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2018年12月9日日曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集その7(1971-74年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931年1月- )が、
40代前半の時(1971-74年)に録音した

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月 - 1828年11月)の
ピアノ作品集の7枚目(最後の1枚)を聴きました。


シューベルト:ピアノ作品集
CD7
①幻想曲ハ長調 作品15《さすらい人》 D760(1972年録音)
②楽興の時 作品94 D780(1972年録音)
③12のドイツ舞曲(レントラー)D790(1972年録音)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
【Eloquence 480 1218】※2008年発売


①《さすらい人幻想曲》作品15 は、
シューベルト25歳の時(1822)に作曲、出版された作品です。
4楽章からなる作品ですが、続けて演奏されます。

リストがピアノ・ソナタを作曲する際に、
大きな影響を受けたといわれれば、
何となく似ていることに気がつかされます。

リストによる《さすらい人幻想曲》の
ピアノ協奏曲への編曲版もあるそうなので、
いずれ聴いてみようと思います。

若々しい印象の作品なので、
最後の作品群のなかに混ぜられると場違いな感じもしますが、
充実した内容のよく出来た作品だと思います。


②《楽興の時》作品94 は、
26から31歳(1823-28)までに作曲された作品です。
即興曲よりもさらに色々な様式の小品を6曲。
一見無造作に、
しかし絶妙なバランスでまとめられていて、
小さな歌曲集を聴くような趣きがありました。

第3番が突出して有名ですが、
6曲全体として不思議な統一感を醸し出しているようにも聴こえたので、
ほかのピアニストの演奏も聴いてみたいと思いました。


③ 12のドイツ舞曲(レントラー) D790 は、
26歳の時(1823年5月)に作曲された作品です。

調べてみると、シューベルトは
ピアノによる舞曲集を他にもたくさん残しているのですが、
その中でも良くできた1曲のようで、
かのコルトーを始めとして録音がいろいろ見つかりました。

シューベルトの舞曲は、
今一つ霊感に乏しい軽めのものが多い印象だったので、
隠れた名曲に出会えた気がしました。

ソナタだけでは寂しいので、
今後は舞曲集にも注目していきたいと思います。


  ***

ブレンデルのシューベルト、
無色透明、純粋無垢な路線で、
一聴ほんの少し押しが足りないような、
没個性的な印象を受けるのですが、

聴き込むほどに、
曲本来の美しさが伝わって来て、
シューベルトの面白さをじっくり味わうことが出来ました。

ただし、
ある程度聴き込まなければ、
良さが伝わりにくい面もあるので、
これがシューベルトのベスト演奏かといわれれば、
私の好みとは違うような気もします。

ブレンデルは15年程をへた
50代後半(1987-88年)のときに、
これらの曲を再録音しているので、
そちらを聴けば、今回の不満が解消されている可能性は高いですが、
それはもう少し先の楽しみに取っておきます。


最近、
ウィーン生まれのピアニスト
パウル・バドゥラ=スコダ
(Paul Badura-Skoda, 1927年10月6日- )が
39-43歳の時(1967年5月-71年5月)に録音した、
シューベルトのピアノ・ソナタ全集を手に入れたので、
次はこちらを聴いていこうと思っています。

ブレンデルよりずっと前の録音かと思っていたら、
ブレンデルより3年歳上なだけで、
録音もほぼ同じ時期であることがわかりました。

どちらかというと、ブレンデル以上に、
シューベルトの演奏に生涯を捧げているピアニストなので、
期待して聴いてみたいと思います。



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2018年12月2日日曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集その6(1971-74年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931年1月- )が、
40代前半の時(1971-74年)に録音した

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月 - 1828年11月)の
ピアノ作品集の6枚目を聴きました。


シューベルト:ピアノ作品集
CD6
①4つの即興曲 作品90 D899(1972年録音)
②4つの即興曲 作品142 D935(1975年録音)
③16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ 作品33 D783(1974年録音)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
【Eloquence 480 1218】※2008年発売

