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2018年11月18日日曜日

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲第5番(2000年5月録音)

朝比奈隆(1908年7月9日-2001年12月)氏が亡くなる前年に、
大阪フィルハーモニー交響楽団とともに収録された

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月16日頃-1827年3月26日)
の交響曲全集から、第5番を聴きました。

朝比奈隆91歳の時(2000年5月3・10日)の録音です。


ベートーヴェン
Disc1
①交響曲第5番 ハ短調 作品67《運命》
~2000年5月3日 アクロス福岡・シンフォニーホール

Disc2
②交響曲第5番 ハ短調 作品67《運命》
~2000年5月10日 大阪、ザ・シンフォニーホール

 大阪フィルハーモニー交響楽団
 朝比奈隆(指揮)
【OVCL-00021】※2000年6月発売

交響曲第5番は、
ベートーヴェン38歳の時(1808年12月22日)に、
第6番《田園》とともに初演されました。

初演時は《田園》のほうが先に紹介され、
 交響曲第5番ヘ長調《田園》
 交響曲第6番ハ短調
とされていました。


   ***

こちらは〔Disc 1〕の福岡公演で、
普通なら発売を見合わせたかも、
と思わせるミスが出だしで起きてしまい、
全体にちぐはぐな印象の演奏になってしまったので、
元々〔Disc 2〕大阪公演に期待するしかありませんでした。

一週間後に行われた大阪公演では、
ミスを挽回する意図もあったのか、
程良い緊張感のはりつめた中、
充実した響きの名演が繰り広げられていました。

この最後の全集では、
ポニーキャニオンで録音した過去2度の全集のときよりも、
アンサンブルに一層磨きがかけられ、
聴きやすく美しいオケの響きが特徴的で、

この《運命》もオケの自然な響きの中に、
朝比奈ならではの雄渾な音楽が実現されていて、
素直に感動できました。


なおエクストンから
2008年12月に発売された全集のセット盤には、
5月10日の大阪公演(Disc 2)のほうが収録されました。

こちらは大阪公演がはるかに優れているので、
今後2枚組のほうをあえて購入する必要はないでしょう。





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2018年10月21日日曜日

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲第4番(2000年5月録音)

朝比奈隆(1908年7月9日-2001年12月)氏が亡くなる前年に、
大阪フィルハーモニー交響楽団とともに収録された

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
の交響曲全集から、第4番を聴きました。

朝比奈隆91歳の時(2000年5月3・10日)の録音です。


ベートーヴェン
Disc1
①交響曲第4番 変ロ長調 作品60
~2000年5月3日 アクロス福岡・シンフォニーホール

Disc2
②交響曲第4番 変ロ長調 作品60
~2000年5月10日 大阪、ザ・シンフォニーホール

 大阪フィルハーモニー交響楽団
 朝比奈隆(指揮)
【OVCL-00023】※2000年7月発売


交響曲第4番 変ロ長調 作品60 は、
第3番の初演(1804年12月)から2年余りをへた、
ベートーヴェン36歳の時(1807年3月)に初演された作品です。

ちなみに第5・6番が初演されたのは、
それから1年9ヶ月後(1808年12月)のことでした。


  ***

先に行われた〔Disc1〕福岡公演から、
完成度の高い充実した演奏が繰り広げられていますが、

福岡の一週間後に行われた〔Disc 2〕大阪公演は、
さらに隙のない完璧な仕上がりで、
指揮者の強い意志の伝わる熱い演奏に、
心から感動して全曲を聴き通すことができました。

晩年の朝比奈の最上レベルの演奏が聴ける、
お薦めの録音です。

個人的には、
5月10日の大阪公演(Disc 2)のほうが優れた演奏に聴こえますが、

エクストンから、
2008年12月に発売された全集のセット盤では、
5月3日の福岡公演(Disc 1)のほうが収録されています。

福岡公演も、充実した演奏ではあるので、
全国のいろいろな会場の録音を収録する方針があったのかもしれません。

大阪公演はもとの2枚組CDでしか聴くことはできないので、
細かな差異が気になる方は、
2枚組のほうも聴いてみることをお勧めします。





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2018年2月5日月曜日

コンヴィチュニー&ゲヴァントハウス管のベートーヴェン:交響曲第1・2番(1959年録音)

朝比奈隆&大阪フィルの
ベートーヴェンに合わせて、

チェコのモラヴィア生まれの指揮者
フランツ・コンヴィチュニー
(Franz Konwitschny,1901年8月14日-62年7月28日)が、
59・60歳の時(1959年6月~61年8月)に、

ドイツのオーケストラ
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
(Gewandhausorchester Leipzig)と録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
の交響曲全集を聴いていきます。

まずは第1・2番を収めた1枚です。


ベートーヴェン:交響曲全集~
Disc1
① 交響曲第1番ハ長調 Op.21
② 交響曲第2番ニ長調 Op.36
③《プロメテウスの創造物》序曲 Op.43

フランツ・コンヴィチュニー(指揮)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

録音:1959年6月11-16日(①②③)
【Berlin Classics 0300926BC】2017年5月発売
 ※録音月日の情報は、CD付属の解説文を参照しました。
  交響曲については全9曲明記されていますが、
  序曲は一部をのぞいて月日の情報は明らかにされていません。


交響曲第1番は、
ベートーヴェン29歳の時(1800年4月)に、
第2番は32歳の時(1803年4月)に初演されました。


その風貌から何となく
芸風が似ているイメージがあったので、
朝比奈のベートーヴェンに合わせて、
コンヴィチュニーの録音も聴いていくことにしました。

重々しくどっしりした
巨匠風の演奏を想定していたのですが、

聴き慣れた朝比奈氏の演奏と比べると、
はるかに洗練された軽めの爽やかな印象で、
すんなりと耳に入ってくる
わかりやすい演奏が繰り広げられていました。

マズアで聴き慣れた
ゲヴァントハウスの清新な響きが、
ここですでに聴かれることに嬉しい驚きがありました。

どちらが良いとは一概にいえませんが、
初めて聴いて、曲の美しさに率直に惹き込まれるのは、
コンヴィチュニーのほうだと思いました。

それほど重々しく聴こえないので、
その点聴き込むと物足りなくなってくるかもしれませんが、

時々聴いて、
その美しさにうっとりする分には、
申し分のない録音といえるでしょう。



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2016年10月10日月曜日

小澤征爾&水戸室内管のベートーヴェン:交響曲第4&7番(2014年録音)

小澤征爾(1935.9- )の指揮する
水戸室内管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770.12.16-1827.3)
の 交響曲第4番と第7番を聴きました。

