2018年7月22日日曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集その5(1971-74年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931年1月- )の演奏で、
40代前半(1971-74年)に録音した

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月 - 1828年11月)の
ピアノ作品集の5枚目を聴きました。


シューベルト:ピアノ作品集
CD5
①-④ ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960(1972年録音)
⑤-⑦ 3つのピアノ曲 D946(1975年録音)
⑧ 11のエコセーズ D781(1975年録音)
⑨ ハンガリー風メロディー ロ短調 D817(1975年録音)
⑩ アレグレット ハ短調 D915(1975年録音)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
【Eloquence 480 1218】2008年発売

小品を中心に、
まだあと2枚残っていますが、
ようやく21番まで来ました。

小品も一緒に収録されていますが、
曲の完成度に応じて、
やはり第21番(D960)に一番感銘を受けました。

ブレンデルの演奏は、
無駄を省いた、切れ味の鋭いものですが、
繊細でスマートな印象もあるので、
ベートーヴェンだと多少物足りなく感じます。

しかしシューベルトだと、
程良い塩梅で心に響いて来て、
強い説得力をもって聴こえて来ます。

名曲なので、他にも名演はたくさんあるのでしょうが、
個人的には、ライブでこれくらい聴けたら十分なレベルの演奏でした。


  ***

小品はどれもほぼ初めて聴きました。

そのうち有名なのは
3つのピアノ曲 D946。
聴いてみると、所々
深く胸に切り込んでくるフレーズが耳に残るものの、
それほどまとまりが良いようには思えない、
誰かがあとで寄せ集めた作品のように聴こえました。

調べてみると、
4曲からなる2つの即興曲集に続く、
3つ目の即興曲集を構想していたようで、

第1・2曲は一応まとまっているものの、
あと何回か推敲をへる必要がある段階の作品、
第3曲は最初のスケッチ段階の作品と推測されているようです。

ただし第1・2曲と第3曲には、
自筆譜の紙質に違いがあるので、
そもそも関係ない曲を寄せ集めた可能性もあるそうです。

そういわれると、
確かに第3曲は軽めのあっさりした仕上がりで、
さほど胸を打つ作品には思えませんでした。

しばらく聴き込んだ感想としては、
まだ謎なところの残る、評価に困る作品としておきます。

11のエコセーズ D781 は、
これだけだと何ということのない軽めの作品。

ハンガリー風メロディー ロ短調 D817
も同類の小品ですが、
ハンガリー風の独特なほの暗いメロディが
程良いアクセントになって、
コンサートのアンコールなどに合いそうな気がしました。

アレグレット ハ短調 D915
は、21番のソナタを除けば、
このCDのなかで一番まとまりのよい、
センスに溢れた作品に感じました。




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2018年7月15日日曜日

ユボーのフォーレ:ピアノ作品全集 その4(1988-89年録音)

フランスのピアニスト
ジャン・ユボー(1917-1992)が
71-72歳のときに録音した

フランスの作曲家
ガブリエル・フォーレ(1845.5-1924.11)の
ピアノ曲全集(CD4枚)より、

 小品集  作品84
 前奏曲集 作品103
 ヴァルス・カプリス 作品30/38/59/62
 マズルカ 作品32

を収録する4枚目のCDを聴きました。



フォーレ:ピアノ作品全集 第2集 より

Disc 2
①小品集 作品84
 第1番 カプリッチョ 変ホ長調(1899年6月作曲)⇒2年出版
 第2番 幻想曲 変イ長調(1902年作曲?)⇒2年出版
 第3番 フーガ イ短調(1869年6月作曲)⇒2年出版
 第4番 アダージェット ホ短調(1902年8月作曲)⇒2年出版
 第5番 即興 嬰ハ短調(1901年6月作曲)⇒2年出版
 第6番 フーガ ホ短調(1869年11月作曲)⇒2年出版
 第7番 喜び ハ長調(1902年8月作曲)⇒2年出版

②前奏曲集 作品103
 第1番 変ニ長調(1909年末-10年1月作曲)⇒10年出版
 第2番 嬰ハ短調(1909年末-10年1月作曲)⇒10年出版
 第3番 ト短調(1909年末-10年1月作曲)⇒10年出版
 第4番 ヘ長調(1910年7月作曲)⇒11年出版
 第5番 ニ短調(1910年7月作曲)⇒11年出版
 第6番 変ホ短調(1910年7-8月作曲)⇒11年出版
 第7番 イ長調(1910年9月作曲)⇒11年出版
 第8番 ハ短調(1910年秋作曲)⇒11年出版
 第9番 ホ短調(1910年秋作曲)⇒11年出版