ブレンデルが40代前半のときに録音した
シューベルト:ピアノ作品集、
残るは2枚のみとなりました。

ソナタはすべて聴いて、
あとは2つの即興曲集と「楽興の時」、
そして「さすらい人幻想曲」が残っています。


CD6枚目には、
2つの即興曲集が収録されています。

 ①4つの即興曲 作品90 D899
 ②4つの即興曲 作品142 D935

は、シューベルトが30歳(1827年)の頃に作曲されました。

亡くなる年(1828)に、
最後の3つのピアノソナタが書かれますが、
その前年に生み出された傑作です。

 ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調 D958
 ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D959
 ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960


有名な曲集ですが、子供の頃に、
私の母が運営するピアノ教室で、
度々聴き馴染んでいたからか、
凡庸な練習曲の一つというイメージがついてしまって、
霊感あふれる傑作だと確信できたのは最近のことです。

今回、ブレンデルのくせのない美しいタッチのピアノで、
シューベルト独特のメロディと和声が心に入って来て、
しみじみ良い曲であることを実感できました。

聴き返すたびに染みてくる分、
一回聴くだけだとほんの少し、
個性が弱いようにも感じるので、
より有名な再録音のほうも聴いてみたいなと思いました。


このCDには、もう一曲、
③16のドイツ舞曲と2つのエコセーズ 作品33 D783
が収録されています。
シューベルトが26-27歳の頃(1823-24)に作曲された作品です。

数回繰り返して聴いた印象では、
さほど特徴のないスケッチを寄せ集めただけの、
①②と同列には扱えない作品でした。

①②の印象がぼやけてしまう分、
収録しなかったほうが良かったのでは、
と思いました。



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2018年7月22日日曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集その5(1971-74年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931年1月- )の演奏で、
40代前半(1971-74年)に録音した

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月 - 1828年11月)の
ピアノ作品集の5枚目を聴きました。


シューベルト:ピアノ作品集
CD5
①-④ ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960(1972年録音)
⑤-⑦ 3つのピアノ曲 D946(1975年録音)
⑧ 11のエコセーズ D781(1975年録音)
⑨ ハンガリー風メロディー ロ短調 D817(1975年録音)
⑩ アレグレット ハ短調 D915(1975年録音)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
【Eloquence 480 1218】2008年発売

小品を中心に、
まだあと2枚残っていますが、
ようやく21番まで来ました。

小品も一緒に収録されていますが、
曲の完成度に応じて、
やはり第21番(D960)に一番感銘を受けました。

ブレンデルの演奏は、
無駄を省いた、切れ味の鋭いものですが、
繊細でスマートな印象もあるので、
ベートーヴェンだと多少物足りなく感じます。

しかしシューベルトだと、
程良い塩梅で心に響いて来て、
強い説得力をもって聴こえて来ます。

名曲なので、他にも名演はたくさんあるのでしょうが、
個人的には、ライブでこれくらい聴けたら十分なレベルの演奏でした。


  ***

小品はどれもほぼ初めて聴きました。

そのうち有名なのは
3つのピアノ曲 D946。
聴いてみると、所々
深く胸に切り込んでくるフレーズが耳に残るものの、
それほどまとまりが良いようには思えない、
誰かがあとで寄せ集めた作品のように聴こえました。

調べてみると、
4曲からなる2つの即興曲集に続く、
3つ目の即興曲集を構想していたようで、

第1・2曲は一応まとまっているものの、
あと何回か推敲をへる必要がある段階の作品、
第3曲は最初のスケッチ段階の作品と推測されているようです。

ただし第1・2曲と第3曲には、
自筆譜の紙質に違いがあるので、
そもそも関係ない曲を寄せ集めた可能性もあるそうです。

そういわれると、
確かに第3曲は軽めのあっさりした仕上がりで、
さほど胸を打つ作品には思えませんでした。

しばらく聴き込んだ感想としては、
まだ謎なところの残る、評価に困る作品としておきます。

11のエコセーズ D781 は、
これだけだと何ということのない軽めの作品。

ハンガリー風メロディー ロ短調 D817
も同類の小品ですが、
ハンガリー風の独特なほの暗いメロディが
程良いアクセントになって、
コンサートのアンコールなどに合いそうな気がしました。

