン原典版(旧版)の通し番号で、
第36-41番のソナタ6曲を聴きました。


フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
 1) ピアノ・ソナタ 第36番 ハ長調 作品13-1 Hob.XVI:21
 2) ピアノ・ソナタ 第37番 ホ長調 作品13-2 Hob.XVI:22
 3) ピアノ・ソナタ 第38番 ヘ長調 作品13-3 Hob.XVI:23
 4) ピアノ・ソナタ 第39番 ニ長調 作品13-4 Hob.XVI:24
 5) ピアノ・ソナタ 第40番変ホ長調作品13-5 Hob.XVI:25
 6) ピアノ・ソナタ 第41番 イ長調 作品13-6 Hob.XVI:26

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1993年5月5-9日、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553127】

1773年に作曲、翌1774年に出版され、
ニコラウス・エステルハージ伯爵に献呈された
全6曲からなるクラーヴィア・ソナタ集です。

ハイドン41歳の時に
初めて出版されたクラーヴィア・ソナタ集として、

生前に作品13の作品番号が付されており、
素性のはっきりした6曲となっております。


聴いてみると、

初期の頃のように軽過ぎたり、
あっさりし過ぎたりする感じはないものの、

変に重々しいわけでもなく、
ほどほどに溌剌とした心地良い音楽が流れていきます。

時折りハッと耳をそばだたせるような
美しいメロディがすっと通りすぎていくので、

勉強しながら、
仕事しながら聴くのにちょうど良い感じでした。

心が暗く落ち込みがちな時に、
明るく穏やかな、明るい気持ちにさせられる作品でした。


続けて聴くと今一つ、
曲の切れ目がわからなくなるところもあるのですが、

40代になって初めて出版された
クラーヴィア・ソナタ集として、
それなりに楽しむことができました。



※Wikipediaの
 「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンのピアノソナタ一覧」
 「ハイドンのピアノ曲一覧」
 「ホーボーケン番号」の各項目を参照。

※ピティナ・ピアノ曲事典の「ハイドン」を参照。

※ハイドン研究室「クラヴィア・ソナタの部屋」を参照。

2014年5月2日金曜日

ルイサダのショパン:マズルカ集(全41曲 2008年録音)

チュニジア出身のピアニスト
ジャン=マルク・ルイサダ(1958.6-)が、
50歳の時(2008.10)に録音した

ポーランドの作曲家
フレデリック・ショパン(1810.3-1849.10)の
マズルカ集(41曲)を聴きました。


フレデリック・ショパン
41のマズルカ

Disc1
4つのマズルカ 作品6【1833年出版】※23歳
 第1番 嬰ヘ短調 作品6-1
 第2番 嬰ハ短調 作品6-2
 第3番  ホ長調  作品6-3
 第4番 変ホ短調 作品6-4

5つのマズルカ 作品7【1833年出版】
 第5番 変ロ長調 作品7-1
 第6番  イ短調  作品7-2
 第7番  ヘ短調  作品7-3
 第8番 変イ長調 作品7-4
 第9番  ハ長調  作品7-5

4つのマズルカ 作品17【1834年出版】※24歳
 第10番 変ロ長調 作品17-1
 第11番  ホ短調  作品17-2
 第12番 変イ長調 作品17-3
 第13番  イ短調  作品17-4

4つのマズルカ 作品24【1836年出版】※26歳
 第14番  ト短調  作品24-1
 第15番  ハ長調  作品24-2
 第16番 変イ長調 作品24-3
 第17番 変ロ短調 作品24-4

4つのマズルカ 作品30【1837年出版】※27歳
 第18番  ハ短調  作品30-1
 第19番  ロ短調  作品30-2
 第20番 変ニ長調 作品30-3
 第21番 嬰ハ短調 作品30-4

Disc2
4つのマズルカ 作品33【1838年出版】※28歳
 第22番 嬰ト短調 作品33-1
 第23番  ニ長調  作品33-2
 第24番  ハ長調  作品33-3
 第25番  ロ短調  作品33-4

4つのマズルカ 作品41【1840年出版】※30歳
 第27番  ホ短調 作品41-2
 第28番  ロ短調 作品41-3
 第29番 変イ長調 作品41-4
 第26番 嬰ハ短調 作品41-1

3つのマズルカ 作品50【1842年出版】※32歳
 第30番  ト長調  作品50-1
 第31番 変イ長調 作品50-2
 第32番 嬰ハ短調 作品50-3

3つのマズルカ 作品56【1844年出版】※34歳
 第33番 ロ長調 作品56-1
 第34番 ハ長調 作品56-2
 第35番 ハ短調 作品56-3

3つのマズルカ 作品59【1845年出版】※35歳
 第36番  イ短調  作品59-1
 第37番 変イ長調 作品59-2
 第38番 嬰ヘ短調 作品59-3

3つのマズルカ 作品63【1847年出版】※37歳
 第39番  ロ長調  作品63-1
 第40番  ヘ短調  作品63-2
 第41番 嬰ハ短調 作品63-3

ジャン=マルク・ルイサダ(ピアノ)

録音:2008年10月20-23日、軽井沢 大賀ホール
【SONY MUSIC 8-86976-86922】


マズルカ集は、
数分で終わる小品が40数曲も続いていくので、

続けて聴いていると
だんだん何番が演奏されているのか
わからなくなってしまいますので、

まだ曲の全体像が良くつかめていません。


ルイサダのCDは、
彼独特の解釈がそこら中に聴かれて、

オーソドックスなマズルカ集とは
ずいぶん違っているのですが、

50歳を過ぎての2度目の録音だからか、
程良くこなれていて不思議と違和感がなく、

楽しみながら飽きずに、
全体を聴き通すことができました。

楽譜をこねくり回した挙句、
程々のところに落ちついた演奏といえるでしょうか。

マズルカの伝統的なリズムに則った演奏
とも違っているように感じます。

あえて言うなら、
フランス風の自由なショパン?


誰にでも受け入れられやすい
普遍的なショパンとは違いますが、

聴いてみると
意外にあっさりした印象で、
おもしろく全曲を聴き通せるので、

たまに取り出して繰り返し聴いているCDです。


ルイサダは32-33歳の時(1990-91)にも
マズルカ集(全49曲)を録音しているので、
いずれそちらも聴いてみたいと思っています。


※Wikipediaの「ジャン=マルク・ルイサダ」「フレデリック・ショパン」「マズルカ(ショパン)」を参照。