2015年3月23日月曜日

ティオリエのドビュッシー:ピアノ作品集第1集(1997年録音)

フランス系アメリカ人
〔パリ生まれ、イタリア在住〕のピアニスト、
フランソワ・ジョエル・ティオリエ(1943.11-)の演奏で、

フランスの作曲家
クロード・ドビュッシー(1862.8-1918.3)の
ピアノ作品集第1集 を聴きました。

ティオリエ51歳の時(1997.11-12)の録音です。


ドビュッシー:ピアノ作品集第1集

・ベルガマスク組曲 L.75(1890)
 〔前奏曲/メヌエット/月の光/パスピエ〕

・夜想曲 L.82(1892)
・ボヘミア舞曲 L.9(1880)
・夢想 L.68(1890)
・マズルカ L.67(1890?)

・2つのアラベスク L.66(1888/91)
 〔第1番ホ長調/第2番ト長調〕

・ロマンティックなワルツ L.71(1890)
・バラード L.70(1890)
・舞曲 L.69(1890)

・ピアノのために L.95(1894-1901)
 〔前奏曲/サラバンド/トッカータ〕

フランソワ・ジョエル・ティオリエ(ピアノ)
録音:1994年11月28日-12月1日、パリ、聖マルセール教会
【NAXOS 8.553290】


パスカル・ロジェのCDで、
ドビュッシーに開眼したあと、

ロジェさんのほかの演奏を
聴いていこうと思っていたのですが、

その前に偶然、
よりしっくり来る演奏者に出会いました。

フランソワ・ジョエル・ティオリエの
ドビュッシー:ピアノ作品全集です。

奇抜なところはなく、
私の中にあったありふれたドビュッシー像を、
そのまま実現されたような、ごく穏当な演奏です。

繊細かつキレの良いタッチで、
心のこもった歌に満ちた演奏を聴かせてくれるので、
ドビュッシーの作品の美しさに素直にひたることができました。


ロジェさんのように
もう少しリズムに際立ったところがあれば
万全なようにも感じましたが、

録音も、
一音一音しっかり聴き分けられる
くっきりとした明快なものなので、

まずはティオリエさんの演奏で、
ドビュッシーのピアノ作品全曲を聴いていこうと思います。


そういえば、
ロジェさんでピンとこなかったラヴェルの演奏も、
ティオリエさんはしっくり来る感じでした。
近々聴くことになるでしょう。


  ***

このCDでは、形式の明確な

・ベルガマスク組曲 L.75(1890)
・2つのアラベスク L.66(1888/91)
・ピアノのために L.95(1894-1901)

の3つの組曲を主軸にして、その間に、
初期に作られた小品を並べてあります。

・夜想曲 L.82(1892)
・ボヘミア舞曲 L.9(1880)
・夢想 L.68(1890)
・マズルカ L.67(1890?)

・ロマンティックなワルツ L.71(1890)
・バラード L.70(1890)
・舞曲 L.69(1890)

意図はよく理解できるのですが、

正直なところ初期の小品は、
続けて聴くとそれほど代わり映えしない感じがして、
注意していないと、曲の終わりを見失いがちでした。

しかしコンサートなどで、
演奏者の説明付きで弾いてもらえれば、
それなりに楽しめそうな美しい小品が揃っていると思います。


初めてドビュッシーを聴く者としては、
まず初期の名曲として、
 「ベルガマスク組曲」
 「2つのアラベスク」
 「ピアノのために」
の3曲があることを確認できれば良いでしょうか。

ベルガマスク組曲は、じっくり聴けば聴くほど、
よくできた名曲であることに気がつかされました。

初期の小品の中では、
 「夜想曲」
がフォーレの夜想曲を思わせる作品。

比較的良く取り上げられる
 「夢想」
も強い個性はありませんが、
内向的な感じのある美しい作品でした。


※Wikipediaの「François-Joël Thiollier」「クロード・ドビュッシー」を参照。

2015年3月16日月曜日

ヤンドーのバッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻(1993年録音)

ハンガリーのピアニスト
イェネ・ヤンドー(1952.2-)の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685.3-1750.7)の
平均律クラヴィーア曲集第2巻 BWV870-893
を聴きました。

ヤンドー41歳の時(1993)の録音です。


ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
平均律クラヴィーア曲集第2巻 BWV870-893

イェネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1993年9月14-17日(BWV870-881)、10月13-16日(BWV882-893)、
 ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550970-1】


