2018年2月26日月曜日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第1番(1985年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第1番《巨人》を聴きました。

指揮者49歳の時(1985年2・3月)の録音です


グスタフ・マーラー
交響曲第1番《巨人》

 エリアフ・インバル(指揮)
 フランクフルト放送交響楽団

録音:1985年2月28日-3月1日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO-73117】2010年9月発売。

交響曲第1番は、
2部構成〔1部1-3楽章/2部4・5楽章〕
からなる「交響詩」の第1稿として、
マーラー29歳の時(1889年11月)に
作曲者本人の指揮するブダペスト・フィルによって初演されました。

 →この第1稿「ブダペスト稿」とも呼ばれていますが、
  楽譜は現存していません。

この初演はうまく行かなかったので、
第2・3・5楽章に改訂を施した第2稿を、
「交響曲様式による音詩《巨人》」として
33歳の時(1893年10月)に演奏しましたが、
成功を収めるには至りませんでした。

 →この第2稿は、
  93年10月にハンブルクで演奏された後、
  翌年7月にヴァイマルでも再演されました。
  両者の細かな変更点を問題とする場合、
  「ハンブルク稿」「ヴァイマル稿」と分けて呼ぶことがあります。

その2年半後、
マーラーが35歳の時(1896年3月)に
第2楽章の〈花の章〉が削除され、
初めて全4楽章の「交響曲」として演奏されました。

この3ヶ月ほど前(1895年12月)に、
第2「交響曲」が全曲初演されているので、

同様の取り組み方をしてきた《巨人》が、
マーラー本人にとっての第1「交響曲」であることを、
宣言する意図があったのかもしれません。

以上、Wikipediaの「交響曲第1番(マーラー)」を参照。


  ***

Blu-spec CD 仕様で、
2010・12年に再販された
インバル&フランクフルト放送響のマーラー

第3番から第10番までは
《大地の歌》も含めて聴き終えて、
残るは最初の第1・2番のみとなりました。

旧版との音質の差異は、
すべてを聴き比べたわけではありませんが、

Blue-spec CD のほうが瑞々しく、
いかにもホールで鳴り響いている自然なオケの音に近い印象で、
無機的な印象のあったインバルのマーラーを、
再評価するきっかけになりました。


第1番は、
後の番号に比べて音楽的にうすい印象があるので、
楽譜に忠実なインバルの路線では満足できないかもと心配しましたが、

繊細ながらも若々しさを感じさせる美しい演奏で、
久しぶり新鮮な感動のうちに《巨人》を聴き終えることができました。

しばらく遠ざかっていましたが、
他の指揮者の《巨人》も聞いてみたくなりました。

特別なことをしている風ではないのに、
ああ美しい曲だなと思っているうちに
最後まで聴き進められたので、
曲自体も十分魅力的なんだと再認識しました。



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2018年2月19日月曜日

NAXOSのモーツァルト:フルートとハープのための協奏曲&協奏交響曲(1988年録音)

NAXOSで1988年に録音されたCDから、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-1791年12月)の
フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K,299
と、協奏交響曲 変ホ長調K.297b
を収めた1枚を聴きました。


モーツァルト
①フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K. 299
 ・イジー・ヴァーレク (フルート)
 ・ハナ・ミュラロヴァー (ハープ)

②協奏交響曲 変ホ長調 K. 297b
 ・イジー・クレイチー (オーボエ)
 ・ヴァーツラフ・クイジバト (クラリネット)
 ・ズデニェク・ティルシャル (ホルン)
 ・イジー・ザイドル (ファゴット)

カペラ・イストロポリターナ
リヒャルト・エトリンガー(指揮)

録音: ブラチスラヴァ[スロヴァキアの首都]、チェコスロヴァキア放送[現在のスロヴァキア放送]のコンサート・ホール、1988年7月12-15日(①)、1988年10月16日(②)
【NAXOS 8.550159】1989年2月発売


よく知らない方々の名前が並んでいたので、
少し調べてみました。

詳細不明な方もいますが、独奏者は
チェコ・フィルのメンバーを中心に、
チョコで活躍していた奏者を用いているようです。

 フルート独奏の
 イジー・ヴァーレク
 (Jiří Válek, 1940年6月- )は、
 チェコ・フィルの首席フルート奏者、

 ハープ独奏の
 ハナ・ミュラロバー(Hana Müllerová)は、
 プラハ交響楽団のハープ奏者。


 オーボエ独奏の
 イジー・クレイチー(Jiří Krejčí)と、

 クラリネット独奏
 ヴァーツラフ・クイジバト(Vaclav Kyzivat)
 の2人は詳細不明。

 ホルン独奏の
 ズデニェク・ティルシャル
 (Zdenek Tylsar, 1945年4月-2006年8月)は、
 チェコ・フィルの首席ホルン奏者、

 ファゴット独奏の
 イジー・ザイドル(Jiří Seidl)も、
 チェコ・フィルのファゴット奏者。

オーストリアの指揮者
リヒャルト・エトリンガー
(Richard Edlinger, 1958年4月-2005年11月)
が指揮を、

スロバキアの首都ブラチスラヴァで
1983年に結成された室内オーケストラ
カペラ・イストロポリターナ
(Capella Istropolitana)が伴奏を担当していました。


