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2017年3月13日月曜日

ベルティーニ&東京都響のマーラー:交響曲第4番&亡き子を偲ぶ歌(2002年録音)

イスラエルの指揮者
ガリー・ベルティーニ
(Gary Bertini, 1927年5月-2005年3月)の指揮する
東京都交響楽団の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第4番ト長調と、歌曲集《亡き子を偲ぶ歌》を聴きました。

指揮者49歳の時(1985年10月)の録音です。

交響曲の独唱者(ソプラノ)は
森麻季(もりまき 1970年8月- )、

歌曲集の独唱者(バスバリトン)は
クラウス・メルテンス(Klaus Mertens, 1949年3月- )でした。


グスタフ・マーラー
①交響曲第4番ト長調《大いなる歓びへの賛歌》
②歌曲集《亡き子を偲ぶ歌》

ガリー・ベルティーニ指揮
東京都交響楽団
矢部達哉(ヴァイオリン)
森麻季(ソプラノ)
クラウス・メルテンス(バス・バリトン)

録音:2002年11月24日、横浜みなとみらいホール
【FOCD9189】2003年7月発売。

交響曲第4番ト長調は、
マーラー41歳の時(1901年11月)に初演された作品です。

《亡き子を偲ぶ歌》は、
マーラー44歳の時(1905年1月)に初演された作品です。


マーラーの第4番、
最近まとめて聴き直していますが、

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルの旧録音は、
マーラーの分裂気質なところを強調していて、
面白いけれども多少落ち着かない演奏で、
それほど感動はしませんでした。

インバル&フランクフルト放送響は、
しっとりと歌わせるオーソドックスな演奏で、
滅多に聴けないレベルの優秀録音も心地よく、
繰り返し聴き込みたい1枚となりました。

家の中を探してみると、昔買った
ベルティーニ&都響のCDがみつかりました。
あまり記憶に残っていなかったので
今回聴き直してみたところ、

心にじんわり響いて来る
感動的な演奏が繰り広げられて、
嬉しい驚きでした。

前2者と比べると、
聴こえて欲しいところはちゃんと聴こえるのですが、
最弱音が少しこもった感じになっていて、
一昔前の国内のライブ録音にありがちな、
不満の残る音質でした。

しかし演奏は素晴らしいです。

ブルーノ・ワルターのように
叙情性を旨とした演奏ですが、
ワルターよりはもっと洗練された印象があります。

インバルの落ち着いた演奏よりは、
テンポをいろいろ動かしているのですが、
インバルより全体的に軽めの印象で、
しかしここぞというところでは深い印象を残していました。

とくに絶品なのは第3楽章で、
誰の指揮で聴いても退屈になりがちな楽章なのですが、
次の第5番のアダージェットを聴くのと変わらない感覚で、
自然な流れのなかに全体を感動的に聴き通すことができました。


ベルティーニ&都響のマーラー、
第6番《悲劇的》と第7番《夜の歌》も持っていたので、
今回聴き直してみたのですが、

第4番より編成が大きくなるからか、
いっそうぼやけた感じの音質で、
細部を聴き取れないもどかしさがかなりあって、
聴き通すのがつらい演奏でした。

第4番は、
この2曲(第6・7番)と比べれば
ずっと聴き取りやすいのですが、
インバルはもとより、
バーンスタインの旧盤と比べても
多少劣る音質のように感じました。


《亡き子を偲ぶ歌》は、
他と比較できるほど聴き込んでいませんが、
先日聴いたフェリアーの名唱に聴き劣りしない優れた歌唱で、
だんだんこの曲の良さがわかってきました。

第4交響曲よりも、
曲としてのまとまりはすぐれているように感じています。


※音楽之友社編『マーラー』(音楽之友社〔作曲家別名曲解説ライブラリー1〕1992年9月)を参照。

2015年9月14日月曜日

渡邉暁雄&日本フィルのシベリウス:交響曲全集(1962年録音)

渡邉暁雄(1919.6-1990.6)の指揮する
日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(Jean Sibelius 1865.12-1957.9)の
交響曲全集を聴いていきます。

渡邉暁雄と日本フィルは、
シベリウスの交響曲全集を、
1962年と1981年の2回録音しています。

渡邉氏42-3歳そして62-3歳のときの録音です。
今回聴くのは旧盤(1962)のほうです。

私の渡邉氏に対する印象を、
大きく改めるきっかけになったCDです。

渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(第1回録音)

シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
〔録音:1962年5月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
〔録音:1962年、杉並公会堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
〔録音:1962年8月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
〔録音:1962年6月20・21日、東京文化会館〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
〔録音:1962年2月18日、文京公会堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
〔録音:1962年、文京公会堂〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
〔録音:1962年3月7日、杉並公会堂〕