小澤氏78歳の時、
2014年1月17日、5月25日のコンサートをライブ録音したCDです。


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
①交響曲第4番 変ロ長調 作品60
②交響曲第7番 イ長調 作品92

水戸室内管弦楽団
指揮:小澤征爾
録音:2014年1月17日(①)、5月25日(②)、水戸芸術館コンサートホールATM
【UCCD-1413】2015年1月発売

①交響曲第4番変ロ長調作品60は、
ベートーヴェン36歳の時(1807年3月)に初演された作品です。

②交響曲第7番 イ長調 作品92
43歳の時(1813年12月8日)に初演された作品です。


小澤征爾の指揮する水戸室内管弦楽団との《運命》を聴いて、
小澤氏のベートーヴェンも悪くないかもと思い、
4番と7番を収録したCDを購入してみました。

CDで聴く《運命》はよくいえば透明な、
悪くいえば少し気力の衰えを感じさせる演奏で、
無駄のない純音楽的な《運命》として、
究極的なところまで行き着いているとは思うものの、

心を揺さぶられるような感動を味わったかというと、
そこまでではないもどかしさが残りました。

しかし、
サイトウ・キネン・オーケストラとの録音よりも、
繰り返し聴きたくなる味わい深い演奏であったことは確かなので、
第4番と第7番を収録した1枚を聴いてみることにしました。

この中で、
圧倒的な迫力に驚いたのが第7番で、
《運命》の好印象を遥かに上回る名演が繰り広げられていました。

《運命》や第4番では、
室内オーケストラらしい薄い響きが若干気になっていたのですが、
第7番はまるで別のオケが弾いているのではないかと紛うばかりの
分厚い響きで、心を一気に鷲掴みにされました。

ふだんのオーソドックスなスタイルの中から、
一歩突き抜けた感じの物凄い音が溢れ出てきて、
これまで聴いたことのない第7番の世界が広がっていました。


このCDは、
小澤氏の録音に時折感じられる空虚さが微塵もなく、
耳に心地よい響きの充実したオケとともに、
手に汗握る名演が繰り広げられており、
私の中では疑いなく、第7番のベスト演奏の一つになりました。

第4番も、悪くはありません。
《運命》と同じくらいにはいいですし、
サイトウ・キネン・オーケストラとの旧録音より一歩、
解釈に深まりは感じられます。

しかしながら、
ほかを圧倒する何かがあるのかといわれると、
一貫してオーソドックスなスタイルを貫かれているだけに、
あえてこの第4番でなければならない特徴には欠けるように思われました。

小澤征爾&水戸室内管弦楽団のベートーヴェン、
第7番>《運命》>第4番
の順でお薦めです。

2016年10月3日月曜日

小澤征爾&シカゴ交響楽団のベートーヴェン:交響曲第5番《運命》(1968年録音)

小澤征爾(1935.9- )の指揮する
シカゴ交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770.12.16-1827.3)
の 交響曲第5番《運命》 と、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert, 1797.1-1828.11)
の 交響曲第7番《未完成》 を聴きました。


ベートーヴェン
①交響曲第5番 ハ短調 作品67《運命》
シューベルト
②交響曲第7番 ロ短調 D789《未完成》

小澤征爾(指揮)
シカゴ交響楽団
録音:1968年8月9日、シカゴ、オーケストラ・ホール
【SICC-1787】2015年4月発売

小澤氏79歳の時(2015.3)に録音された、
水戸室内管弦楽団との《運命》を聴いて、
昔はどうだったのか気になりました。

遡ること47年、32歳の時(1968.8)に録音された
シカゴ交響楽団との《運命》が最近復刻されたので、
聴いてみることにしました。

その結果、
同一人物なので当然のことかもしれませんが、
基本的なスタイルは30代の時から変わっていないことを確認できました。

楽譜を変に深読みしないで、
正攻法で真っ正面から切り込んでいくスタイルは、

失敗すると、
味も素っ気もない空虚さと隣り合わせなので、
必ずしもそこにこだわる必要はないと思うのですが、

正攻法で攻めて、
しかも圧倒的な感動を与えられるのなら、
非難されるいわれはないでしょう。


新旧2つの録音とも、
基本的なスタイルは変わっていないのですが、
私にとって魅力的だったのは旧録音のほうでした。

解釈面で非の打ち所のないのは、
経験値が生かされている新録音のほうで、
旧録音ではごく僅かながら接続にぎこちなさを感じるところがありました。

それでも、
若い指揮者のもとに強い共感をもって演奏する
シカゴ交響楽団の分厚い響きが実に魅力的で、

あふれんばかりの若々しい情熱がそのまま再現されていて、
率直に心を動かされました。

大オーケストラの懐の深い響きと比べると、
室内オーケストラでは多少の聴き劣りがするのは仕方がないことかもしれません。

1968年録音の《運命》は、
今聴いても十分に感動できる正攻法の名演だと思います。


小澤氏の指揮による《運命》は、
この他にも

 1981年1月録音 ボストン交響楽団
 2000年9月録音 サイトウ・キネン・オーケストラ

の2つがあるので、今後機会があれば聴いてみたいと思います。

なお、
併録されている《未完成》は凡演でした。
《運命》と同じスタイルなのですが、

独特の歌心なしで、若さと情熱だけを武器に、
シューベルトに立ち向かうのは無理があるように感じました。

2016年9月5日月曜日

小澤征爾&水戸室内管のベートーヴェン:交響曲第5番《運命》(2016年録音)

小澤征爾(1935.9- )の指揮する
水戸室内管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770.12.16-1827.3)
の 交響曲第5番《運命》と、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756.1-1791.12)
の クラリネット協奏曲 を聴きました。

小澤氏80歳の時、
2016年3月25、27日のコンサートを録音したCDです。

体調を考慮して小澤氏の指揮は《運命》のみ。

クラリネット協奏曲は、
水戸室内管弦楽団のメンバーである
リカルド・モラレス(Ricardo Morales. 1972- )を独奏者に迎え、
指揮者なしで演奏されています。


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
①交響曲第5番 ハ短調 作品67《運命》

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
②クラリネット協奏曲 イ長調 K.622

リカルド・モラレス(クラリネット)
水戸室内管弦楽団
指揮:小澤征爾(①)
【UCCD-1433】2016年8月発売


交響曲第5番 ハ短調 作品67《運命》は、
ベートーヴェン38歳の時(1808.12.22)に初演された作品です。

クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 は、
モーツァルト35歳の時(1791.11)に完成された作品です。


