2018年3月25日日曜日

西崎崇子&スロヴァキア・フィルのブラームス:ヴァイオリン協奏曲(1989年録音)

名古屋生まれ、
香港在住のヴァイオリニスト
西崎崇子(にしざきたかこ, 1944年4月14日- )
の独奏、

アメリカ合衆国の指揮者
スティーヴン・ガンゼンハウザー
(Stephen Gunzenhauser, 1942年4月8日- )
の指揮する

スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団
の伴奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月7日-1897年4月3日)
のヴァイオリン協奏曲 ニ長調を聴きました。

西崎氏45歳の時(1989年5月)の録音です


ブラームス
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

西崎崇子(ヴァイオリン)
スティーヴン・ガンゼンハウザー(指揮)
スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1989年5月22-27日、ブラティスラヴァ(スロヴァキア首都)、スロヴァキア・フィルハーモニック・コンサートホール
【AVCL-25670】2007年12月

ヴァイオリン協奏曲は、
ブラームス45歳の時(1879年1月1日)に初演された作品です

  ***

西崎崇子氏のCDは、
NAXOSにたくさんあることを知っていましたが、
一度も聴いたことがありませんでした。

今回、廉価版というだけで、
あまり期待せず聴いてみたのですが、
意外な名演に驚かされました。

オーソドックスなスタイルで、
小細工せずに真正面から音楽と向き合って、
素直に感動できる演奏に仕上がっていたので、
久しぶりに良くできた名曲であることを実感できました。

技術的に切れ味鋭いとはいえないのですが、
聴いていて不満を感じるレベルではなく、
あくまで内容で勝負しようとしているところは大いに好感が持てました。

ガンゼンハウザーの指揮も見事で、
ブラームスらしく懐の深い、自然な響きを引き出しており、
繰り返し聴き込むごとに味わいの増すCDだと思いました。


  ***

西崎氏の録音、
これは注目しなければと思い、

併録曲のブルッフが気になって、
もとのNAXOSのCDを手に入れてみましたが、
こちらはブラームスも含めて、
印象が大きく異なったので要注意です。


ブルッフ:
 ①ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
ブラームス:
 ②ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

西崎崇子(ヴァイオリン)
スティーヴン・ガンゼンハウザー(指揮)
スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1989年5月22-27日、ブラティスラヴァ(スロヴァキア首都)、スロヴァキア・フィルハーモニック・コンサートホール
【8.550195】1992年6月


エイベックスのリマスター盤と比べると、

独奏ヴァイオリンがかなり前に出て、
のびやかさよりは耳にきつい印象が残る一方、

オケの伴奏は一歩後ろに下がって鮮明さに欠け、
いかにも安っぽい印象で、

とても同じ演奏には思えませんでした。

AVEXのリマスター盤で聴く限りは、
調和の取れた美しい録音で、
誰にでもお薦めできる演奏だったのですが、

NAXOSの90年代に発売された盤は、
独特の安っぽい響きがマイナスで、
お薦めできるレベルではありませんでした。

もし購入を考える場合は、
ブラコン1曲のみにはなりますが、
AVEXのリマスター盤のほうをお選びください。

なお、
このCDに併録されているブルッフは、
ブラームス以上に入魂の演奏なので、
新しいリマスターで聴けたらさぞかし、と思いますが、

現状ではブラームスと同じく、
音質面で大きく損をしている印象でした。

いずれどこかで、
リマスター盤が出たら、
ぜひ聴き直してみたい演奏でした。


※WIkipediaの「西崎崇子」「スティーヴン・ガンゼンハウザー」「スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団」「ヴァイオリン協奏曲(ブラームス)」の各項目を参照。





にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

2018年3月18日日曜日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第2番(1985年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第2番《復活》を聴きました。

指揮者49歳の時(1985年3月)の録音です


グスタフ・マーラー
交響曲第2番《復活》

 ヘレン・ドナート(ソプラノ)
 ドリス・ゾッフェル(アルト)
 北ドイツ放送合唱団
 (合唱指揮:ヴェルナー・ハーゲン)
 デイル・ワーランド・シンガーズ
 エリアフ・インバル(指揮)
 フランクフルト放送交響楽団

録音:1985年3月28・29日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO-73276/7】2012年6月発売。

