2015年8月13日木曜日

サロネン&ロスアンジェルス・フィルのマーラー:交響曲第3番(1997年録音)

フィンランドの指揮者
エサ=ペッカ・サロネン(1958.6-)の指揮する

アメリカ合衆国のオーケストラ
ロスアンジェルス・フィルハーモニックの演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3番ニ短調を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

アンナ・ラーセン(アルト)
ロスアンジェルス・マスター・コラール女声合唱団
(合唱指揮:ポール・サラムノヴィチ)
カリフォルニア・ポーリスト少年聖歌隊
(合唱指揮:ダナ・T・マーシュ)
マーティン・チャリフォー(ソロ・ヴァイオリン)
ドナルド・グリーン(ポストホルン)
ラルフ・ザウアー(トロンボーン)

ロスアンジェルス・フィルハーモニック
エサ=ペッカ・サロネン(指揮)

録音:1997年10月19・20日、ロスアンジェルス、ドロシー・チャンドラー・パヴィリオン
【SICC1758-9】2014年12月発売


交響曲第3番は、

35歳の夏(1895)に第2-6楽章、
翌年に第1楽章が作曲され、8月までに完成されました。

41歳の時(1902.6)に全曲初演されました


交響曲第2番は
35歳の冬(1894.12)に全曲初演されたので、

それほど間を置くこともなく、
第3番が作曲されていたことがわかります。


  ***

サロネン39歳の時の録音です

バーンスタイン、
レヴァイン、
ティルソン・トーマス、
シャイーと聴いてきて、

どれも期待していたほど満足できなかったマラ3ですが、

最近再販されたのを機会に購入した
サロネンの録音が予想外に素晴らしかったです。


金管・木管の充実した響きに比べて、
弦が多少薄く聴こえるのですが、

難点というよりは、
ほかと違った響きがして、
おもしろく聴き進めることができました。


哲学的に深読みするよりは、

楽譜をあくまで音楽的に、
楽しく美しく鳴らすことに集中して、
いろいろ工夫をこらしている感じです。

細部にこだわりすぎて流れが悪くなることもなく、
全体的な見通しもよく取れていて、

最初から最後まで、
聴くものを飽きさせない構成の見事さは、

作曲家としての独自の読みもあるように感じました。

最終楽章での、
全体を見通した流れの良い解釈も、
ほかの指揮者では聴かれなかったものです。


もともとマーラーが
30代半ばに作った曲ですので、

まだ若かったサロネン39歳の解釈のほうが、
曲の核心をついていたのかもしれません。

内容的に深みに乏しい側面もあるので、

マーラーの他の交響曲には通用しない解釈の
ようにも感じましたが、

第3番に限っていえば、
大成功だといって良いと思います。


作曲家ならではの独自の読みが、
曲の内容とぴったり合致して、
素晴らしい成果を上げた1枚です。


※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」を参照。

2015年8月10日月曜日

柴田淳 『Billboard Live 2013』(2014年3月発売)

柴田淳さんのCDをもう一枚、
最新のライブ・アルバム『Billboard Live 2013』を聴きました。

動画でライブ映像を観て、
彼女の魅力にはまった者として、

ライブCDがあればいいなと思っていたところに
昨春(2014.3)発売され、気になっていた1枚です。

あまり知らない曲ばかりだったので、
購入すべきか迷っていたのですが、
買って大正解。

ライブならではの
生き生きとした音場感が素晴らしく、

無理のないのびやかな歌声が心地良く、
大人なジャズ・ボーカルのCDを聴いた印象で、

柴田さんの音楽にすっかり魅せられてしまいました。

スタジオ録音の音源は、
細部までていねいに表現しようとするあまり、
流れが滞り気味になることがあったのですが、

ライブでは全体の流れが良くなって、

自然なやさしい歌声で
穏やかなメロディが奏でられ、

仕事疲れに絶好な
癒やしの音楽になっていました。


柴田淳『 Billboard Live 2013 』

 1) あなたの名前
 2) 真夜中のチョコレート
 3) メロディ
 4) ひとり歩き
 5) ハーブティー
 6) 月光浴
 7) 道
 8) 月の窓
 9) キャッチボール
10) 今夜、君の声が聞きたい
11) おやすみなさい。またあとで…

 澤近泰輔(ピアノ)
 坂田 学 (ドラム)
 川村 竜 (ベース)
 澤近立景(ギター)

 柴田淳(ボーカル)
【Victor VICL-64140】2014年3月発売


このCDは、2013年11月に行われた
「Blue Note & Billboard Live Tour 2013」

 11月2日(土)Blue Note Nagoya
 11月9日(土)Blue Note Tokyo
 11月14日(木)Billboard OSAKA
 11月19日(火)Billboard TOKYO

