2015年12月28日月曜日

ヘフリガーのシューベルト:歌曲集《冬の旅》(1980年録音)

スイス出身のテノール歌手
エルンスト・ヘフリガー
(Ernst Haefliger 1919.7-2007.3)の歌唱、

スイス出身の鍵盤楽器奏者
イェルク・エーヴァルト・デーラー
(Jörg Ewald Dähler 1933.3-)の伴奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert 1797.1-1828.11)の
歌曲集《冬の旅》を聴きました。

ヘフリガー61歳の時(1980.9)の録音です


フランツ・シューベルト
歌曲集《冬の旅》作品89 D911
~ヴィルヘルム・ミュラーの詩による連作歌曲

 1) おやすみ
 2) 風見
 3) 凍った涙
 4) 氷結
 5) 菩提樹
 6) 雪どけの水流
 7) 川の上で
 8) かえりみ
 9) 鬼火
10) 休息
11) 春の夢
12) 孤独
13) 郵便馬車
14) 白い頭
15) 鴉
16) 最後の希望
17) 村にて
18) 風の朝
19) 幻
20) 道しるべ
21) 宿屋
22) 勇気を!
23) 幻日
24) ライアー回し

エルンスト・ヘフリガー(テノール)
イェルク・エーヴァルト・デーラー(ハンマーフリューゲル)
録音:1980年9月、ザーネン教会、スイス
【KICC3709】2015年10月発売

歌曲集《冬の旅》は、
シューベルトの3大歌曲集のうち2番目のものです。

第1部12曲、第2部12曲の計24曲からなりますが、
共に30歳の時(第1部=1827.2/第2部=1827.10)に作曲されました

シューベルトは翌年(1828.11)、
31歳の時に亡くなっていますが、
第1部は生前の1828年1月、第2部は没後の同年12月に出版されています。


  ***

《冬の旅》は少し前に、
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
(1925.5-2012.5)が40歳の時(1965年5月録音)に、
イェルク・デムスの伴奏で歌ったのを聴き込んでいたので、

しばらくは
ディースカウとの違いの方に耳が行きました。

ヘフリガーはテノールで、
ディースカウはバリトンということもありますが、
61歳の年齢を感じさせない軽めの若々しい歌声で、

ディースカウほど精神的に追いつめられる感じのない、
聴きやすい《冬の旅》に仕上がっていました。

その分、
ディースカウほどの完成度は望めませんし、
ディースカウのような凄みや深さにも欠けているのですが、

シューベルトが30歳の時に、
テノールのために作った歌集であることを思えば、

若々しくおおらかな、
でもほど良い品も感じられる
ヘフリガーの歌唱のほうが、
等身大の青年シューベルトの実像に近いようにも感じられました。

どちらか一枚を選ぶのであれば、
やはりより深いディースカウの方を手に取ると思いますが、

別の側面から、
《冬の旅》の魅力に気がつかせてくれる
ヘフリガーのこのCDも、
私にとって欠かせない一枚になりそうです。

ディースカウの《冬の旅》が、
深刻過ぎて聴きづらく感じられる場合は、
特にお薦めです。


※Wikipediaの「エルンスト・ヘフリガー」「Jörg Ewald Dähler 」「フランツ・シューベルト」「冬の旅」を参照。

2015年12月21日月曜日

ハイフェッツのチャイコフスキー&メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(1957&59年録音)

ロシア帝国領ビルナ(現リトアニア]生まれのヴァイオリニスト
ヤッシャ・ハイフェッツ(1901.2.2-1987.12)の演奏で、

ロシアの作曲家
ピョートル・チャイコフスキー(1840.5-1893.11)と、

ドイツの作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン(1809.2-1847.11)の
ヴァイオリン協奏曲を聴きました。

チャイコンは
ハイフェッツ55歳の時(1957.4)
メンコンは58歳の時(1959.2)の録音です。


1) チャイコフスキー
  ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
  ・シカゴ交響楽団
  ・フリッツ・ライナー(指揮)
   録音:1957年4月19日、オーケストラ・ホール、シカゴ

2) メンデルスゾーン
  ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
  ・ボストン交響楽団
  ・シャルル・ミュンシュ(指揮)
   録音:1959年2月23・25日、シンフォニー・ホール、ボストン

3) チャイコフスキー
  ゆうつなセレナード 作品26
  ワルツ~弦楽セレナード ハ長調 作品48より
  ・室内管弦楽団
   録音:1970年7月8・10日、RCAスタジオA、ハリウッド

ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
【SICC-30076】2012年12月発売

ロシアの作曲家
ピョートル・チャイコフスキー
(1840.5-1893.11)の
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
は、作曲家41歳の時(1781.12)に初演された作品です

実際に作曲されたのは37歳の時(1877)で、
初演まで4年ほどかかりました。

ドイツの作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン
(1809.2-1847.11)の
ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
は、作曲者64歳の時(1945.3)に初演された作品です


  ***

音質の良さに驚いた「Blu-spec CD2」のシリーズに、
ハイフェッツがズラリと並んでいることに気がついて、
ただいま聴き直しているところです。

1枚目に聴いた
シベリウスとプロコフィエフとグラズノフの協奏曲
に続く2枚目として、
チャイコフスキーとメンデルスゾーンの協奏曲を聴いてみました。

ハイフェッツのクールなスタイルは、
メンデルスゾーンやチャイコフスキーに合わないように思いましたが、
こちらも有無を言わせぬ説得力があって、
圧倒的な感銘を受けました。

恐らく他のヴァイオリニストが、
これだけのスピードで弾き飛ばすと、
スポーツ感覚でさらさらと流れていくだけで、
味もそっけもない音楽になってしまう筈なのですが、

ハイフェッツの場合は、
ただ指が回るだけではなく、
さらりと弾いているようなところでも、
楽器が通常あり得ないレベルでしっかり鳴っているので、
聴いている人の心にしっかり届いてきて、
表面的にはならない凄みのある演奏に聴こえます。

そのうえ、どれだけバリバリ弾いても、
やり過ぎには聴こえない品の良さを備えているので、
今なお聴き続ける価値のある演奏だと思いました。

演奏スタイルは好きではありませんが、
そんな私にもこの1枚は十分に楽しめました。


さらに「Blu-spec CD2」の復刻によって、
昔はあまり感じなかったハイフェッツの
ヴァイオリンの音色の美しさも楽しめる点、

昔聴いていた時よりも、
良い演奏のように感じました。

最近耳にするどのヴァイオリニストとも、
違う鳴らし方、響きをしているのが興味深かったです。


  ***

なお同じ「Blu-spec CD2」のシリーズで、
ベートーヴェンとブラームスの協奏曲を組にした1枚も聴きましたが、

こちらは復刻の加減か、
ヴァイオリンの音が心に響いて来ず、
スポーツ感覚でさらさらと音が流れていくだけの、
軽薄な音楽に感じられて、
まったく好みに合いませんでした。

新しさを求めて、
失敗した演奏のように感じました。


※「ヤッシャ・ハイフェッツ」「ヴァイオリン協奏曲(チャイコフスキー)」「ヴァイオリン協奏曲(メンデルスゾーン)」を参照。

2015年12月14日月曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その10 (1982年録音)

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集

10枚目は、
ウィーン原典版(旧版)の通し番号で、
第59-62番のソナタ4曲を聴きました。

確かまだ小品や変奏曲を収めた1枚が残っていますが、
ソナタはこれで最後です。


フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732.3 - 1809.5)
 1) ピアノ・ソナタ 第59番 変ホ長調 作品66 Hob.XVI:49
 2) ピアノ・ソナタ 第60番 ハ長調 作品79 Hob.XVI:50
 3) ピアノ・ソナタ 第61番 ニ長調 作品93 Hob.XVI:51
 4) ピアノ・ソナタ 第62番 変ホ長調 作品82 Hob.XVI:52

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1992年2月25-27日、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550657】

ハイドンのピアノ・ソナタ
最後の4曲が収録されています。

最後の3曲は
ハイドン2度目のイギリス滞在中、
1794年か1795年(62歳か63歳)のときに
ロンドンの女流ピアニスト
テレーゼ・ジャンセン・バルトロッツィのために
作曲されたことがわかっています。

ただしこの3曲がそれぞれ、
どういう順番で作曲されたのかはわかっていません。

ウィーン原典版(旧版)は
ホーボーケン番号と同じ順番で、
 Hob.XVI:50 第60番
 Hob.XVI:51 第61番
 Hob.XVI:52 第62番
となっていますが、

これを出版順に並べると、
 Hob.XVI:52 第62番…1798年出版(67歳)
 Hob.XVI:50 第60番…1801年出版(69歳)
 Hob.XVI:51 第61番…1805年出版(73歳)

作品番号順に並べると、
 作品79 Hob.XVI:50 第60番…1801年出版(69歳)
 作品82 Hob.XVI:52 第62番…1798年出版(67歳)
 作品93 Hob.XVI:51 第61番…1805年出版(73歳)
となっていて、

ホーボーケン番号の
Hob.XVI:50-52 の並びは、
出版順にも作品番号順にもよらないことがわかります。

出版順と作品番号順に従えば、
少なくとも Hob.XVI:51 第61番 は、
いちばん最後に置かれるべきだと思うのですが、

こちらは、2楽章からなる
ゆったりした感じの5分ほどの小品なので、
ソナタ全集の最後に配置するのを躊躇したのかもしれません。

また、Hob.XVI:50-52 を一連の3曲とみた場合、
 Hob.XVI:50 第60番 ハ長調
 Hob.XVI:51 第61番 ニ長調
 Hob.XVI:52 第62番 変ホ長調
という並び方(ハ→ニ→ホ)は、
一番聴き映えのする配置ではあるので、
内容的には違和感のない並べ方のように思われました。


