2016年8月30日火曜日

ヤマザキマザック美術館の「パリの巨匠アイズピリ ―描きつづけた80年」展

去る8月28日(日)、
新栄のヤマザキマザック美術館まで、

今年の正月に96歳で亡くなった
フランスの画家ポール・アイズピリ
(Paul AÏZPIRI, 1919年5月14日-2016年1月22日)
の回顧展「パリの巨匠アイズピリ ―描きつづけた80年」
を観に行って来ました。

 ※日程 2016年4月23日(土)~8月28日(日)
 ※主催 ヤマザキマザック美術館/中日新聞

アイズピリについて何も知らなかったのですが、
チラシのゴッホを思わせる個性的な絵柄に惹かれ、
観に行って来ました。


  ***

ヤマザキマザック美術館は、今から6年前(2010年4月)、
ヤマザキマザック株式会社によって開館された美術館で、
地下鉄東山線「新栄町」を降りてすぐの所にあります。

地下から直通で美術館に入って行けるので便利です。

こちらの本社(丹羽郡大口町)が、
江南市の自宅からすぐ近くにあることを知ったので、
本社についても少しだけ調べてみました。

ヤマザキマザック株式会社は
「『世界のモノづくり』の基礎を支える工作機械メーカー」であり、
1919年3月に山崎定吉(1894-1962)氏によって創業されました。

 ※もとは「山崎鉄工所」と呼ばれていたが、
  のちに「ヤマザキマザック」と社名を変更(1985年11月)。

1962年10月に創業者の定吉氏の逝去を受けて、
子息の山崎照幸(1928-2011)氏が代表取締役に就任。

この照幸氏の蒐集による
「18世紀から20世紀にわたる
 フランス美術300年の流れを一望する
 絵画作品及びアール・ヌーヴォーのガラスや家具等」
のコレクションを収蔵、公開することを目的の一つとして、

2010年4月に、山崎照幸氏を初代館長として、
ヤマザキマザック美術館が開館されたそうです。

※ヤマザキマザック美術館のホームページの「ごあいさつ」〈http://www.mazak-art.com/about/message/index.html〉、およびヤマザキマザック株式会社のホームページの「企業情報」〈https://www.mazak.jp/about-mazak/company-history/〉を参照。


  ***

今回のアイズピリの回顧展では、

山崎照幸氏が収集された50点以上に及ぶ
「ヤマザキマザック アイズピリ・コレクション」
の大部分(48点)が公開されていました。

アイズピリの作品を、
まとめて50点以上収蔵されている美術館は、
他にあるのかどうか。

詳しく調べていないので、
違っているかもしれませんが、
日本では「ヤマザキマザック」が唯一のようです。


全体を見渡すと、
人物画が半数以上を占めていました。

ゴッホを健康的にして、
少しキュビズムの要素を加えたような
独特の人物画で、

すぐにアイズピリとわかる
個性的な画風に興味を惹かれました。

ただ残念ながら、彼の人物画は、
個人的にあまり好きにはなれませんでした。

別に嫌いではないのですが、
彼ならではの個性が発揮されるほど、
人間でない異様な何かに変容していくようで、
私の好みには合いませんでした。

唯一いいなと思えたのは、
《ハートのカードを持つ婦人》1985年
【出品作品No.30/図録作品No.32】
ですが、こちらは彼ならではの個性が抑え気味で、
ごくふつうに描いてくれたから気に入ったようにも思われます。


どちらかと言えば人物でないほうが、
私の好みに合う絵が見つかりました。

今回、特にいいなと思えたのは、
生け花や鳥の置物をモチーフにした静物画から1点、

《鳥とブーケ》1988年
【出品作品No.40/図録作品No.44】

そして机上の雑多な物を描いた静物画から2点、

《トランプのある静物》1988年
【出品作品No.39/図録作品No.43】

《静物》1989年
【出品作品No.47/図録作品No.53】

さらに大きな風景画1点、

《旗と船》1989年
【出品作品No.48/図録作品No.54】

以上の4点は、自分でも手に入れたいくらい好きになりました。
特に《旗と船》は、今回のアイズピリ作品のなかで一番気に入りました。

※以上、図録『ヤマザキマザック アイズピリ・コレクション』(2016年4月)を参照。


  ***

展示の半分(3分の2くらい?)は、
ヤマザキマザック美術館の常設展になっていて、
こちらも豪華な展示品に驚かされました。

今回初めて出会い、
心を奪われたのがフランスの女性画家
エリザベト・ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755-1842)
でした。

