2014年12月30日火曜日

ガンゼンハウザー&スロヴァキア放送響のサン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》(1988年録音)

1枚500円ほどで買える
エイベックス・クラシックスの
ベスト・オブ・クラシックスからもう1枚、

アメリカの指揮者
スティーヴン・ガンゼンハウザー(1942.4-)の指揮する

スロヴァキアのオーケストラ
スロヴァキア放送ブラティスラヴァ交響楽団の演奏で、

フランスの作曲家
カミーユ・サン=サーンス(1835.10-1921.12)の
交響曲第3番《オルガン付き》を聴きました。

サン=サーンス50歳の時(1886.5)に初演された作品を、
ガンゼンハウザー46歳の時(1988.6)に録音しています。


サン=サーンス
1) 交響曲第3番ハ短調作品78《オルガン付き》
2) 前奏曲とフーガ 変ホ長調 作品99の3

イムリヒ・サボー(オルガン 1)
スティーヴン・ガンゼンハウザー(指揮)
スロヴァキア放送ブラティスラヴァ交響楽団
ロバート・デルキャンプ(オルガン 2)
録音:1988年6月 ブラティスラヴァ、スロヴァキア放送コンサートホール(1)、
2003年6月 ルクセンブルク、デュードゥランジュ、聖マルティノン教会(2)
【AVCL-25628】

ガンゼンハウザーの指揮、

中堅どころのオケを相手に、

スコアを良く読み込んで、
聴かせどころのつぼを良く心得た、

思いのほか満足度の高い演奏を聴かせてくれました。


オーソドックスなスタイルを基調としつつも、
ところどころ解釈に個性的なところがあって、

共感度が高いオケとともに、
手に汗握る熱演が繰り広げられており、

ライブで聴けたら大満足なレベルの演奏でした。

オケの技量的にはあと一息の感じもありますが、
オルガンと合わせて程よいバランスで聴きやすく仕上げているので、

《オルガン付き》の名演としてふつうにお勧めできます。


もう一曲のオルガン独奏曲は、
初めて聴きました。

予想外の名曲で、
芸術的に交響曲よりも、
深い世界が描かれているように感じました。

サン=サーンスのオルガン独奏曲は、
これまでまったく注目して来なかったので、

今後ぜひ注目していきたいと思いました。


2014年12月28日日曜日

ミュラー=ブリュール&ケルン室内管弦楽団のバッハ:ブランデンブルク協奏曲(1999年録音)

エイベックス・クラシックスの
ベスト・オブ・クラシックスというシリーズ。

1枚500円ほどで買えるのですが、

ナクソスの少し前の録音を
安値で販売していることに気がつきました。

7年も前に発売されているので今更かもしれませんが、

近くのHMVにすべて揃っていましたので、
気になるのをいくつか聴いてみようと思います。


まず指揮者の才能に驚いたのが、

ドイツの指揮者
ヘルムート・ミュラー=ブリュール(1933.6-2012.1)です。

彼の指揮する
ドイツの室内オーケストラ
ケルン室内管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685.3-1750.7)の
ブランデンブルク協奏曲 BWV1046-51を聴きました。

バッハ36歳の時(1721.5)に完成された作品。

ミュラー=ブリュール65歳の時(1999.3-4)の録音です。


ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
ブランデンブルク協奏曲第1番 ヘ長調 BWV1046
ブランデンブルク協奏曲第2番 ヘ長調 BWV1047
ブランデンブルク協奏曲第3番 ト長調 BWV1048
ブランデンブルク協奏曲第4番 ヘ長調 BWV1046
ブランデンブルク協奏曲第5番 ヘ長調 BWV1047
ブランデンブルク協奏曲第6番 ト長調 BWV1048

ヘルムート・ミュラー=ブリュール指揮
ケルン室内管弦楽団
録音:1999年3-4月 ケルン、ドイツ放送局スタジオ
【AVCL-25658/9】2007年12月発売

ヘンリー・ミュラー=ブリュールさんのバッハ、

ノンビブラートのザックリした軽めの明るい響きに、
速めのテンポで颯爽と駆け抜けていく快演です。

現代楽器に古楽器奏法を取り入れているようで、
ふつうと違う斬新な響きに耳を奪われました。

ただしアーノンクールほど
常識を逸脱した感じはなく、

安心して身を任せられる範囲で、
新しさを模索した演奏といえるかもしれません。

後半の3曲は、
全体的にテンポが少し早過ぎるようにも思いましたが、
その分飽きずに一気に聴き通せたことも確かです。

個人的にベストのボッセ盤には多少劣りますが、

ブランデンブルク協奏曲の魅力を十分に引き出した
名演の一つだと思います。



ヘンリー・ミュラー=ブリュールさん、
残念ながらもう亡くなられていますが、

手兵のケルン室内管弦楽団とともに、

ナクソスに、
バッハとモーツァルトとハイドンを

たくさん録音していますので、
時期をみてまとめて聴いていきたいと思います。


2014年12月23日火曜日

ロジェのドビュッシー:ピアノ名曲集(1977-79年録音)