アレグレット ハ短調 D915
は、21番のソナタを除けば、
このCDのなかで一番まとまりのよい、
センスに溢れた作品に感じました。




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2017年6月12日月曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集その4(1972年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931年1月- )の演奏で、
40代前半の時(1971-74年)に録音した

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797年1月 - 1828年11月)の
ピアノ作品集の4枚目を聴きました。

ブレンデル41歳の時(1972)の録音です。


CD4
シューベルト
①ピアノ・ソナタ第19番ハ短調 D958
②ピアノ・ソナタ第20番イ長調 D959

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
録音:1972年
【Eloquence 480 1218】2008年発売

シューベルトが31歳の時(1828年9月)に作曲した
最後の3つのピアノ・ソナタのうちの2曲が収録されています。

 ①ピアノ・ソナタ第19番ハ短調 D958
 ②ピアノ・ソナタ第20番イ長調 D959

シューベルトはこの2ヶ月後、
1828年11月19日に亡くなっているので
生前は出版されませんでした。


  ***

最後の3つのソナタにたどりつくと、
さすがにどれもそれなりに聴いたことがありますが、

まだそこまで体に染み付いているわけではないので、
この2曲を聴き込む良い機会になりました。


切れ味の鋭いテクニックで、
シューベルトらしい歌を繊細に紡ぎ出していく
ブレンデルのスタイルは、

無駄を削ぎ落としている分、
少し線の細さを感じるのですが、

シューベルトなら
これで良いのだと思わせる
強い説得力をもった演奏でした。

ベートーヴェンだと
多少物足りないところがあるのですが、

シューベルトでは
ブレンデルが自分らしく振る舞えば振る舞うほど、
そのままでシューベルトの本質をついている、
そんな気がしました。


どのようにでも弾けそうな曲ではあるので、
ほかにもいろいろな名演はあるでしょうが、

これはこれで聴き込むほどに味わいの増す、
名演だ思います。

2017年5月8日月曜日

ブレンデルのシューベルト:即興曲集&楽興の時(1962年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル(1931.1-)の演奏で、
シューベルトの即興曲集と《楽興の時》を聴きました。

ここしばらく1971-74年録音で、
ブレンデルのシューベルトの作品集を聴いていますが、

廉価盤なのに音がいい、
キープ株式会社さんの復刻シリーズに、

1962年録音で、
ブレンデルのシューベルトが出ていることに気がつき、
聴いてみることにしました。

収録時間の都合で、再販の際に、
即興曲集のほうを2曲削ってあるのが残念ですが、
《楽興の時》は6曲すべて聴くことができます。


シューベルト:
 即興曲 変ホ長調 作品90-2 D.899
 即興曲 変ト長調 作品90-3 D.899
 即興曲 変イ長調 作品90-4 D.899
 即興曲  ヘ短調  作品142-1 D.935
 即興曲 変イ長調 作品142-2 D.935
 即興曲 変ロ長調 作品142-3 D.935

 楽興の時 第1番  ハ長調  作品94 D.780
 楽興の時 第2番 変イ長調 作品94 D.780
 楽興の時 第3番  ヘ短調  作品94 D.780
 楽興の時 第4番 嬰ハ短調 作品94 D.780
 楽興の時 第5番  ヘ短調  作品94 D.780
 楽興の時 第6番 変イ長調 作品94 D.780

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
録音:1962年〈ステレオ〉ウィーン
【PCD-441】2017年6月発売

ブレンデル31歳の時、
1962年に録音されたシューベルトは、
1970年にフィリップスと専属契約を結ぶ前の録音なので、
ほとんど再販されて来なかったようで、

調べてみると2008年に35枚組で発売された
「アルフレード・ブレンデル・エディション
 ヴォックス、ヴァンガード、ターナバウト・レコーディングス」
のなかに見えるくらいでした。