この3曲をもう数年さかのぼって、
ハイドン59歳(1791)に出版されたのが、

 作品66 Hob.XVI:49 第59番 変ホ長調

でした。3楽章からなる充実した作品で、
個人的には最後の3曲よりもよく出来ているように感じました。


  ***

ハイドンのピアノ・ソナタ、
ラスト数曲だからといって、
ベートーヴェンやシューベルトのように、
何かを突き抜けた崇高な境地に達するわけではなく、

職業作曲家の熟練の技ともいえる、
明るく楽しい軽妙な作品が最後まで続いていました。

全曲を聴いてきて、
どちらかといえば、
コンサートで改まって聴くよりは、

一人で仕事をしたり、勉強したり、
何かしながら聴くのにぴったりの、
CD向きの音楽だと思いました。

嫌味のない明るさで、
こちらの思考を邪魔することなく、
気持ちを前向きな方向へ引っぱってくれる音楽は、
ハイドンならではだと思います。

ヤンドーさんは、
ハイドンのほかにも、
モーツァルトとベートーヴェンと
シューベルトのソナタ全集を録音していますが、

彼の個性に最も合っているのは、
ハイドンだと思います。

ちょっとゆっくり聴きすぎて、
全体像が見えにくくなってしまったようにも思うので、
このあたりでもう一度、
CD10枚聴き直してから、
全体をまとめ直したいと思っています。



※中野博司著『ハイドン復活』(春秋社、1995年11月)参照。

※Wikipediaの
 「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンのピアノソナタ一覧」
 「ハイドンのピアノ曲一覧」
 「ホーボーケン番号」の各項目を参照。

※ピティナ・ピアノ曲事典の「ハイドン」を参照。

2015年12月7日月曜日

シュナイダーハンのメンデルスゾーン&ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲(1956&52年録音)

ウィーン生まれのヴァイオリニスト
ヴォルフガング・シュナイダーハン
(1915.5-2002.5)の演奏で、

ドイツの作曲家
メンデルスゾーンとブルッフの
ヴァイオリン協奏曲を聴きました。

メンデルスゾーンは
シュナイダーハン41歳の時(1956.9)
ブルッフは36歳の時(1952.4)の録音です。


1) メンデルスゾーン
  ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
  ・ベルリン放送交響楽団
  ・フェレンツ・フリッチャイ(指揮)
  録音:1956年9月19-23日、ベルリン、イエス・キリスト教会

2) ブルッフ
  ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
  ・バンベルク交響楽団
  ・フェルディナント・ライトナー(指揮)
  録音:1952年4月28-30日、バンベルク、クルトゥラウム

ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)
【POCG-90175】

フェリックス・メンデルスゾーン
(1809.2-1847.11)の
ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
は、作曲者64歳の時(1945.3)に初演された作品

マックス・ブルッフ
(1838.1-1920.10)の
ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
は、作曲家28歳の時(1866.4)に初演された作品です


  ***

シュナイダーハンのヴァイオリン、
それほど大曲向きには思えなかったので、
コンチェルトはあまり聴いて来なかったのですが、

偶然聴いたメンデルスゾーンが、
かなりの名演でした。

名曲の割に、
深く感動する演奏に出会いにくいのが
メンコンの難しいところなのですが、

久しぶりに、
始まりから終わりまで、
美音と粋な節回しに耳が吸い寄せられて、
ああ美しいなと思っているうちに最後まで聴き終えていました。

同郷のウィーン生まれのヴァイオリニスト、
フリッツ・クライスラー(1875.2-1962.1)と同じく、
甘く美しい音色と、品のある粋な節回しで聴かせるタイプの演奏です。

個人的には、
メンコンのベスト演奏はクライスラーなのですが、
さすがに録音が古く(1926年)、
聴きにくく感じることもあったので、

クライスラーのメンコンが好きな方にはお薦めです。


  ***

ブルッフは、
メンデルスゾーンと同じタイプの演奏ですが、
音質がメンコンよりいっそう悪い感じなので、
あまり楽しめませんでした。

あえてシュナイダーハンを選ばなくても、
ほかに良い演奏があると思います。


※「ヴォルフガング・シュナイダーハン」「フェリックス・メンデルスゾーン」「ヴァイオリン協奏曲(メンデルスゾーン)」「マックス・ブルッフ」「ヴァイオリン協奏曲第1番(ブルッフ)」を参照。

2015年11月23日月曜日

渡邉暁雄&日本フィルのシベリウス:交響曲第1番(1962年録音)

渡邉暁雄(1919.6.5-1990.6)の指揮する
日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の
交響曲第1番を聴きました。

指揮者42歳の時(1962.5)の録音です


シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 作品39

渡邊暁雄(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
録音:1962年5月7・8日、東京文化会館
【TWCO-29/32】CD1 ※2012年12月発売


交響曲第1番 ホ短調 作品39 は、
シベリウスが33歳の時(1899.4)に初演されました

同じ年(1899.11)に、
交響詩《フィンランディア》作品26
も初演されています。

この7年前、
26歳の時(1892.4)に
クレルヴォ交響曲 作品7
が初演されていますが、
初演後、生前に再演されることはなく、
交響曲として通番が付されることはありませんでした。

第1番の初演後、3年をへて
36歳の時(1902.3)に初演されたのが
交響曲第2番 ニ長調 作品42
です。


  ***

第1番は、
北欧のほの暗い雰囲気たっぷりの出だしで、
思わず惹きつけられるのですが、

意外にまとめにくいところがあるようで、
しばらく聴いていると間延びした感じになって、
途中で飽きが来てしまうことも多いです。


ベルグルンド&ボーンマス響
の名演を聴いて(1974年録音)、
ようやくこの曲の全体像をつかんだ気でいましたが、

渡邉暁雄&日本フィル
の旧盤を聴いて(1962年録音)、
ベルグルンドを凌ぐ感銘を受けました。

両者ともに、
楽譜への深い共感にもとづいた熱気のある演奏で、
甲乙つけがたい名演だと思いますが、

ベルグルンドのほうが、
コンサート会場で実際に聴くような、
オケ全体をひとまとめに捉えた、
野太い感じの自然な音作りなのに対して、

渡邉暁雄のほうは、
楽譜のすべての音を分離よく捉えられた、
セッション録音独特の音で、
コンサートではまず聴こえないところまで聴こえて来て、
最初のうちは多少の違和感もありました。

しかしいかにも人工的に作り込んでいるわけではなく、

不思議な統一感があって、
シベリウスの頭の中で鳴っていたはずの音が、
すべて有機的につながりをもって聴こえてくる風なので、
有無を言わさない強い説得力がありました。

  ***

ちなみに久しぶりに
渡邊暁雄&日本フィル
の新盤(1981年9月録音)も聞き直してみましたが、


オケの精度によるのか、
慣れないデジタル録音によるのか、

フォルテが耳にうるさく響き、
曲の美しさにひたる以前の問題で、
全曲聴き通すことができませんでした。

旧録音のほうが、
圧倒的に優れていると思います。


なお上に掲げた、
ベルグルンド&ボーンマス響 (1974年9月録音)
は、ぜひ輸入盤【EMI 50999 9 7366 2 5】を。

2012年6月に
日本で再販された盤もありますが、
輸入盤とはほぼ別物の残念な音質なので、
あまり評価できません。


ベルグルンドには12年後の再録音
ベルグルンド&ヘルシンキ・フィル (1986年5月録音)
もあり、そちらのほうが一般には有名ですが、

これも最近(2015年5月)、
日本で再販された盤は残念な音質なので、
選ぶなら輸入盤【EMI 7243 4 76963 2 9】だと思います。



しかしこの輸入盤を聴いても、
万全な演奏ではないように感じます。

前より解釈が深まっているのは明らかなのですが、
その分持ってまわった感じがして、
不思議と心に響いて来ないのです。

細部が今一つ明快に聴こえないところもマイナスです。

リマスター次第のようにも感じるので、
評価は別の機会に置いておきます。

2015年11月18日水曜日

名古屋市美術館の特別展「リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展」

11月14日(日)に
名古屋市美術館まで特別展

「リバプール国立美術館所蔵
 英国の夢
 ラファエル前派展」

を観に行ってきました。

 新潟市美術館〔2015年7月19日-9月23日〕
 名古屋市美術館〔2015年10月3日-12月13日〕
 Bunkamura ザ・ミュージアム〔2015年12月22日-2016年3月6日〕
 山口県立美術館〔2016年3月18日-5月8日〕

の4箇所で開催されています。名古屋展の主催は、

 名古屋市美術館
 中日新聞社

となっていました〔図録参照〕。

  ***

「英国の」とあるので、
落ちついて考えれば事前に気がついたはずですが、

16世紀初めのイタリアの画家
ラファエロ・サンティ(1493.4-1520.4)
の絵画が観られると早合点していました。

入館して、1850年代から1910年代の
イギリス絵画がずらりと並んでいるのをみて、

「ラファエル前派」とは
19世紀半ばにイギリスで活躍した画家の集団
であることを知りました。

美術は好きな方ですが、
きちんと勉強したことがないので、
時にこんな間違いもあるでしょう。

図録を少し読んでみましたが、
専門家向けで初心者にはわかりにくかったので、

「ラファエル前派」についてまとめるのは別の機会に譲り、
知識ゼロのなかで懐いた感想を記しておきます。


ぱっとみて、
古典的な様式の枠組みを壊そうとするような、
強い衝動に駆られた、毒のある作品は見当たりませんでした。

ただ古典的な様式を用いながらも、
絵から伝わる印象は意外に新しく、
瑞々しい感性が巧みに織り込まれていて、
思わず惹き込まれる魅力のある作品がたくさん見つかりました。

