2015年5月25日月曜日

ヴィト&ポーランド国立響のマーラー:交響曲第3・10番(1994年録音)

ヴィトさんの録音をもう一つ。

ポーランドの指揮者
アントニ・ヴィト(1944.2-)の指揮する
ポーランド国立放送交響楽団の演奏で、

オーストリア帝国生まれの作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3・10番を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調
交響曲第10番嬰ヘ短調

アントニ・ヴィト指揮
ポーランド国立放送交響楽団
録音:1994年11月12-16日、カトヴィツェ、ポーランド国立放送コンサートホール
【Naxos 8.550525-6】

交響曲第3番は、
マーラー35-36歳の時(1865-96)に作曲され、
41歳の時(1902.6)に全曲初演されました。

交響曲第10番は、
マーラー50歳の時(1910)に作曲が始められたものの、
翌年に亡くなったため、第1楽章以外は未完で残されました。

最近では、
補筆完成版(全5楽章)の演奏も増えてきましたが、
これは第1楽章のみの演奏です。


  ***

ヴィトさんのシューマン第1・3番に感動し、
ほかにどんな録音があるのかなと探していたところ、

私の大好きな
マーラーの交響曲第3番を録音していることに気がつき、
取り寄せて聴いてみました。

すると残念ながら、第3番は、
テンポを粘りすぎて停滞気味、
曲への共感も今一つで、聴き通すのが苦痛になる
期待はずれの演奏でした。

それだけならブログに書くこともなかったのですが、

カップリングされていた第10番が、
とんでもない名演でビックリしました。


同じ指揮者とオーケストラによって
ほぼ同時期に収録された演奏とはとても思えません。

わかりにくいはずの第10番の音楽が、
ひたひたと心のひだに入り込んできて、

第9番の延長線上に生まれた
マーラーの傑作の一つとして、

強い共感のもとに聴き終えることができました。


最近こそ、

 金聖響&神奈川フィル
 インバル&東京都響

の名演によって、
第10番の真価を理解できるようになってきたのですが、

それまでは、

 バーンスタイン&ウィーン・フィル
 ザンデルリンク&ベルリン交響楽団
 ラトル&ベルリン・フィル

と聴いてきて、
今一つどこが良いのかわかりかねる、
不思議な印象の作品でした。


今回のヴィトの演奏、
バーンスタインより見通しがよく、

ザンデルリンク、ラトルより、
はるかに共感度の高い演奏。


金聖響とインバルを差しおいてまで
採るべき演奏かは迷うところですが、

1994年の段階で、
もっとも優れた演奏の一つであったことは間違いないと思います。


ヴィトさんのマーラー、
第3番を聴くとほかを聴くのが怖くなってしまうのですが、

第10番と同じレベルの演奏があるかもしれないので、
ゆっくりと一通り聴いていきたいと思います。


※Wikipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」「交響曲第10番(マーラー)」を参照。

2015年5月18日月曜日

ヴィト&ポーランド国立放送響のシューマン:交響曲第2・4番(1993年録音)

ポーランドの指揮者
アントニ・ヴィト(Antoni Wit 1944.2-)の指揮する
ポーランド国立放送交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ロベルト・シューマン(1810.6-1856.7)の
交響曲第2・4番を聴きました。


第1番《春》・
第3番《ライン》で意外な名演を聴かせてくれた

ヴィトさんの指揮で、
残りの2曲(第2・4番)を聴いてみました。

第1・3番の1年前、
指揮者49歳の時(1993.8-10)の録音です。


ロベルト・シューマン
交響曲 第2番 ハ長調 作品61
交響曲 第4番 ニ短調 作品120

アントニ・ヴィト(指揮)
ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団
録音:1993年8月27・28日(第4番)、同年9月30日・10月1日(第2番)、カトヴィツェ、ポーランド放送コンサート・スタジオ
【AVCL-25616】2007年12月発売


シューマンの交響曲は、

 第1番 変ロ長調 作品38《春》
 第2番  ハ長調  作品61
 第3番 変ホ長調 作品97《ライン》
 第4番  ニ短調  作品120

の4曲が知られていますが、
この作品番号は出版された順番によるものでなので、

初演順に並べ直すと、

 第1番(1841年3月)
 第4番(1841年12月)⇒(1853年12月に改訂稿を初演)
 第2番(1846年11月)
 第3番(1851年2月)