平均律クラヴィーア曲集第2巻 BWV870-893 は、
作曲者57歳の時(1742)に完成された作品です。


アファナシエフ盤で聴いて以来、
久しぶりにじっくり聴き直そうと思い、

第1巻で感動した
シフさんの旧盤を聴いてみたのですが、

残念ながら表現が上滑りしていて、
心に響いてこない演奏でした。



J.S.バッハ
平均律クラヴィーア曲集第2巻 BWV870-893

アンドラーシュ・シフ(ピアノ)
録音:1985年10月、ロンドン
【UCCD-5569/70】2014年5月発売

第1巻の1年後
31歳の時の録音なので、

第1巻に比べて
まだ弾きなれていなかったのかもしれません。

シフさんのバッハは
旧盤は一通り聴いたので、
次は新盤のほうを聴いていこうと思います。

旧盤は、
 フランス組曲
 平均律クラヴィーア曲集第1巻
 イギリス組曲
の3つがこの順で素晴らしかったです。


  ***

さてヤンドーさんの演奏、

以前古本屋で、
格安で手に入れたものです。

初めて聴いた時、
テンポがほんの少し速いようなのと、
全体的に明るい色調なのがバッハには合わない気がして、

ちゃんと聴かないまま置いてありました。


シフの旧盤のあとで
ふと思いついて聴いてみたら、

十分に満足できるレベルの名演奏でびっくりしました。


テンポは私の勘違いだったようで、

インテンポではありますが
速くも遅くもない穏当なテンポ設定だと思います。

表現に目新しいところはありませんが、

その分
自然な流れで心をこめて音楽を再現することに
集中しているようで、

どの曲からも
バッハならではのしみじみと胸にしみる歌が聴こえて来て、
全曲を感動のうちに聴き終えることができました。


万全のテクニックで、
曲の核心に向けてどんどん切り込んでいくスタイルなので、

各曲の構造も把握しやすく、

平均律の第2巻を聴いて、
初めてわかった!と思えました。


バッハの中でも平均律は、
情に流れると上手くいかなそうな曲集なので、

カラリとした明るい色調のピアノは、
もってこいだと思いました。


これはぜひ、
第1巻も聴いてみようと思います。



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2015年3月9日月曜日

井上道義&大阪フィルのショスタコーヴィチ:交響曲第4番(2014年録音)

井上道義(1946.12-)氏の指揮する
大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

ロシアの作曲家
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906.9-1975.8)の
交響曲第4番を聴きました。

井上道義氏の
首席指揮者就任披露公演として行われた
大阪フィルハーモニー交響楽団第477回定期演奏会
のライブ収録で、

指揮者67歳の時(2014.4)の録音です。


ショスタコーヴィチ
交響曲 第4番 ハ短調 作品43

大阪フィルハーモニー交響楽団
井上道義(指揮)

録音:2014年4月4・5日、大阪、フェスティバルホール
【OVCL-00550】2014年11月発売


交響曲 第4番 ハ短調 作品43 は、

29歳のときに作曲(1935.9-1936.5)、
30歳のときに初演を予定していたものの(1936.12)

1936年1月に、
ソ連共産党中央委員会機関紙『プラウダ』誌上で、
ショスタコーヴィチ個人への批判が行われたことから、
初演が撤回されました。

ソ連共産党に批判されたということは、
粛清(殺害 or シベリア送り)の危機にあったのでしょうか。

破棄はされなかったものの初演は遅れ、
25年後の1961年12月に初演されました。

これは作品112の交響曲第12番が、
初演(1961.10)されて間もなくの時期に当たります。


  ***

ショスタコーヴィチの交響曲は、
バルシャイ&ケルン放送響の演奏で、
全曲を1曲ずつ聴き進めているところですが、

長く待ち焦がれてきた
井上道義氏のショスタコーヴィチ、
しかも4番が聴けるとのこと、
購入し聴いてみました。


最初のうち、
バルシャイ盤の記憶が残っていたせいか、

オケの機能性の面でいまいちな印象だったのですが、
聴き込むにつれ気にならなくなりました。

安全運転をしない井上の指揮のもと、
大阪フィルが大健闘していることは確かです。


バルシャイ盤では、
わざと熱くなるのを避けて、
楽譜をそのまま再現するだけでも
十分凄い作品であることが示されていたのに対して、

楽譜を尊重しつつも、
その奥にある何かを求めて、

早めのテンポでオケを煽りつつ、
全体像を一筆書きにする井上のスタイルは、

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルの
「革命」を思い起こさせました。


もう10年前なら、
あるいは若さゆえの軽さを感じさせたかもしれませんが、

もう60代後半の井上さん、

中身のぎっしりつまった
渾身の名演となっていると思います。

わかりやすさでは恐らく随一ではないかと。


ぜひこの機会に、
大阪フィルとのコンビで、
ショスタコーヴィチを1曲でも多く録音していただきたいです。

井上道義氏のショスタコーヴィチは、
特別だ、との認識を新たにしました。

2015年3月2日月曜日

ヴィト&ポーランド国立放送響のシューマン:交響曲第1番《春》(1994年録音)

