2015年6月22日月曜日

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルのマーラー:交響曲第3番(1963年&87年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン(1918.8-1990.10)の指揮する
ニューヨーク・フィルの演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3番ニ短調を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

マーサ・リプトン(メゾ・ソプラノ)
ジョン・コリリアーノ(ヴァイオリン)
ジョン・ウェアー(ポストホルン)
スコラ・カントルム女声合唱団
トランスフィギュレーション教会少年合唱団
レナード・バーンスタイン(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1961年4月3日、ニューヨーク、マンハッタン・センター
【Sony Classical 88697943332】CD4/5


交響曲第3番は、

35歳の夏(1895)に第2-6楽章、
翌年に第1楽章が作曲され、8月までに完成されました。

41歳の時(1902.6)に全曲初演されました


交響曲第2番は
35歳の冬(1894.12)に全曲初演されたので、

それほど間を置くこともなく、
第3番が作曲されていたことがわかります。


  ***

第3番は大好きな曲です。

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルの旧盤、
期待いっぱいに聴いてみたのですが、

残念ながら期待はずれの録音でした。

細部まで
彫りの深い表現がゆきわたり、
指揮者の強い意志に貫かれた演奏なのですが、

全体的にテンポがゆっくり過ぎて、
途中で間がもたない感じになって、

長大な第1・6楽章は
聴き通すのがつらくなりました。

第2-5楽章だけなら
先に聴いた《巨人》と《復活》の好調さを維持し、
十分な名演といえるのですが、

交響曲第3番を聴くのは
第1楽章と第6楽章があるからなので、

この両端楽章がダメなのは致命的です。


  ***

新盤はもっと良かったような気がして、
26年後に録音された新盤も聴いてみました。

(ちょうど手元にあったのを思い出しました。)


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

クリスタル・ルートヴィヒ
ニューヨーク・コラール・アーティスツ
(合唱指揮:ヨセフ・フルマーフェルト)
ブルックリン少年合唱団
(合唱指揮:ジェイムズ・マッカーシー)
ニューヨーク・フィルハーモニック
指揮:レナード・バーンスタイン
録音:1987年11月、ニューヨーク、エヴリー・フィッシャー・ホール(ライブ)
【UCCG-4682/3】2010年10月

旧盤よりずっと流れが良くなっていて、
新盤のほうがかなり聴きやすい演奏に
仕上がっていることは確かなのですが、

基本的なテンポ感は新盤もかなりゆっくり目で、
聴いていてじれったくなって来るところが少なからずありました。
これを初めて聴くのなら満足できそうにも思われますが、

いろいろ聴いてきた身からすると、
バーンスタインの第3番は旧盤・新盤とも、
テンポ設定に違和感があって楽しめませんでした。


ほかの指揮者の録音を聴いても、
意外にテンポ設定で失敗していることが多いので、

第3番は指揮にとって、
全体をほどよいバランスで組み立てるのが難しい大曲なのかもしれません。


※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」を参照。

2015年6月15日月曜日

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルのマーラー:交響曲第2番(1963年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン(1918.8-1990.10)の指揮する
ニューヨーク・フィルの演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第2番ハ短調《復活》を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第2番ハ短調『復活』

リー・ヴェノーラ(ソプラノ)
ジェニー・トゥーレル(メゾ・ソプラノ)
カレジエート合唱団
レナード・バーンスタイン(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1963年9月29・30日、ニューヨーク、マンハッタン・センター
【Sony Classical 88697943332】CD2/3

交響曲第2番は、

5楽章構成の最終稿が
34歳の時(1894.12)に完成し、
35歳の時(1895.12)に全曲初演されました。

第1楽章の原型となる交響詩は、
28歳の時に作曲(1888年6-9月)され、
同年11月に初演されているので、

完成まで7年かかっていることがわかります。


  ***

《復活》は、
大風呂敷を広げた感じがあって、
それほど好きな曲ではないのですが、

山田一雄&京響のCD以来、
久しぶりに文句のつけようのない飛び切りの名演に出会えました。


ヤマカズさんのCDは、

情熱が空回りして
オケが耳にうるさく響き、
期待はずれなことが多いのですが、

京響との《復活》は、
ヤマカズさん絶好調時の名演が、

聴きやすいバランスで録音されていて、
《復活》で唯一愛聴している演奏です。


バーンスタインさんの《復活》は、

マーラーを聴き始めたころ、
ちょうど新しい全集を録音していたこともあって、

同じニューヨーク・フィルとの新盤のみ聴いて、
旧盤は聴きそびれていました。

新盤も悪いはずはないのですが、
色々聴いた後での究極ともいえる演奏なので、

解釈が粘り過ぎて重々しく、
全体像がつかみにくくなる印象がありました。


旧盤のほうが速めのテンポで
迷いなく先へ先へと進んでいく若々しさが印象的な演奏で、

はじめて聴く者にも有無をいわせぬ、
強い説得力のある演奏で、
これまでにない圧倒的な感動を受けました。


これを最初に聴いていれば、
《復活》がもっと好きになっていたかもしれません。

バーンスタインの旧マーラー全集、
《巨人》と《復活》は新盤と違う魅力があって、
とてもお薦めの演奏です。


※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第2番(マーラー)」を参照。

2015年6月8日月曜日

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルのマーラー:交響曲第1番(1966年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン(1918.8-1990.10)の指揮する
ニューヨーク・フィルの演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第1番《巨人》を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第1番ニ長調《巨人》