形式的な新しさを追うよりは、
作品の内面的な美しさに目を向けていたようで、
イギリス音楽に似た特色を感じました。


  ***

展示会の図録から、
印象深かった作品10点を挙げておきます。
とくに感動した作品に☆印をつけました。

Ⅰ. ヴィクトリア朝のロマン主義者たち

ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)
《良い決心》1877年【図録7】☆
《巣》1887年初出品【図録8】

ジョージ・ジョン・ピンウェル(1842-1875)
《ギルバート・ア・ベケットの誠実 ―夕暮れ時にロンドンへ入るサラセン人の乙女》1872年【図録17】

Ⅱ. 古代世界を描いた画家たち

チャールズ・エドワード・ペルジーニ(1839-1918)
《ドルチェ・ファール・ニエンテ(甘美なる無為)》1882年初出品【図録28】
《シャクヤクの花》1887年初出品【図録29】☆

エドワード・ジョン・ポインター(1836-1919)
《テラスにて》1889年初出品【図録31】

アーサー・ハッカー(1858-1919)
《ペラジアとフィラモン》1887年【図録33】☆

Ⅲ. 戸外の情景

ウィリアム・ヘンリー・ハント(1790-1864)
《卵のあるツグミの巣とプリムラの籠》1850-60頃【図録37】☆

ヘレン・アリンガム(1848-1926)
《ピナーの田舎家》1890年代初め【図録45】☆

Ⅳ. 19世紀後半の象徴主義者たち

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ(1833-1898)
《フラジオレットを吹く天使》1878年【図録54】☆

はっきりとしたわかりやすい印象の
人物画が多かったです。

神話などを題材としつつも、
19世紀後半の「今」の感性を大切にした
瑞々しい作品に心を揺さぶられました。

お薦めの展覧会です。


※Wikipediaの「ラファエロ・サンティ」「ラファエル前派」を参照。

2015年11月9日月曜日

ヘフリガーのシューベルト:歌曲集《美しき水車小屋の娘》(1982年録音)

スイス出身のテノール歌手
エルンスト・ヘフリガー
(Ernst Haefliger 1919.7-2007.3)の歌唱、

スイス出身の鍵盤楽器奏者
イェルク・エーヴァルト・デーラー
(Jörg Ewald Dähler 1933.3-)の伴奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert 1797.1-1828.11)の
歌曲集《美しき水車小屋の娘》を聴きました。

ヘフリガー62歳の時(1982.6)の録音です


フランツ・シューベルト
歌曲集《美しき水車小屋の娘》作品25 D795
~ヴィルヘルム・ミュラーの詩による連作歌曲

 1) さすらい
 2) どこへ?
 3) 止まれ!
 4) 小川に寄せる感謝の言葉
 5) 仕事を終えた宵の集いで
 6) 知りたがる男
 7) いらだち
 8) 朝の挨拶
 9) 粉ひき職人の花
10) 涙の雨
11) 僕のものだ!
12) 休息
13) リュートの緑色のリボンを手に
14) 狩人
15) 嫉妬と誇り
16) 好きな色
17) 邪悪な色
18) 枯れた花
19) 粉ひき職人と小川
20) 小川の子守歌

エルンスト・ヘフリガー(テノール)
イェルク・エーヴァルト・デーラー(ハンマーフリューゲル)
録音:1982年6月、ゼオン福音教会、スイス、アールガウ州
【KICC3710】

歌曲集《美しき水車小屋の娘》は、
シューベルトの三大歌曲集のうち最初のもので、
26歳の時(1823年5-11月)に作曲されました

亡くなる1年前(1827年2-10月)に作曲された
歌曲集《冬の旅》の4年前にまとめられました。

  ***

秋に久しぶりに、
フィッシャー・ディースカウの
《冬の旅》を聴いて、

彼の歌唱でほかの歌曲集も聴こうと思っていたのですが、

つい最近、1枚1,000円ほどで
ヘフリガーの三大歌曲集が再販されたのを見かけたので、
1枚聴いてみることにしました。

するとこれが大正解!

ヘフリガーはテノールだからなのか、
(ディースカウはバリトン)

ディースカウのときより
軽く明るい声質が若々しい印象で、

初めて味わう
さわやかな感動のうちに
《美しき水車小屋の娘》を聴き通すことができました。

この作品が、
シューベルト20代半ば、
青春時代の作品であることを確認できました。

聴いてしばらくは、
ヘフリガーの若いころの録音だと思い込んでいたのですが、
調べてみると何と62歳(!)の録音で、
びっくりしました。

わかって聴き直してみると、
若々しい声質ながらも、若手にはまず不可能な、
きわめつくされた感のあるよく練られた解釈で、
確かに、若手の歌唱ではないなと納得しました。

しかし声の若々しさは驚くべきレベルで、
老いのかけらも感じさせません。

堂々とした覇気あふれる歌いっぷりに、
自然な感動に浸ることができました。


ちなみにヘフリガーは、
51歳の時(1970年11月30日、12月24・25日)にも、
小林道夫氏の伴奏で同曲を録音していますが、

試聴音源(各曲45秒ずつ)を聴く限りでは、
62歳の時よりずっと堅い印象で、年齢相応の歌唱になっていました。

それから10年後の歌唱のほうが、
ずっと若々しく聴こえるのはとても興味深かったです。


参考までに、

ドイツのバリトン歌手
ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
(1925.5-2012.5)の同曲録音は、
ディースカウ30代、40代の時でした。
(詳しくないので、他にもあるかもしれません。)

1961年12月録音
 ディースカウ 36歳
 ジェラルド・ムーア(ピアノ)……EMI

1971年12月録音
 ディースカウ 46歳
 ジェラルド・ムーア(ピアノ)……グラモフォン


※Wikipediaの「エルンスト・ヘフリガー」「Jörg Ewald Dähler 」「フランツ・シューベルト」「美しき水車小屋の娘」を参照。

2015年11月2日月曜日

ハイフェッツのシベリウス、プロコフィエフ、グラズノフのヴァイオリン協奏曲(1959・63年録音)

ロシア帝国領ビルナ(現リトアニア)生まれのヴァイオリニスト
ヤッシャ・ハイフェッツ(1901.2.2-1987.12)の演奏で、

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)、

ロシアの作曲家
セルゲイ・プロコフィエフ(1891.4-1953.3)、

ロシアの作曲家
アレクサンドル・グラズノフ(1865.8-1936.3)
のヴァイオリン協奏曲を聴きました。

それぞれハイフェッツ
 57歳(シベ 1959.1)
 58歳(プロ 1959.2)
 62歳(グラ 1963.6)
の時の録音です。


シベリウス
ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47
 ワルター・ヘンドル(指揮)
 シカゴ交響楽団
〔録音〕1959年1月10・12日、シカゴ、オーケストラ・ホール

プロコフィエフ
ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調作品63
 シャルル・ミュンシュ(指揮)
 ボストン交響楽団
〔録音〕1959年2月24日、ボストン、シンフォニー・ホール

グラズノフ
ヴァイオリン協奏曲イ短調作品82
 ワルター・ヘンドル(指揮)
 RCAビクター交響楽団
〔録音〕1963年6月3・4日、カリフォルニア、サンタモニカ・シヴィック・オーディトリアム

ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
【SICC-30078】2012年12月発売

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の
ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47 は、
作曲家38歳の時(1904.2)に初演された作品です。

ロシアの作曲家
セルゲイ・プロコフィエフ(1891.4-1953.3)の
ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調作品63 は、
作曲家44歳の時(1935.12)に初演された作品です。

ロシアの作曲家
アレクサンドル・グラズノフ(1865.8-1936.3)
ヴァイオリン協奏曲イ短調作品82 は、
作曲家39歳の時(1905.2)に初演された作品です。


  ***

ハイフェッツは中学生のころに、
1300円台の格安レコードでまとめて聴いて以来、

ラジオ放送や、
初期のCDでもたくさん聴いて来たので、
飽きが来たのか、最近あまり聴かなくなっていました。

最近『Blue-spec CD2』で再販された
ルービンシュタインのCDを聴いて、
音の良さに驚き、このシリーズのCDをまとめて聴き直していました。

『Blue-spec CD2』の中に、
ハイフェッツのCDもまとめて再販されていますので、
久しぶりに聴き直してみることにしました。


 ***

このCDも、
よく知られた名盤ですが、

5、60年代ステレオ録音の少し古ぼけた感じが、
一気に若返った印象で、感動を新たにしました。

これまで
ハイフェッツのヴァイオリンは、
テクニックの切れが物凄いけれども、
若干刺々しく、耳につく感じがあって、
そこまで美しいとは思わなかったのですが、

実は彼独特の鳴り方で、
美しく鳴り響いていたことに初めて気がつきました。

ウィーン風の
含みのある弾き方とはまったく違っていて、
余分なものを削ぎ落しているので、

好みが分かれるところだと思いますが、
『Blue-spec CD2』仕様のCDで聴くと、

線が細そうにみえて、
実は弦がぶんぶん鳴っている様を、
よく聴き取ることができました。

良い音で聴いてみると、
今でもハイフェッツの録音は、
シベリウス、プロコフィエフ、グラズノフの協奏曲を聴く時に、
外せない1枚であると思いました。


『Blue-spec CD2』のシリーズは、
5、60年台のステレオ録音だと、
音が一気に若返った感じになって
効果絶大のようです。

ルービンシュタインとハイフェッツは特にお薦めです。


※「ヤッシャ・ハイフェッツ」「ヴァイオリン協奏曲(シベリウス)」「ヴァイオリン協奏曲第2番(プロコフィエフ)」「ヴァイオリン協奏曲(グラズノフ)」を参照。

2015年10月22日木曜日

ディースカウ&デムスのシューベルト:歌曲集《冬の旅》(1965年録音)

