2014年10月31日金曜日

シフのバッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻(1984年録音)

ハンガリー出身のピアニスト
アンドラーシュ・シフ(1953.12-)の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685.3-1750.7)の
平均律クラヴィーア曲集第1巻を聴きました。

シフ30歳の時(1984.9)の録音です。


J.S.バッハ(1685-1750)
平均律クラヴィーア曲集 第1巻 BWV.846-869

  第1番 ハ長調 BWV.846
  第2番 ハ短調 BWV.847
  第3番嬰ハ長調BWV.848
  第4番嬰ハ短調BWV.849
  第5番 ニ長調 BWV.850
  第6番 ニ短調 BWV.851
  第7番変ホ長調BWV.852
  第8番変ホ短調BWV.853
  第9番 ホ長調 BWV.854
 第10番 ホ短調 BWV.855
 第11番 ヘ長調 BWV.856
 第12番 ヘ短調 BWV.857
 第13番嬰ヘ長調BWV.858
 第14番嬰ヘ短調BWV.859
 第15番 ト長調 BWV.860
 第16番 ト短調 BWV.861
 第17番変イ長調BWV.862
 第18番嬰ト短調BWV.863
 第19番 イ長調 BWV.864
 第20番 イ短調 BWV.865
 第21番変ロ長調BWV.866
 第22番変ロ短調BWV.867
 第23番 ロ長調 BWV.868
 第24番 ロ短調 BWV.869

アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
録音:1984年9月、ロンドン
【UCCD-5567/8】2014年5月発売


平均律クラヴィーア曲集 第1巻 BWV.846-869 は、

バッハ37歳の時(1722)に完成された作品です。
自筆譜が残されています。

先月聴いていた
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
の2年後の作品ということになります。


シフのバッハ、
旧録音のほうから順に聴いていますが、

一番のお気に入りは「フランス組曲」で、
次点が「イギリス組曲」でした。

「パルティータ集」のみ、
ハイドシェックの印象が強すぎたのか
パッとしない印象でした。


シフの「平均律」は今回初めて聴きました。

とても叙情的な、歌にあふれた美しいバッハで、
シューベルトを聴くような心地で聴き通すことができました。

最初のうち、
訴えかける力が多少弱いように感じられたのですが、

叙情的な側面から切り開いた
歌うバッハとして、
だんだん惹き込まれていきました。


以前このブログで取り上げた
アファナシエフの「平均律」が、
均質なタッチでがっちり構成された印象を受けたのに対し、
より自由な歌心にあふれた印象を受けました。

バッハの音楽の美しさを十分に満喫できる録音だと思います。

まだ聴いていませんが、
まだそれほど強い印象のない「平均律第2巻」も楽しみです。


あと1点、
シフのシューベルト、
ぜひ聴いてみたくなりました。

バッハ以上に合っていそうな気がします。



※Wikipediaの「シフ・アンドラーシュ」を参照。

鈴木秀美&OLCのハイドン:交響曲第43番ほか〔2002年5月録音〕

日本の指揮者、チェリスト
鈴木秀美(すずきひでみ 1957-)の指揮する

オーケストラ・リベラ・クラシカの演奏で、
 C・P・E・バッハのシンフォニア
 ハイドンの交響曲第43番「マーキュリー」
 モーツァルトの交響曲第29番
を聴きました。

鈴木秀美45歳の時(2002)の録音です。


C.P.E.バッハ(1714-88)
 弦楽器のためのシンフォニア ハ長調 Wq.182/3(1773)

J.ハイドン(1732-1809)
 交響曲第43番 変ホ長調 Hob.I-43「マーキュリー」(-1772)

W.A.モーツァルト(1756-91)
 交響曲第29番 イ長調 K.201(186a)(1774)

P.ファン・マルデレ(1729-68)
 シンフォニア 作品5/第6番 ニ長調より第1楽章(1768)

