2016年6月27日月曜日

イ・ムジチ合奏団のヴィヴァルディ:《四季》(1959年録音)

1951年にイタリアで結成された室内楽団
イ・ムジチ合奏団(I Musici)の演奏で、

ヴェネチア出身の作曲家
アントニオ・ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi, 1678.3-1741.7)の
ヴァイオリン協奏曲集《四季》を聴きました。

ヴィヴァルディ47歳の時(1725年)に出版された
《和声と創意への試み》作品8(全12曲)のうちの最初の4曲です。

スペインのヴァイオリニスト
フェリックス・アーヨ(Felix Ayo, 1933年7月- )の独奏による
2回目の録音(1959年4・5月)です


ヴィヴァルディ
ヴァイオリン協奏曲集《和声と創意への試み》作品8より
 ①第1番ホ長調作品8-1《春》RV.269
 ②第2番ト短調作品8-2《夏》RV.315
 ③第3番ヘ長調作品8-3《秋》RV.293
 ④第4番ヘ短調作品8-4《冬》RV.297
⑤ヴァイオリン協奏曲ホ長調《恋人》RV.271

イ・ムジチ合奏団
フェリックス・アーヨ(独奏ヴァイオリン)
録音:1959年4・5月、ムジークフェラインザール、ウィーン(①-④)。1958年1月、ミラノ、イタリア(⑤)。
【PCD-428】

《四季》は
ヴィヴァルディ47歳の時(1725)に出版された
協奏曲集《和声と創意への試み》作品8(全12曲)の最初の4曲です。

《恋人》は50歳の時(1728)にまとめられた
協奏曲集《ラ・チェトラ》(全12曲)の第10曲目です。

《ラ・チェトラ》といえば、
49歳の時(1727)に出版された
協奏曲集《ラ・チェトラ》作品9(全12曲)が有名ですが、

《恋人》を収める《ラ・チェトラ》は、
作品9の《ラ・チェトラ》とは別の曲集でなので、
混乱しないように《ラ・チェトラⅡ》と呼ぶこともあるようです。

残念ながら、作品9の《ラ・チェトラ》とは違い、
《ラ・チェトラⅡ》全12曲をまとめた録音はほとんどないようです。


  ***

廉価盤なのに音がいいことに驚いた
キープ株式会社さんの復刻シリーズで、
イ・ムジチ合奏団(I Musici)の《四季》を聴いてみることにしました。

有名な録音ですが、
手元において聴いたことはありませんでした。

スペインのヴァイオリニスト
フェリックス・アーヨ(Felix Ayo, 1933年7月- )の独奏による
2回目の録音(1959年4・5月)です。

アーヨ25歳の時の録音で、この4年前(1955)に
1回目のモノラル録音が行われているようですが、
そちらは未聴です。

ちなみにイ・ムジチ合奏団は1951年に結成され、
翌52年3月31日にデビュー・コンサートが行われました。


  ***

このCD、
最初おっとりした感じの出だしで、
一時代前の演奏かなと思ったのですが、
アーヨの独奏が始まると、
明るく美しいヴァイオリンの音色にすぐ心を奪われました。

よく歌うヴァイオリンなのですが、
ありがちな表面的な歌ではなく、
心に深いところにズドンと響いて来て、
あれっ、こんなにいい曲だったのかと、
改めて《四季》の美しさに惚れなおしました。

アーヨ以降の独奏者で
イ・ムジチの《四季》聴いていた時には、
もっとさらさら流れていく美しいだけの演奏に聴こえていたので、

ヴィヴァルディを弾いて
ここまで音楽の中身を感じさせてくれるのは、
恐らくアーヨならではの才能なのだと思います。

そういえば本当に若いころ、
フェリックス・アーヨ独奏のバッハの無伴奏を、
カセットテープ盤で購入し、聴いて感動した記憶があります。

アーヨの昔の録音を探してみようと思います。

2016年6月20日月曜日

ケンプ&ケンペンのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番(1953年録音)

ドイツのピアニスト
ヴィルヘルム・ケンプ
(Wilhelm Kempff, 1895.11-1991.5)の独奏、

オランダ出身のドイツの指揮者
パウル・ファン・ケンペン
(1893.5-1955.12)の指揮する

ドイツのオーケストラ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(Berliner Philharmoniker)の伴奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770.12-1827.3)の
ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37 を聴きました。

ケンプ57歳の時(1953.5)に一気に録音された全集に収録されています


ヴィルヘルム・ケンプ名演集
CD5
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37

 パウル・ヴァン・ケンペン(指揮)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音:1953年5月、ベルリン、イエス・キリスト教会

ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 作品53《ワルトシュタイン》
 録音:1951年
【Membran 10CD Collection 233479】

ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37 は、
ベートーヴェン32歳の時(1803.4)に
交響曲第2番 ニ長調 作品36 とともに初演された作品です。