ドイツのバリトン歌手
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
(1925.5.28-2012.5)の歌、

オーストリアのピアニスト、
イェルク・デムス(1928.12- )の伴奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(1797.1-1828.11)の
歌曲集《冬の歌》を聴きました。

ディースカウ39歳の時(1965.5.11-15)の録音です


フランツ・シューベルト
歌曲集《冬の旅 Winterreise 》作品89 D911
~ヴィルヘルム・ミュラーの詩による連作歌曲
 第1部
 1) おやすみ
 2) 風見
 3) 凍った涙
 4) 氷結
 5) 菩提樹
 6) 雪どけの水流
 7) 川の上で
 8) かえりみ
 9) 鬼火
 10) 休息
 11) 春の夢
 12) 孤独
 第2部
 13) 郵便馬車
 14) 白い頭
 15) 鴉
 16) 最後の希望
 17) 村にて
 18) 嵐の朝
 19) 幻
 20) 道しるべ
 21) 宿屋
 22) 勇気を!
 23) 幻日
 24) ライアー回し

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
イェルク・デムス(ピアノ)
録音:1965年5月11-15日、ベルリン
【UCCG-5080】※2006年11月

歌曲集《冬の歌》は
30歳の時(1827)に作曲されました

30というとまだ若書きのように感じられますが、
この翌年(1828.11)には亡くなっています。

第1部は1828年1月、
第2部は没後間もなくの28年12月に出版されました。


  ***

外国語の歌は、予習なしでは
歌詞の意味がよくわかりませんし、

対訳でおおまかな意味をつかんでも、
日本語の歌のように、
歌詞の一語一語に深く共感することは難しいので、

それほど積極的には聴いていません。

歌があってこその音楽なので、
それではいけないのでしょうが、

外国語の歌にはまだかなり距離があります。


  ***

シューベルトの《冬の旅》は、

十代後半のころに、
フィッシャー=ディースカウの来日公演(1987年?)を
テレビで観たのが初めだったように記憶しています。

細かな記憶は消え去っていますが、
ディースカウの圧倒的な歌唱力とともに、

シューベルトの歌曲の、
それまで聴いたことのないレベルでの、
絶望的な暗さに驚いたことを覚えています。

歌といえば、
人の心を明るく元気にするものだと思い込んでいましたので、

こんなに暗い歌を、
どうしてわざわざ聴かないといけないのだろうと思い、

その後しばらく、
シューベルトの歌曲を聴くことはなくなっていました。

最近、古本屋で偶然、
ディースカウの《冬の旅》を見かけ、
久しぶりに聴いてみることにしました。


  ***

ドイツ語の歌詞はわからないままですが、

ほの暗くも美しい
シューベルトの音楽が心にすっと入り込んできて、

思っていたよりも深く共感しながら
全曲を聴き通すことができました。

昔は絶望的過ぎて
今一つ良さがわからなかった歌曲集も、

それなりに年齢を重ねてきたからか、

シューベルト特有の
和声のうつろいを感じ取れるようになって、

単に暗いだけではない、
独特な力強さ、深さをそなえた歌曲のおもしろさに浸ることが出来ました。


ディースカウの歌はやはり別格に上手いですね。
声を聴いているだけでも惚れ惚れします。

時に上手すぎるというか、
圧倒的な表現力がかえって耳につくところもあるのですが、

これだけ聴かせてくれれば
私には十分以上の出来でした。


デムスのピアノは
軽やかで淡々とした印象で、
ディースカウとは方向性が違うようですが、

シューベルトには一家言ある方なので、
不思議と説得力があって、

全体として程良い調和感のある、
聴きやすい《冬の旅》に仕上がっていると思いました。

良い機会なので、
シューベルトやシューマンなどの
ほかの有名なドイツ歌曲も聴いてみたいと思っています。


※Wikipediaの「ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ」「イェルク・デームス 」「フランツ・シューベルト」「冬の旅」を参照。

2015年10月19日月曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その9(1993年録音)

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集

9枚目は、
ウィーン原典版(旧版)の通し番号で、
第53-56・58番のソナタ5曲を聴きました。


フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
 1) ピアノ・ソナタ 第53番 ホ短調 作品42 Hob.XVI:34
 2) ピアノ・ソナタ 第54番 ト長調 作品37-1 Hob.XVI:40
 3) ピアノ・ソナタ 第55番 変ロ長調 作品37-2 Hob.XVI:41
 4) ピアノ・ソナタ 第56番 ニ長調 作品37-3 Hob.XVI:42
 5) ピアノ・ソナタ 第58番 ハ長調 作品89 Hob.XVI:48
 6) アンダンテと変奏曲 ヘ短調 作品83 Hob.XVII:6

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1993年3月12・13・15・16日、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550845】

ハイドンが、
42歳の時(1774)に初めて出版された
クラーヴィア・ソナタ集が
 作品13 Hob.XVI:21-26〔全6曲〕※第36-41番

46歳の時(1778)に出版された
2番目のクラーヴィア・ソナタ集が
 作品14 Hob/XVI:27-32〔全6曲〕※第42-47

48歳の時(1780)に出版された
3番目のクラーヴィア・ソナタ集が
 作品30 Hob/XVI:35-39・20〔全6曲〕※第48-52・33番

でした。

このCDに収められているのは、
その後の作品で、

52歳の時(1784)に出版された
クラーヴィア・ソナタ集
 作品37 Hob.XVI:40-42〔全3曲〕※第54-56番

と、同じ年に出版された
クラーヴィア・ソナタ
 作品42 Hob.XVI:34〔全1曲〕※第53番

の4曲をメインとして、

この5年後、
57歳の時(1789)に出版された
クラーヴィア・ソナタ
 作品89 Hob.XVI:48〔全1曲〕※58番

と、67歳の時(1799)に出版された
アンダンテと変奏曲
 作品83 Hob.XVI:6〔全1曲

の2曲が収録されています。

作品83の変奏曲は、
「ハイドンのクラヴィーアによる変奏曲の頂点に立つとともに、
 クラヴィーア独奏曲のなかでも屈指の傑作とされる作品」
だそうです(中野博司『ハイドン復活』春秋社、187頁)。


  ***

どれも初めて聴きますが、
もうこのあたりになると、

どれも充実した内容の作品で、
飽きることなく楽しみながら聴き進めることができました。

コンサートで取り上げても、
十分聴かせどころのある名曲ぞろいだと思います。

内容的に深まってきても、
ハイドンらしく押しつけがましい所はないので、

こちらの思考を妨げることなく、
仕事のBGMにちょうどよいです。

BGM用に
ほかにも色々なCDを流しますが、
場の雰囲気を、明るく晴れ晴れとしたものに変える力は、
ほかのどの作曲家よりも強いと思います。

ヤンドーさんのピアノも、
正統派で、技術的に申し分なく、
明るくきっぱりとした印象のあるところが
ハイドンにぴったりで、

このCDでも十分に楽しませてくれました。


※中野博司著『ハイドン復活』(春秋社、1995年11月)参照。

※Wikipediaの
 「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンのピアノソナタ一覧」
 「ハイドンのピアノ曲一覧」
 「ホーボーケン番号」の各項目を参照。

※ピティナ・ピアノ曲事典の「ハイドン」を参照。

2015年10月12日月曜日

シュナイダーハンのシューベルト:ヴァイオリン・ソナタ集(1953-54年録音)

オーストリアのウィーン生まれのヴァイオリニスト
ヴォルフガング・シュナイダーハン(1915.5-2002.5)と、

ドイツのブレーメン生まれのピアニスト、
カール・ゼーマン(1910.5-1983.11)の演奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(1797.1-1828.11)の
ヴァイオリン・ソナタ集を聴きました。

シュナイダーハン38-39歳(1953-54年)の時の録音です


フランツ・シューベルト
ヴァイオリン・ソナタ イ長調 作品162 D574《二重奏曲》
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ
 第1番 ニ長調 作品137-1 D384
 第2番 イ短調 作品137-2 D385
 第3番 ト短調 作品137-3 D408

ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)
カール・ゼーマン(ピアノ)
録音:1954年12月16日、ハノーファー、ベートーヴェン・ザール《二重奏曲》。1953年9月25-27日、ウィーン、コンツェルトハウス《ソナチネ》。
【POCG-90182】※1998年12月発売。

シューベルトによる
ヴァイオリンとピアノのための作品は、
これまでほとんど聴いて来なかったので、
よく知りませんでした。

調べてみると、

1-3) ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ
   ◎第1番 ニ長調 作品137-1 D384〔1816年3月〕
   ◎第2番 イ短調 作品137-2 D385〔1816年3月〕
   ◎第3番 ト短調 作品137-3 D408〔1816年4月〕※19歳