オーケストラ・リベラ・クラシカ
鈴木秀美 指揮
収録:2002年5月17日、東京・浜離宮朝日ホール
【TDK-AD001】


鈴木氏が音楽監督を務める
オーケストラ・リベラ・クラシカは、

平成14年(2002)5月15日に高山、
17日に東京の浜離宮朝日ホールで旗揚げ公演が行われました。

その時の東京公演を収録したのがこのCDです。



ドイツの作曲家
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714.3-1788.12)は、
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685.3-1850.7)の次男です。

弦楽のためのシンフォニア ハ長調 Wq.182-3

は、CPE59歳の時(1773)に作曲された、
6曲からなる「弦楽のためのシンフォニア」中の1曲です。

ほぼ初めて聴く曲です。

CPEの音楽は、奇をてらうというか、
内面的というよりも外面的な効果をねらったところがあって、
それほど好きな作曲家ではないのですが、

今回の演奏は、
何よりオケの響きが耳に心地良く、
リズムもきびきびハッキリと刻まれていて、
これなら聴ける!と思いました。


オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732.3-1809.5)の

交響曲第43番 変ホ長調 Hob.I-43《マーキュリー

は、作曲者39歳の頃(1771前後)に作曲されました。

ハイドンはC.P.E.バッハより、
はるかに落ちついた感じに聴こえるのですが、

音楽史上はハイドンのほうが18歳若く、
CPEの影響をハイドンが受けていることになるようです。

初めて聴いたので、
最初のうちは一番影が薄かったのですが、

聴きこんでくると、
逆に全体のバランスの良さ、
内容の充実さは一番だと思うようになりました。


  ***

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の

交響曲第29番 イ長調 K.201(186a)

は、作曲者18歳の時(1774.4)に完成された作品です。

モーツァルトは17-18歳の2年間(1773-74)で、
計9曲の交響曲(第22-30番)を作曲しています。

29番は後期の6大交響曲をのぞけば、
わりと演奏される機会のある作品で、
時折耳にしてきました。

後期の充実度からすると、
肩透かしにあった感じもする
軽めの1曲ですが、

これはこれで耳に馴染んでくると、
おっとりとした雰囲気の典雅な名曲だと思えます。

このCDは、
快速テンポで一気に駆け抜ける第3楽章が特徴的ですが、
よくこなれているので違和感なく楽しめました。

ハイドン的な雰囲気のなかに、
モーツァルトの感性が刻み込まれた1曲でした。


コンサート当日アンコールとして演奏された

ベルギー(ブリュッセル)生まれの作曲家
ピエール・ファン・マルデレ(1729.10-1768.11)の

 シンフォニア 作品5/第6番 ニ長調より第1楽章(1768)

は初めて効きました。

ハイドンより2歳半ほど年上で、
ほぼ同じ年代の人ですが、39歳で若くして亡くなっています。
マルデレが亡くなる年に完成された作品のようです。

この1楽章だけでは何とも言えませんが、
モーツァルトが第29番を作曲する際に参考にしたそうです。

そう言われてみれば、
何となくそんな気もする程度ですが、
ほかの作品も聴いてみたくなりました。


  ***

このCD、
1770年代前半に作曲された作品が並べてありますが、

年齢的には、
 C.P.E.バッハ59歳、
 ハイドン39歳、
 モーツァルト18歳
と20歳ずつ若返っているので、
おもしろい趣向だなと思いました。


鈴木秀美氏の指揮は、
アーノンクールのように
持ってまわったところのない素直な音楽。

ブリュッヘンのように、
ロマン的な味の濃いところとも決別していて
清楚な純度の高い音楽。

リズムのきびきびしたところも良く、
明るく爽やかな印象も受けました。

ハイドンには特に合っていると思います。


※Wikipediaの「カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ」「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」「Pierre van Maldere」を参照。