《エカチェリーナ・フェオドロヴナ・ドルゴロウキー皇女》1797年頃
《リラを弾く女性》1804年

肖像画の得意な
フランス革命を象徴する人気画家だそうで、

Googleで画像検索にかけると、
画像修正したプロマイドが並んでいるようでもあり、
一度まとめて観てみたいと思いました。

あと最後にずらりと並んでいたのが、
フランスのガラス工芸家
エミール・ガレ(1846-1904)の作品群。

ど素人なので何も語れませんが、
そんな私が観てもすなおに美しいと思える
ガラス工芸の作品の数々が並んでいました。

また次回、
特徴的な展示会が開催される時に、
観に来たいと思いました。

2016年8月29日月曜日

広上淳一&京都市響定期演奏会:名曲ライブシリーズ2(2011年録音)

広上淳一(1958年5月- )氏の指揮する
京都市交響楽団第549回定期演奏会
のライブCDを聴きました。


広上淳一指揮
京都市交響楽団定期演奏会/名曲ライブシリーズ2

①ドヴォルザーク:序曲《謝肉祭》作品92
②レスピーギ:交響詩《ローマの祭》
③R.シュトラウス:交響詩《ドン・キホーテ》作品35

京都市交響楽団
独奏:上村昇(京響ソロ主席チェロ奏者)
   店村眞積(ビオラ)
コンサートマスター:渡邉穣
広上淳一(指揮)

録音:2011年8月5日、京都コンサートホール大ホール(京都市交響楽団第549回定期演奏会)
【KSOL1003】2012年2月発売

随分前に手に入れていたのですが、
《ローマの松》の印象が強すぎて他が霞んでしまったので、
しばらく時間を置いて聴き直してみました。

やはり②《ローマの祭》が、
広上氏独特の個性的な解釈が光る、
強い印象の残る熱演でした。

若い頃、日本フィルと収録した
ローマ三部作のCDもかなりの名演だったので、
広上氏の自信曲なのでしょう。

①《謝肉祭》はごく普通の演奏です。
別に不満はないのですが、
それほど深い印象は残りませんでした。


③《ドン・キホーテ》は
初めて聴く曲であることと、

直前の《ローマの祭》の印象が強く残り過ぎて、
今一つ良くわからない演奏だったのですが、

時間を置いて《ドン・キホーテ》だけ繰り返し聴いていると、
どんな曲なのかは良くわかってきました。

ライブとしてはかなりレベルの高い演奏だと思いますが、
他を圧倒する何かがあるかといわれると、
もう一押し説得力が足りないように感じました。

ほかの演奏を知らないので、
いくつかCDを聴いてから、
もう一度聴き直してみようと思います。


全体として聴くと、
②《ローマの祭》の印象が強く残りすぎるので、
定演をそのまま収録するにせよ、
1枚のCDとしては、曲順のバランスが悪いように感じました。

①《謝肉祭》と③《ドン・キホーテ》も、
ライブでこの演奏が聴けたら
十分満足できるレベルだと思います。


広上氏はそういえば、
リヒャルト・シュトラウスを頻繁に取り上げているので、
日本フィルでの録音も含めて、
改めて聴き直していこうと思います。

2016年8月18日木曜日

名古屋ボストン美術館の「ルノワールの時代 ―近代ヨーロッパの光と影―」展

去る8月16日(火)、
金山の名古屋ボストン美術館まで、
「ルノワールの時代 ―近代ヨーロッパの光と影―」展
を観に行って来ました。

日程は
 2016年3月19日(土)~8月21日(日)
主催は、
 名古屋ボストン美術館
 ボストン美術館(図録参照)。


フランスの画家
ピエール=オーギュスト・ルノワール
(Pierre-Auguste Renoir, 1841.2-1919.12)
の名品をたくさん観られるかと期待していたところ、
全87点中4点のみでした。

 32《ブージヴァルのダンス》1883年
 34《ガンジー島の海辺の子どもたち》1883年頃
 特別出品1《ピクニック》
 特別出品2《マッソーニ夫人》

ボストン美術館蔵の2作品のほか、
国内の個人蔵2作品が紹介されていました。

このうち32・34は、これだけで
十分魅力あふれる作品であることが伝わって来ました。

ルノワールの描く女性画には、
個人的にそこまで惹かれないのですが、
そんな私にも惹きつけられたのは34でした

ほかの2点は、
あまりお目にかかれない貴重な作品のようですが、
ほかのルノワールの作品と並べてみないと、
真価はわかりませんでした。

「ルノワールの時代」と謳う以上は、
せめて10作品ぐらいはルノワールが観られる、
と期待するのは素人考えなのでしょうか。

本家のボストン美術館には
ルノワールの作品があまり収蔵されていないのか、
ルノワールの展示にはケタ違いの金額がかかるのか、
その辺の事情はよくわかりません。


 ***

今回は、以前にも観た覚えがある
ボストン美術館蔵の19世紀後半の名作に再会できたのが、
一番の収穫でした。

特にお気に入りなのは
オランダの画家
ヨーゼフ・イスラエルス
(Jozef Israëls, オランダ, 1824-1911)の
 11《別離の前日》1862年
です。