4) ヴァイオリン・ソナタ
  ◎イ長調 作品162 D574〔1817年8月〕※20歳

5) ヴァイオリンとピアノのためのロンド
  ロ短調 作品70 D895〔1826年10月〕※29歳

6) ヴァイオリンとピアノのための幻想曲
  ハ長調 作品159 D934〔1827年12月〕※30歳

の6曲作られていることがわかりました。

シュナイダーハンの
この時(1953-54年/38-39歳)の録音では、
はじめの4曲までしか収録されていません。

12年後(1965-66年/50-51歳)に再録した時には、
全6曲を収録していますが、

50年代の録音と比べると、
シュナイダーハンならではの美音にかげりみえ、
技術面でもほんの少し衰えがみえるようで、

あまり魅力的に思えませんでした。


  ***

今回の録音、
これらの曲を知らない私が聴いても、

シューベルトの曲の美しさにしみじみ浸れる演奏で、
曲の魅力が過不足なくひきだされているように感じました。

何も特別なことはせずに、
生まれながらそこにある音楽として、
よい雰囲気が醸し出されていると思いました。

贅沢をいわなければ、
十分な名演と言って良いのですが、

モーツァルトのソナタで聴いた
奇跡的なバランスの演奏と比べると、

ほんのわずかなのですが、
あと一歩、曲の内面に切り込んでくる、
ドキッとするような要素が足りないように思われました。

繰り返し聴いて、
どんな曲なのかはよくわかって来ましたので、

ここからスタートして、
ほかの演奏にも耳を通してみようと思います。


※Wikipediaの「フランツ・シューベルト」「ヴォルフガング・シュナイダーハン 」「カール・ゼーマン」を参照。
※藤田晴子著『シューベルト 生涯と作品』(音楽之友社、2002年11月)を参照。

2015年10月5日月曜日

宇宿允人&フロイデ・フィルのベートーヴェン:交響曲第3番(2009年録音)

宇宿允人(うすきまさと 1934.11-2011.3)氏の指揮する
フロイデ・フィルハーモニーの演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の交響曲第3番《英雄》を聴きました。

指揮者74歳の時(2009.1)の録音です

朝比奈隆、山田一雄両氏の
最晩年の《英雄》を聴いて来て、

そういえば宇宿允人氏の演奏はどうだったのだろうと思い、
聴いてみることにしました。


宇宿允人の世界27

ベートーヴェン:
交響曲第3番 変ホ長調 作品53《英雄》
マスネ:タイースの瞑想曲

宇宿允人(指揮)
フロイデ・フィルハーモニー
録音:2009年1月21日(水)、《宇宿允人の世界》第179回公演、東京芸術劇場大ホール
【MUCD-027】

ベートーヴェン
34歳の時(1804.12)に初演された
交響曲第3番《英雄》をメインとして、

フランスの作曲家
ジュール・マスネ(1842.5-1912.8)の
オペラ《タイス》の間奏曲を添えたプログラムです。

タイス》は作曲者52歳の時(1894)に初演されています。

このコンサートでは、
ソロ・ヴァイオリンの独奏パートを、
第1ヴァイオリンで合奏させています。


 ***

宇宿允人氏は、規格外な指揮姿で
誤解されている面もあるように思われますが、

CDを聴くかぎり、
どこも偏狭なところはなく、
オーソドックスなスタイルの中に、
実にまっとうな演奏が繰り広げられていて、
逆に驚かされます。

アマチュアのオーケストラを相手にしているので、
CDではあと一歩、物足りなく感じることも多いのですが、

うまくはまった時の演奏は、
並みの指揮者にとても太刀打ちできない、
めったにないレベルの感動を与えてくれます。


  ***

宇宿氏のベートーヴェンは、
はじめに2002年録音の《運命》・第8番・第9番を聴きました。

この時は、オケの粗さが目立ち、
ほかを圧倒する何かがあるとは感じませんでした。

その後、
2006年12月に録音された
ベートーヴェンの第九を聴いたところ、

オケの水準も指揮者の表現力も、
一つ上につきぬけた印象があって、
予想を遥かにこえる大きな感銘を受けました。

いたってオーソドックスなスタイルなのですが、
ほかの指揮者とは明らかに違う、
ベートーヴェンの音楽のもつ美しさがすんなりと伝わって来る演奏でした。

宇宿氏が、
晩年に演奏されたベートーヴェンのなかには、
飛び抜けて素晴らしいものがあるようです。

ライブ録音のCDを一枚ずつ聴いていこうと思っております。


  ***

前置きが長すぎました。

この2009年の《英雄》、
2006年の第九に比べると、
オケの調子が万全ではありません。

第1・2・4楽章は、
個人的には全然問題ないのですが、
第3楽章にかなり致命的なミスがあるため、
この楽章のみは大きくマイナスです。

しかし第3楽章をのぞけば、
まとめにくい第1楽章を含めて、

わかりやすく有機的に全体をまとめ上げ、
深く感動させられる演奏が繰り広げられていました。

《英雄》はまとめにくい曲なので、

誰の演奏を聴いても、
CDだと退屈に感じられることが多いのですが、

曲想に合わせて、ごく自然に、
自在にテンポを動かせるところが強みになるのか、

どこも退屈なところのない、
《英雄》たるに相応しい、手に汗握る演奏が展開されていました。

最近聴いた
朝比奈隆や山田一雄の
晩年の《英雄》と比べるなら、

オケのレベルは相当落ちますが、
宇宿氏のライブのほうが俄然感動的で、
おもしろい演奏を聴かせてくれました。

キズがあるのは難点ですが、
今一つ《英雄》の良さがわからない方に、
ぜひ聴いていただきたい演奏です。

宇宿氏は、
この2年前の《英雄》もCD化されているので、
ぜひ聴いてみようと思います。

キズがなければ、
そちらのほうが良い演奏かもしれません。


もう一点、
こちらはあまり期待していなかったのですが、
アンコールの《タイス》も絶品です。

ほかの管弦楽曲も聴いてみたくなりました。


※Wikipediaの「ジュール・マスネ」を参照。

2015年9月21日月曜日

シュナイダーハンのモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集 その2

オーストリアのウィーン生まれのヴァイオリニスト
ヴォルフガング・シュナイダーハン(1915.5-2002.5)と、

ドイツのブレーメン生まれのピアニスト、
カール・ゼーマン(1910.5-1983.11)の演奏で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ヴァイオリン・ソナタ集を聴いていきます。

CD4枚中の2枚目を聴きました。
シュナイダーハン38-40歳(1953-55年)の時の録音です


モーツァルト
ヴァイオリン・ソナタ第30番 ハ長調 K.306
ヴァイオリン・ソナタ第32番 ト長調 K.376
ヴァイオリン・ソナタ第33番 ホ短調 K.377

ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)
カール・ゼーマン(ピアノ)
録音:1954年12月18日、ハノーファー、ベートーヴェン・ザール〔K376〕。
1955年10月7-9日、ウィーン、コンツェルトハウス〔K306&377〕。
【POCG-90178】※1998年12月発売。

シュナイダーハンは
38歳から40歳にかけて(1953.9/1954.12/1955.12)、
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを計13曲録音しました。

旧全集の通番(第1-43番)に従って、
どれを録音したのか整理しておきます。

二重丸◎はこのCDの収録曲です。

第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
 第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
 第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕
 第4番 ト長調  K.9 〔1764〕
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕
 第12番 ト長調  K.27〔1766〕
 第13番 ハ長調  K.28〔1766〕
 第14番 ニ長調  K.29〔1766〕
 第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕
 第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕

 第17番 ヘ長調  K.55 (K.Anh.C23.01)※偽作
 第18番 ハ長調  K.56 (K.Anh.C23.02)※偽作
 第19番 ヘ長調  K.57 (K.Anh.C23.03)※偽作
 第20番 変ホ長調 K.58 (K.Anh.C23.04)※偽作
 第21番 ハ短調  K.59 (K.Anh.C23.05)※偽作
 第22番 ホ短調  K.60 (K.Anh.C23.06)※偽作
 第23番 イ長調  K.61 (K.Anh.C23.07)※偽作

◯第24番 ハ長調  K296〔1778〕
◯第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕
・第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕
・第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
◯第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕
◯第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕
◎第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕※未完
◎第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕
◎第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕
◯第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕
◯第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕
◯第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕※未完
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕※未完
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕※未完
◯第40番 変ロ長調 K454〔1784〕
◯第41番 変ホ長調 K481〔1785〕
◯第42番 イ長調  K526〔1787〕
・第43番 ヘ長調  K547〔1788〕

偽作の7曲(第17-23番)を境にして、
おもに後半の作品を録音しています。

未完の作品はのぞかれていますが、
完成された作品も第26・27・43番の3曲は録音されていません。

これ以前の23曲は、
偽作の7曲(第17-23番)はもちろん、

それ以前の16曲も、
モーツァルト10歳までに書かれた初期の作品なので、

ヴァイオリン・ソナタの選集を
録音する場合でも録音されないことが多いです。

  ***

ヴァイオリン・ソナタの
◎第30番 ニ長調  K306
は作曲者22歳の時(1778.11)、
◎第32番 ヘ長調  K376
◎第33番 ヘ長調  K377
は作曲者25歳の時(1781.11)に出版されています。

30番と32番の間に
 第31番 変ロ長調 K372 ※未完
がありますが、
これは25歳の時(1781.3)に、
初めのアレグロ楽章の途中まで作曲された未完の作品です。
1楽章も完成されていないので、
ふつうは演奏されません。