交響曲第2番の作曲は、
1888年3月に交響曲第1番の第1稿が完成したあと間もなく始められ、
同年9月に第1楽章のみ完成しました。

その後いったん中断していたようで、
3年後の1891年10月には、この第1楽章のみ
交響詩《葬礼》という独立した作品として、
出版する可能性を探っていたことが知られています。

第1楽章の完成から5年をへた1893年
第1交響曲の第2稿が完成したのに合わせて(1月)、
第2交響曲の第2-4楽章まで作曲しました(7月)。

最終楽章は、
それからさらに半年をへた1894年2月に
指揮者ハンス・フォン・ビューローの葬儀に
出席したとき聴いた音楽に強い衝撃を受けて作曲されました。

全5楽章の最終稿はこの年(1892年)の12月に完成しました。
着想から完成まで6年半余りの歳月がかけられたことになります。

第2交響曲の全曲初演は、
完成からさらに3年をへた1895年12月に行われました。

なお初演の成功を契機に、
第1交響曲の再改訂が行われ、
第2交響曲の初演から3ヶ月たった1896年3月に
《花の章》を削除した第1交響曲の最終版の初演が行われました。

※Wikipediaの「交響曲第1番(マーラー)」「交響曲第2番(マーラー)」を参照。


  ***

ようやく最後の1枚になりました。

指揮者の強い意志が一本通った熱い演奏で、
一番に、バーンスタイン&ニューヨーク・フィルの旧録音を思い出しました。

バーンスタインよりは
音楽の自然な流れにそっていて、
細かなところまで磨き上げられている側面もあるのですが、
冷静というわけではなく、
指揮者の曲への熱い思いが率直に伝わって来て、
最後まで興味深く聴き進めることができました。

まずは模範的な《復活》の名演といって良いと思います。

ただ個人的に、
《復活》は大風呂敷を広げすぎた印象のある曲で、
今一つ好きになれないところがあるので、

インバルの録音を聴いても、
そこまで深くは感動していない自分がいることも確かです。

技術的には申し分なく、
内容的にもまずは十分なレベルまで掘り下げられているはずなので、
聴いてる私の方に問題があるのかもしれません。

もう少し時間が立ってから、
改めて聴き直そうと思います。


  ***

さてここまで、
Blu-spec CD によって再販売された
インバルのマーラー:交響曲全集を聴いてきました。

全体的にみると、
不満が残ったのは第9番のみで、
その他はいずれも楽譜を精緻に再現しながらも、
曲の本質をよくつかんだ熱い演奏が繰り広げられていて、
十分満足できました。

マーラーの定盤CDとして、
今後も備えておきたいCDとなりました。

一番感動したのは第3番で、
それに次ぐのが《大地の歌》第10番でしょうか。

声楽の入らない第5・6・7番も、
曲の構造がよくわかる名演でした。

第4・8番の声楽が入ってくる曲の完成度も高く、
あまり期待していなかった第1番の瑞々しさにも感動しました。

それだけに、第9番の1枚のみ、
私の耳のほうが間違っているのではと思い、
繰り返し聴き直しましたが、
満足できるレベルではありませんでした。

しばらく時間をおいて、
また聴き直す機会を持ちたいですが、
オクタヴィアへの新録音のほうも気になっているところです。



にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

2018年3月12日月曜日

サマリー&オックスフォード・カメラータのバード:4・5声のミサ曲(1991年録音)

フォーレの《レクイエム》
ヒルデガント・フォン・ビンゲンの聖歌集
と聴いてきた

イギリス人指揮者ジェレミー・サマリー
(Jeremy Summerly, 1961年2月28日- )の指揮する

オックスフォード・カメラータ
(Oxford Camerata)の演奏で、

イギリスの作曲家
ウィリアム・バード
(William Byrd, 1543年?-1623年7月4日)の
4声のミサ曲(Mass for Four Voices)
5声のミサ曲(Mass for Five Voices)
を聴きました。


ウィリアム・バード
(William Byrd, 1543?-1623)

①4声のミサ曲
②不幸なるわが身(モテット)
③5声のミサ曲

オックスフォード・カメラータ
ジェレミー・サマリー(指揮)

録音:1991年12月16-18日、オックスフォード、ハートフォード大学教会
【NAXOS 8.550574】


ウィリアム・バードは、
イングランドで活躍した
ルネサンス音楽の作曲家であり、
ブリタニア音楽の父(Brittanicae Musicas Parens)とも呼ばれているそうです。