渡邊暁雄(指揮I
日本フィルハーモニー交響楽団
【TWCO-29/32】※2007年5月発売

旧盤より早く、
新盤(1981)のほうを手に入れていたのですが、

新盤はオケのレベルによるのか、
あるいは始まったばかりのデジタル録音で、
録音する側の不慣れなところが影響したのか、

フォルテは暴力的で耳にうるさく、
ピアノも胸に響いてこない、
残響も何もない即物的な録音で、

どれも聴き通すことができませんでした。

リマスターし直せば、
違った印象になる可能性もありますが、

私が所有している盤(2007年発売)についていえば、
歴史的な価値以上のものは見出し難かったです。

初めてシベリウスの全集に挑戦される場合、
新盤(1981)は避けたほうが賢明です。


渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(デジタル再録音盤)

シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
 〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
 〔録音:1981年6月25日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
 〔録音:1981年6月19日、習志野文化ホール〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
 〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
 〔録音:1981年7月2日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
 〔録音:1981年6月22日、習志野文化ホール〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
 〔録音:1981年7月1日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響詩「トゥオネラの白鳥」Op.22-2
 〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
悲しきワルツ Op.44-1
 〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕

渡邊暁雄(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
【COCQ-84283-6】※2007年5月発売

  ***

そもそも渡邉氏のシベリウスは、
京都市交響楽団とのセッション録音を聴いたのが初めてでした。

シベリウス
劇付随音楽「テンペスト」第1組曲 Op.109
交響曲第2番ニ長調Op.43

渡邉暁雄(指揮)
京都市交響楽団
録音:1972年4月、奈良県文化会館
【TOCE-6321】1990年9月発売

《テンペスト》は全くピンと来なかったのですが、
第2番はそれなりに好感のもてる誠実で丁寧な演奏でした。

とはいえ
セッション録音ゆえか生き生きとした情感には乏しく、
職人的に淡々と仕事をこなしているようにも聴こえました。


その後、
ヘルシンキ・フィルとのライブ録音を聴きました。

シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
悲しきワルツOp.44

渡邉暁雄(指揮)
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年1月28日、福岡サンパレス
【TDK-OC012】2003年4月発売

各誌絶賛だったのでかなり期待していたのですが、

ライブならではのキズは仕方ないにしても、
何より解釈面でお互いに手探り状態のまま演奏に臨み、
不完全燃焼なまま終わってしまったように感じました。

こちらの演奏が今ひとつだったので、
同時に発売された第4・7番のCDはまだ聴いていません。

初めてシベリウスを聴くのであれば、
それなりに満足できる演奏だとは思うのですが、

渡邉氏のベスト演奏だとはとても言えないと思いました。


それから、
東京都響とのライブ録音も聴きました。


シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
交響曲第2番ニ長調Op.43

渡邉暁雄(指揮)
東京都交響楽団
録音:1972年4月28日(第1番)、1973年4月17日(第2番)、東京文化会館
【TFMC-0010/11】2004年7月発売

こちらも、
当時の日本のオケの水準を知る上では有用な演奏で、

同曲のライブを聴きに行って、
これくらいの演奏が聴ければふつうに満足できるレベルではあるのですが、

ほかの名演をさしおいて、
このCDを選びたいかといえば、
それほど特別な魅力は感じませんでした。


 ***

ここまで聴いてきた上で、
先の日本フィルとの新全集(1981)で、
耳にうるさく響く残念なCDを聴いてしまったので、

渡邉暁雄氏のシベリウスについて、
あまり肯定的な印象は持っていませんでした。


そんな私の、
渡邉氏に対するマイナス・イメージを
一気に覆させてくれたのが、

日本フィルとの旧全集(1961)でした。

40代の渡邉氏が、
まさかこれほど覇気にあふれた
熱い演奏を聴かせていたとは思いもよりませんでした。

シベリウスの楽譜への深い読みと、
壮年期の渡辺氏による核心に満ちた解釈で、
ぐいぐいと惹き込まれる魅力のある演奏が繰り広げられていました。

驚かされるのは、
ライブでもなかなか聴けないほどの
「熱さ」が伝わって来ることで、

セッション録音で、
どんな魔法を使ったのかしらと大いに感心させられました。

分裂前の日本フィルの実力も相当なものです。

日本で、音響設備の整った
最新のホールができる前の録音なので

最新の優れた音響のCDに比べれば、
響きに若干の弱さがあることは否めないのですが、

どんな強奏でも無機的に響かず、
意味のある音楽として心に伝わって来るのはなかなかないことです。

シベリウスの交響曲を聴いて、
初めてに近い、新鮮な感動を味わうことができました。

タイプが似ているのは、
ベルグルンド&ボーンマス響
の録音(1975-75)でしょうか。

ベルグルンドの第1回目の全集は、
のちの全集よりも若々しい生命力にあふれた演奏となっていますが、

これをさらに迫力一杯にした感じで、
全然負けていません。

渡邉氏の旧全集は、
初めてシベリウスの全集を聴く方にも、
安心してお薦めできる名盤だと思います。


※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」「日本フィルハーモニー交響楽団」を参照。


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2013年6月30日日曜日

朝比奈隆&都響のシューベルト:交響曲第9番《ザ・グレイト》(1995年)