HMVの商品説明を参照すると、
シューベルトは以下の3枚分録音されていたようです。

CD24(1968年録音)
シューベルト:
・ピアノ・ソナタ第19番D.958
・ピアノ・ソナタ第15番D.840『レリーク』
・16のドイツ舞曲D.783

CD25 (1962年録音)
シューベルト:
・4つの即興曲D.899
・楽興の時D.780
・3つの小品D.946

CD26 (1959年、62年録音)
シューベルト:
・幻想曲『さすらい人』D.760
・4つの即興曲D.935
・リスト編:ピアノと管弦楽のための『さすらい人』幻想曲
 ウィーン・フォルクスオパー管弦楽団
 ミヒャエル・ギーレン(指揮)


  ***

実際聴いてみると、
変な自己主張のないオーソドックスな演奏ですが、

表現が上滑りすることなく、
十分に美しいシューベルトの音楽が流れていきました。

若々しい勢いのある演奏で、
ふつに魅力的なシューベルトとしてお勧めできるのですが、

1970年代の再録音と比べると、
ほんの少し構成面で弱さも感じられました。

ですから、
1970年代の録音を押しのける程の、
特別な魅力は感じなかったのですが、

若き日のブレンデルの、
シューベルトへの適性をうかがえる
貴重な1枚に出会うことができました。

2016年7月25日月曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集3(1972・75年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931.1- )の演奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(Franz Schibert, 1797.1-1828.11)の
ピアノ作品集を聴きました。

7枚組CDの3枚目で、
ピアノ・ソナタ
 第17番ニ長調 作品53 D850 ※4楽章
 第18番ト長調 作品78 D894 《幻想》※4楽章
の2曲が収録されています。


シューベルト:ピアノ作品集
CD3
①ピアノ・ソナタ(第17番)ニ長調 D850(op.53)
②ピアノ・ソナタ(第18番)ハ長調 D894《幻想》(op.78)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
録音:1974年(①)、1972年(②)
【Eloquence 480 1218】2008年発売

一つ前のCD2には、
シューベルトが26歳の時(1823)に作曲された第14番と、
28歳の時(1825)に作曲された第15・16番のソナタが収録されていました。

1823年2月作曲
 ピアノ・ソナタ第14番イ短調 D784 ※3楽章
1825年4月作曲
 ピアノ・ソナタ第15番ハ長調 D840《レリーク》※2楽章
同年5月頃作曲
 ピアノ・ソナタ第16番イ短調 D845 ※4楽章

このCD3には、
同じ28歳の時に作曲されたもう1曲のソナタ(第17番)と、
翌年29歳の時に作曲された第18番のソナタが収録されています。

1825年8月
 ピアノ・ソナタ第17番ニ長調 D850 ※4楽章
1826年10月
 ピアノ・ソナタ第18番ト長調 D894《幻想》 ※4楽章

※作品番号等の分類については、便宜的に、音楽之友社編『作曲家別 名曲解説ライブラリー17 シューベルト』(音楽之友社、1994年11月)の記述に従いました(「ピアノソナタ 総説」の執筆は平野昭氏)。


  ***

どちらも4楽章編成の大曲で、
美しいメロディには事欠かないのですが、

今一つ第4楽章の印象がうすく、
おっとりのんびりした雰囲気で静かに終わるので、
注意して聴かないと、17番と18番の切れ目がわからなくなりがちでした。

それでも繰り返し聴きこむごとに、
シューベルトの叙情的なメロディがそこかしこに浮かび上がって、
独特の美しく穏やかな世界が広がって行きました。

まだ残念ながら、少し時間が経つと、
どれが第何番のソナタなのかわからなくなる状態なのですが、

聴けばすぐに、
美しいシューベルトの音楽が心に染みる程度には、
曲の内容がわかってきました。

どちらかといえば、
第18番の《幻想》ソナタの方が有名ですが、
一つ前の第17番のソナタも類似の大曲で、
十分な魅力を備えていることに気がつけたのも収穫でした。

ブレンデルのピアノは、
無理のない常識的な範囲で、
作品の真価を過不足なく伝えるもので、
シューベルトとの特別な相性の良さを感じました。

それでは、次の1枚に進みましょう。

2016年6月13日月曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集2(1972・75年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931.1- )の演奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(Franz Schibert, 1797.1-1828.11)の
ピアノ作品集を聴きました。