  ***

多少古ぼけた感のある
八十年代後半のオーソドックスな印象の録音で、
聴いてすぐに虜になった訳ではないのですが、

程良いテンポ感で、
曲の良さがすんなり心に届いてくる演奏で、
聴き込むほどに味わいが増してきました。

多少オケが弱いようにも感じますが、
その分、独奏者がはっきり浮かび上がってきて、
「協奏」曲であることを再確認しました。

名手をそろえた大オーケストラとの録音だと、
ソロパートと伴奏との違いが聴き取れないことも多いものです。

これ1枚が際立って優れているとは言いませんが、
好演の一つであることは間違いないと思います。

エイベックスなどで、
リマスターして再発売する機会があれば、
リフレッシュされた音で改めて聴いてみたいです。

フルート独奏の イジー・ヴァーレク と、
ホルン独奏の ズデニェク・ティルシャル は、
NAXOSの録音が多いようなので、
探して聴いてみようと思います。



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2018年2月12日月曜日

コンヴィチュニー&ゲヴァントハウス管のベートーヴェン:交響曲第3番《英雄》(1959年録音)

朝比奈隆&大阪フィルの
ベートーヴェンに合わせて、

チェコのモラヴィア生まれの指揮者
フランツ・コンヴィチュニー
(Franz Konwitschny,1901年8月14日-62年7月28日)が、
59・60歳の時(1959年6月~61年8月)に

ドイツのオーケストラ
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(Gewandhausorchester Leipzig)と録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
交響曲全集を聴いていきます。

今回は第3番《英雄》を収めた1枚です。


ベートーヴェン:交響曲全集~
Disc2
① 交響曲第3番変ホ長調 Op.55『英雄』
②《レオノーレ》序曲第1番 Op.138
③《レオノーレ》序曲第2番 Op.72a

フランツ・コンヴィチュニー(指揮)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

録音:1960年3月1-15日(①)、1959-61年(②③)
【Berlin Classics 0300926BC】2017年5月発売
 ※録音月日の情報は、CD付属の解説文を参照しました。
  交響曲については全9曲明記されていますが、
  序曲は一部をのぞいて月日の情報は明らかにされていません。


交響曲第3番は、
ベートーヴェン34歳の時(1805年4月)に
公開初演されました。


少し速めのテンポで、
全体の見通しよく一気に駆け抜けた演奏。

《英雄》は大曲ゆえか、
聴いていて全体の構成がよくわからなくなることも多いのですが、

スッキリとした見通しの良い解釈で聴かせてくれるので、
全体が程良いバランスに整理されていて、

集中を切らさずに、
最後まで聴き通すことができました。

個人的には、
崩れるギリギリの所までテンポを落として、
その先にある何かを示そうとした
朝比奈のスケールの大きな演奏のほうにこそ、
より大きな魅力を感じるのも確かですが、

取っつきやすさ、
わかりやすさで選ぶなら、
コンヴィチュニーのほうが、
朝比奈より上だと思いました。


コンヴィチュニー&ゲヴァントハウス管の響きは、
マズア&ゲヴァントハウス管のそれを多少渋めにしているものの、

マズアのときに聴きなじんでいた
明るく清新な軽めのオケの響きと、
本質的にはそれほど変わらないように感じました。

朝比奈隆&大阪フィルのほうが、
はるかに無骨で豪快な演奏を繰り広げていたのは、
意外な印象でした。



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2018年2月5日月曜日

コンヴィチュニー&ゲヴァントハウス管のベートーヴェン:交響曲第1・2番(1959年録音)

朝比奈隆&大阪フィルの
ベートーヴェンに合わせて、

チェコのモラヴィア生まれの指揮者
フランツ・コンヴィチュニー
(Franz Konwitschny,1901年8月14日-62年7月28日)が、
59・60歳の時(1959年6月~61年8月)に

ドイツのオーケストラ
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(Gewandhausorchester Leipzig)と録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
交響曲全集を聴いていきます。

まずは第1・2番を収めた1枚です。


ベートーヴェン:交響曲全集~
Disc1
① 交響曲第1番ハ長調 Op.21
② 交響曲第2番ニ長調 Op.36
③《プロメテウスの創造物》序曲 Op.43

フランツ・コンヴィチュニー(指揮)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

録音:1959年6月11-16日(①②③)
【Berlin Classics 0300926BC】2017年5月発売
 ※録音月日の情報は、CD付属の解説文を参照しました。
  交響曲については全9曲明記されていますが、
  序曲は一部をのぞいて月日の情報は明らかにされていません。


交響曲第1番は、
ベートーヴェン29歳の時(1800年4月)に
第2番は32歳の時(1803年4月)に初演されました。


その風貌から何となく
芸風が似ているイメージがあったので、
朝比奈のベートーヴェンに合わせて、
コンヴィチュニーの録音も聴いていくことにしました。

重々しくどっしりした
巨匠風の演奏を想定していたのですが、

聴き慣れた朝比奈氏の演奏と比べると、
はるかに洗練された軽めの爽やかな印象で、
すんなりと耳に入ってくる
わかりやすい演奏が繰り広げられていました。

マズアで聴き慣れた
ゲヴァントハウスの清新な響きが、
ここですでに聴かれることに嬉しい驚きがありました。

どちらが良いとは一概にいえませんが、
初めて聴いて、曲の美しさに率直に惹き込まれるのは、
コンヴィチュニーのほうだと思いました。

それほど重々しく聴こえないので、
その点聴き込むと物足りなくなってくるかもしれませんが、

時々聴いて、
その美しさにうっとりする分には、
申し分のない録音といえるでしょう。



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