ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集
5枚目は、
ウィーン原典版(旧版)の通し番号で、
第29、33-35番のソナタ4曲を聴きました。
フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732 - 1809)
1) ピアノ・ソナタ 第29番 変ホ長調 作品54-2 Hob.XVI:45
2) ピアノ・ソナタ 第33番 ハ短調 作品30-6 Hob.XVI:20
3) ピアノ・ソナタ 第34番 ニ長調 作品41-1 Hob.XVI:33
4) ピアノ・ソナタ 第35番 変イ長調 作品41-4 Hob.XVI:43
イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1995年4月6-8日、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.553800】
5枚目で一区切りできるので、
全体の構成を整理しておきます。
ウィーン原典版(旧版)の通番でまとめると、
ピアノ・ソナタ
第1-10番【8.553824】
第11-16、18番【8.553824】
第19、17、28番【8.553826】
第20、30-32番【8.553364】
第29、33-35番【8.553800】
となっています。
第21-27番 Hob.XVI:2a-e,g,h
は、目録によって冒頭主題のみ伝存する曲なので、
CD5枚で第1-35番まですべて聴けることになります。
ちなみにこれは、
ウィーン原典版(旧版)の 1a と 1b の2巻分に相当します。
ウィーン原典版(旧版)の通番順に、
調性、作品番号、ホーボーケン番号を整理しておきます。
◯第1番 ト長調 Hob.XVI:8 【◯8.553824】
◯第2番 ハ長調 Hob.XVI:7
◯第3番 ヘ長調 Hob.XVI:9
◯第4番 ト長調 Hob.XVI:G1
◯第5番 ト長調 Hob.XVI:11
◯第6番 ハ長調 Hob.XVI:10
◯第7番 ニ長調 Hob.XVⅡ:D1
◯第8番 イ長調 Hob.XVI:5
◯第9番 ニ長調 Hob.XVI:4
◯第10番 ハ長調 Hob.XVI:1
▼第11番 変ロ長調 Hob.XVI:2 【▼8.553824】
▼第12番 イ長調 Hob.XVI:12
▼第13番 ト長調 Hob.XVI:6
▼第14番 ハ長調 Hob.XVI:3
▼第15番 ホ長調 Hob.XVI:13
▼第16番 ニ長調 Hob.XVI:14
☆第17番 変ホ長調 Hob.deest 【☆8.553826】
▼第18番 変ホ長調 Hob.deest
☆第19番 ホ短調 Hob.XVI:47bis
◆第20番 変ロ長調 Hob.XVI:18 【◆8.553364】
「第21番 ニ短調 Hob.XVI:2a
第22番 イ長調 Hob.XVI:2b
第23番 ロ長調 Hob.XVI:2c
第24番 変ロ長調 Hob.XVI:2d
第25番 ホ短調 Hob.XVI:2e
第26番 ハ長調 Hob.XVI:2g
第27番 イ長調 Hob.XVI:2h 」〔目録のみ〕
☆第28番 ニ長調 Hob.XVI:5bis
(近年楽譜を発見〔一部欠落〕。目録の Hob.XVI2f に同じ)
◎第29番 変ホ長調 作品54-2 Hob.XVI:45 【◎8.553800】
◆第30番 ニ長調 作品53-2 Hob.XVI:19
◆第31番 変イ長調 作品54-3 Hob.XVI:46
◆第32番 ト短調 作品54-1 Hob.XVI:44
◎第33番 ハ短調 作品30-6 Hob.XVI:20
◎第34番 ニ長調 作品41-1 Hob.XVI:33
◎第35番 変イ長調 作品41-4 Hob.XVI:43
となります。
第1-20・28番の21曲には作品番号がなく、
第29番からは作品番号が付されています。
作品番号は原則、
楽譜の出版時に付されたものと推測されるので、
ウィーン原典版(旧版)の第29番からは、
作品番号が付され生前に出版された作品として、
それ以前のものと区別して聴くことが可能です。
出版の際に、新しい作品とともに、
過去の未出版の作品を合わせて出版したため、
作品番号=作曲順といえなくなっているようですが、
現状でも十分にぐちゃぐちゃなので、
作品番号があるものは他と別格にして、
ハイドン生前に出版された作品番号の順にならべ直してみたら、
どのように聴こえるのだろうと思いました。
***
さて今回のCD、
3楽章制のソナタ4曲を収録してあります。
第29番 変ホ長調 作品54-2 Hob.XVI:45
第33番 ハ短調 作品30-6 Hob.XVI:20