7枚組CDの2枚目で、
ピアノ・ソナタ
 第14番 イ短調 D784 ※3楽章
 第15番 ハ長調 D840《レリーク》※2楽章
 第16番 イ短調 D845 ※4楽章
の3曲が収録されています。


CD2
①ピアノ・ソナタ(第14番)イ短調 D784(op.post.143)
②ピアノ・ソナタ(第15番)ハ長調 D840《レリーク》
③ピアノ・ソナタ(第16番)イ短調 D845(op.42)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
録音:1972年(第14・15番)、1975年(第16番)
【Eloquence 480 1218】2008年発売


シューベルト22歳の時、
1819年7月に作曲された
 ピアノ・ソナタ(第13番) イ長調  D.664
から4年をへて、

26歳の時、
1823年2月に作曲されたのが、
 ①ピアノ・ソナタ(第14番)イ短調 D784(op.post.143)※3楽章

28歳の時、
1825年4月に作曲されたのが、未完の大作
 ②ピアノ・ソナタ(第15番)ハ長調 D840《レリーク》 ※2楽章

同年5月頃に作曲されたのが、
 ③ピアノ・ソナタ(第16番)イ短調 D845(op.42)※4楽章
です。

作曲者本人のなかでは、
第16番のソナタが画期になっていたようで、
作曲後、間もなく出版された初版譜には
「グランド・ソナタ 第1番」と題されていたそうです。

※作品番号等の分類については、便宜的に、音楽之友社編『作曲家別 名曲解説ライブラリー17 シューベルト』(音楽之友社、1994年11月)の記述に従いました(「ピアノソナタ 総説」の執筆は平野昭氏)。


2枚目は名曲揃いです。

このうち真ん中に収録されている
 ②第15番ハ長調 D840《レリーク》
は、未完の2楽章の作品で、

自らの心の奥底に向かって
どこまでも沈み込んでいるうちに、
収拾がつかなくなったような作品です。

構成面は弱いのですが、
部分部分の危うい美しさは捨てがたく、
独特の魅力に惹き込まれました。

残りの2曲、
 ①第14番イ短調 D784 ※3楽章
 ③第16番イ短調 D845 ※4楽章
はどちらも完成度の高い、
良くまとまった作品です。

小柄で品のよい感じの14番に対して、
16番は一つの殻を破った感じの規模の大きな作品で、
特に緩徐楽章はベートーヴェンの後期のソナタを聴いているかのようでした。


CDで聴くと、未完の作品を間にはさむので、
ソナタ3曲の切れ目がわかりにくくなる欠点はあるのですが、

それなりに聴き込むと、
作曲家としての変化の過程を知られる1枚として興味深かったです。


ブレンデルのピアノは、
ベートーヴェンだと踏み込み不足や線の細さを感じてしまうのですが、

シューベルトでは不思議と、
楽譜の自然な魅力をそのまま引き出した
過不足のない演奏に聴こえます。

ひと月ほど聴き込みましたので、
そろそろ次の1枚に進みたいと思います。

2016年5月2日月曜日

ブレンデルのシューベルト:ピアノ作品集1 D537&575&664(1982&2000年録音)

チェコスロバキア共和国(現・チェコ共和国)
モラヴィア地方生まれのピアニスト、
アルフレード・ブレンデル
(Alfred Brendel, 1931.1- )の演奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(Franz Schibert, 1797.1-1828.11)の
ピアノ作品集を聴いていきます。

とある動画サイトで、
ブレンデルのシューベルト演奏をみて、
特別な相性の良さを感じました。

調べてみると、
手に入りやすいシューベルトのCDセットが2種類出ていたので、
とりあえず録音の旧いほうを手に入れ聴いていくことにしました。
今回は7枚組CDの1枚目です。

ピアノ・ソナタ
 第4番 イ短調 D.537
 第9番 ロ長調 D575
 第13番 イ長調 D664

の3曲が収録されています。


CD1
①ピアノ・ソナタ(第4番)イ短調 D.537(op.post.164)
②ピアノ・ソナタ(第9番)ロ長調 D575(op.post.147)
③ピアノ・ソナタ(第13番)イ長調 D664(op.post.120)

