2016年12月26日月曜日

ケンプ&ケンペンのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番(1953年録音)

ドイツのピアニスト
ヴィルヘルム・ケンプ
(Wilhelm Kempff, 1895.11-1991.5)の独奏、

オランダ出身のドイツの指揮者
パウル・ファン・ケンペン
(1893.5-1955.12)の指揮する

ドイツのオーケストラ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(Berliner Philharmoniker)の伴奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770.12-1827.3)の
ピアノ協奏曲第4番を聴きました。

ケンプ57歳の時(1953.5)に録音されました

※Wikipediaの「ヴィルヘルム・ケンプ」「パウル・ファン・ケンペン」「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」を参照。


ヴィルヘルム・ケンプ名演集
CD6
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58
 パウル・ヴァン・ケンペン(指揮)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音:1953年5月、ベルリン、イエス・キリスト教会

ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 作品57《熱情》
 録音:1951年
【Membran 10CD Collection 233479】


しばらく空きましたが、
ケンプさんの最初のベートーヴェン、
ピアノ協奏曲全集から第4番を聴きました。

自分がピアノを弾かないからか、
第3・4番はそれほど聴き込んでいないので、
他の録音をあまり知りません。

他にもたくさん名演はあるのでしょうが、

ベルリン・フィルの
分厚く勢いのある音に引けを取らない、
ケンプのピアノの端正な美しい音色に、
最後まで見通しよく聴き薦めることができました。

幻想的なところのある曲ですが、
あまり崩し過ぎないで、曲そのもので勝負しているのが好印象でした。

私には十分満足できるレベルの演奏でした。

メンブランの復刻は音質が今一つなことが多いのですが、
これはどれも程々な満足できる音で聴こえています。

しかし廉価版じゃなかったら、
さらに良い音で聴けるのかもしれません。

今後機会があれば書い直しも考えます。


《熱情》も協奏曲と同じく、
没入型ではない、曲から少し距離を置いたスタイルで、
古典的な形のなかで存分にやれることをやり尽くした感じの演奏です。

1回聴くだけだと多少物足りなく思うかもしれませんが、
何をしているのかよくわかるので、繰り返し聴くのにぴったりだと思いました。

普通に聴いて、
十分に満足できる名演だと思います。

2016年12月19日月曜日

メンゲルベルク&アムステルダム・コンセルトヘボウ管のバッハ:マタイ受難曲(1939年録音)

オランダの指揮者
ウィレム・メンゲルベルク
(Willem Mengelberg, 1871年3月-1951年3月)の指揮する

オランダのオーケストラ
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
(Johann Sebastian Bach, 1685年3月-1750年7月)の
マタイ受難曲(Matthäus-Passion)を聴きました。

メンゲルベルク68歳の時(1939年4月)の録音です


J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244

 カール・エルプ(福音史家 テナー)
 ウィレム・ラヴェリ(イエス バス)
 ジョー・ウィンセント(ソプラノ)
 イローナ・ドゥリゴ(アルト)
 ルイス・ヴァン・ドゥルダー(テナー)
 ヘルマン・シャイ(バス)

ツァングルスト少年合唱団
アムステルダム・トーンクンスト合唱団
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
ウィレム・メンゲルベルク(指揮)

録音:1939年4月2日ライブ
原盤:Philips LP A00150-53
【OPK 7021-3】※発売2006年4月

マタイ受難曲は、バッハ42歳の時に
作曲、初演(1727年4月)されたと推定される作品です

※確かな演奏記録にもとづいて、
 44歳の時(1729年4月)の初演説もあり。
※最終稿は51歳の頃(1736年)に完成。


  ***

この録音の存在は、学生の頃に
宇野功芳氏の著書で知りました。

なかなか購入する機会がなく、
2006年発売のオーパス蔵盤が、
初体験となりました。

実際に聴いてみると、
今から80年近く前の録音なので当然なのですが、
予想以上に音が悪く、

近年ではありえない
叫ぶような合唱の発声法にもびっくりして、
聴くのを止めてしまいました。

時折思い出して、
聴いてみては失望することの繰り返しだったのですが、

最近になって、
古い録音に合ったほどほどの再生方法を見つけ、
ようやく感動のうちに最後まで聴き通すことができました。

歌舞伎で大見得を切るような、
オーバーアクションを楽しむ感覚で、
聴き方のツボのようなものはわかったように思います。

やはり今となっては
かなり時代がかった解釈であることは確かなので、
最初の1枚目としてはお薦めできませんが、

曲の真髄をわしづかみにした
歴史的録音として、聴いておく価値は十分にあると思いました。

2016年12月12日月曜日

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルのマーラー:交響曲第5番(1963年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン(1918.8-1990.10)が、
ニューヨーク・フィルを指揮して録音した