第34番 ニ長調 作品41-1 Hob.XVI:33
第35番 変イ長調 作品41-4 Hob.XVI:43
初期の頃とは明らかに異なり、
ほどよくまとまった感じの、充実した内容を聴かせてくれます。
それほど個性が際立っているわけではないので、
少し聴いただけでは似た感じの曲が続いていくのですが、
所々にハッとする美しい瞬間があって、
飽きることなく聴き続けることができました。
仕事のBGMには、
一番ハツラツと勉強をする気にさせてくれるのが
このCDでした。
※Wikipediaの
「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
「ハイドンのピアノソナタ一覧」
「ハイドンのピアノ曲一覧」
「ホーボーケン番号」の各項目を参照。
※ピティナ・ピアノ曲事典の「ハイドン」を参照。
※ハイドン研究室「クラヴィア・ソナタの部屋」を参照。
2013年10月30日水曜日
2013年10月25日金曜日
マリナー&アカデミー室内管のメンデルスゾーン:交響曲第3・4番
イギリスの指揮者
ネヴィル・マリナー(Neville Marriner 1924.4-)の指揮する
イギリスのオーケストラ
アカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)による
ドイツの作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn 1809.2-1847.11)の
交響曲第3・4番を聴きました。
メンデルスゾーン
交響曲 第3番 イ短調 作品56《スコットランド》
交響曲 第4番 イ長調 作品90《イタリア》
アカデミー室内管弦楽団
ネヴィル・マリナー指揮
録音:1993年7月8-10日 ロンドン
【UCCD-7084】
メンデルスゾーンの交響曲といえば、
《スコットランド》と《イタリア》が取り上げられることが多いのですが、
これまでこの曲を聴いて、
特別な感動を味わったことがあるかと問われると、
それほど心惹かれる演奏に出会ったことはなく、
あまり深く印象に残らない曲でありました。
ドイツの作曲家なのですが、
ベートーヴェンやブラームスのように、
精神的にずっしり響いてくるところがないので、
どこを聴けばいいのか捉えどころがなかったのだと思います。
今回、古本屋で偶然手に入れた、
マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団のCDを聴いて、
初めてこの曲の真価がわかったように思いました。
マリナー氏のメンデルスゾーンは、
しみじみと丁寧に、どこも野暮ったくならずに、
典雅で上品なメンデルスゾーンの本質を、
見事に再現した演奏であるように思われました。
ふつうに振る舞いながら、
どこも美しく共感に満ちた音楽が広がっていき、
心から楽しむことができました。
いったん曲がわかってみると、
もう少し個性的な演奏の魅力もわかって来るかもしれません。
他の指揮者の演奏も、
いろいろ聴いてみようと思います。
マリナー氏が、
かつて頻繁に録音を発表されていたころは、
何でも取り上げ過ぎて、特徴をつかみにくいところがありました。
最近改めて、録音を聴き直してみると、
極上なのはやはりイギリス音楽であり、
後は同じ路線の、それほど深刻ぶらずに、
典雅な、上品な、愉悦な音そのものを楽しみたい時には、
最善の仕事をされていると感じました。
***
以下、
メンデルスゾーンの交響曲について、
自らの心覚えのためにまとめました。
メンデルスゾーンの交響曲は、
12-14歳の時(1821-1823)に
「弦楽のための交響曲」全13曲が作曲されていますが、
(3楽章形式の第1-12番と、単1楽章の1曲)
こちらは習作扱いされることが多く、
15歳の時(1824)に作曲された
最初の管弦楽のための交響曲が、
◎交響曲第1番 ハ短調 作品11
として出版されました(初演:1827年)。
その後、
23歳の時(1832)に
交響曲 第5番 ニ長調《宗教改革》作品107
24歳の時(1833)に
交響曲 第4番 イ長調《イタリア》作品90
が初演されているのですが、
この2曲は生前中に出版されなかったため、
没後の出版順に、第4・5番の番号がふられることになりました。
それから、
31歳の時(1840)に
◎交響曲 第2番 変ロ長調《賛歌》作品52
33歳の時(1842)に
◎交響曲 第3番 イ短調《スコットランド》作品56
が初演されています。
このうち ◎第1-3番 が、
メンデルスゾーンの生前に出版された交響曲ということになります。
***
このCDに収録されている
《スコットランド》と《イタリア》について
もう少し詳しく見ておくと、