最近の小澤征爾は凄い、
という噂が気になったので最新の録音を聴いてみました。

楽譜を誇張せずに表現していくスタイルとしては、
滅多に到達できないところまで行き着いていて、

室内オーケストラとの録音という前提つきであれば、
最高レベルの《運命》だと思いました。

ただ気になったのは、
聴きやすい音には録れているのですが、
録音を乗り越えて伝わって来るはずの情熱が、
今一歩のように感じられたことです。

情熱不足の《運命》はありか無しか。

体調が影響したのか、
録音の加減なのかは不明ですが、
聴きやすい耳に心地のよい音で録れているだけに、
とても惜しい演奏に思えました。

過去の小澤氏の《運命》とも比べてみたくなったので、
手に入りやすいものから聴いてみようと考えています。


なお、どちらかといえば、
それほど期待していなかった
リカルド・モラレス氏の独奏による
クラリネット協奏曲が期待をはるかに上回る出来でした。

飛び切りの名曲のわりに、
録音がむつかしいのか満足できるCDにこれまで出会えなかったのですが、

どこも欠点のない完璧な仕上がりで、
オケともども理想的な名演に仕上がっていると思います。

クラリネットにはそこまでこだわりがないので、
恐らく聴き逃している録音も多かろうと思いますが、
私にとっての今現在のベスト盤になりました。

2015年10月5日月曜日

宇宿允人&フロイデ・フィルのベートーヴェン:交響曲第3番(2009年録音)

宇宿允人(うすきまさと 1934.11-2011.3)氏の指揮する
フロイデ・フィルハーモニーの演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の交響曲第3番《英雄》を聴きました。

指揮者74歳の時(2009.1)の録音です。

朝比奈隆、山田一雄両氏の
最晩年の《英雄》を聴いて来て、

そういえば宇宿允人氏の演奏はどうだったのだろうと思い、
聴いてみることにしました。


宇宿允人の世界27

ベートーヴェン:
交響曲第3番 変ホ長調 作品53《英雄》
マスネ:タイースの瞑想曲

宇宿允人(指揮)
フロイデ・フィルハーモニー
録音:2009年1月21日(水)、《宇宿允人の世界》第179回公演、東京芸術劇場大ホール
【MUCD-027】

ベートーヴェン
34歳の時(1804.12)に初演された
交響曲第3番《英雄》をメインとして、

フランスの作曲家
ジュール・マスネ(1842.5-1912.8)の
オペラ《タイス》の間奏曲を添えたプログラムです。

《タイス》は作曲者52歳の時(1894)に初演されています。

このコンサートでは、
ソロ・ヴァイオリンの独奏パートを、
第1ヴァイオリンで合奏させています。


 ***

宇宿允人氏は、規格外な指揮姿で
誤解されている面もあるように思われますが、

CDを聴くかぎり、
どこも偏狭なところはなく、
オーソドックスなスタイルの中に、
実にまっとうな演奏が繰り広げられていて、
逆に驚かされます。

アマチュアのオーケストラを相手にしているので、
CDではあと一歩、物足りなく感じることも多いのですが、

うまくはまった時の演奏は、
並みの指揮者にとても太刀打ちできない、
めったにないレベルの感動を与えてくれます。


  ***

宇宿氏のベートーヴェンは、
はじめに2002年録音の《運命》・第8番・第9番を聴きました。

この時は、オケの粗さが目立ち、
ほかを圧倒する何かがあるとは感じませんでした。

その後、
2006年12月に録音された
ベートーヴェンの第九を聴いたところ、

オケの水準も指揮者の表現力も、
一つ上につきぬけた印象があって、
予想を遥かにこえる大きな感銘を受けました。

いたってオーソドックスなスタイルなのですが、
ほかの指揮者とは明らかに違う、
ベートーヴェンの音楽のもつ美しさがすんなりと伝わって来る演奏でした。

宇宿氏が、
晩年に演奏されたベートーヴェンのなかには、
飛び抜けて素晴らしいものがあるようです。

ライブ録音のCDを一枚ずつ聴いていこうと思っております。


  ***

前置きが長すぎました。

この2009年の《英雄》、
2006年の第九に比べると、
オケの調子が万全ではありません。

第1・2・4楽章は、
個人的には全然問題ないのですが、
第3楽章にかなり致命的なミスがあるため、
この楽章のみは大きくマイナスです。

しかし第3楽章をのぞけば、
まとめにくい第1楽章を含めて、

わかりやすく有機的に全体をまとめ上げ、
深く感動させられる演奏が繰り広げられていました。

《英雄》はまとめにくい曲なので、

誰の演奏を聴いても、
CDだと退屈に感じられることが多いのですが、

曲想に合わせて、ごく自然に、
自在にテンポを動かせるところが強みになるのか、

どこも退屈なところのない、
《英雄》たるに相応しい、手に汗握る演奏が展開されていました。

最近聴いた
朝比奈隆や山田一雄の
晩年の《英雄》と比べるなら、

オケのレベルは相当落ちますが、
宇宿氏のライブのほうが俄然感動的で、
おもしろい演奏を聴かせてくれました。

キズがあるのは難点ですが、
今一つ《英雄》の良さがわからない方に、
ぜひ聴いていただきたい演奏です。

宇宿氏は、
この2年前の《英雄》もCD化されているので、
ぜひ聴いてみようと思います。

キズがなければ、
そちらのほうが良い演奏かもしれません。


もう一点、
こちらはあまり期待していなかったのですが、
アンコールの《タイス》も絶品です。

ほかの管弦楽曲も聴いてみたくなりました。


※Wikipediaの「ジュール・マスネ」を参照。

2015年7月13日月曜日

山田一雄&大阪センチュリー響のベートーヴェン:交響曲第3番(1991年録音)

山田一雄(1912.10-1991.8)の指揮する
大阪センチュリー交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ベートーヴェン(1770.12-1827.3)の
交響曲第3番《英雄》を聴きました。