2014年10月27日月曜日

ウィーン室内合奏団のモーツァルト:ディヴェルティメント第15番(1992年録音)

オーストリアのザルツブルク生まれの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ディヴェルティメント第15番を、

ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めた
ユーゴスラヴィア生まれのヴァイオリニスト、
ゲルハルト・ヘッツェル(1940.4-1992.7)率いる
ウィーン室内合奏団の演奏で聴きました。


モーツァルト
1) ディヴェルティメント(第15番)変ロ長調 K.287(271H)
  (“第2ロドゥロン・ナハトムジーク”)
2) 音楽の冗談 ヘ長調 K.522

ウィーン室内合奏団
 ゲルハルト・ヘッツェル(第1ヴァイオリン)
 ヨーゼフ・ヘル(第2ヴァイオリン)
 ハット・バイエルレ(ヴィオラ)
 アーダルベルト・スコチッチ(チェロ)
 ヘルベルト・マイヤー(コントラバス)
 フランツ・ゼルナー(ホルン)
 フォルカー・アルトマン(ホルン)

録音:1992年4月4-9日、ウィーン、カジノ・ツェーガーニッツ
【COCO-73010】

ディヴェルティメント 変ロ長調 K.287(281H) は、

20歳の時(1776.6)に
エルンスト・ロドゥロン伯爵夫人の
聖命祝日のために作曲されたことが明らかな作品です。

「第2ロドゥロン・ナハトムジーク」と呼ばれることもあります。

音楽の冗談 K.522 は、
モーツァルト31歳の時(1787.6)に完成された作品です。

(竹内ふみ子氏のCD解説を参照。)


  ***

どちらも初めて聴きました。
「第2ロドゥロン・ナハトムジーク」は、

明るく典雅な雰囲気をたたえた可憐な作品で、

聴けば聴くほど味わいが増す、
よく練られた佳曲でした。

仕事や勉強をしながら聴くのにもってこい、
というと怒られてしまうかもしれませんが、

仕事をしながらくり返し聴くほどに、
よくできた曲であることが伝わってきました。

恐らくほかと聴き比べたほうが、
良さがわかってくると思うので、

ほかの演奏も探して聴いてみようと思います。


ヘッツェルさんのヴァイオリンは、
室内楽のときは絶対に出しゃばろうとしないので、

これだけ聴いていると、
何も自己主張していないようにすら聴こえるのですが、

楽譜を深く読み込んで、

作曲家の意図を
音楽的に再現することにのみ集中している
「我」を排した音楽は、

聴き込むほどに味わい深く、
一つの理想的なかたちを実現していると思いました。


「音楽の冗談」は初めて耳にしました。
これは演奏を云々する以前に、曲が今ひとつ。

数回聴けば十分です。

2014年10月25日土曜日

名古屋ボストン美術館の「ボストン美術館 ミレー展」

もう2ヶ月以上たってしまいましたが、

お盆休み中の8月14日(木)に、
名古屋ボストン美術館まで、

「開館15周年記念
 ボストン美術館
 ミレー展~バルビゾン村とフォンテーヌブローの村から」

を観に行ってきました。

 高知県立美術館   〔2014年2月2日-4月6日〕
 名古屋ボストン美術館〔4月19日-8月31日
 三菱一号館美術館  〔10月17日-2015年1月12日〕

の3箇所で開催され、名古屋会場の主催は、

 ボストン美術館
 名古屋ボストン美術館
 中日新聞社

となっていました(図録参照)。

ミレーにはこれまで強い印象がなかったのですが、
まとめて観られる機会はあまりないので足を運びました。


  ***

フランスの画家
ジャン=フランソワ・ミレー(1814.10-1875.1)
とともに、

パリ郊外、
フォンテーヌブローの森のはずれにある
バルビゾン村に定住した「バルビゾン派」の画家たちも
展示してありました。

ミレーの作品が25点。
ほかの画家19人の作品が17点です。

作品数の多い順に整理しておきます。
(展示会図録参照。)