交響曲 第3番 イ短調《スコットランド》作品56
は、20歳の時のイギリス旅行(1829.5-)で着想を得、
33歳の年に完成し、初演(1842.3)され、
翌年(1843)出版された作品です。
交響曲 第4番 イ長調《イタリア》作品90
は、21歳の時のイタリア旅行(1830.10-)で着想を得、
24歳の時に完成し、初演(1833.5)された作品です。
その後、亡くなるまで改訂作業が続けられたため、
生前に出版されることはありませんでした(初出版:1851)。
※Wikipediaの「アカデミー室内管弦楽団」「ネヴィル・マリナー」「フェリックス・メンデルスゾーン」「メンデルスゾーンの作品一覧」
ネヴィル・マリナー(Neville Marriner 1924.4-)の指揮する
イギリスのオーケストラ
アカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)による
ドイツの作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn 1809.2-1847.11)の
交響曲第3・4番を聴きました。
メンデルスゾーン
交響曲 第3番 イ短調 作品56《スコットランド》
交響曲 第4番 イ長調 作品90《イタリア》
アカデミー室内管弦楽団
ネヴィル・マリナー指揮
録音:1993年7月8-10日 ロンドン
【UCCD-7084】
メンデルスゾーンの交響曲といえば、
《スコットランド》と《イタリア》が取り上げられることが多いのですが、
これまでこの曲を聴いて、
特別な感動を味わったことがあるかと問われると、
それほど心惹かれる演奏に出会ったことはなく、
あまり深く印象に残らない曲でありました。
ドイツの作曲家なのですが、
ベートーヴェンやブラームスのように、
精神的にずっしり響いてくるところがないので、
どこを聴けばいいのか捉えどころがなかったのだと思います。
今回、古本屋で偶然手に入れた、
マリナー指揮/アカデミー室内管弦楽団のCDを聴いて、
初めてこの曲の真価がわかったように思いました。
マリナー氏のメンデルスゾーンは、
しみじみと丁寧に、どこも野暮ったくならずに、
典雅で上品なメンデルスゾーンの本質を、
見事に再現した演奏であるように思われました。
ふつうに振る舞いながら、
どこも美しく共感に満ちた音楽が広がっていき、
心から楽しむことができました。
いったん曲がわかってみると、
もう少し個性的な演奏の魅力もわかって来るかもしれません。
他の指揮者の演奏も、
いろいろ聴いてみようと思います。
マリナー氏が、
かつて頻繁に録音を発表されていたころは、
何でも取り上げ過ぎて、特徴をつかみにくいところがありました。
最近改めて、録音を聴き直してみると、
極上なのはやはりイギリス音楽であり、
後は同じ路線の、それほど深刻ぶらずに、
典雅な、上品な、愉悦な音そのものを楽しみたい時には、
最善の仕事をされていると感じました。
***
以下、
メンデルスゾーンの交響曲について、
自らの心覚えのためにまとめました。
メンデルスゾーンの交響曲は、
12-14歳の時(1821-1823)に
「弦楽のための交響曲」全13曲が作曲されていますが、
(3楽章形式の第1-12番と、単1楽章の1曲)
こちらは習作扱いされることが多く、
15歳の時(1824)に作曲された
最初の管弦楽のための交響曲が、
◎交響曲第1番 ハ短調 作品11
として出版されました(初演:1827年)。
その後、
23歳の時(1832)に
交響曲 第5番 ニ長調《宗教改革》作品107
24歳の時(1833)に
交響曲 第4番 イ長調《イタリア》作品90
が初演されているのですが、
この2曲は生前中に出版されなかったため、
没後の出版順に、第4・5番の番号がふられることになりました。
それから、
31歳の時(1840)に
◎交響曲 第2番 変ロ長調《賛歌》作品52
33歳の時(1842)に
◎交響曲 第3番 イ短調《スコットランド》作品56
が初演されています。
このうち ◎第1-3番 が、
メンデルスゾーンの生前に出版された交響曲ということになります。
***
このCDに収録されている
《スコットランド》と《イタリア》について
もう少し詳しく見ておくと、
交響曲 第3番 イ短調《スコットランド》作品56
は、20歳の時のイギリス旅行(1829.5-)で着想を得、
33歳の年に完成し、初演(1842.3)され、
翌年(1843)出版された作品です。
交響曲 第4番 イ長調《イタリア》作品90
は、21歳の時のイタリア旅行(1830.10-)で着想を得、
24歳の時に完成し、初演(1833.5)された作品です。
その後、亡くなるまで改訂作業が続けられたため、