大阪センチュリー交響楽団は、
現在の日本センチュリー交響楽団であり、
2011年4月に名称変更されました。

1989年に設立され、
1990年3月に最初の演奏会が開かれています。

このCDは
それから1年後に開催された
第4回定期演奏会のライブ録音です。

山田一雄はこの年の8月に急逝されているので、
亡くなる5ヶ月前の記録としても貴重なものです。


ベートーヴェン
交響曲第3番変ホ長調作品55《英雄》

モーツァルト
歌劇《イドメネオ》のためのバレエ音楽 K.367
より第4曲 ガヴォット

大阪センチュリー交響楽団
山田一雄(指揮)
録音:1991年3月15日大阪、ザ・シンフォニーホール
【WWCC-7782】2015年3月発売


山田一雄氏は、
クラシック音楽を聴き始めたころに、

テレビで見かけた
情熱的で規格外の指揮姿に心を奪われて以来、

大好きな指揮者の一人です。


わかりやすい棒をふる方ではなかったので、

残されたライブ録音を聴くと、
技術的に難のあるものが多く、

たまに発売される
昔の録音を聴いてみては、

こんなはずではないと
がっかりすることの繰り返しが続いています。


さて今回の
大阪センチュリー響との《英雄》、

実はそれほど期待していなかったのですが、
店頭で視聴してみたところ、

オケの状態がかなり良く、
どこにもオケの乱れがない様子だったので、

これは成功作かもと思い、購入してみました。


家でじっくり聴いてみたところ、

かつて聴いた新星日本交響楽団や
札幌交響楽団との《英雄》と比べて、

大阪センチュリー響のほうが、
オケの規模は小さいので迫力には欠けるのですが、

極端に無理なことはさせずに、
ごくオーソドックスな《英雄》が描き出されていて、

技術的には十分納得のいくレベルで演奏されていました。


しかしそれでは、これが
山田一雄による《英雄》の決定版足りうるのか
といえば、残念ながら否と答えざるを得ません。

すべてがスッキリと見通しよくまとめられている分、

彼ならではの、
心を激しく揺さぶられる感動には欠けていて、
おとなしい印象で、

繰り返しこのCDを聴きたくなる
特色には欠けているように思うのです。


山田一雄氏のベートーヴェン、

私にとっての名盤は、
新星日本交響楽団との《運命》1枚のみで、

他はその真価を伝えていない、
とする判断に変わりはありません。

2015年7月6日月曜日

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲第3番(2000年録音)

日本の指揮者
朝比奈隆(1908.7-2001.12)の指揮する
大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770.12-1827.3)の
交響曲第3番《英雄》を聴きました。

朝比奈隆の最晩年、
2000年に録音された7回目の交響曲全集からの分売です。

指揮者92歳(2000年7月)の時の録音です。


ベートーヴェン
交響曲第3番 変ホ長調 作品55《英雄》

大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮:朝比奈隆
録音:2000年7月23日 東京、サントリーホール
【AVCL84002】※2014年11月発売。


朝比奈隆7回目の全集は、
各曲2回の公演をそのままCD化する
マニア向けの趣向だったので(2000年4月- 2001年5月発売)、

途中まで購入したものの全曲揃えるには至りませんでした。

2008年12月に改めて、
6枚組の全集として発売されましたが、
高価なので買いそびれているうちに、

今回(2014年11月)の再販となりました。


第3番は初出時に、
2000年7月8日(大阪)と23日(東京)の演奏が2種類ともCD化されました。

今回のCDには、
2000年7月23日のライブ収録とありますので、
23日の東京での演奏をもとに微調整された音源ということだと思います。


  ***

さて今回の演奏、
第1・2番がとても良かったので期待していたのですが、

指揮者の意欲が空回りしたのか、

始めから微妙に縦の線がズレるところがあり、
ごく僅かですがリズムに乱れが生じ、

大きなミスこそないものの、
全体的に散漫な印象で、集中力に欠ける演奏となっていました。

失敗とまでは言えないものの、
朝比奈隆の《英雄》として第一に推せる演奏でないことは確かだと思います。


ライブ録音でいつも
絶好調時の名演を残せるとは限らないので、
まあ仕方がないかなと思いましたが、

念のため、
初出時のCDで確認してみたところ、驚きました。


ベートーヴェン
交響曲第3番 変ホ長調 作品55《英雄》

大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮:朝比奈隆

〔DISC1〕2000年7月8日 大阪、ザ・シンフォニーホール
〔DISC2〕2000年7月23日 東京、サントリーホール
【OVCL00026】※2000年10月発売。

ほぼ同時期に行われた2回分の演奏会がそのまま収録されています。

このうち上記のとは収録日の異なる
〔DISC1〕2000年7月8日(大阪)
の演奏を確認してみると、

23日の東京の演奏会で聴かれた
指揮者とオーケストラとの微妙な齟齬がどこにもなく、

第1・2番で聴かれたのと同じレベルの完成度で、
安心して身を任せられる立派な《英雄》が演奏されていました。

私の思い違いかもしれませんが
CDの音だけ繰り返し聴いてみる限りでは、

7月8日(大阪)の演奏会のほうが、
7月23日(東京)の演奏会よりも

はるかに優れた演奏であるように聴こえました。

〔DISC1〕2000年7月8日(大阪)

の演奏であれば、

朝比奈隆の最後の結論として、
繰り返し聴くに足る《英雄》の優れた演奏といって良いと思います。

2015年1月29日木曜日

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲第1・2番(2000年録音)

日本の指揮者
朝比奈隆(1908.7-2001.12)の指揮する
大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770.12-1827.3)の
交響曲第1・2番を聴きました。

朝比奈隆の最晩年、
2000年に録音された7回目の交響曲全集からの分売です。

指揮者91-2歳(2000年3・7月)の時の録音です。


ベートーヴェン
交響曲第1番 ハ長調 作品21
交響曲第2番 ニ長調 作品36

大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮:朝比奈隆
録音:2000年7月23日 東京、サントリーホール(第1番)
   2000年3月10日 大阪、フェスティバルホール(第2番)
【AVCL84002】※2014年11月発売。

7回目の全集は、
各曲2回ずつの公演をそのままCD化するという
マニア向けの趣向だったので(2000年4月- 2001年5月発売)、

途中まで購入したものの全曲揃えるには至りませんでした。

2008年12月に改めて、
ふつうの全集仕様に編集したものが6枚組で発売されましたが、
高価なのでそのうちに買おうと思っているうちに、
今回の再販となりました。


  ***

第1番は初出時、
2000年7月21日と23日の演奏が両方ともCD化されていました。

今回のCDには、
2000年7月23日のライブ収録とあります。
恐らく23日の演奏をもとに微調整された音源ということだと思います。


同じように、第2番は初出時、
2000年3月10日と12日の演奏が両方ともCD化されていました。

今回のCDには、
2000年3月10日のライブ収録とあります。
恐らく10日の演奏をもとに微調整された音源ということだと思います。


  ***

さて今回、
一聴して気がつかされるのは、
これまで聴いてきたポニーキャニオンでの2回の全集とは、
明らかにオケの響きが違うことです。


それまでの録音では、
オケの各楽器が荒削りなままで突出する感じがあって、

良くいえば、豪快かつ攻撃的な印象、
悪くいえば、耳にうるさい粗雑な印象がありました。


新しい録音では、まずもって
美しくブレンドされたオケの豊穣な響きに耳を奪われます。

大阪フィルってこんなに美しい響きだったかなと驚くほどです。

個人的に、
朝比奈&大フィルを生で聴いた印象に近いのは、
今回のCDのほうだと思うので、

生のオーケストラを聴いた時の印象により近くなるように、
それまでと録音の方針を変えたのでしょうか。


これまでの素朴で豪快な音楽作りに加えて、
オーケストラの極上の音色を楽しむこともできるので、

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲全集のなかでも、
完成度の点で際立っているのではと思いますが、