自身はカトリック教徒でしたが、
王室礼拝堂の音楽家でもあったので、
ラテン語によるミサ曲のほか、
イギリス国教会のために、
英語による合唱曲も作曲しました。

4声と5声のミサ曲は、
1592年から95年にかけて連続して作曲された
ラテン語による3・4・5声のミサ曲のうちの2曲です。

「不幸なるわが身」
1580年代に作曲されたモテット(6声)です。

※Wikipediaの「ウィリアム・バード」「不幸なる我が身(バード)」を参照。


  ***

昨年5月に
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン
を聴いた後、

特にわけもなく、
次はバードだと思い、

すぐに聴いてみたのですが、
教会音楽らしく、
厳粛な気分にさせられる
かたさの残る音楽で、
独特の取っ付きにくさを感じ、
聴くのを遠ざけていました。

それから度々取り出して、
聴いてみて、またしばらく遠ざけているうちに、
しだいに耳が慣れてきたのか、
独特の凛とした雰囲気に、
自然な感動で心が満たされるようになってきました。

恐らく日本人が耳にして、
直ちに心を奪われる、
懐かしさを持ち合わせているわけではないので、

バード独特の凛とした個性に、
こちらが共鳴するかどうかなのでしょう。

サマリーの演奏も見事なものですが、
他の演奏ならどんな風に聴こえるのか、
興味が湧いてきました。

何となくですが、
バードの個性を感じ取れるようになって来たので、
NAXOSのサマリーのCD、
次の1枚に進みたいと思います。



にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

2018年3月4日日曜日

バリリ四重奏団のベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集その1(1952-56年録音)

ウィーン・フィルの第1コンサートマスターを務めた
ウィーン生まれのヴァイオリニスト
ワルター・バリリ(Walter Barylli, 1921年6月~)が、
1945年に、ウィーン・フィルの同僚たちとともに結成した
バリリ四重奏団の演奏で、

結成7年目から11年目
(1952-56年)にかけて録音された
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
弦楽四重奏曲全集を聴いていきます。

まずは1枚目、
ベートーヴェン30歳の時
(1801年6月〔1-3番〕・10月〔4-6番〕)に出版された
作品18の3曲(第1・2・3番)を収めた1枚を聴きました。


バリリ四重奏団の芸術~
Disc1
ベートーヴェン:
①弦楽四重奏曲第1番ヘ長調 Op.18-1
②弦楽四重奏曲第2番ト長調 Op.18-2
③弦楽四重奏曲第3番ニ長調 Op.18-3

バリリ四重奏団
 ヴァルター・バリリ(第1ヴァイオリン)
 オットー・シュトラッサー(第2ヴァイオリン)
 ルドルフ・シュトレンク(ヴィオラ)
 リヒャルト・クロチャック(チェロ)

録音:1953年(①②)、1952年(③)。
   ウィーン、コンツェルトハウス、モーツァルトザール
【SCRIBENDUM SC805】2016年7月発売

バリリ四重奏団による
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集は、
定評のある名盤ですので
昔から聴いてみたかった録音ですが、

廉価ではまず手に入らなかったので、
これまでほとんど聴く機会がありませんでした。

今回は総額2000円ほどで手に入りました。

これ以前に、
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、
スメタナ四重奏団1976年から85年にかけて
録音した全集を聴いているので、
今回はそちらと比べながら聴き進めることにしました。



  ***

バリリ四重奏団は、
第1ヴァイオリンがアンサンブルを主導するタイプの、
メロディーラインがはっきりくっきりと浮かび上がる
誰にもわかりやすい演奏で、

この最初の3曲がもつ瑞々しく快活な美しさを、
うまく引き出しているように感じました。

スメタナ四重奏団のほうを聴き直してみると、
第1ヴァイオリンがそこまで前に出ない、
すべてのパートが均等に鳴り響く
調和の取れた演奏で、

これはこれで悪くはないのですが、
バリリを聴いた後だと、多少物足りない思いが残ったことも確かです。

この2つだけ比べるなら、
明らかにバリリのほうが上ですが、
他の四重奏団による録音をほとんど聴いていないので、

他を圧倒しているのかどうかは、
まだ何ともいえません。

初めて聴いて、
一気に心を奪われるかというと、
そこまで別格の何かを備えているようにも思われませんが、

曲本来の魅力を十分に引き出した
好演の一つであることは疑いないでしょう。

とりあえずかなり聴き込んだので、
次の1枚に進みたいと思います。



にほんブログ村 クラシックブログへ