生前に出版されることはありませんでした(初出版:1851)。
※Wikipediaの「アカデミー室内管弦楽団」「ネヴィル・マリナー」「フェリックス・メンデルスゾーン」「メンデルスゾーンの作品一覧」
2013年10月10日木曜日
ベルグルンド&ボーンマス響のシベリウス:交響曲第7番(1972)
フィンランドの指揮者
パーヴォ・ベルグルンド(1929.4-2012.1)が44-46歳のときに(1973.11)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した
同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12.8-1957.9.20)の
交響曲第7番と、交響詩《海の精》《タピオラ》を聴きました。
シベリウス
1) 交響曲 第7番 ハ長調 作品105
2) 交響詩《海の精》作品73
3) 交響詩《タピオラ》作品112
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1972年5月(1)、1972年5月7・8日(2・3)
サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16017】
交響曲 第7番 ハ長調 作品105 は、
シベリウスが58歳のとき(1924年)に完成され、
同年3月に初演された単一楽章の交響曲です。
第5・6・7番は48歳(1914年)のとき、
ほぼ同時期に着想されたことが知られています。
第5番が初演(1915年12月)されてから、
しばらくその改訂作業が続いたため
(1916年に改訂稿、1919年に最終稿)、
第6番の初演は、
57歳(1923年2月)まで持ち越されました。
第7番はその翌年1924年に初演されています。
シベリウスは91歳(1957年)まで長生きしますが、
第7番以降、交響曲が完成されることはありませんでした。
第7番は今回ほぼ初めて聴きました。
感動しました。
第1番から第6番まで聴いてきた中では、
明らかに一つ高いところにある音楽で、
モーツァルトのクラリネット協奏曲や五重奏曲、
ベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲のみに聴かれる、
悟りの境地にある特別な感慨を味わうことができました。
他の方の演奏もぜひ聴いてみたいと思います。
***
交響詩《海の精》作品73 は、
48歳(1914年)のときに完成、
同年6月4日に初演された交響詩です。
《大洋の女神》《波の娘》などとも訳されます。
第7番の初演を10年さかのぼりますが、
第5-7番の曲想を得たのは1914年なので、
第5番に取りかかる前に完成された作品ということになります。
これも初めて聴きました。
わかりやすいシンプルな曲です。
何もないところから、
終末に明確なクライマックスが築かれていくので、
第7番のスケールを小さくした感じがありました。
ただし暗めの曲想なので、
聴いた印象はだいぶ違っていると思います。
***
交響詩《タピオラ》作品112 は、
交響曲第7番を完成した翌年(1925年)に完成され、
翌1926年12月26日(シベリウス61歳)に初演されました。
シベリウス最後の交響詩であり、
彼の交響詩の最高傑作と評価されているそうです。
確かに、
いくつか聴いてきたシベリウスの交響詩の中では、
さまざまな要素が凝縮され、
よく創り込まれた作品であることは十分伝わって来ました。
ただし一つの管弦楽曲としてみたとき、
他を圧倒する感動を与えられるところまでは行きませんでした。
恐らく今後聴き直していくことで、
より深く気がつけるところが出てくるように思います。
***
さてベルグルンドとボーンマス交響楽団による
シベリウスの交響曲全集はこれで終わりです。
(あと1枚、管弦楽曲集を残しています。)
多少、録音の古さを感じさせる点をのぞけば、
どれもシベリウスの真価を教えてくれる演奏で、
楽しい有意義な時間を過ごすことができました。
ただ、この全集を聴き出してから間もなく、
格安(1,300円程)の輸入盤で同じコンビの全集が発売されました。
そんなに違わないだろうと思っていたのですが、
最近買って聴いてみたところ、
同じ演奏とは思えないほど、
冴えわたった清新さを感じさせる録音でした。
国内盤で
唯一不満だった録音の古さをまったく感じさせずに、
熱く彫りの深い演奏が繰り広げられていたので驚きました。
国内では、一番大もとの原盤にはさかのぼりにくいでしょうから、
どうしても音質面でいま一歩になりがちなのかな、と思いました。
こちらで聴くと、まったく印象が異なりますので、
輸入盤でもう一度聴き直していこうかな、と考えているところです。