より、Billboard Live の模様を音源化したものだそうです。

どの曲がどの日の演奏かまでは明記されていませんが、
恐らく14日と19日の公演を組み合わせたものかと思います。


すべて柴田淳さんのオリジナル曲です。
各曲の初出は次の通り。

1曲目「あなたの名前」は、
8th Album『僕たちの未来』(2011.8)に収録。

2曲目「真夜中のチョコレート」
5th Album『月夜の雨』(2007.2)に収録。

3曲目「メロディ」
6th Album『親愛なる君へ』(2008.6)に収録。

4曲目「ひとり歩き」
3rd Album『ひとり』(2004.2)に収録。

5曲目「ハーブティー」
8th Album『僕たちの未来』(2011.8)に収録。

6曲目「月光浴」
3rd Single として発売後(2002.6)、
2nd Album『ため息』(2003.2)に収録。

7曲目「道」
9th Album『あなとと見た夢 君のいない朝』(2013.3)に収録。

8曲目「月の窓」は、
2nd Album『ため息』(2003.2)に収録。

9曲目「キャッチボール」は、
9th Album『あなとと見た夢 君のいない朝』(2013.3)に収録。

10曲目「今夜、君の声が聞きたい」は、
3rd Album『ひとり』(2004.2)に収録。

11曲目「おやすみなさい。またあとで…」は、
8th Album『僕たちの未来』(2011.8)に収録。


アルバム順に並べなおすと次の通りです。

1st Album『オールトの雲』(2002.3)
→0曲

2nd Album『ため息』(2003.2)
→2曲「月光浴」「月の窓」

3rd Album『ひとり』(2004.2)
→2曲「ひとり歩き」「今夜、君の声が聞きたい」

4th Album『わたし』(2005.3)
→0曲

5th Album『月夜の雨』(2007.2)
→1曲「真夜中のチョコレート」

6th Album『親愛なる君へ』(2008.6)
→1曲「メロディ」

7th Album『ゴーストライター』(2009.11)
→0曲

8th Album『僕たちの未来』(2011.8)
→3曲「あなたの名前」「ハーブティー」「おやすみなさい。またあとで…」

9th Album『あなとと見た夢 君のいない朝』(2013.3)
→2曲「道」「キャッチボール」

『オールトの雲』と『わたし』と『ゴーストライター』をのぞいて、
幅広く6枚分のアルバムから取り上げているので、

ここからさらに、
それぞれのオリジナル・アルバムにさかのぼっていくのもありかなと思っています。


  ***

どの曲も聴き込むごとに
新たな魅力に気がつかされているところですが、

はじめのうちは、
アップテンポで大人な印象の「メロディ」と、

明るい色調のスロー・バラード、
「月の窓」「おやすみなさい。またあとで…」
の3曲に吸い寄せられました。

最近は、
素朴な味わいの中に、
悟りの世界を描いた「道」

さりげないメロディに、
深い歌詞を忍び込ませた「ひとり歩き」

の2曲がいいなあと。


どの曲も、
若いころの研ナオコさんが歌ったら、
ぴったり合いそうでした。

男性なら鈴木雅之さんでしょうか。

いずれそんな機会もあるといいな。


大好きな歌手のかたでも、
いざアルバムを聴くとがっかりすることが多いので、

オリジナル曲がずらりと並んだアルバムで、
ここまで違和感なく聴き進められたのは記憶にありません。


まだ知らない曲がたくさんある状態ですので、
のんびりと聴き進めていこうと思います。

2015年8月6日木曜日

柴田淳 『COVER 70's』(2012年10月発売)

夜な夜なYouTubeなどで
柴田淳さんの歌に親しんできましたが、
とうとうCDを購入しました。

2012年秋に発売された
『COVER 70's』です。

今春に購入して以来、
飽くことなく半年ほど聴き続けています。

数あるカヴァー・アルバムのなかでも出色の出来です。


柴田淳『COVER 70's』

  1) 異邦人 〔久保田早紀/1979年〕
  2) みずいろの雨 〔八神純子/1978年〕
  3) 迷い道 〔渡辺真知子/1977年〕 
  4) あなた 〔小坂明子/1973年〕
  5) 木綿のハンカチーフ 〔太田裕美/1976年〕
  6) 飛んでイスタンブール 〔庄野真代/1978年〕
  7) 青春の影 〔TULIP/1974年〕
  8) 秋桜 〔山口百恵/1977年〕
  9) 東京 〔マイ・ペース/1975年〕
 10) スカイレストラン 〔ハイ・ファイ・セット/1975年〕
 11) 22才の別れ 〔風/1974年〕
 12) Mr.サマータイム 〔サーカス/1978年〕