フルトヴェングラー&ベルリン・フィルの
シューベルト《ザ・グレイト》が今ひとつだったので、

ほかに満足できる演奏はないか探していたところ、
最近タワーレコードで格安で手に入れた

朝比奈隆(1908.7-2001.12)指揮、
東京都交響楽団の演奏がとても良かったので紹介します。


フランツ・シューベルト(1797.1-1828.11)
交響曲第9番ハ長調 D.944《ザ・グレイト》

朝比奈隆(指揮)
東京都交響楽団
録音:1995年1月22日、東京芸術劇場
【FOCD-9359】

スケールの大きい雄渾な演奏です。

強奏時の響きが耳に心地よく、
素朴でのどかな感じもよく出ていて、

《グレイト》の魅力を存分に味わうことができました。


シューベルトの交響曲は、
オケの響きにそれなりに魅力がないと、
今ひとつ楽しめない側面があるように思いますが、

東京都交響楽団の機能性の高さも嬉しい驚きで、
絹のようになめらかな響きが美しく、
ライブでここまで聴かせてくれたら
私には十分なレベルでした。


この1年後、
朝比奈隆が87歳のときに大阪フィルをふった
同曲の演奏もCD化されています。


大阪フィルハーモニー交響楽団
朝比奈隆(指揮)
録音:1996年2月16日、愛知県芸術劇場
【PCCL-00388】

これは当日実演を聴くことができ、
大感動した記憶の残るCDなのですが、
久しぶりに聴き直してみたところ、

オケの響き自体は、ホールと一体化して
いい感じにやわらかく録れているのですが、

朝比奈が即興的にテンポをゆらしていたのか、
微妙にアンサンブルの縦の線がずれる部分があって、

今回はそれほど楽しめませんでした。


どちらかといえば、
大阪フィル盤のほうが
ライブならではの動的な側面が強いので、

都響盤の記憶が薄れたころに聴き直すと
違った感想になるかもしれません。

2011年10月29日土曜日

若杉弘&東京都響の武満徹作品集(1991年録音)



武満徹
1.弦楽のためのレクイエム(1957)
2.ノヴェンバー・ステップス
   ― 琵琶、尺八、オーケストラのための(1967)
3.遠い呼び声の彼方へ!
   ― ヴァイオリンとオーケストラのための(1980)
4.ヴィジョンズ(1989)
   Ⅰ‐神秘
   Ⅱ‐閉じた眼

若杉弘 指揮
東京都交響楽団
 2.鶴田錦史(琵琶)、横山勝也(尺八)
 3.堀米ゆず子(ヴァイオリン)

録音:1991年7月29~31日、東京芸術劇場
※武満徹の監修による録音。
【COCO-78083】


最近、秋の花粉の影響で気分が少々沈みがちになり、
何となく、武満さんの響きが聴きたくなりました。
代表曲を集めたCDを買って、聴いてみました。

武満さんの音楽は、
中学生のときに小澤征爾さんとの共著
『音楽』(新潮文庫、昭和59年)を読んでその音楽に憧れました。

とはいえ、現代音楽を聴く機会はあまりなかったので、
時折、ラジオやテレビで眼にし、耳にするその魅惑的な音楽を、
夢中になって聴いた思い出があります。

ここ十年近くは、
わかりにい現代音楽よりも、
誰でもわかりやすい、楽しめる音楽のほうに
より愛着を感じていたため、
武満さんからは少し遠ざかっていたように思います。

しかし久しぶりに
武満さんの音楽を聴き直してみると、
若干憂鬱な感じの今の心境にピタリとはまり、

聴き終わって、
静かで穏やかな心持ちに満たされる、
不思議な感動を引き起こしてくれました。

昔はもう少し、
暗くておどろおどろしい印象が強かったと思うのですが、

今聴くと、
紡ぎだされるいろいろな響きが心にしっくり来て、
西洋的な音楽よりも、むしろ自分たちにとっての身近な音楽を
聴いているように感じました。

とくに感動したのは、
ノヴェンバー・ステップスです。

それから初めて聴くヴィジョンズも、
新しい名曲を発見した気分です。

ドビュッシーやラベルの管弦楽作品よりも、
私には武満さんの方がしっくり来るようです。


どちらかと言えば、
厳しい感じの音楽なので、
いつでも聴きたくなるとは思いませんが、

憂鬱で、若干ふさぎ込みがちなときに、
武満さんが効くことを、今日初めて知りました。

今後、記憶をたどりつつ、
武満さんのよい作品、演奏を紹介していきます。