たくさん出ている全集をすべて聴いたわけではないので、

これはこれで、
十分お薦めできるレベルの優れたCDであることは保証できます。


最近はあまり聴かれなくなった
オケを豪快に鳴らしきって演奏させるタイプの
第1・2番として、

くりかえし聴きたくなる魅力を備えた演奏だと思います。

2014年12月7日日曜日

北原幸男&名フィルのベートーヴェン:交響曲第9番(2014.11.30)

去る11月30日(日)に、
金山の日本特殊陶業市民会館フォレストホールまで、

市民の「第九」コンサート2014

を聴きに行ってきました。


ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の

《エグモント》序曲 作品84
交響曲第9番ニ短調 作品125《合唱付》

の2曲からなるプログラム。

指揮:北原幸男
管弦楽:名古屋フィルハーモニー交響楽団
独唱:ソプラノ 長屋弘子
   ア ル ト 相可佐代子
   テノール 錦織健
    バ ス  澤脇達晴
合唱:市民の「第九」コンサート2014特別合唱団

のメンバーによる演奏でした。



行動の自由が効くのは日曜だけなので
行きたいコンサートが見つかることは稀なのですが、

先週偶然、
かねてから贔屓にしている
北原幸男(きたはらゆきお 1957-)氏の指揮で「第九」が聴けることを知り、

当日券を目当てに金山まで足を運びました。

会場に30分ほど前に着いたところ、
満席で当日券は出ないと言われたのですが、

せっかく来たので開演3分前まで粘り、
直前に発生した余りの分を購入して聴いてきました。



初めの《エグモント》序曲から、

北原幸男氏の指揮と、
それに応えようとする名フィルの充実ぶりが嬉しい驚きでした。


北原氏は、
オーバーアクションでみえを張るようなところが一切なく、

楽譜から引き出される穏当な解釈を、
誠実に再現せんとする職人肌の指揮者です。

強烈な個性を放つわけではないのですが、

虚飾を排し、
音楽の中身で勝負せんとする姿勢は
若いころから一貫していて、

独特の品の良さ、格調高さの中に、
十分な充足感のある演奏が繰り広げられていました。


次の「第九」も、
北原氏と名フィルが、

穏当な解釈の中に、
中身の詰まった充実した演奏を聴かせてくれました。

3楽章までの完成度の高さを思うと、
4楽章からは、声楽の扱いの難しさを痛感しました。


ただアマチュアの合唱団が、
数ヶ月の練習でプロのオーケストラと共演されたことを思えば、

十分に健闘されていて、

北原氏の巧みな指揮のもと、
全体として感動的な演奏が繰り広げられていました。


ただソリストはプロであることを思えば、
もう少し何とかならなかったのかなと感じました。

60分近く何も声を出さなかったところへ
いきなり声を張り上げるわけなので、
それだけ難しい曲なのかもしれません。



全体としてみると、
3楽章まではそのままCDにして繰り返し聴きたくなる演奏、

4楽章は年に1度の市民の合唱団によることを考えれば
十分に楽しめる演奏でした。


楽譜に対して常に謙虚で、
あっさりしているようで実は濃い、

北原氏の真価を存分に味わうことができました。


個人的には、
オケから自然につむぎ出される音に、
もう少しだけ濃い味わいが感じられるようになれば
言うことないのですが、

恐らく数年単位でゆっくりゆっくり
良い方向に進化されていくのであろうと
今後に期待しております。


   ***

市民の「第九」コンサートは、
当日のパンフレットを参照すると、

1989年10月に開催された
 名古屋市制100周年記念「ザ・第九」1万人のコンサート
をきっかけとして、

1991年から2002年まで12回は、
 讃歌「第九」コンサート

2003年から2014年まで12回は、
 市民の「第九」コンサート

と称して毎年秋か冬に演奏会を実施されているようです。

北原氏は2002年11月と2009年11月の2回指揮されていて、
今回は3回目の顔合わせでした。


2013年4月30日火曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その9

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
9枚目を聴きました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS

1) ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調作品55《英雄》
2) シューベルト:劇付随音楽《ロザムンデ》序曲 作品26 D644
3) ブラッハー:管弦楽のための協奏的音楽 作品10

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1952年12月8日(1)、1953年9月15日(2)、1954年4月27日(3)、ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD9

CD9には、まず
1952年12月7・8・9日に行われた
 ウェーバー:歌劇《魔弾の射手》序曲
 ヒンデミット:交響曲《世界の調和》
 ベートーヴェン:交響曲第3番《英雄》
の3曲からなる演奏会から、

8日に演奏された《英雄》交響曲が収録されています。
(残りの曲は、CD8に収録されています。)


次に、1953年9月15・16・17日に行われた
 シューベルト:劇付随音楽《ロザムンデ》序曲
 シューベルト:交響曲第8番《未完成》
 シューベルト:交響曲第9番《ザ・グレート》
の3曲からなる演奏会から、

15日に演奏された《ロザムンデ》序曲が収録されています。
(残りの曲は、CD10に収録されています。)


最後に、1954年4月25・26・27日に行われた
 ヘンデル:合奏協奏曲 作品6-5
 ブラームス:交響曲第3番
 ブラッハー:管弦楽のための協奏的音楽
 シュトラウス:《ドン・ファン》
 ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》より
の5曲からなる演奏会から、

27日に演奏されたブラッハーが収録されています。
(ヘンデルはCD7に、残りはCD11に収録されています。)


   ***

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven 1770.12-1827.3)の
交響曲第3番変ホ長調作品55《英雄》は、
33歳のとき(1804年)に完成された作品です。

なぜか若干さめた感じに聴こえますが、
フルトヴェングラーの得意曲だけあって、

有機的な響きにほどよい推進力に導かれて、
曲の全体像がよくわかる演奏になっていました。

音質もフルトヴェングラーの録音としては良い方だと思いますが、
その分コンサート用でない、臨時の演奏会場のデッドな感じが伝わって来て、

オケの響きそのものを楽しむことは出来ませんでした。
その点、多少マイナスでした。


   ***

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert 1797.1-1828.11)の
劇付随音楽《ロザムンデ》序曲 作品26 D644

は、ドイツの女性作家ヘルミーネ・フォン・シェジーの
戯曲『キプロスの女王ロザムンデ』のために作曲された音楽です。
不評のため台本は散逸し、シューベルトの音楽のみが伝えられています。