レナード・バーンスタイン(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1966年10月4・22日、ニューヨーク、
フィルハーモニー・ホール(現エイヴリー・フィッシャー・ホール)
【Sony Classical 88697943332】CD1

交響曲第1番は、
29歳の時(1889.11)に
《花の章》付きの5楽章版〔第1稿〕が初演されました。

その後、33歳の時(1893.10)に、
5楽章版の改訂稿〔第2稿〕が初演され、

さらに35歳の時(1896.3)には
《花の章》を削除した4楽章版〔第3稿〕が初演されました。

普段演奏されるのは4楽章構成の第3稿です。


  ***

バーンスタイのマーラーは、
私がクラシック音楽を聴き始めたころ、

マーラーの新全集を録音していたので、

まず新盤を聴いて、
旧盤はほとんど聴いて来ませんでした。

格安で旧盤の全集を手に入れましたので、
こちらをじっくり聴いてみることにしました。

それほど期待はしていなかったのですが、

予想をはるかに上回る名演で、
久しぶりに《巨人》の面白さを堪能しました。


この第一番、

バーンスタインのマーラーですので、
共感度が高いのは当然なのですが、

新盤よりも一気に若返った感じで、

きっぱりとしたキレキレのリズムで、
飽きる間もなく次から次へと場面が展開していき、

鳴りっぷりの良いオーケストラともども、
久しぶりに《巨人》を楽しませてもらいました。

ワルター&コロンビア交響楽団

を筆頭に、
どちらかというと落ちついた雰囲気の、
叙情性の高い演奏で親しんできたのですが、

元気一杯の若々しい演奏のほうが、
《巨人》には合っているように思いました。

こんなに楽しい曲だったんだと、
マーラーの面白さを再確認しました。


※Wikipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第1番(マーラー)」を参照。

2015年6月1日月曜日

シュナイダーハンのモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集 その1

オーストリアのウィーン生まれのヴァイオリニスト
ヴォルフガング・シュナイダーハン(1915.5-2002.5)と、

ドイツのブレーメン生まれのピアニスト、
カール・ゼーマン(1910.5-1983.11)の演奏で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ヴァイオリン・ソナタ集を聴いています。

CD4枚中の1枚目を聴いていきます。
シュナイダーハン38-40歳(1953-55年)の時の録音です。


モーツァルト
ヴァイオリン・ソナタ第24番 ハ長調 K.296
ヴァイオリン・ソナタ第25番 ト長調 K.301
ヴァイオリン・ソナタ第28番 ホ短調 K.304
ヴァイオリン・ソナタ第29番 イ長調 K.305

ヴォルフガング・シュナイダーハン(ヴァイオリン)
カール・ゼーマン(ピアノ)

録音:1954年12月17日、ハノーファー、ベートーヴェン・ザール〔K296〕。
1955年10月6日、ウィーン、コンツェルトハウス〔K301&305〕。
1953年9月19日、ウィーン、コンツェルトハウス〔K304〕。
【POCG-90177】

シュナイダーハンは
38歳から40歳にかけて(1953.9/1954.12/1955.12)、
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを計13曲録音しました。

旧全集の通番(第1-43番)に従って、
どれを録音したのか整理しておきます。

二重丸◎はこのCDの収録曲です。

「第1番 ハ長調  K.6 〔1762-64〕
 第2番 ニ長調  K.7 〔1763-64〕
 第3番 変ロ長調 K.8 〔1763-64〕
 第4番 ト長調  K.9 〔1764〕
 第5番 変ロ長調 K.10〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第6番 ト長調  K.11〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第7番 イ長調  K.12〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第8番 ヘ長調  K.13〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第9番 ハ長調  K.14〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第10番 変ロ長調 K.15〔1764〕※新全集⇒ピアノ3重奏曲
 第11番 変ホ長調 K.26〔1766〕
 第12番 ト長調  K.27〔1766〕
 第13番 ハ長調  K.28〔1766〕
 第14番 ニ長調  K.29〔1766〕
 第15番 ヘ長調  K.30〔1766〕
 第16番 変ロ長調 K.31〔1766〕

 第17番 ヘ長調  K.55 (K.Anh.C23.01)※偽作
 第18番 ハ長調  K.56 (K.Anh.C23.02)※偽作
 第19番 ヘ長調  K.57 (K.Anh.C23.03)※偽作
 第20番 変ホ長調 K.58 (K.Anh.C23.04)※偽作
 第21番 ハ短調  K.59 (K.Anh.C23.05)※偽作
 第22番 ホ短調  K.60 (K.Anh.C23.06)※偽作
 第23番 イ長調  K.61 (K.Anh.C23.07)※偽作