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第5番嬰ハ短調を聴きました。

指揮者44歳の時(1963年1月)の録音です


CD7
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

 ジェイムズ・チェンバース(ホルン)
 レナード・バーンスタイン(指揮)
 ニューヨーク・フィルハーモニック
 録音:1963年1月7日、ニューヨーク、フィルハーモニー・ホール(現エイヴリー・フィッシャー・ホール)
【Sony Classical 88697943332】2012年6月発売。

交響曲第5番嬰ハ短調は、
マーラー44歳の時(1904年10月)に初演された作品です


先月バーンスタインが69歳の時に、
ウィーン・フィルと録音したマラ5を聴き直し、

指揮者の熱意が空回りする
恣意的な表現に辟易したのですが、

若い頃のニューヨーク・フィルとの
マラ5ならどうだろうと思い、聴いてみることにしました。

その結果、
旧盤の方は音楽的な流れをぶった切ることのない、
ごく自然な表現で、まずまず聴ける演奏に仕上がっていました。

ただし若さゆえか、
今一つ解釈に物足りないところがあって、
ほかを圧倒する何かがあるわけではない、
ふつうのマラ5であると思いました。

初めて聴く分には、
十分満足のいくレベルの演奏ですが、
ぜひともこの録音でなければ、という強い個性には欠ける演奏でした。

大好きなはずのバーンスタインのマーラーですが、
改めて聴いてみると、超名演と隣り合わせに、
そこまででない演奏もたくさん含まれていることに気がつくことが多いです。

2016年12月1日木曜日

新垣隆:交響曲《連祷-Litany-》&ピアノ協奏曲《新生》

佐村河内守:交響曲第1番《HIROSHIMA》の
作曲者として世に知られるようになった

新垣隆(1970.9- )氏の新作交響曲のCDを聴きました。


新垣隆
①交響曲《連祷(れんとう)》―Litany―
②ピアノ協奏曲《新生》
③流るる翠碧(すいへき)

新垣隆(①指揮、②③ピアノ)
中村匡宏(②③指揮)
東京室内管弦楽団
録音:2016年9月15日、福島市音楽堂
【UCCD-1443】2016年11月発売


偽作騒動が明らかになる前に、
新人作曲家による話題の交響曲とあれば
一度は聴いておこうと思って《HIROSHIMA》のCDを購入し、
感想をこのブログにアップしていました(2011年8月3日)。

その時の感想を要約すると、

全体の印象としては、救いのあるショスタコービッチ。 時にチャイコフスキーやラフマニノフを思わせる美しい場面もあって、 わかりにくい音楽ではありませんでした。

ただし曲全体の構成には問題があって、3楽章ともゆっくり始まってゆっくり終わる音楽なので、CDでは途中で飽きが来てしまいました。

私の好みからいえば、3楽章のみであれば普通に名曲だと思いました。

  ***

旧作は全体として、
暗く重々しい雰囲気がつづく作品で、
良いところもたくさんあるものの、
あまり聴き返したいとは思いませんでした。

ただし、とにかく長大な交響曲を
感動的にまとめ上げた力量には感心し、
次回作に期待したいと思っていました。

ところがその後、
本来の作曲者 新垣隆氏の存在が明らかになるとともに、
曲の存在自体が葬り去られる顛末となりましたので、
次回作を聴く機会はもうなくなったのかと残念に思っていました。

ここから後の経緯はよく知らないので割愛。

今回改めて、
新垣氏本人の意志によって書き上げた
新作の交響曲にピアノ協奏曲まで聴けるということで、
ぜひ聴いてみたいと思って購入しました。


  ***

発売から2週間ほどの間に、
4、5回聴き通してみた上での感想です。

オケの色合いはやはり前作と似ていて、
交響曲《HIROSHIMA》が新垣氏の作品であることを再確認できました。

しかし長大さにうんざりした前作に対して、
新作では、聴き手を惹きつける聴かせどころのツボをよく心得ていて、
全曲を飽きずに聴き通すことができました。

聴衆をほどよく飽きさせずに全曲をまとめ上げる手腕が、
格段と上手くなっているように感じました。

それでも真面目な人柄を反映しているのか、
全体的に暗めの重々しい雰囲気なので、
個人的にあまり好きな曲調ではないのですが、

前作ほど極端に暗さを押しつけてくるわけではなく、
美しいメロディも程よいバランスで織り交ぜてあるので、
全体を一つのよくできた交響曲として、
感動的に聴き終えることができました。

個人的には、
交響曲なら4楽章だろうという思いもあるので、
もう少し明るい希望的な要素を増やした
4楽章編成の第3交響曲をぜひ書いてほしいです。


新作のピアノ協奏曲のほうは、
プロコフィエフやバルトークをまぜこぜにしたような、
ハードボイルドな感じの作品。

ショパンやラフマニノフなどの
美しいメロディに期待すると肩透かしにありますが、
新垣氏のどちらかといえば現代音楽よりの側面を
垣間見れるように思いました。

個人的にはあまり好きな作品でないのですが、
最初の協奏曲としては十分な出来だと思うので、
こちらも次回作のほうに期待したいです。