アルフレート・ブレンデル(ピアノ)

録音:1982年(第4・13番)、2000年(第9番)
【Eloquence 480 1218】2008年発売

CD収録のはじめの2曲
 ①ピアノ・ソナタ(第4番)イ短調 D.537
 ②ピアノ・ソナタ(第9番)ロ長調 D.575
はシューベルト20歳の時、
1817年3月から8月にかけて作曲された
計7曲のソナタのうちの最初と最後の2曲です。
間の5曲を補って並べてみると、

◇1817年〈20歳〉
①ピアノ・ソナタ(第4番) イ短調  D.537 ◇3月 ※3楽章
  ピアノ・ソナタ(第5番)変イ長調 D.557 ◇5月 ※3楽章
  ピアノ・ソナタ(第6番) ホ短調  D.566 ◇6月 ※3楽章
  ピアノ・ソナタ     変ニ長調 D.567 ◇6月 ※3楽章未完
  ピアノ・ソナタ(第7番)変ホ長調 D.568 ◇6月 ※4楽章
  ピアノ・ソナタ(第8番)嬰ヘ短調 D.571 ◇7月 ※1楽章未完
②ピアノ・ソナタ(第9番) ロ長調  D.575 ◇8月 ※4楽章

となります。D.567 に通番がないのは、
次の D.568(第7番)の異稿(初稿?)だからです。

CD収録の3曲目
 ③ピアノ・ソナタ(第13番)イ長調 D664
はこの後、21歳と22歳の時(1818・19年)に取り組まれた
計4曲のソナタのうちの最後の1曲です。前の3曲を補って並べると、

◇1818年〈21歳〉
 ピアノ・ソナタ(第10番)ハ長調 D.613 ◇4月 ※2楽章未完
 ピアノ・ソナタ(第11番)ヘ短調 D.625 ◇9月 ※3楽章
◇1819年〈22歳〉
 ピアノ・ソナタ(第12番)嬰ハ短調 D.655 ◇4月 ※1楽章未完
③ピアノ・ソナタ(第13番) イ長調  D.664 ◇7月 ※4楽章

となります。

※シューベルトのピアノ・ソナタは、とくに初期の作品を中心に議論が進んでいるようですが、勉強不足でまだ全体像を把握し切れていません。作品番号等の分類については、便宜的に、音楽之友社編『作曲家別 名曲解説ライブラリー17 シューベルト』(音楽之友社、1994年11月)の記述に従いました(「ピアノソナタ 総説」の執筆は平野昭氏)。


  ***

CD1に収録された3曲のうち、
 ①ピアノ・ソナタ(第4番)イ短調 D.537
 ②ピアノ・ソナタ(第9番)ロ長調 D575
 ③ピアノ・ソナタ(第13番)イ長調 D664

第4番と第13番は、
シューベルトらしい美しいメロディに彩られた名曲で、
曲本来のあるべき姿をそのまま描き出しながら、
十分満足のいく演奏に仕上がっていて、
初めて聴く私でも飽きずに楽しむことが出来ました。

しかし第9番は今一つ共感に乏しい演奏で、
第3楽章のみそれなりに聴ける内容なのですが、
第1・2楽章は聴き通すのがつらくなるくらい退屈に感じました。

ほかの演奏をしらないので、
曲のせいなのか演奏のせいなのかはまだわかりません。
ほかの録音もいろいろ聴いてうえで、
また戻って来ようと思います。

ちなみに第4・13番は51歳の時(1982年)、
第9番は69歳の時(2000年)の録音。
ほかは41歳(1972)と44歳(1975)の時の録音です。

ブレンデルの解釈、
ベートーヴェンならそこからもう一押し
踏み込んでほしいと感じるはずなのですが、

シューベルトではこれがちょうど良く
過不足ない絶妙な解釈に聴こえます。

楽譜のすべてに歌を感じる繊細な表現なので、
ここからさらに踏み込んで、
アファナシエフのように鳴らし切ってしまったほうが
万人受けするはずですが、
そこまでしないのがブレンデルらしいところなのでしょう。

シューベルトについては、
ブレンデルの流儀は十分「あり」だと思いました。