500円で買えるエイベックスの
ベスト・オブ・クラシックスのシリーズから、

ポーランドの指揮者
アントニ・ヴィト(Antoni Wit 1944.2-)の指揮する
ポーランド国立放送交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ロベルト・シューマン(1810.6-1856.7)の
交響曲第1番《春》を聴きました。

ヴィト50-51歳の時(1994.12&1995.3)の録音です。


ロベルト・シューマン
1) 交響曲 第1番 変ロ長調 作品38《春》

 アントニ・ヴィト(指揮)
 ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団
 録音:1994年12月&1995年3月、カトヴィツェ、ポーランド放送コンサート・スタジオ

2) 4本のホルンと管弦楽のための
  コンチェルト・シュテュック ヘ長調 作品86

 アメリカン・ホルン四重奏団
 ダリウシュ・ヴィシュニエフスキ(指揮)
 シンフォニア・ヴァルソヴィア
 録音:2003年7月、ワルシャワ、ポーランド放送スタジオ

【AVCL-25615】2007年12月発売


シューマンの交響曲は、

 第1番 変ロ長調 作品38《春》
 第2番  ハ長調  作品61
 第3番 変ホ長調 作品97《ライン》
 第4番  ニ短調  作品120

の4曲知られていますが、
この作品番号は出版された順番によるものであり、

初演順に並べ直すと、

 第1番(1841年3月)
 第4番(1841年12月)⇒(1853年12月に改訂稿を初演)
 第2番(1846年11月)
 第3番(1851年 2月)

の順になります。

第4番は、
第1番とほぼ同時期に初演されたものの、

第3番初演の2年後、
大幅な改訂稿が初演されたため、

出版が一番最後となり、
第4番と呼ばれることになったそうです。


つまり第1番は、番号そのままに、
作曲者30歳の時に初演された最初の交響曲 と理解すれば良いことになります。


  ***

さてヴィトさんの指揮ですが、

ナクソス・レーベルで
たくさんCDを出されていることは知っていましたが、
ほとんど聴く機会がありませんでした。

唯一、遠山慶子さんが弾く
モーツァルトのピアノ協奏曲の伴奏で、

オケからこれまで聴いたことがないくらい
典雅で軽やかな音色をつむぎ出していたのが印象に残っていました。


今回のシューマン、
やはりオケの鳴らし方が独特で、

どんなに強奏しても耳にうるさく響かない、
つねに余裕のある心地よい鳴りっぷりで、

味わい深い響きに満たされた名演でした


緩徐楽章の心のこもった表現も特筆すべきで、
全体的な見通しもよく効いているので、

これまで今一つわかりにくい感じがしていた
《春》を初めて心から楽しむことができました。


シューマンの交響曲全集は、

 サヴァリッシュ&ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
 メータ&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

の2つの録音が好きなのですが、
第1番にはそれほど心動かされていませんでした。


ヴィトさんのシューマンは、
この2人よりも解釈的によく練れていて、
私には今まででベストの出来でした。



ヴィトさんの指揮で交響曲4曲とも聴けるようなので、
ほかの3曲もぜひ聴いていこうと思います。


強烈な個性によって
他を圧倒するタイプの指揮者ではなさそうですが、

繊細であたたかな感性をもった、
歌心のある職人肌の指揮者だと思いました。

モーツァルトやシューベルト、
ブラームスやブルックナーも良さそうですが、

めぐり合わせの関係か、
ナクソスにはチャイコフスキーやマーラーなど
ロマン派の大物や、ポーランドの現代物を数多く録音しているようです。

楽しみな指揮者にまた一人出会えました。


  ***

後半に収録されている

「4本のホルンと管弦楽のための
  コンチェルト・シュテュック ヘ長調 作品86」

は、曲はそれなりに面白そうなのですが、
演奏・録音ともに今一つで楽しめませんでした。