序曲は、
のちに書き下ろされた独自の版(D797)もありますが、
初演時には、歌劇《アルフォンソとエストレッラ》序曲(D732)を転用、
のちに劇付随音楽《魔法の竪琴》序曲(D644)が転用されました。

録音などで何も注記がないときは、
ほとんど D644 が演奏されているようです。

すぐれた演奏といって良いと思いますが、
個人的には、ボッセとの新日本フィルとの
有機的だけど軽みもある演奏に魅了された後なので、

響きが少し重々しすぎるように感じました。

フルトヴェングラーらしい
曲の内面をよく掘り下げた名演ではあります。


   ***

ドイツの作曲家
ボリス・ブラッハー
(Boris Blacher 1903.1-1975.1)の
管弦楽のための協奏的音楽 作品10
は、34歳のとき(1937)に作曲された作品です。

パガニーニの主題による変奏曲 作品26(1947)
という管弦楽曲が知られているようですが、未聴です。

どちらかというと、
今では忘れられかけている作曲家のようです。
ジャズのリズムと現代音楽の無機的な響きを合わせたような作品です。

録音も良く、
楽譜をよく読み込んだ上での演奏だと思います。

聴いていて苦痛になることはないのですが、
くり返して何度も聴きたいか、といえば、

それほどは感銘を受けない、
時代の潮流にのっただけの曲のように感じました。


※Wikipediaの
 「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
 「交響曲第3番(ベートーヴェン)」
 「フランツ・シューベルト」
 「キプロスの女王ロザムンデ」
「ボリス・ブラッハー」の各項目を参照。

※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
 仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照。
 【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】

2012年12月22日土曜日

ボッセ&新日本フィルのシューベルト&モーツァルト&ベートーヴェン

すばらしいバッハを聴かせてくれた
ゲルハルト・ボッセ(1922.1-2012.2)さんの追悼盤、

新日本フィルとのライブ録音が
廉価980円で再販されていましたので、
購入し聴いてみたところ、

予想をはるかに上回る名演で、
びっくりしました。


1) シューベルト(1797-1828)
  劇附属音楽「ロザムンデ」序曲

2) モーツァルト(1756-91)
  交響曲第39番変ホ長調Kv.543

3) ベートーヴェン(1770-1827)
  交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」

ゲルハルト・ボッセ(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
録音:2011年5月13・14日(1・2)、2010年4月2・3日(3)
   すみだトリフォニーホール
【ALT231】

まず何より、
オーケストラから引き出される響きが魅力的でした。

肩の力の抜けた、濁りのない、
明るい響きを旨としながら、

ここぞという所での凄み、力強さにも欠けておらず、
オケの清新な響きだけで、十分心地良く、満ち足りた気持ちになりました。

こうした経験は、
サヴァリッシュ&ドレスデン国立管弦楽団の
シューマンを聴いて以来のことです。

日本のオケも、振る人が振れば、
こんな響きになるんだなと、感心しました。


 ***

シューベルトは、
これまでそれほど意識して聴いて来なかったので、
他と比べてどうなのかは良くわかりませんが、

シューベルトらしい、
典雅で明るく楽しい曲だと思いました。
他の演奏も聴いてみたくなりました。


モーツァルトは、
これまでそれなりに聴き込んできたはずですが、
その中では明らかにベストの出来で、
初めて聴くような感動を覚えました。

オケの明るく清々しい響きも39番には合っており、
これしかないと思われる絶妙な間合いで
曲が新たに紡ぎ出されていくさまは、

出会えたことに心から感謝したい、
融通無碍の名演奏でした。


ベートーヴェンは、
これまで幾度となく聴いてきた曲なので、
今さら「運命」でも、と思っていたのですが、

これが実に若々しく、
清新な響きに満ちた、
心洗われる、躍動的な演奏で、

それを特別に趣向をこらした解釈によらず、
オーソドックスな解釈の中で実現しているのは、
ボッセさんの類まれな実力によるものでしょう。


この追悼盤、
ボッセさんの指揮者としての実力を知るのに十分な、
すばらしい内容だと思います。


 ***

新日本フィルとのCDは、このほか
J.C.バッハとブラームスを取り上げた
2009年のコンサートを収録した1枚があったので、
手に入れてみましたが、

肝心の録音が
うすいヴェールをかぶせたようで、
オケの魅惑的な響きが伝わって来ず、
もどかしい思いがしました。

リマスタリングでどうにかなるのであれば、
再販を期待したいです。

もう一つ、DVDで
ベートーヴェンの交響曲全集も出されているので、
購入すべきかどうか、迷っているところです。

ふだんあまりDVDは観ないので、
CDで、廉価版で出たらいいなと思っています。

2012年11月20日火曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その7

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
7枚目を聴きました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS

1) ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55
2) グルック: 歌劇《アルチェステ》序曲
3) ヘンデル:12の合奏協奏曲集より第5番 ニ長調 作品6-5 HWV323

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1950年6月20日(1)、1951年9月5日(2)、
   1954年4月27日(3)、ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD7


1曲目はCD6の続きで、
1950年6月20日の演奏会から、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)の
交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55 が収録されています。

ベートーヴェン30代半ばの作品で、
1804年に完成、翌年に公開初演されています。

演奏は最上レベルです。

私にとって「英雄」は、
全体的にまとまりがつかない感じがして、
特別に好きな曲とは言えないのですが、
こうした別格の演奏で聴くと、やはり名曲だと思えます。

どこまでも有機的な響きのもと、
若々しいまでの情熱で一気に駆け抜けていくさまは、

第1・2番に続く、
若き日のベートーヴェンの強い意志を
伝えてくれているようで、

「英雄」の新たな魅力を発見することができました。


残念なのは、録音が今一つなことです。

フルトヴェングラーの遺産としては、
まずまず聴きやすい部類に入ると思いますが、
最近の鮮明な録音を聴きなれた耳には、
多少辛いものがありました。


   ***

2曲目は、1951年9月5日の演奏会から、

ドイツ出身の作曲家
クリストフ・ヴィリバルト・グルック(1714-1787)の
歌劇《アルチェステ》序曲 が収録されています。

グルック50代前半、
1767年にウィーンで初演されたイタリア語の歌劇(Wq.37)です。

十年後の1776年にパリで、
フランス語への改訂版(Wp.76)が初演されています。

通常は改訂版をもとに、
イタリア語で演奏されることが多いようなので、
フルトヴェングラーも改訂版を用いた可能性が高いですが、
楽譜を見ていないので確かなところはわかりません。