【Victor VICC-63935】※2012年10月発売。

私が生まれた後に発売され、
ヒットした歌謡曲がずらりと並んでいます。

まだ幼かったからか、
発表された当時の記憶はありません。

実際に意識して聴いたのは
恐らく10年以上たってからのことだったので、

こうして並べられるまでは、
70年代の曲という印象がありませんでした。


どこかで聴いて
それなりに知ってはいるけれど、
細かいところまでは自信がない曲ばかりだったので、

ああこういう曲だったのね、
と感心、納得しながら聴き進めました。


柴田淳さんの歌声は、
それほど圧倒的な声量があるわけではありませんが、

嫌味のない素直な発声で、
特に中音から低音部にかけての伸びやかさが魅力的で、
心を奪われました。

一点、
高音にかけての裏声になる部分は、
最初のうちは気(声の力)が抜けていく感じがして、
ほんの少し違和感がありましたが、

繰り返し聴き込んでいくうちに、

彼女の声の個性として、
魅力の一つに感じられてきました。

原曲はそれほど知らないのですが、
抱いていたおぼろげな原曲のイメージを裏切らない、
オーソドックスなアレンジにも好感が持てました。


個人的には、
「あなた」「青春の影」の伸びやかな歌声が圧倒的で、
これだけでも購入した価値はあったのですが、

「異邦人」
「みずいろの雨」
「迷い道」
「木綿のハンカチーフ」
「飛んでイスタンブール」
「Mr.サマータイム」

もCDでじっくり聴いたことがなかったので、
改めて名曲であることを実感しました。

特に「木綿のハンカチーフ」の良さに初めて気がつけたのは有難かったです。

個人的に聴き込んできた
「秋桜」「22歳の別れ」は、
可もなく不可もない感じですが、
嫌味なところは全くありませんでした。

「東京」と
「スカイレストラン」
は初めて聴きました。

繰り返し聴いているうちに、
曲の良さが伝わってきました。


カヴァー・アルバムは、
実際聴いてみると収録曲の大部分は
それほどもないことが多いのですが、

このCDはどの曲も歌とアレンジの水準が高く、
じわじわ売れ続けているのも納得できます。

お薦めの1枚です。


なお初回限定盤のみ、
「卒業写真 〔荒井由実/1975年〕」
が収録されているそうです。
こちらは未聴です。

ぜひ聴いてみたいのですが、
現在中古で2倍以上の値がついているので、
しばらく我慢しておきます。

2015年8月3日月曜日

シャイー&ロイヤル・コンセルトヘボウ管のマーラー:交響曲第3番(2003年録音)

イタリアの指揮者
リッカルド・シャイー(1953.2-)の指揮する

オランダのオーケストラ
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第3番ニ短調を聴きました。


グスタフ・マーラー
交響曲第3番ニ短調

ペトラ・ラング(メゾ・ソプラノ)
プラハ交響合唱団
オランダ児童合唱団
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
リッカルド・シャイー(指揮)

録音:2003年5月5-9日、アムステルダム、コンセルトヘボウ
【Decca 475 514-2】2004年4月発売


交響曲第3番は、

35歳の夏(1895)に第2-6楽章、
翌年に第1楽章が作曲され、8月までに完成されました。

41歳の時(1902.6)に全曲初演されました。


交響曲第2番は
35歳の冬(1894.12)に全曲初演されたので、

それほど間を置くこともなく、
第3番が作曲されていたことがわかります。


  ***

シャイー50歳の時の録音です

これもまた、
バーンスタイン、レヴァイン、MTTと同じ路線の、
まじめにじっくり進めていくタイプの演奏ですが、

これらの中では、
いちばん成功しているように感じました。


マーラーに期待したい
豊穣で濃厚な響きとは違うのですが、

機能に優れたオーケストラとともに、

あまり余分なものは足さない
普遍的な的な美しさを追求しているようで、

私の期待とは少しズレていますが、
ふつうに美しい演奏だと思いました。


問題があるとすれば
指揮者シャイーの解釈でしょうか。

ただこれは個人の感受性によるものなので、
どこが悪いとも言いにくいのですが、

個人的にはどこか微妙に違和感のある、
一風変わった印象の残るマーラーでした。


イタリア人の基質を活かして、
マーラーの普遍的な姿を描き出した演奏
なのかもしれません。

そういえば、
何でも手広くふる指揮者ですが、
シャイーさんの一番好きな、こだわりのある作曲家って誰なんでしょう。

若いころからの高い評価に比べて、
心から感動した演奏にはまだ出会ったことがありません。

見た目と比べて、
いつもそれほど熱くない
ふつうの演奏が流れていくように感じています。



全体としては、

バーンスタイン(△)<レヴァイン(△)
<トーマス(◯)<シャイー(◯)

といった感じでしょうか。

程良いレベルで大曲をうまくまとめた演奏として、
まずまず成功した録音だと思います。



※WIkipediaの「グスタフ・マーラー」「交響曲第3番(マーラー)」を参照。