第30番は、
1778年11月にパリで作品1として出版された
「パリ・ソナタ」6曲(第25-30番)のうちの1曲です。

◯第25番 ト長調  K301
・第26番 変ホ長調 K302
・第27番 ハ長調  K303
◯第28番 ホ短調  K304
◯第29番 イ長調  K305
◎第30番 ニ長調  K306

第32・33番は、
1781年11月にウィーンで作品2として出版された
「アウエルンハンマー・ソナタ」6曲(第24番・第32-36番)のうちの2曲です。

◎第32番 ヘ長調  K376
○第24番 ハ長調  K296
◎第33番 ヘ長調  K377
◯第34番 変ロ長調 K378
◯第35番 ト長調  K379
◯第36番 変ホ長調 K380

  ***

これもまた、
1枚目と曲想に大きな違いはなく、

明るく清楚で、
心浮き立つ楽しい瞬間をちりばめた
モーツァルトを聴く醍醐味を満喫できる
ひと時を過ごすことができました。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは、
聴いていても退屈に感じられる録音が多く、
あまり聴き込んで来なかったのですが、

初めて満足できる録音に出会えましたので、
シュナイダーハンの演奏でしばらく聴き込んでみようと思います。


シュナイダーハンさんの若いころの演奏は、

ほどよく共鳴した時の
ヴァイオリンの響きが耳に心地良く、

音色を聴くだけで笑みがこぼれて来るのが特徴的です。

美音といっても、
オイストラフのような野太い感じではなく、
節度をわきまえた範囲での清楚な美しさ。

どちらかと言えば、
クライスラーのような趣きですが、

そこまで甘々ではなく、
技巧的にも申し分ないレベルなので、

モーツァルトにはもってこいの演奏家だと思いました。

それでは3枚目に進みましょう。


※Wikipediaの「ヴォルフガング・シュナイダーハン」「カール・ゼーマン」「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」「モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ」を参照。

2015年9月14日月曜日

渡邉暁雄&日本フィルのシベリウス:交響曲全集(1962年録音)

渡邉暁雄(1919.6-1990.6)の指揮する
日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(Jean Sibelius 1865.12-1957.9)の
交響曲全集を聴いていきます。

渡邉暁雄と日本フィルは、
シベリウスの交響曲全集を、
1962年と1981年の2回録音しています。

渡邉氏42-3歳そして62-3歳のときの録音です。
今回聴くのは旧盤(1962)のほうです

私の渡邉氏に対する印象を、
大きく改めるきっかけになったCDです。

渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(第1回録音)

シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
〔録音:1962年5月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
〔録音:1962年、杉並公会堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
〔録音:1962年8月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
〔録音:1962年6月20・21日、東京文化会館〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
〔録音:1962年2月18日、文京公会堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
〔録音:1962年、文京公会堂〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
〔録音:1962年3月7日、杉並公会堂〕

渡邊暁雄(指揮I
日本フィルハーモニー交響楽団
【TWCO-29/32】※2007年5月発売

旧盤より早く、
新盤(1981)のほうを手に入れていたのですが、

新盤はオケのレベルによるのか、
あるいは始まったばかりのデジタル録音で、
録音する側の不慣れなところが影響したのか、

フォルテは暴力的で耳にうるさく、
ピアノも胸に響いてこない、
残響も何もない即物的な録音で、

どれも聴き通すことができませんでした。

リマスターし直せば、
違った印象になる可能性もありますが、

私が所有している盤(2007年発売)についていえば、
歴史的な価値以上のものは見出し難かったです。

初めてシベリウスの全集に挑戦される場合、
新盤(1981)は避けたほうが賢明です。


渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(デジタル再録音盤)

シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
 〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
 〔録音:1981年6月25日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
 〔録音:1981年6月19日、習志野文化ホール〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
 〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
 〔録音:1981年7月2日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
 〔録音:1981年6月22日、習志野文化ホール〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
 〔録音:1981年7月1日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響詩「トゥオネラの白鳥」Op.22-2
 〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
悲しきワルツ Op.44-1
 〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕

渡邊暁雄(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
【COCQ-84283-6】※2007年5月発売

  ***

そもそも渡邉氏のシベリウスは、
京都市交響楽団とのセッション録音を聴いたのが初めてでした。

シベリウス
劇付随音楽「テンペスト」第1組曲 Op.109
交響曲第2番ニ長調Op.43

渡邉暁雄(指揮)
京都市交響楽団
録音:1972年4月、奈良県文化会館
【TOCE-6321】1990年9月発売

《テンペスト》は全くピンと来なかったのですが、
第2番はそれなりに好感のもてる誠実で丁寧な演奏でした。

とはいえ
セッション録音ゆえか生き生きとした情感には乏しく、
職人的に淡々と仕事をこなしているようにも聴こえました。


その後、
ヘルシンキ・フィルとのライブ録音を聴きました。

シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
悲しきワルツOp.44

渡邉暁雄(指揮)
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年1月28日、福岡サンパレス
【TDK-OC012】2003年4月発売

各誌絶賛だったのでかなり期待していたのですが、

ライブならではのキズは仕方ないにしても、
何より解釈面でお互いに手探り状態のまま演奏に臨み、
不完全燃焼なまま終わってしまったように感じました。

こちらの演奏が今ひとつだったので、
同時に発売された第4・7番のCDはまだ聴いていません。

初めてシベリウスを聴くのであれば、
それなりに満足できる演奏だとは思うのですが、

渡邉氏のベスト演奏だとはとても言えないと思いました。


それから、
東京都響とのライブ録音も聴きました。


シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
交響曲第2番ニ長調Op.43

渡邉暁雄(指揮)
東京都交響楽団
録音:1972年4月28日(第1番)、1973年4月17日(第2番)、東京文化会館
【TFMC-0010/11】2004年7月発売

こちらも、
当時の日本のオケの水準を知る上では有用な演奏で、

同曲のライブを聴きに行って、
これくらいの演奏が聴ければふつうに満足できるレベルではあるのですが、

ほかの名演をさしおいて、
このCDを選びたいかといえば、
それほど特別な魅力は感じませんでした。


 ***

ここまで聴いてきた上で、
先の日本フィルとの新全集(1981)で、
耳にうるさく響く残念なCDを聴いてしまったので、

渡邉暁雄氏のシベリウスについて、
あまり肯定的な印象は持っていませんでした。


そんな私の、
渡邉氏に対するマイナス・イメージを
一気に覆させてくれたのが、

日本フィルとの旧全集(1961)でした。

40代の渡邉氏が、
まさかこれほど覇気にあふれた
熱い演奏を聴かせていたとは思いもよりませんでした。

シベリウスの楽譜への深い読みと、
壮年期の渡辺氏による核心に満ちた解釈で、
ぐいぐいと惹き込まれる魅力のある演奏が繰り広げられていました。

驚かされるのは、
ライブでもなかなか聴けないほどの
「熱さ」が伝わって来ることで、

セッション録音で、
どんな魔法を使ったのかしらと大いに感心させられました。

分裂前の日本フィルの実力も相当なものです。

日本で、音響設備の整った
最新のホールができる前の録音なので

最新の優れた音響のCDに比べれば、
響きに若干の弱さがあることは否めないのですが、

どんな強奏でも無機的に響かず、
意味のある音楽として心に伝わって来るのはなかなかないことです。

シベリウスの交響曲を聴いて、
初めてに近い、新鮮な感動を味わうことができました。

タイプが似ているのは、
ベルグルンド&ボーンマス響
の録音(1975-75)でしょうか。

ベルグルンドの第1回目の全集は、
のちの全集よりも若々しい生命力にあふれた演奏となっていますが、

これをさらに迫力一杯にした感じで、
全然負けていません。

渡邉氏の旧全集は、
初めてシベリウスの全集を聴く方にも、
安心してお薦めできる名盤だと思います。


※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」「日本フィルハーモニー交響楽団」を参照。


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2015年9月7日月曜日

ロバート・バルトのヴァイス:リュートのためのソナタ集 第1集

アメリカ生まれのリュート奏者
ロバート・バルト
(Robert Barto 1950年代生まれ)の演奏で、

ドイツ後期バロック音楽の作曲家
シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス
(Silvius Leopold Weiss 1687.10-1750.10)
リュート作品集を聴いていきます。


S.L.ヴァイス
リュートのためのソナタ集 第1集

 ソナタ第36番ニ短調
 ソナタ第49番変ロ長調
 ソナタ第42番イ短調

ロバート・バルト(バロック・リュート)
1996年2月、カナダ、ニューマーケット、セント・ジョン・クリソストム教会
【NAXOS 8.553773】

ヴァイスって誰?
と思って少し調べてみたのですが、

ヴァイスはもとより、
リュート音楽の歴史について
日本語でわかりやすくまとめられた
手頃な参考書が見つかりませんでした。

歴史的文献として、
ヴァイスと同時代のドイツのリュート奏者
エルンスト・ゴットリーブ・バロン
(Ernst Gottlueb Baron 1696.2-1760.4)
の著書が翻訳されていますが、
古書で高価なので手が出せません。

菊池賞訳/水戸茂雄監修
『リュート ―神々の楽器』
(東京コレギウム、2001年7月。改訂版、2009年8月)

まだ探しはじめたばかりなので、
手頃なものが見つかったらまた報告します。

とりあえず、
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
(1685.3-1750.7)
とほぼ同時期を生き、
親交もあった作曲家であることを把握しておきます。