▼25点〔1名〕
・ジャン=フランソワ・ミレー(1814.10-1875.1)
 【図録1-4,21,22,28,31-35,38,40,44-52,55,56】


▼6点〔1名〕
・ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
 【図録5,6,18,20,23,37】(1796.7-1875.2)


▼5点〔2名〕
・ナルシス・ヴィルジル・ディアズ・ド・ラ・ペーニャ
 【図録12-15,19】(1807.8-1876.11)

・エミール・シャルル・ランビネ
 【図録16,29,30,41,42】(1815.1-1877)


▼3点〔2名〕
・コンスタン・トロワイヨン
 【図録11,39,43】(1810.8-1865.3)

・ジュリアン・デュプレ
 【図録60-62】(1851.3-1910)


▼2点〔3名〕
・テオドール・ルソー
 【図録8,24】(1812.4-1867.12)

・ヨーゼフ・イスラエルス
 【図録53,54】(1824.1-1911.8)

・レオン=オーギュスタン・レルミット
 【図録58,87】(1844.7-1925.7)


▼1点〔11名〕
・カール・ボドメル
 【図録7】(1809.2-1893.10)

・ウジェーヌ・シセリ
 【図録9】(1813.1-1890.4)

・シャルル=エミール・ジャック
 【図録59】(1813.5-1894.5)

・アントワーヌ・シャントルイユ
 【図録27】(1814.5-1873.8)

・フランソワ・ルイ・フランセ
 【図録17】(1814.11-1897.5)

・シャルル=フランソワ・ドービニ
 【図録25】(1817.2-1878.2)

・ギュスターヴ・クールベ
 【図録10】(1819.6-1877.12)

・アンリ=ジョゼフ・アルビニー
 【図録64】(1819.7-1916.8)

・セザール・ド・コック
 【図録63】(1823-1904.7)

・アントン・マウフェ
 【図録36】(1838.9-1888.2)

・クロード・モネ
 【図録26】(1840.11-1926.12)


1830年代から70年代くらいまでの作品に、
ミレー没後の80・90年代の作品も数点ずつ。

同年代の画家を並べてみると、
似たテーマ、構図の絵がいろいろあって興味深かったのですが、

そうした中でもミレーの絵は、
人物の描き方に特徴があることはよくわかりました。

それほど写実的ではないのですが、

じっと観ていると
どの人物も今にも動き出しそうな
独特の雰囲気をそなえていました。


でもミレーが好きかと問われれば、
私の好みからはズレていて、
それほど好きではないと答えます。

人物のとらえ方に感銘は受けましたが、
特別な感動を受ける絵はありませんでした。


それでもミレーについて、

「写実主義を確立し、近代絵画への先駆者とされて」いて、

「田園で働く農民の姿や身近な情景、自然の様子を
 畏敬の念を込めて描き取った」画家であり、

「それまで美術の対象とは見なされなかった
 農民の地道な日々の営みを、
 荘厳な芸術に高めた画期的な試みにより、
 ミレーは西洋絵画史に大きな足跡を残し」た

という通説的評価を、
自分の目で確認できたことは大きな収穫でした。
(『展覧会図録』ごあいさつ、参照)