※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」
「交響曲第7番(シベリウス)」「大洋の女神」「タピオラ」を参照。
パーヴォ・ベルグルンド(1929.4-2012.1)が44-46歳のときに(1973.11)、
イギリスのボーンマス交響楽団と録音した
同郷フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12.8-1957.9.20)の
交響曲第7番と、交響詩《海の精》《タピオラ》を聴きました。
シベリウス
1) 交響曲 第7番 ハ長調 作品105
2) 交響詩《海の精》作品73
3) 交響詩《タピオラ》作品112
パーヴォ・ベルグルンド(指揮)
ボーンマス交響楽団
録音:1972年5月(1)、1972年5月7・8日(2・3)
サウサンプトン・ギルドホール、イギリス
【TOCE-16017】
交響曲 第7番 ハ長調 作品105 は、
シベリウスが58歳のとき(1924年)に完成され、
同年3月に初演された単一楽章の交響曲です。
第5・6・7番は48歳(1914年)のとき、
ほぼ同時期に着想されたことが知られています。
第5番が初演(1915年12月)されてから、
しばらくその改訂作業が続いたため
(1916年に改訂稿、1919年に最終稿)、
第6番の初演は、
57歳(1923年2月)まで持ち越されました。
第7番はその翌年1924年に初演されています。
シベリウスは91歳(1957年)まで長生きしますが、
第7番以降、交響曲が完成されることはありませんでした。
第7番は今回ほぼ初めて聴きました。
感動しました。
第1番から第6番まで聴いてきた中では、
明らかに一つ高いところにある音楽で、
モーツァルトのクラリネット協奏曲や五重奏曲、
ベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲のみに聴かれる、
悟りの境地にある特別な感慨を味わうことができました。
他の方の演奏もぜひ聴いてみたいと思います。
***
交響詩《海の精》作品73 は、
48歳(1914年)のときに完成、
同年6月4日に初演された交響詩です。
《大洋の女神》《波の娘》などとも訳されます。
第7番の初演を10年さかのぼりますが、
第5-7番の曲想を得たのは1914年なので、
第5番に取りかかる前に完成された作品ということになります。
これも初めて聴きました。
わかりやすいシンプルな曲です。
何もないところから、
終末に明確なクライマックスが築かれていくので、
第7番のスケールを小さくした感じがありました。
ただし暗めの曲想なので、
聴いた印象はだいぶ違っていると思います。
***
交響詩《タピオラ》作品112 は、
交響曲第7番を完成した翌年(1925年)に完成され、
翌1926年12月26日(シベリウス61歳)に初演されました。
シベリウス最後の交響詩であり、
彼の交響詩の最高傑作と評価されているそうです。
確かに、
いくつか聴いてきたシベリウスの交響詩の中では、
さまざまな要素が凝縮され、
よく創り込まれた作品であることは十分伝わって来ました。
ただし一つの管弦楽曲としてみたとき、
他を圧倒する感動を与えられるところまでは行きませんでした。
恐らく今後聴き直していくことで、
より深く気がつけるところが出てくるように思います。
***
さてベルグルンドとボーンマス交響楽団による
シベリウスの交響曲全集はこれで終わりです。
(あと1枚、管弦楽曲集を残しています。)
多少、録音の古さを感じさせる点をのぞけば、
どれもシベリウスの真価を教えてくれる演奏で、
楽しい有意義な時間を過ごすことができました。
ただ、この全集を聴き出してから間もなく、
格安(1,300円程)の輸入盤で同じコンビの全集が発売されました。
そんなに違わないだろうと思っていたのですが、
最近買って聴いてみたところ、
同じ演奏とは思えないほど、
冴えわたった清新さを感じさせる録音でした。
国内盤で
唯一不満だった録音の古さをまったく感じさせずに、
熱く彫りの深い演奏が繰り広げられていたので驚きました。
国内では、一番大もとの原盤にはさかのぼりにくいでしょうから、
どうしても音質面でいま一歩になりがちなのかな、と思いました。
こちらで聴くと、まったく印象が異なりますので、
輸入盤でもう一度聴き直していこうかな、と考えているところです。
※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」
「交響曲第7番(シベリウス)」「大洋の女神」「タピオラ」を参照。
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