さてこの録音、
びっくりするくらい良い音です。

下手なステレオ録音よりもずっと美しく聴こえます。

そして当然のことながら、
やはりいい音で聴くとより一層、
フルトヴェングラーの凄さが際立ちます。

演奏スタイルが一昔前のものなので、

身近にこの曲を聴く機会は
もうほとんどないと思いますが、

オケの有機的な深い響きに包まれた大演奏で、
ぜひ聴いてほしい1曲です。


なおこの9月5日のコンサート、
グルックの後、ベートーヴェンの第九が演奏されていますが、
このCDには収録されていません。


  ***

3曲目には、
1954年4月25-27日のコンサートから、
3日目(27日)の演奏で、

ドイツ生まれの作曲家
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
(1685-1759)の

12の合奏協奏曲集より
 第5番ニ長調作品6-5 HWV323

が収録されています。

ヘンデル54歳のとき(1739)の作品です。

CD6にも同曲集の第10番が収録されていて、

それに比べると、
はるかにいい音で録れているのですが、

やはり大オーケストラのぶっとい響きが、
強い違和感を感じさせて、変でした。

いい音で録れている分、

何度か聴いていると、
それなりにありかなとも思えて来ますが、

これを聴いて、
ヘンデルっていいな、
とは残念ながら思えませんでした。


なおこの三日間のコンサート、

最初にヘンデルが演奏された後、

 ブラームス:交響曲第3番【CD11】
 ブラッハー:管弦楽のための協奏的音楽【CD9】
 シュトラウス:交響詩《ドン・ファン》【CD11】
 ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》前奏曲【CD11】

が演奏されました。この全曲が、
それぞれ【CD9・11】に収録されています。



※Wikipediaの「クリストフ・ヴィリバスト・グルック」
 「Alceste(Gluck)」「ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル」
 「ヘンデルの楽曲一覧」の各項目を参照。

※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
 仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照。
 【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】

※グルックについては、
 石井宏『反音楽史』(新潮文庫)232-255頁も参照。

2012年5月20日日曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その1


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS

ベートーヴェン
交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
交響曲第5番ハ短調 作品67

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1947年5月25日、ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD1

CD1枚目には、

1947年5月25・26・27日に行われた
ベルリン・フィルとのいわゆる歴史的復帰演奏会から、
初日(25日)の演奏が収録されています。

3日間の演奏会のうち、
1日目の「田園」「運命」と、
3日目の「運命」の録音が発売されているようです。

ベスト演奏として良く知られる3日目の「運命」は、
この録音集には収録されていません。

ただ1日目の演奏も、
基本的なスタンスに変わりわなく、
めったにない熱さを感じさせる演奏がくり広げられております。


歴史的な価値のある録音ですが、
残念なのは、音質が今一つであることです。

おそらく元々の録音に問題があるのでしょう、
かなり聴きやすく調整されていますが、

フルトヴェングラーにこだわりのある方でなければ、
あえて選ぶ必要のない音質かもしれません。


とはいえ、「田園」も「運命」も、
一度聴き出すと止まらない独特の面白さがあることも事実です。

どちらも、
今の私はより落ちついた、
どっしりした深みのある演奏のほうが好みですが、

これだけテンポを揺らしながら、
決して空虚な感じがせずに最後まで
感慨をもって聴き通せるのは、
さすがです。

音質からいえば、
「運命」は多少情熱が空回りしているように聴こえ、
「田園」のほうが、貧弱ながら不思議と心にひっかかる、
興味深い演奏でした。


ほぼひと月
聴いておりましたので、
CD2枚目に進みます。



※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】


2012年2月20日月曜日

小林研一郎&チェコ・フィルのベートーヴェン:交響曲第4&6番「田園」



ベートーヴェン
交響曲第4番 変ロ長調 作品60
交響曲第6番 ヘ長調 作品68「田園」

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
小林研一郎(指揮)

録音:2010年11月18・19日(第6番)
   2011年10月20-22日(第4番)
   プラハ、ルドルフィヌム、ドボルザークホールにてライブ録音
【OVCL-00456】


コバケンさんのベートーヴェン、
第4番と第6番「田園」を聴きました。

強い自己主張で、
聴く人をねじ伏せるような演奏ではなく、
曲の叙情的な側面と、コバケンさんの個性とが
ほどよくブレンドされていて、

もう少し、
アクの強さを感じさせる部分があっていいかな、
とも思いますが、

聴くほどに味わいが増して来る、
曲自体の良さを再確認させられる演奏でした。

正直なところ、
はじめに聴いた時は、
さらさらと流れていくだけで、
何もしていないように聴こえて、
あれっ?と思ったのですが、

3度4度と聴き込むごとに、
コバケンさんの個性がじわりと効いてきて、
だんだんと好きな演奏になって来ました。

はじめは4番の方が良い出来に聴こえたのですが、
今は「田園」のほうが好きです。


でもやはり「田園」は難しい曲ですね。

十分に美しく、
楽しませてもらいしたが、

最高の名盤というには、
ほんの少し、欠ける部分があるようです。

今後はぜひ、
日本のオケとも解釈を練りあげて、
もう一段高いところにある「田園」を聴かせてもらえたら、
いいなあ、と思っております。

2012年2月2日木曜日

フルトヴェングラー&ウィーンpoの「田園」(1952)

ベートーヴェン
交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」
(録音:1952年11月24・25日)

スメタナ
交響詩「モルダウ」
(録音:1951年1月24日)

リスト
交響詩「前奏曲」
(録音:1954年3月3日)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)