  ***

純粋に作品だけをみると、

風景画では、

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
《ブリュノワの牧草地の思い出》【図録18】

ウジェーヌ・シセリ
《ゴルジュ・オ・ルー(オオカミ渓谷)を行く画家、
 フォンテーヌブローの森》【図録9】

フランソワ・ルイ・フランセ
《プロンビエール近くの小川》【図録17】

の3点を気に入りました。

自分の好みに合っただけなので、
芸術的な評価とは一致しないかもしれません。

コローはこれまでも
同じような風景画を観ていますが、
今回初めて良さがわかったような気がしました。

シセリとフランセは
これまでに観ていたか記憶にないのですが、

この2点は、絵の繊細さと、
暗い森のなかから明るい光を求めていく感じが、
良いバランスで実現されているようで、
好ましく思われました。


人物画では、

ヨーゼフ・イスラエルス
《病みあがりの母と子ども》【図録53】
《別離の前日》【図録54】

の2点が強く印象に残りました。

哀しみの一場面を切り出してみせた
写実的な訴えかける力のある絵でした。

ほかと作風が違っていたからか、
イスラエルスの絵だけが、
圧倒的なオーラを放っているように感じました。

イスラエルスはこれまで知らなかったので、
今後注目していきたいと思います。


人と動物を描いた作品では、

アントン・マウフェ
《田舎道の荷馬車屋》【図録36】

ジュリアン・デュプレ
《牛に水を飲ませる娘》【図録60】
《ガチョウに餌をやる子どもたち》【図録61】

の3点を気に入りました。

アントン・マウフェはこれまで注目していませんでした。
デュプレの明るい色調はミレーより好きです。



※今回の展覧会図録『ボストン美術館 ミレー展』を参照。
※Wikipediaの「ジャン=フランソワ・ミレー」を参照。

2014年10月22日水曜日

コダーイ四重奏団のハイドン:弦楽四重奏曲全集 その6

ハンガリーの弦楽四重奏団
コダーイ四重奏団(1966-)による

オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732.3 - 1809.5)の
弦楽四重奏曲全集6枚目です。


ハイドン
弦楽四重奏曲第20番変ホ長調作品9-2〔Hob.Ⅲ-20〕
弦楽四重奏曲第23番変ロ長調作品9-5〔Hob.Ⅲ-23〕
弦楽四重奏曲第24番 イ長調  作品9-6〔Hob.Ⅲ-24〕

コダーイ四重奏団
録音:1993年1月28-30日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550787】

このCDには、
作品9の6曲中3曲が収録されています。

作品9は、
ハイドン38歳の頃(1770頃)に作曲されました

ホーボーケン番号では、
Hob.Ⅲ-19~24 に分類されています。

これはハイドン69歳の時(1801)に、
弟子のプレイエル(1757-1831)がまとめた
最初の全集(全83曲)における通番(第19~24番)に従ったものです。

なおこのCDの裏面には、
 No.14 Op.9, No.2
 No.15 Op.9, No.5
 No.16 Op.9, No.6
という独自の通番がふられていますが、根拠が不明なので、
このブログではふだん使われている通番に訂正しました。


  ***

さて、
初期の作品1から作品3の18曲を聴いたあと、

改めて作品9を聴いてみると、
明らかに作風が変わって来ていることに気がつかされます。

これまでも、
キラリと光るところはたくさんあったのですが、
全体的なまとまりが今一つだったり、

聴いていて若干たいくつに感じられる曲も
少なからず混じっていました。

でも作品9になると、
習作的なところがなくなって、
一つ上のレベルの完成された作品として楽しむことができました。


初期の四重奏曲からは
10年近く時間をおいてから取り組まれているので、
その分、作品の深まりをみせているのでしょう。

なお、
初期の弦楽四重奏曲が作られてから
作品9が生まれるまでに(1765-68頃)、

バリトン三重奏曲を70曲以上も作っているので、
その経験も生かされたのかもしれません。


コダーイ四重奏団の演奏、

技術的に申し分のないのは当然として、
晴朗な清々しい印象がハイドンにぴったりで、

秋雨の午後の憂鬱さを
晴やかな空間で満たしてくれました。

耳障りなところのない、
変に力んだところのない演奏ですが、

さらさらと上っ面を流れてしまうわけでもなく、

中身のある充実した音楽で、
聴く人の心を明るく持ち上げてくれて、

ハイドンの魅力を満喫することができました。



※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」の各項目を参照。

※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。

※現代音楽作曲家・福田陽氏の
 「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。