の順になります。

第4番は、
第1番とほぼ同時期に初演されたものの、

第3番初演の2年後、
大幅な改訂稿が初演されたため、

出版が一番最後となり、
第4番と呼ばれることになりました。


  ***

さて今回の2曲(2・4番)、

1・3番の予想外の充実ぶりに
かなり期待して聴いたのですが、

残念ながら2・4番は今一つでした。

1・3番とほぼ同じタイプの演奏なのですが、

録音が今一つ冴えなくて、
ほんの少し喰い足りない感がずっと続いてしまい、

こんな筈ではと思っているうちに
聴き終わっていました。


1・3番はナクソスの音源を
エイベックスから再販したものであるのに対し、

2・4番はナクソスの初出時のままなので、

もしかしたらリマスターし直すことで
印象がガラリと変わる可能性もありますが、


この初出時のCDをふつうに評価するなら、

2番は推進力の弱いごく平凡な演奏、

4番はそれなりに聴けますが、
ほかを差しおいて選ぶほどではない演奏に感じました。


1・3番も録音が今一つなら
全然違った印象だったと思うので、

リマスターし直した2・4番を聴いてみたいです。

2015年5月11日月曜日

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタの楽譜

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは、
これまで理想の演奏に出会ってこなかったのですが、
最近これはと思える演奏に出会えました。

そこでいざ聴こうと思ったのですが、
第43番まであるはずなのに、

前半を聴く機会はほとんどなくて、
全体像を知らないことに気がつきました。

そこで今回は、
オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(1756.1-1791.12)の
ヴァイオリン・ソナタについて、

自分に必要な範囲で整理しておきます。


  ***

まず、
モーツァルトの作品分類に用いられる
ケッヘル番号(K.◯◯)とは、

オーストリア生まれの学者
ルートヴィヒ・フォン・ケッヘル(1800.1-1877.6)が編纂した
「モーツァルト全作品年代順主題目録」にもとづく分類番号で、
初版は1862年に刊行されました。

初版の刊行後も改訂が続けられ、
第6版(1964)で大きな改訂が行われたため、

初版の番号とともに、
第6版の番号を併記することが多いです。


  ***

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタに
ふつう付されている通番(第1-43番)は、

1877年から1883年にかけて
ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から刊行された
旧モーツァルト全集にもとづく分類番号です。

ヴァイオリン・ソナタの巻は、
1879年に刊行された

「第18篇
 ピアノ・フォルテとヴァイオリンのためのソナタと変奏曲
 第1・2巻」

に収録されました。
第1巻には、
 第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
 第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
 第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕 
 第4番 ト長調  K.9 〔1764〕
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕 
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕 
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕 
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕 
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕 
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕
 第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕 
 第12番 ト長調  K.27〔1766〕 
 第13番 ハ長調  K.28〔1766〕 
 第14番 ニ長調  K.29〔1766〕 
 第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕 
 第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕
 第17番 ヘ長調  K.55 (K.Anh.C23.01)※偽作
 第18番 ハ長調  K.56 (K.Anh.C23.02)※偽作
 第19番 ヘ長調  K.57 (K.Anh.C23.03)※偽作
 第20番 変ホ長調 K.58 (K.Anh.C23.04)※偽作
 第21番 ハ短調  K.59 (K.Anh.C23.05)※偽作
 第22番 ホ短調  K.60 (K.Anh.C23.06)※偽作
 第23番 イ長調  K.61 (K.Anh.C23.07)※偽作

のソナタ23曲(第1-23番)が収められ、
第2巻には、
 第24番 ハ長調  K296〔1778〕
 第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕 
 第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕 
 第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
 第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕 
 第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕 
 第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕※未完
 第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕 
 第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕 
 第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕 
 第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕 
 第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕※未完
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕※未完
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕※未完 
 第40番 変ロ長調 K454〔1784〕  
 第41番 変ホ長調 K481〔1785〕  
 第42番 イ長調  K526〔1787〕  
 第43番 ヘ長調  K547〔1788〕 
 《羊飼いの娘セリメーヌ》の主題による
 12の変奏曲 ト長調 K.359(K6.374a)〔1781〕 
 《ああ、私は恋人をなくした》の主題による
 6つの変奏曲 ト短調 K.360(K6.374b)〔1782〕 