  ***

さて実際聴いてみると、
これが驚くほどわかりやすい音楽で、

リュートという楽器を通して、

どこまでもやさしく、
穏やかであたたかな音楽が
延々と繰り広げられていきました。

J.S.バッハほど
強い個性に彩られているわけではないので、

聴き終わると
どんな音楽だったのかすぐに忘れてしまいますが、

BGMに最適な、
心地よい癒しの音楽だと思いました。

恐らくふだんクラシックを聴かない人でも
すっと入り込めるくらいわかりやすいので、

実は奏者のバルトさんが作曲した
現代の作品なんだと打ち明けられても、
なるほどと思えるくらいです。


今回のCDには、
短調2曲に長調の1曲がはさまれていました。

 第36番ニ短調
 第49番変ロ長調
 第42番イ短調

個人的な好みからいえば、
長調の曲のほうが、ヴァイスの良さが出ているように思いました。

短調なら、もう少し厳しさのあるバッハが恋しくなりました。

すでに11枚目のCDまで出ているようなので、
気長に1枚ずつ聴き進めて行こうと思います。


※Wikipediaの「シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス」「Robert Barto」「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」「エルンスト・ゴットリーブ・バロン」を参照。

2015年9月1日火曜日

ノイマン&チェコ・フィルのマーラー:交響曲第3番(1981年&94年録音)

チェコの指揮者
ヴァーツラフ・ノイマン(1920.9-1995.9)の指揮する

チェコのオーケストラ
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3番ニ短調を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

マルタ・ヴェニャチコヴァ(アルト)
ミロスラフ・ケイマル(ポストホルン)
プラハ室内合唱団
(合唱指揮:ルボミール・マーテル)
チェコ・フィルハーモニック少年少女合唱団
(合唱指揮:イルジー・フワーラ)

チェコ・フィルハーモニック管弦楽団
ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)

録音:1994年8月31日、9月1-3日、5-7日、プラハ、芸術の家 ドヴォルザーク・ホール
【EXTON OVCL-00253】2006年9月発売

マーラーの交響曲第3番は、

35歳の夏(1895)に第2-6楽章、
翌年に第1楽章が作曲され、8月までに完成されました。

41歳の時(1902.6)に全曲初演されました

交響曲第2番は
35歳の冬(1894.12)に全曲初演されたので、

それほど間を置くこともなく、
第3番が作曲されていたことがわかります。


  ***

ノイマン73歳の時(1994.8)の録音です
(※9月29日が誕生日。あと3週間ほどで74歳。
  翌年9月2日に逝去。)

いろいろ聴いてきたなかで、
現在、一番気に入っているのは
ノイマン&チェコ・フィルの新盤です。

バーンスタインのように
力に任せて押しまくるところが皆無で、
どこも力が抜けているにもかかわらず、

表現の彫りは深く、
心にずっしりと響いてくるのが特徴的です。

自然で穏当な流れを基調としつつも、
無味乾燥に流れていくわけではなく、

すみずみまで指揮者の意図がゆきわり、
楽しく美しく、感動的な演奏が繰り広げていました。

目の覚めるような、
冴え冴えとした何かがあるわけではなく、
物凄い推進力で聴く者を引きずりんでいくこともないので、

初めて聴いて、
強烈な印象を受ける演奏ではないかもしれませんが、

曲がよくわかってくるにつれ、
内容の深さに驚かされる演奏だと思います。

優れた指揮者とオーケストラが、
長い年月をかけて練り上げ到達した境地を聴く思いです。


サロネン盤も良かったのですが、

サロネンの方が、楽譜の読みが独特で、
響きのユニークなマーラーに仕上がっているのに対して、

ノイマン盤のほうが曲の隅々まで知り尽くした上で、
オーソドックスな奏法で極めつきの名演を聴かせてくれていました。

サロネン盤も、
明るく楽しく美しい点では負けていないのですが、
感動面ではさすがに一歩譲ると思います。


  ***

ノイマンはこの11年前、
61歳の時(1981.12)にもマラ3を録音しています。

グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

クリスタ・ルートヴィヒ(コントラルト)
チェコ・フィルハーモニー合唱団
(合唱指揮:ヨゼフ・ヴェセルカ)
キューン児童合唱団
(合唱指揮:イジー・フヴァーラ)

チェコ・フィルハーモニック管弦楽団
ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)
録音:1981年12月16-19日、プラハ、芸術の家
【SUPRAPHON 50CO-2444/45】1988年7月発売

古本屋で偶然、格安で見つけて手に入れました。

演奏は、
旧盤のほうが覇気に富んでいて、
一気に全曲を聴き通せる力のある演奏で、
非常に優れていると思うのですが、
録音に問題がありました。

これまでブログで上げてきたマラ3の中では、
いかにも昭和といった感じの一番古めかしい音がしました。

CDが出始めたころにありがちな、
固めの音質で聴きにくいです。

恐らくリマスタリング次第で、
全然違った演奏に聴こえるはずなので、
もっと最近に再販されたものを探して、
聴き直してみたいと思います。

※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」を参照。

2015年8月13日木曜日

サロネン&ロスアンジェルス・フィルのマーラー:交響曲第3番(1997年録音)

フィンランドの指揮者
エサ=ペッカ・サロネン(1958.6-)の指揮する

アメリカ合衆国のオーケストラ
ロスアンジェルス・フィルハーモニックの演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3番ニ短調を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

アンナ・ラーセン(アルト)
ロスアンジェルス・マスター・コラール女声合唱団
(合唱指揮:ポール・サラムノヴィチ)
カリフォルニア・ポーリスト少年聖歌隊
(合唱指揮:ダナ・T・マーシュ)
マーティン・チャリフォー(ソロ・ヴァイオリン)
ドナルド・グリーン(ポストホルン)
ラルフ・ザウアー(トロンボーン)

ロスアンジェルス・フィルハーモニック
エサ=ペッカ・サロネン(指揮)

録音:1997年10月19・20日、ロスアンジェルス、ドロシー・チャンドラー・パヴィリオン
【SICC1758-9】2014年12月発売


交響曲第3番は、

35歳の夏(1895)に第2-6楽章、
翌年に第1楽章が作曲され、8月までに完成されました。

41歳の時(1902.6)に全曲初演されました


交響曲第2番は
35歳の冬(1894.12)に全曲初演されたので、

それほど間を置くこともなく、
第3番が作曲されていたことがわかります。


  ***

サロネン39歳の時の録音です

バーンスタイン、
レヴァイン、
ティルソン・トーマス、
シャイーと聴いてきて、

どれも期待していたほど満足できなかったマラ3ですが、

最近再販されたのを機会に購入した
サロネンの録音が予想外に素晴らしかったです。


金管・木管の充実した響きに比べて、
弦が多少薄く聴こえるのですが、

難点というよりは、
ほかと違った響きがして、
おもしろく聴き進めることができました。


哲学的に深読みするよりは、

楽譜をあくまで音楽的に、
楽しく美しく鳴らすことに集中して、
いろいろ工夫をこらしている感じです。

細部にこだわりすぎて流れが悪くなることもなく、
全体的な見通しもよく取れていて、

最初から最後まで、
聴くものを飽きさせない構成の見事さは、

作曲家としての独自の読みもあるように感じました。

最終楽章での、
全体を見通した流れの良い解釈も、
ほかの指揮者では聴かれなかったものです。


もともとマーラーが
30代半ばに作った曲ですので、

まだ若かったサロネン39歳の解釈のほうが、
曲の核心をついていたのかもしれません。

内容的に深みに乏しい側面もあるので、

マーラーの他の交響曲には通用しない解釈の
ようにも感じましたが、

第3番に限っていえば、
大成功だといって良いと思います。


作曲家ならではの独自の読みが、
曲の内容とぴったり合致して、
素晴らしい成果を上げた1枚です。


※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」を参照。

2015年8月10日月曜日

柴田淳 『Billboard Live 2013』(2014年3月発売)

柴田淳さんのCDをもう一枚、
最新のライブ・アルバム『Billboard Live 2013』を聴きました。

動画でライブ映像を観て、
彼女の魅力にはまった者として、

ライブCDがあればいいなと思っていたところに
昨春(2014.3)発売され、気になっていた1枚です。

あまり知らない曲ばかりだったので、
購入すべきか迷っていたのですが、
買って大正解。

ライブならではの
生き生きとした音場感が素晴らしく、

無理のないのびやかな歌声が心地良く、
大人なジャズ・ボーカルのCDを聴いた印象で、

柴田さんの音楽にすっかり魅せられてしまいました。

スタジオ録音の音源は、
細部までていねいに表現しようとするあまり、
流れが滞り気味になることがあったのですが、

ライブでは全体の流れが良くなって、

自然なやさしい歌声で
穏やかなメロディが奏でられ、

仕事疲れに絶好な
癒やしの音楽になっていました。


柴田淳『 Billboard Live 2013 』

 1) あなたの名前
 2) 真夜中のチョコレート
 3) メロディ
 4) ひとり歩き
 5) ハーブティー
 6) 月光浴
 7) 道
 8) 月の窓
 9) キャッチボール
10) 今夜、君の声が聞きたい
11) おやすみなさい。またあとで…

 澤近泰輔(ピアノ)
 坂田 学 (ドラム)
 川村 竜 (ベース)
 澤近立景(ギター)

 柴田淳(ボーカル)
【Victor VICL-64140】2014年3月発売


このCDは、2013年11月に行われた
「Blue Note & Billboard Live Tour 2013」

 11月2日(土)Blue Note Nagoya
 11月9日(土)Blue Note Tokyo
 11月14日(木)Billboard OSAKA
 11月19日(火)Billboard TOKYO