フランスの作曲家
クロード・ドビュッシー(1862.8-1918.3)の

 ベルガマスク組曲(1890 改訂1905)
 組曲《子供の領分》(1908)
 前奏曲第1巻(1909-1910)

を、

フランスのピアニスト
パスカル・ロジェ(1951.4-)の演奏で聴きました。

ロジェ26-28歳(1977-79)の時の録音です。


ドビュッシー
1) ベルガマスク組曲(1890 改訂1905)
2) 組曲《子供の領分》(1908)
3) 前奏曲第1巻(1909-1910)

パスカル・ロジェ(ピアノ)

録音:1977年5月20-23日 ロンドン、キングズウェイ・ホール(1)、1979年9月17-20日 プリストル、セントジョージ教会(2)、1978年11月13-16日 ロンドン、ロスリン・ヒル・チャベル(3)
【UCCD-7281】2013年5月発売

ベルガマスク組曲は、
1890年から91年にかけて作曲され、
改訂の後、43歳の時(1905)に出版されました。

組曲《子供の領分》は、
1906年から8年にかけて作曲され、
45歳の時(1908.7)に出版されました。

前奏曲第1巻は、
1909年から10年にかけて作曲され、
47歳の時(1910.5)に出版されました。


  ***

ドビュッシーには前から興味はあったのですが、

日ごろドイツ音楽中心に聴いてきたからか、
いいなと思える録音になかなか出会えませんでした。

今回、
偶然購入したロジェさんの演奏、

ほどほどに切れの良いリズム感のなかに、
印象派の絵画のような淡い彩りで
美しく楽しい歌があふれていて、

何の違和感もなく、
すっとドビュッシーの音楽に入り込むことができました。

ドビュッシーの音楽は、
これまで独特の和声にばかり注目していたのですが、
リズムの切れもそれなりに重要なんだと実感しました。

まだまだ一つ一つの曲について
深く理解するところにはたどり着いていませんが、

このCDはドビュッシーを理解していく上での
良いきっかけになったと思います。

ロジェさんのドビュッシー、
この時期に選集としてCDもう1枚分録音されているので、
近々そちらも手に入れて聴いてみます。

なお最近、
改めて全集を録音されているようです。
そちらもいずれ聴くことになるでしょう。


ちなみに同じシリーズで、
ラヴェルの名曲集が出ていましたが、
こちらはどこが良いのかわからぬままでした。

ロジェさんの演奏は、
ドビュッシーと同レベルの優れたものだと思いますが、

まだ曲の聴きどころがピンと来ない感じです。


Wikipediaの「クロード・ドビュッシー」「ベルガマスク組曲」「子供の領分」「前奏曲(ドビュッシー)」を参照。

2014年12月7日日曜日

北原幸男&名フィルのベートーヴェン:交響曲第9番(2014.11.30)

去る11月30日(日)に、
金山の日本特殊陶業市民会館フォレストホールまで、

市民の「第九」コンサート2014

を聴きに行ってきました。


ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の

《エグモント》序曲 作品84
交響曲第9番ニ短調 作品125《合唱付》

の2曲からなるプログラム。

指揮:北原幸男
管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団
独唱:ソプラノ 長屋弘子
   ア ル ト 相可佐代子
   テノール 錦織健
    バ ス  澤脇達晴
合唱:市民の「第九」コンサート2014特別合唱団