◎第24番 ハ長調  K296〔1778〕
◎第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)〔1778〕
・第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)〔1778〕
・第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)〔1778〕
◎第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)〔1778〕
◎第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)〔1778〕
◯第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)〔1778〕
 第31番 変ロ長調 K372〔1781〕※未完
◯第32番 ヘ長調  K376 (K<6>.374d) 〔1781〕
◯第33番 ヘ長調  K377 (K<6>.374e)〔1781〕
◯第34番 変ロ長調 K378 (K<6>.317d)〔c.1779-81〕
◯第35番 ト長調  K379 (K<6>.373a)〔c.1781〕
◯第36番 変ホ長調 K380 (K<6>.374f)〔1781〕
 第37番 イ長調  K402 (K<6>.385e)〔1782〕※未完
 第38番 ハ長調  K403 (K<6>.385c)〔1782〕※未完
 第39番 ハ長調  K404 (K<6>.385d)〔c.1782 or c.1788〕※未完
◯第40番 変ロ長調 K454〔1784〕
◯第41番 変ホ長調 K481〔1785〕
◯第42番 イ長調  K526〔1787〕
・第43番 ヘ長調  K547〔1788〕 」


偽作の7曲(第17-23番)を境にして、
後半の作品中、未完成の作品をのぞいて録音していますが、

第26・27・43番の3曲は、
完成品であるにもかかわらず録音されていません。

この3曲を外した理由はよくわかりませんが、

録音日をみると、
年に1回数曲ずつ録音するのを
3回繰り返して計13曲収録しているので、

もしかしたら残りの3曲も、
翌年あたりに録音する計画があったのかもしれません。

これ以前の23曲は、
偽作の7曲(第17-23番)はもちろん、

それ以前の16曲も、
モーツァルト10歳までに書かれた初期の作品なので、

ヴァイオリン・ソナタを
選集として録音する場合には
収録されないことが多いです。


  ***

ヴァイオリン・ソナタの

 第24番 ハ長調 K.296
 第25番 ト長調 K.301 (K<6>.293a)
 第28番 ホ短調 K.304 (K<6>.300c)
 第29番 イ長調 K.305 (K<6>.293d)

は作曲者22歳の時(1778)に作曲されました。

第25-30番の6曲は、
同年(1778)11月にパリで作品1として出版されたので、
「パリ・ソナタ」とも呼ばれています。

◎第25番 ト長調  K301 (K<6>.293a)
・第26番 変ホ長調 K302 (K<6>.293b)
・第27番 ハ長調  K303 (K<6>.293c)
◎第28番 ホ短調  K304 (K<6>.300c)
◎第29番 イ長調  K305 (K<6>.293d)
◯第30番 ニ長調  K306 (K<6>.300l)

の6曲です。

第28番のホ短調を含めて、
それほど深さを感じる曲ではありませんが、

BGMとして聴き流すには惜しい、
軽やかな美しさに包まれた名曲揃いです。


  ***

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは、

これまで納得できる演奏に出会えずに、
曲の真価についてわからぬまま生きて来ました。

それほどいろいろ聴いて来たわけでもありませんが、

グリュミオー&ハスキル盤は、
良い演奏のはずなのですが、
音質に難がありました。

グリュミオー&クリーン盤は、
旧盤に比べて数段劣りました。

オイストラフ&パドゥラ=スコダ盤
パールマン&バレンボイム盤
ムター&オーキス盤は、
様式的に多少無理がありました。

これこそはと思った
シェリング&ヘブラー盤も、
あんまり楽しそうでない生真面目な演奏が続いて、
すぐに退屈していました。

西崎たか子&ヤンドー盤、
前橋汀子&エッシェンバッハ盤は
ヴァイオリンの鳴り方に癖があり、
リズムの切れにも難がありました。


シュナイダーハンの演奏は
初めて聴きますが、

どこまでも美しい音色と
軽やかなリズム感に支えられた
明るく伸びのある演奏でした。

ほとんど初めて、
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを、

まったく飽きることなく楽しみながら、
全体を聴き通すことができました。

シュナイダーハンの演奏、
これまでも聴いてきたはずなのですが、

こんなに音色の美しい方だとは気がつきませんでした。

どうやら50年代から60年代にかけて、
演奏スタイルを若干変えているようで、

個人的には、
50年代のモノラル期の録音の方が、
60年代のステレオ期の録音よりも、
圧倒的に美しいと思いました。

60年代の録音は、
技術的な衰えを精神性を前に出すことで補おうとして、
失敗しているように感じました。

もともと精神的な面を
強く押し出すタイプの演奏家ではないので、
50年代の清楚でひたすら美しい演奏にこそ、
シュナイダーハンの真価は現れているように思いました。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタで、
しばらく聴き込んでいきたい演奏に出会えました。


※Wikipediaの「ヴォルフガング・シュナイダーハン」「カール・ゼーマン」「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」「モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ」を参照。