ピアノ・ソナタ第21番 ハ長調 作品53 は、
34歳の時(1805.5)に出版された作品です


ヴィルヘルム・ケンプによる
ベートーヴェンの協奏曲全集、
CD1枚に1曲ずつの収録なので、
ゆっくり聴き進められるのがありがたいです。

第3番は、
ベートーヴェンのピアノ協奏曲のなかで、
私には一番馴染みのない作品です。

今回のCD、第1・2番と同じく、
真っ正面から取り組んだ変な癖のない演奏で、
どんな曲なのかが過不足なく伝わって来るのはありがたいのですが、

曲に内在する大きなスケールからすると、
ここからさらに二歩三歩と内面に切り込んでほしいようにも感じ、
個人的にそれほど大きな感動は抱きませんでした。

悪い演奏ではないのですが、
ロマンティックな要素の多い曲ではあるので、
もっと内面に深く入り込んでくるような、
大風呂敷を広げた演奏も聴いてみたくなりました。


どちらかというと、
ワルトシュタイン・ソナタのほうが、
ケンプらしいスタイルをギリギリまで突きつめた感のある
手に汗握る名演で、より深く感動しました。

次は第4番へと進みます。

2016年6月13日月曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集2(1972・75年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931.1- )の演奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(Franz Schibert, 1797.1-1828.11)の
ピアノ作品集を聴きました。

7枚組CDの2枚目で、
ピアノ・ソナタ
 第14番 イ短調 D784 ※3楽章
 第15番 ハ長調 D840《レリーク》※2楽章
 第16番 イ短調 D845 ※4楽章
の3曲が収録されています。


CD2
①ピアノ・ソナタ(第14番)イ短調 D784(op.post.143)
②ピアノ・ソナタ(第15番)ハ長調 D840《レリーク》
③ピアノ・ソナタ(第16番)イ短調 D845(op.42)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
録音:1972年(第14・15番)、1975年(第16番)
【Eloquence 480 1218】2008年発売


シューベルト22歳の時、
1819年7月に作曲された
 ピアノ・ソナタ(第13番) イ長調  D.664
から4年をへて、

26歳の時、
1823年2月に作曲されたのが、
 ①ピアノ・ソナタ(第14番)イ短調 D784(op.post.143)※3楽章

28歳の時、
1825年4月に作曲されたのが、未完の大作
 ②ピアノ・ソナタ(第15番)ハ長調 D840《レリーク》 ※2楽章

同年5月頃に作曲されたのが、
 ③ピアノ・ソナタ(第16番)イ短調 D845(op.42)※4楽章
です。

作曲者本人のなかでは、
第16番のソナタが画期になっていたようで、
作曲後、間もなく出版された初版譜には
「グランド・ソナタ 第1番」と題されていたそうです。

※作品番号等の分類については、便宜的に、音楽之友社編『作曲家別 名曲解説ライブラリー17 シューベルト』(音楽之友社、1994年11月)の記述に従いました(「ピアノソナタ 総説」の執筆は平野昭氏)。


2枚目は名曲揃いです。

このうち真ん中に収録されている
 ②第15番ハ長調 D840《レリーク》
は、未完の2楽章の作品で、

自らの心の奥底に向かって
どこまでも沈み込んでいるうちに、
収拾がつかなくなったような作品です。

構成面は弱いのですが、
部分部分の危うい美しさは捨てがたく、
独特の魅力に惹き込まれました。

残りの2曲、
 ①第14番イ短調 D784 ※3楽章
 ③第16番イ短調 D845 ※4楽章
はどちらも完成度の高い、
良くまとまった作品です。

小柄で品のよい感じの14番に対して、
16番は一つの殻を破った感じの規模の大きな作品で、
特に緩徐楽章はベートーヴェンの後期のソナタを聴いているかのようでした。


CDで聴くと、未完の作品を間にはさむので、
ソナタ3曲の切れ目がわかりにくくなる欠点はあるのですが、

それなりに聴き込むと、
作曲家としての変化の過程を知られる1枚として興味深かったです。


ブレンデルのピアノは、
ベートーヴェンだと踏み込み不足や線の細さを感じてしまうのですが、

シューベルトでは不思議と、
楽譜の自然な魅力をそのまま引き出した
過不足のない演奏に聴こえます。

ひと月ほど聴き込みましたので、
そろそろ次の1枚に進みたいと思います。

2016年6月6日月曜日

クレンペラー&フィルハーモニア管のベートーヴェン:交響曲第4・8番(1960年ライブ)

ドイツ帝国ブレスラウ
(現在のポーランドのヴロツワフ)生まれの指揮者
オットー・クレンペラー
(Otto Klemperer, 1885.5-1973.7)の指揮する

イギリスのオーケストラ
フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の交響曲第4・8番を聴きました。

1960年のウィーン芸術週間ライブとして有名な全集で、
Membranの10枚組CD の ◯DISC4 に収録されています。


◯DISC4
交響曲第4番 変ロ長調 作品60
 (録音:1960年5月31日)
交響曲第8番ヘ長調 作品93
 (録音:1960年6月4日)

オットー・クレンペラー(指揮)
フィルハーモニー管弦楽団
【Membran 10CD Collection /No.600135】2014年1月発売

交響曲第4番はベートーヴェン36歳の時(1807年3月)、
交響曲第8番は43歳の時(1814年2月)に初演された作品です。

DISC3の第7番が今一つだったので心配したのですが、

第4・8番ともに、
他の第1・2・3番と同じレベルの出来で、

音の貧しさを乗り越えてなお、
心に響いてくる好演で十分に楽しめました。

フルトヴェングラーのように
曲と一体化して煽り立てていくところがなく、
楽譜から逸脱しない客観的な演奏に徹しているのですが、

出て来る音が驚くほど活き活きとしていて、
思わず耳を吸い寄せられる不思議な魅力があります。

AMのラジオ中継くらいの音質なので、
誰にもお薦めできるわけではないのですが、

私にとっては指揮者クレンペラーの芸風を考える上で、
興味深い全集になっています。


※Wikipediaの「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」「交響曲第4番(ベートーヴェン)」「交響曲第8番(ベートーヴェン)」を参照。