③ヴァルス・カプリス
 第1番 変イ長調 作品30I(1882年作曲?)⇒83年出版
 第2番 変ニ長調 作品38(1884年7月作曲)⇒85年出版
 第3番 変ト長調 作品59(1887-1893年8月作曲)⇒94年出版
 第4番 変イ長調 作品62(1893-94年作曲)⇒94年出版

④マズルカ 変ロ長調 作品32(1875年頃作曲)⇒83年出版

ジャン・ユボー(ピアノ)

録音:1988年10月-1989年4月 パリ、アル・アディアール
【WPCS-10984/5】2001年7月発売

しばらく置きっぱなしにしていましたが、
最後の1枚を聴きました。

聴いてみると、
あまり期待していなかった「①小品集 作品84」が、
フォーレの才能のきらめきを感じる演奏で、
ほかの録音も聴いてみたくなりました。

ただ期待大だった「②前奏曲作品103」は凡庸な印象で、
それほどインスピレーションに富む作品に思えませんでした。

以前から知っていた
「④ワルツ・カプリス」は当然の名演で、
個人的に、フォーレのピアノ曲で一番馴染みやすいのは、
この4曲のワルツだと思っています。

「⑤マズルカ 作品32」は、
ワルツ・カプリスのあとに聴くと、
納まりの良いひとつづきの作品のように聴こえました。


ユボーのピアノは、
心持ちゆっくりめのテンポで、
響きを重視した演奏なので、

フォーレにはぴったりで、
安定感ばつぐんの演奏を聴かせてくれました。

定盤的な演奏として繰り返し聴き込んだ上で、
ほかのピアニストの録音にも挑戦してみようと思います。


※Wikipediaの「ガブリエル・フォーレ」「フォーレの楽曲一覧」
「ジャン・ユボー」の各項目を参照。



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2018年7月8日日曜日

ヘルビヒ&ベルリン響のブラームス交響曲第2・3番(1977-79年録音)

チェコスロヴァキア出身の指揮者
ギュンター・ヘルビヒ
(Günther Herbig, 1931年11月- )の指揮する

1952年に東ドイツで設立されたオーケストラ
ベルリン交響楽団
(Berliner Sinfonie-Orchester)の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月7日-1897年4月3日)
交響曲第2番(①)第3番(②)を聴きました。

指揮者46・47歳の時に
(①1977年11月・78年5月/②79年7月)
録音されました。

 ※ベルリン交響楽団
  (Berliner Sinfonie-Orchester)
  は、2006年から、
  ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団
  (Konzerthausorchester Berlin)
  と呼ばれています。


CD2
ブラームス:
①交響曲第2番ニ長調 Op.73
②交響曲第3番ヘ長調 Op.90

ベルリン交響楽団
ギュンター・ヘルビヒ(指揮)

録音:1977年11月・78年5月(①)、79年7月(②)、キリスト教会、ベルリン。
【Berlin Classics 885470009117】2017年3月発売


交響曲第2番ニ長調 Op.73 は、
ブラームス44歳の時(1877年12月30日)に初演された作品、

交響曲第3番ヘ長調 Op.90 は、
50歳の時(1883年12月2日)に初演された作品です。


  ***

第1番の時と基本路線は変わらない、

必要以上に絶叫させることなく、
ブラームスらしい歌がしみじみ伝わってくる、
誰にも聴きやすい演奏でした。

ヘルビヒならではの、
指揮者の存在をまるで感じない、
調和を重んじた音作りは、ブラームスに良く合っていて、
聴き込むほどに味わいの増す好演に仕上がっていました。

ベルリン・フィルなどの有名どころと比べれば、
そこまで鳴りが良いオケではないので、
細部が気になると物足りなく思われるかもしれませんが、

バランスの取れた響きの
全体的な美しさに心奪われるようになると、
ブラームスとして理想的な響きの演奏に聴こえて来ました。

楽譜をそのまま音にするだけでも、
十分に美しい名曲であることを知られる、
ブラームスお薦めのCDです。

なお4、5回聴いただけの感想ですが、
第3番に入ってから、
急にオケの鳴りが良くなっているように感じました。
弦がよく歌って、響いているように。

わずかな違いなので、
また時期をみて聴き直したいと思います。





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