この作品は、
ちょうど2年前(2014年8月14日)、
名古屋ボストン美術館で行われた
「開館15周年記念 ボストン美術館 ミレー展
 ~バルビゾン村とフォンテーヌブローの村から」
を観に行ったときに出会った作品で、
またいずれ再会したいと思っていました。

その他、
今回初めて心を奪われたのは、
アメリカの印象派の画家による2作品です。

アーネスト・リー・メジャー
(Ernest Lee Major, 1864-1950)
19《休息―モンティニー=シュル=ロワン》1888年

フレデリック・ポーター・ヴィントン
(Frederic Porter Vinton, 1846-1911)
20《洗濯女》1890年

自然の緑のなかに
明るく浮かび上がる光の印象が心地よく、
素敵な作品だと思いました。

あとこの2作ほどではないのですが、
フランスの画家による3作品も気になりました。

ジャン=フランソワ・ラファエリ
(Jean-François Raffëlli, 1850-1924)
39《ノートルダム大聖堂前の広場、パリ》
40《サンテティエンヌ・デュ・モン教会、パリ》1897年頃

クロード・モネ(Claude Monet, 1840-1926)
31《アルジャントゥイユの雪》1874年頃
42《チャリングクロス橋(曇りの日)、1900年》1900年

ラファエリの2作品は、
どちらもありがちな風景画なのですが、
他と少し違った味わい深さがあるように感じられました。

モネの2作品は、
素人の私でも知っているモネ独自の画風の42と、
意外な感じがした雪の日の情景画31
が心に残りましたが、
モネの作品としてはより良いものがあるかもしれません。


  ***

私の好きな作品に出会えたので、
それなりに楽しめた企画展でした。

2016年8月1日月曜日

クレンペラー&フィルハーモニア管のベートーヴェン:交響曲第9番(1960年ライブ)

ドイツ帝国ブレスラウ
(現在のポーランドのヴロツワフ)生まれの指揮者
オットー・クレンペラー
(Otto Klemperer, 1885.5-1973.7)の指揮する
イギリスのオーケストラ
フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の交響曲第9番を聴きました。

1960年のウィーン芸術週間ライブとして有名な全集で
Membranの10枚組CD の ◯DISC6 に収録されています。


◯DISC6
交響曲第9番ニ短調 作品125《合唱》
 (録音:1960年6月7日)

ヴィルマ・リップ(ソプラノ)
ウルズラ・ベーゼ(アルト)
フリッツ・ヴンダーリヒ(テノール)
フランツ・クラス(バス)
ウィーン楽友協会合唱団

フィルハーモニー管弦楽団
オットー・クレンペラー(指揮)
【Membran 10CD Collection /No.600135】2014年1月発売

第9は大曲なので多少心配していましたが、
幸い好調を維持していて、

熱くならないのになぜか面白い、
耳が吸い寄せられる独特の魅力をたたえた演奏に仕上がっていて、
久しぶりに第9を堪能することができました。

音質は今ひとつですが、
聴きにくい威圧的な音ではないので、
いろいろ聴き込んでいく中の1枚としては、
まずまず納得できる高いレベルの演奏だと思いました。

今回の全集、
第7番のみ明らかに不出来でしたが、
ほかは好調さを持続していて、
充実した時間を過ごすことができました。

音質はどれも似たり寄ったりで、
AMラジオから聴こえてくるライブと思えば、
ふつうに聴けるレベルでした。

クレンペラーらしく、熱くならないのになぜか、
耳を吸い寄せられる魅力があって、
不思議と最後まで聴き通してしまう、
クレンペラーならではの演奏が繰り広げられていました。

なおテンポは速めではないものの、
目立ってゆっくりなわけでもなく、
どれも穏当なテンポ設定に思われました。

クレンペラーというと遅めのテンポを想定しがちですが、
75歳の時のベートーヴェンはいたって穏当で、
ふつうに演奏すればそれですべてがうまくいく、
とても相性のよい作曲家であるように感じました。

クレンペラーのベートーヴェンといえば、
スタジオ録音の全集のほうを上げるのが普通だと思うので、
次はそちらを聴かねばならぬと思い始めているところです。