より、Billboard Live の模様を音源化したものだそうです。

どの曲がどの日の演奏かまでは明記されていませんが、
恐らく14日と19日の公演を組み合わせたものかと思います。


すべて柴田淳さんのオリジナル曲です。
各曲の初出は次の通り。

1曲目「あなたの名前」は、
8th Album『僕たちの未来』(2011.8)に収録。

2曲目「真夜中のチョコレート」
5th Album『月夜の雨』(2007.2)に収録。

3曲目「メロディ」
6th Album『親愛なる君へ』(2008.6)に収録。

4曲目「ひとり歩き」
3rd Album『ひとり』(2004.2)に収録。

5曲目「ハーブティー」
8th Album『僕たちの未来』(2011.8)に収録。

6曲目「月光浴」
3rd Single として発売後(2002.6)、
2nd Album『ため息』(2003.2)に収録。

7曲目「道」
9th Album『あなとと見た夢 君のいない朝』(2013.3)に収録。

8曲目「月の窓」は、
2nd Album『ため息』(2003.2)に収録。

9曲目「キャッチボール」は、
9th Album『あなとと見た夢 君のいない朝』(2013.3)に収録。

10曲目「今夜、君の声が聞きたい」は、
3rd Album『ひとり』(2004.2)に収録。

11曲目「おやすみなさい。またあとで…」は、
8th Album『僕たちの未来』(2011.8)に収録。


アルバム順に並べなおすと次の通りです。

1st Album『オールトの雲』(2002.3)
→0曲

2nd Album『ため息』(2003.2)
→2曲「月光浴」「月の窓」

3rd Album『ひとり』(2004.2)
→2曲「ひとり歩き」「今夜、君の声が聞きたい」

4th Album『わたし』(2005.3)
→0曲

5th Album『月夜の雨』(2007.2)
→1曲「真夜中のチョコレート」

6th Album『親愛なる君へ』(2008.6)
→1曲「メロディ」

7th Album『ゴーストライター』(2009.11)
→0曲

8th Album『僕たちの未来』(2011.8)
→3曲「あなたの名前」「ハーブティー」「おやすみなさい。またあとで…」

9th Album『あなとと見た夢 君のいない朝』(2013.3)
→2曲「道」「キャッチボール」

『オールトの雲』と『わたし』と『ゴーストライター』をのぞいて、
幅広く6枚分のアルバムから取り上げているので、

ここからさらに、
それぞれのオリジナル・アルバムにさかのぼっていくのもありかなと思っています。


  ***

どの曲も聴き込むごとに
新たな魅力に気がつかされているところですが、

はじめのうちは、
アップテンポで大人な印象の「メロディ」と、

明るい色調のスロー・バラード、
「月の窓」「おやすみなさい。またあとで…」
の3曲に吸い寄せられました。

最近は、
素朴な味わいの中に、
悟りの世界を描いた「道」

さりげないメロディに、
深い歌詞を忍び込ませた「ひとり歩き」

の2曲がいいなあと。


どの曲も、
若いころの研ナオコさんが歌ったら、
ぴったり合いそうでした。

男性なら鈴木雅之さんでしょうか。

いずれそんな機会もあるといいな。


大好きな歌手のかたでも、
いざアルバムを聴くとがっかりすることが多いので、

オリジナル曲がずらりと並んだアルバムで、
ここまで違和感なく聴き進められたのは記憶にありません。


まだ知らない曲がたくさんある状態ですので、
のんびりと聴き進めていこうと思います。

2015年8月6日木曜日

柴田淳 『COVER 70's』(2012年10月発売)

夜な夜なYouTubeなどで
柴田淳さんの歌に親しんできましたが、
とうとうCDを購入しました。

2012年秋に発売された
『COVER 70's』です。

今春に購入して以来、
飽くことなく半年ほど聴き続けています。

数あるカヴァー・アルバムのなかでも出色の出来です。


柴田淳『COVER 70's』

  1) 異邦人 〔久保田早紀/1979年〕
  2) みずいろの雨 〔八神純子/1978年〕
  3) 迷い道 〔渡辺真知子/1977年〕 
  4) あなた 〔小坂明子/1973年〕
  5) 木綿のハンカチーフ 〔太田裕美/1976年〕
  6) 飛んでイスタンブール 〔庄野真代/1978年〕
  7) 青春の影 〔TULIP/1974年〕
  8) 秋桜 〔山口百恵/1977年〕
  9) 東京 〔マイ・ペース/1975年〕
 10) スカイレストラン 〔ハイ・ファイ・セット/1975年〕
 11) 22才の別れ 〔風/1974年〕
 12) Mr.サマータイム 〔サーカス/1978年〕

【Victor VICC-63935】※2012年10月発売。

私が生まれた後に発売され、
ヒットした歌謡曲がずらりと並んでいます。

まだ幼かったからか、
発表された当時の記憶はありません。

実際に意識して聴いたのは
恐らく10年以上たってからのことだったので、

こうして並べられるまでは、
70年代の曲という印象がありませんでした。


どこかで聴いて
それなりに知ってはいるけれど、
細かいところまでは自信がない曲ばかりだったので、

ああこういう曲だったのね、
と感心、納得しながら聴き進めました。


柴田淳さんの歌声は、
それほど圧倒的な声量があるわけではありませんが、

嫌味のない素直な発声で、
特に中音から低音部にかけての伸びやかさが魅力的で、
心を奪われました。

一点、
高音にかけての裏声になる部分は、
最初のうちは気(声の力)が抜けていく感じがして、
ほんの少し違和感がありましたが、

繰り返し聴き込んでいくうちに、

彼女の声の個性として、
魅力の一つに感じられてきました。

原曲はそれほど知らないのですが、
抱いていたおぼろげな原曲のイメージを裏切らない、
オーソドックスなアレンジにも好感が持てました。


個人的には、
「あなた」「青春の影」の伸びやかな歌声が圧倒的で、
これだけでも購入した価値はあったのですが、

「異邦人」
「みずいろの雨」
「迷い道」
「木綿のハンカチーフ」
「飛んでイスタンブール」
「Mr.サマータイム」

もCDでじっくり聴いたことがなかったので、
改めて名曲であることを実感しました。

特に「木綿のハンカチーフ」の良さに初めて気がつけたのは有難かったです。

個人的に聴き込んできた
「秋桜」「22歳の別れ」は、
可もなく不可もない感じですが、
嫌味なところは全くありませんでした。

「東京」と
「スカイレストラン」
は初めて聴きました。

繰り返し聴いているうちに、
曲の良さが伝わってきました。


カヴァー・アルバムは、
実際聴いてみると収録曲の大部分は
それほどもないことが多いのですが、

このCDはどの曲も歌とアレンジの水準が高く、
じわじわ売れ続けているのも納得できます。

お薦めの1枚です。


なお初回限定盤のみ、
「卒業写真 〔荒井由実/1975年〕」
が収録されているそうです。
こちらは未聴です。

ぜひ聴いてみたいのですが、
現在中古で2倍以上の値がついているので、
しばらく我慢しておきます。

2015年8月3日月曜日

シャイー&ロイヤル・コンセルトヘボウ管のマーラー:交響曲第3番(2003年録音)

イタリアの指揮者
リッカルド・シャイー(1953.2-)の指揮する

オランダのオーケストラ
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3番ニ短調を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

ペトラ・ラング(メゾ・ソプラノ)
プラハ交響合唱団
オランダ児童合唱団
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
リッカルド・シャイー(指揮)

録音:2003年5月5-9日、アムステルダム、コンセルトヘボウ
【Decca 475 514-2】2004年4月発売


交響曲第3番は、

35歳の夏(1895)に第2-6楽章、
翌年に第1楽章が作曲され、8月までに完成されました。

41歳の時(1902.6)に全曲初演されました。


交響曲第2番は
35歳の冬(1894.12)に全曲初演されたので、

それほど間を置くこともなく、
第3番が作曲されていたことがわかります。


  ***

シャイー50歳の時の録音です

これもまた、
バーンスタイン、レヴァイン、MTTと同じ路線の、
まじめにじっくり進めていくタイプの演奏ですが、

これらの中では、
いちばん成功しているように感じました。


マーラーに期待したい
豊穣で濃厚な響きとは違うのですが、

機能に優れたオーケストラとともに、

あまり余分なものは足さない
普遍的な的な美しさを追求しているようで、

私の期待とは少しズレていますが、
ふつうに美しい演奏だと思いました。


問題があるとすれば
指揮者シャイーの解釈でしょうか。

ただこれは個人の感受性によるものなので、
どこが悪いとも言いにくいのですが、

個人的にはどこか微妙に違和感のある、
一風変わった印象の残るマーラーでした。


イタリア人の基質を活かして、
マーラーの普遍的な姿を描き出した演奏
なのかもしれません。

そういえば、
何でも手広くふる指揮者ですが、
シャイーさんの一番好きな、こだわりのある作曲家って誰なんでしょう。

若いころからの高い評価に比べて、
心から感動した演奏にはまだ出会ったことがありません。

見た目と比べて、
いつもそれほど熱くない
ふつうの演奏が流れていくように感じています。



全体としては、

バーンスタイン(△)<レヴァイン(△)
<トーマス(◯)<シャイー(◯)

といった感じでしょうか。

程良いレベルで大曲をうまくまとめた演奏として、
まずまず成功した録音だと思います。



※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」を参照。