のメンバーによる演奏でした。



行動の自由が効くのは日曜だけなので
行きたいコンサートが見つかることは稀なのですが、

先週偶然、
かねてから贔屓にしている
北原幸男(きたはらゆきお 1957-)氏の指揮で「第九」が聴けることを知り、

当日券を目当てに金山まで足を運びました。

会場に30分ほど前に着いたところ、
満席で当日券は出ないと言われたのですが、

せっかく来たので開演3分前まで粘り、
直前に発生した余りの分を購入して聴いてきました。



初めの《エグモント》序曲から、

北原幸男氏の指揮と、
それに応えようとする名フィルの充実ぶりが嬉しい驚きでした。


北原氏は、
オーバーアクションでみえを張るようなところが一切なく、

楽譜から引き出される穏当な解釈を、
誠実に再現せんとする職人肌の指揮者です。

強烈な個性を放つわけではないのですが、

虚飾を排し、
音楽の中身で勝負せんとする姿勢は
若いころから一貫していて、

独特の品の良さ、格調高さの中に、
十分な充足感のある演奏が繰り広げられていました。


次の「第九」も、
北原氏と名フィルが、

穏当な解釈の中に、
中身の詰まった充実した演奏を聴かせてくれました。

3楽章までの完成度の高さを思うと、
4楽章からは、声楽の扱いの難しさを痛感しました。


ただアマチュアの合唱団が、
数ヶ月の練習でプロのオーケストラと共演されたことを思えば、

十分に健闘されていて、

北原氏の巧みな指揮のもと、
全体として感動的な演奏が繰り広げられていました。


ただソリストはプロであることを思えば、
もう少し何とかならなかったのかなと感じました。

60分近く何も声を出さなかったところへ
いきなり声を張り上げるわけなので、
それだけ難しい曲なのかもしれません。



全体としてみると、
3楽章まではそのままCDにして繰り返し聴きたくなる演奏、

4楽章は年に1度の市民の合唱団によることを考えれば
十分に楽しめる演奏でした。


楽譜に対して常に謙虚で、
あっさりしているようで実は濃い、

北原氏の真価を存分に味わうことができました。


個人的には、
オケから自然につむぎ出される音に、
もう少しだけ濃い味わいが感じられるようになれば
言うことないのですが、

恐らく数年単位でゆっくりゆっくり
良い方向に進化されていくのであろうと
今後に期待しております。


   ***

市民の「第九」コンサートは、
当日のパンフレットを参照すると、

1989年10月に開催された
 名古屋市制100周年記念「ザ・第九」1万人のコンサート
をきっかけとして、

1991年から2002年まで12回は、
 讃歌「第九」コンサート

2003年から2014年まで12回は、
 市民の「第九」コンサート

と称して毎年秋か冬に演奏会を実施されているようです。

北原氏は2002年11月と2009年11月の2回指揮されていて、
今回は3回目の顔合わせでした。


2014年12月5日金曜日

小川京子のモーツァルト:レクイエム(ピアノ独奏版)

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
遺作《レクイエム》ニ長調 K.626 を、

オーストリアの作曲家
カール・チェルニー(1791.2-1857.7)が、
ピアノ独奏用に編曲した版で聴きました。

楽譜はチェルニーが36歳の時(1827)に出版されています。


日本のピアニスト
小川京子(おがわきょうこ)氏による
2012年の録音です。


ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト:
《レクイエム》ニ短調 K.626(ジュースマイヤー版)
カール・チェルニーによるピアノ独奏編曲

小川京子(ピアノ)
録音:2012年3月15日、和光市民文化センター
【WWCC7698】


モーツァルトの《レクイエム》は、

オーストリアの伯爵
フランツ・フォン・ヴァルゼック(1763.1-1827.11)の
依頼によって作曲されたものの、
未完のまま残されたため、

弟子であったオーストリアの作曲家
フランツ・クサーヴァー・ジェスマイアー(1766-1803.9)が補筆完成し、
1793年12月に初演された作品です。

モーツァルトの没後(1791.12)35年をへて、
チェルニーがピアノ独奏用に編曲(1827)した経緯は、
「1820年代半ばに戦わされた〈《レクイエム》真贋論争〉」にあるそうです。

 ※海老澤敏氏のCD解説を参照。


ネット散策をしている時に、
ふと目についたのがピアノ独奏版の《レクイエム》でした。

合唱とオーケストラの作品を、
ピアノ独奏に直すのでは音が少なすぎるのでは、
と思ったのですが、

モーツァルトのピアノ独奏曲は、
もともと無駄な音が削ぎ落とされたシンプルなものなので、
意外に合っているかもしれない、
と思いなおし購入しました。


その結果、
モーツァルトのもともとの独奏曲といってもおかしくない、
優れた編曲に仕上がっていて、

存分に《レクイエム》の世界に浸ることができました。


小川京子氏のピアノは、
演奏効果をねらった外面的なところがなく、

ていねいに曲の本質を掘り下げていくスタイルで、
編曲の真価を十分伝えるものでした。

真面目一辺倒ではあるので、
CDで全体を聴き通すと多少息がつまるようでもありましたが、

世界初録音で、
編曲の内容を正確に伝えるという意味では、
十分な仕事をされたと思います。

ただこれは、
ぜひほかのピアニストでも聴いてみたい曲です。

どなたか取り上げてくれないかな。