のソナタ20曲(第24-43番)と変奏曲2曲が収められました。


  ***

この旧全集版(ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社)は、

偽作であることがほぼ断定された
第17-23番を除いたかたちで、

ニューヨークのドーヴァー出版から復刻されています。


Wolfgang Amadeus Mozart,
Complete Sonatas and Variations for Violin and Piano, Series I,
Dover Publications, New York, 1992
 第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
 第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
 第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕
 第4番 ト長調  K.9 〔1764〕
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕
 第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕
 第12番 ト長調  K.27〔1766〕
 第13番 ハ長調  K.28〔1766〕
 第14番 ニ長調  K.29〔1766〕
 第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕
 第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕

 第24番 ハ長調  K296〔1778〕
 第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕
 第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕
 第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
 第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕
 第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕
 第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕※未完


Wolfgang Amadeus Mozart,
Complete Sonatas and Variations for Violin and Piano, Series II,
Dover Publications, New York, 1992
 第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕
 第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕
 第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕
 第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕
 第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕※未完
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕※未完
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕※未完
 第40番 変ロ長調 K454〔1784〕
 第41番 変ホ長調 K481〔1785〕
 第42番 イ長調  K526〔1787〕
 第43番 ヘ長調  K547〔1788〕
 《羊飼いの娘セリメーヌ》の主題による
 12の変奏曲 ト長調 K.359(K6.374a)〔1781〕
 《ああ、私は恋人をなくした》の主題による
 6つの変奏曲 ト短調 K.360(K6.374b)〔1782〕


ドーヴァー版では
旧全集の通番は削除されているのですが、
関係がわかりにくくなるのでそのまま残しておきました。

今は高値がついていますが、
古本で2冊でCD1枚分ほどで手に入れました。

運指等はなにも付されていないので、
このまま演奏に使うのは無理があるのですが、

安く手に入るのなら
聴くだけの者にはそれなりに有用な楽譜です。


  ***

1955年から2007年にかけて
国際モーツァルテウム財団が編集し、
ベーレンライター出版社から刊行された
新モーツァルト全集では、

ヴァイオリン・ソナタは、

「第8篇 室内楽(第92・93巻)
 クラーヴィアとヴァイオリンのためのソナタと変奏曲
 第1・2巻」

として1964年に刊行されました(校訂報告は1977年)。

第1巻には、
旧版の第1-4番、11-16番、25-30番、24・34番
の計18曲のソナタが収められました。
【1】第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
【2】第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
【3】第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕
【4】第4番 ト長調  K.9 〔1764〕

【5】第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕
【6】第12番 ト長調  K.27〔1766〕
【7】第13番 ハ長調  K.28〔1766〕
【8】第14番 ニ長調  K.29〔1766〕
【9】第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕
【10】第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕

【11】第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕
【12】第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕
【13】第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
【14】第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕
【15】第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕
【16】第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
【17】第24番 ハ長調  K296〔1778〕
【18】第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕

第2巻には、
旧版の第35番、32・33・36番、40-43番
の計8曲のソナタと2曲の変奏曲が収められました。
【19】第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕
【20】第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕
【21】第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕
【22】第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
【23】第40番 変ロ長調 K454〔1784〕
【24】第41番 変ホ長調 K481〔1785〕
【25】第42番 イ長調  K526〔1787〕
【26】第43番 ヘ長調  K547〔1788〕
【27】《羊飼いの娘セリメーヌ》の主題による
    12の変奏曲 ト長調 K.359(K6.374a)〔1781〕
【28】《ああ、私は恋人をなくした》の主題による
    6つの変奏曲 ト短調 K.360(K6.374b)〔1782〕


なお1、2楽章の未完のソナタとして
旧全集では通番が与えられていた
ソナタ第31、37-39番の4曲
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕

は、新全集の第2巻に付録として収められました。

そのほか、
旧全集のソナタ第5-10番の6曲
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕

は、新全集では

「第8篇 室内楽(第91巻)クラーヴィア三重奏曲」
 
に分類し直されました。
 
新全集の楽譜は、
すべてインターネット上に公開されています。
「新モーツァルト全集」で検索をかければ、
すぐに見つかります。


  ***
 
新全集をみると、
これでほぼ決定稿と見なせるように思います。

意外に周知されていないように感じるのは、
私が勉強不足なだけかもしれませんが、

著作権などの問題で、
安価に利用しにくいところがあるのかもしれません。


実際に演奏するには
まだ理解が不十分ですが、

聴くだけならまずはこれくらいで良いでしょうか。

2015年5月4日月曜日

ヴィト&ワルシャワ・フィルのブラームス:ドイツ・レクイエム(2012年録音)

ポーランドの指揮者
アントニ・ヴィト(1944.2-)の指揮する

ポーランドのオーケストラ
ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団等の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス(1833.5-1897.4)の
「ドイツ・レクイエム」を聴きました。

ブラームス35歳の時(1869.2)に全曲初演された作品です。
ヴィト68歳の時(2012.8)の録音です。


ブラームス:ドイツ・レクイエム 作品45
 第1曲 悲しんでいる人々は幸いである
 第2曲 人は皆草のごとく
 第3曲 主よ、我が終わりと、我が日の数の
 第4曲 万軍の主よ、あなたの住まいは
 第5曲 このように、あなた方にも今は
 第6曲 この地上に永遠の都はない
 第7曲 今から後、主にあって死ぬ死人は幸いである

クリスティアーネ・リボル(ソプラノ)
トーマス・E・バウアー(バリトン)
ワルシャワ・フィルハーモニー合唱団(ヘンリク・ビョナロフスキ指揮)
ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団
アントニ・ヴィト(指揮)

録音:2012年8月27-29日、ポーランド、ワルシャワ・フィルハーモニー・コンサート・ホール
【NAXOS 8.573061】


ブラームスのドイツ・レクイエムは、
演奏に70分以上かかる大曲(全7曲)ですが、

モーツァルトやヴェルディのように、
劇的な要素があるわけでもないので、

全体を見通しよく、
感動的にまとめ上げるのは難しい曲のようです。


これまで聴いてきたCDを振り返ってみると、

はじめに購入した
バレンボイム&シカゴ響のCDは、

指揮者の持って回った解釈と、
響きの軽薄さにうんざりし、

最後まで聴き通せなかったです。


次に購入した
コルボ&デンマーク放送響のCDは、

バレンボイムとはまったく違った印象で、
宗教的な祈りの感じられる心のこもった演奏だったのですが、

録音の関係か、
全体像がぼやけてしまうのが今一つでした。


それからしばらく
ドイツ・レクイエムから離れていたのですが、

数年前に〈レコ芸特選〉にひかれて
飯森範親&山形響のCDを購入しました。

こちらは全体的に穏当な解釈で、
録音のバランスも取れていて、

これといった欠点の見当たらない、
完成度の高い演奏なのですが、

不思議と心に響いてこない、
感動しない演奏でもあったので、

結局あまり印象に残りませんでした。

ブラームスなので、
指揮者の若さが出ていたのかもしれません。


   ***

これまで3枚買って
どれも残念な内容だったので、

ドイツ・レクイエムには縁がないのかもと思っていたのですが、

最近シューマンで感心した
ヴィトさんのCDが出ていることに気がついて、
手に入れて聴いてみたところ、

これもまた優れた出来で、
初めて感動的に全曲を聴き終えることができました。

隅々にまで心がこもっているのが、
音としてよく伝わってきて、

しみじみとした中にも若々しい感性に満ちた、
ブラームスの名曲であることがすんなり理解できました。


こういう曲なのかとわかってみると、
ほかの名演にも出会ってみたくなりました。

今目をつけているのが
ベルティーニと都響のライブCDです。

それとこういう曲には、
カラヤンも向いているのではないかと。

また聴いたら報告します。


※Wikipediaの「ヨハネス・ブラームス」「ドイツ・レクイエム」を参照。