場所:ウィーン・ムジークフェラインザール
音源:ブライトクランク白レーベル非売品見本盤

【TKC-336】


フルトヴェングラーさんのCD、
最近あまり聴いていなかったのですが、

オタケンさんから復刻された
ブライトクランクのCDが気になったので、
年末に2枚、購入してみました。

擬似ステレオのCDは、
ずっと前にも購入したことがあったのですが、
そのときはかなり人工的な音質に感じられて、
そのままになっておりました。

今回、
特に驚いたのは「田園」です。
フルトヴェングラーさんの「田園」には、
これまで特に感動した記憶はなかったのですが、

このCDで、印象が全然変わってしまいました。

どちらかといえば、
ゆっくりめのテンポをほとんど揺らさず、
じっくり仕上げていく演奏ですが、

オケそのものが音楽的に、
魅力ある音色で鳴り響くので、
それだけでとても幸福な気持ちになって、
曲の魅力に感動することが出来ました。

テンポを特に揺らさなくても、
これだけ有機的に、
味わいのある音を引き出せるのは、
やはり指揮者の実力なのでしょう。

他の指揮者が解釈を真似しても、
全然つまらなく聴こえる可能性が高いでしょう。

オケの音色で勝負する演奏なだけに、
ブライトクランクの効果も大きいように思われました。

ごくふつうに、
ステレオ録音を聴く感じで楽しめました。

ワルターさんとは
まったく違うやり方ですが、
また一つ、好きな「田園」が増えました。


「モルダウ」は、
熱のこもった有機的な演奏ですが、
他にも色々すぐれた演奏はあるでしょう。


「前奏曲」は、
それほど聴く機会がないので、
何とも言えないのですが、
どんな曲かはわかりました。

2011年11月14日月曜日

宇野功芳&新星日本響のベートーヴェン:交響曲第6・2番



ベートーヴェン
交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
交響曲第2番ニ長調 作品36

モーツァルトの子守唄
(フリース、佐々木具 編曲)
 クラリネット・ソロ:荒井伸一

宇野功芳 指揮
新星日本交響楽団

録音:1995年10月5日、東京芸術劇場コンサートホール
【KICC-185/6】


さきにワルターさんが指揮する
ベートーヴェンの「田園」交響曲を紹介しましたので、
同じ「田園」交響曲で、私が一番好きなCDを紹介します。

それは宇野功芳さんが新星日本交響楽団を指揮した時のライブです。

宇野さんの指揮は、
落ちつきのあるオケの豊かな響きが好ましく、
よく練られた独自の解釈を、自然な流れの中で実現していて、
つぼにはまったときの演奏は、すばらしいです。
(アマオケとの録音はのぞく)

惜しむらくは、
宇野さんが好んで取り上げる
ベートーヴェンの「英雄」「運命」「合唱」は、
いびつなテンポ設定がオケのせっかくの有機的な響きを殺しており、
すべて残念な仕上がりとなっていることでしょう。

この3曲をのぞけば、
結構注目すべき演奏を残していると思うのですが、
そちらはめったに聴かれる機会がないので、
評価につながらず、残念です。


宇野さんが指揮するベートーヴェンで、
格別にすばらしいのは「田園」交響曲です。

この曲は意外とまとめるのが難しいようで、
有名な指揮者の演奏でも、途中で眠たくなることが少なくありません。

そんなレベルでないことは当然として、
宇野さんの指揮する「田園」は、曲の大きな枠組は逸脱することなく、
ゆったりしたほどほどのテンポ感で、
「田園」の魅力を存分に引き出した演奏となっております。

聴いていて、
とても豊かな楽しい気持ちにさせられる「田園」です。
私は、「田園」はこの演奏が一番好きです。


合わせて収録されている第2番も
「田園」と同じ路線の演奏で、ゆったりとしたテンポで
この曲の魅力を最大限にひきだした演奏となっております。

この曲については、
ほかにも十分魅力的な演奏がたくさんあるので、
宇野さんだけが、というつもりはありませんが、
個性的な、楽しい第2番であることは間違いありません。

これを聴いて思い出したのは、
広上淳一さんと京都市交響楽団による第4の録音です。
広上さんの方がリズム感はキレキレなので、
それをもう少し野暮ったくしたら、宇野さんに似ているかもしれません。


宇野さんのベートーヴェン、
第1と第7も変わったテンポ設定はないので、
それなりに楽しめますが、これも敢えて宇野さんを選ばなくても良いかもしれません。

どちらかというと、
ベートーヴェンよりは、モーツァルトのほうが、
宇野さんの性質に合っているのではないかと思うのですが、

プロのオーケストラで、
まとめてモーツァルトの交響曲を取り上げる機会はもうないのでしょうか。
できれば聴いてみたい気がします。

2011年9月17日土曜日

小林研一郎&チェコ・フィルのベートーヴェン:交響曲第2・5番



ベートーヴェン
交響曲第2番ニ長調作品36
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
Czech Philharmonic Orchestra
小林研一郎(指揮)
Ken-ichiro Kobayashi (conductor)

録音:2010年4月29・30日(第2番)、
  2010年11月18・19日(第5番)、
  プラハ、ルドルフィヌム、ドヴォルザーク・ホール
【OVCL-00440】


コバケンさんとチェコ・フィルによる充実のベートーヴェン。

先に第1・7番を紹介しましたが、
その前に発売されたのが、第2・5番です。

今風の流行には背を向け、
現代的なオーケストラの威力を十分に発揮させ、
楽譜への音楽的な解釈だけで勝負するところが好ましいです。

チェコ・フィルの響きは、
いわゆるドイツ風の重々しいゴツゴツしたものではなく、
イギリス風ののっぺりした感じを
もう少し柔らかく、華やかにしたような、
しかしフランス風の軽やかさと比べれば、
もう少し重心を低くした感じで、

チェコ・フィル独自の個性的な響きをもっています。

私がこれまでイメージしていた
ベートーヴェンの響きとは少し違うのですが、
とても音楽的で、清新な感じがあって、
ベートーヴェンの異なった側面をみるようで、とても楽しいです。

指揮者によっては、
サラサラ通りすぎていくだけの、
あまり面白みのないベートーヴェンになっていたかもしれませんが、

円熟味を増しつつあるコバケンさんの指揮のもと、
説得力のある音楽的で充実した演奏を繰り広げています。


第2番は、オケを存分に歌わせた、
メロディの美しさにあふれた演奏です。

オケを素のままに鳴らした、というよりは、
細部までコバケンさんの意志が行き渡っており、
最近の流行に背を向けている分、
ああ、オケってこんなに美しい響きがするんだな、
と再発見するところの多い演奏でした。

第5番は、
オケのふくよかな響きと、音楽的な流れを重視する中で、
コバケンさんの強い意志の力も感じられる名演奏です。

全体の流れが滞ることはありませんが、
快速に飛ばしてしまうこともなく、
造形を大切にした「運命」です。

第2・5番ともに、
あまり誰それの路線で、と比喩できない、
コバケンさんの個性が刻印された、しかし音楽的な自然な流れを失わない名演だと思います。

2011年7月22日金曜日

小林研一郎&チェコ・フィルのベートーヴェン:交響曲第1・7番



ベートーヴェン
交響曲 第1番 ハ長調 作品21
交響曲 第7番 イ長調 作品92


チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
小林研一郎(指揮)


2011年4月14~16日、
プラハ、ルドルフィヌム、ドヴォルザーク・ホールにてライブ収録。
【OVCL-00445】

コバケンさんのベートーヴェンが良くなってきたのは最近のことです。

かつては、ベートーヴェンやブラームスになると、
CDでは響きが耳にうるさく、あまり楽しめなかったのですが、

60代後半に2度、大晦日に、交響曲全9曲を取り上げたあたりから、
響きにぐっと深みを増してきて、すばらしい演奏が聴かれるようになったと思います。


第3番、第2・5番と聴いてきて、
今回の第1・7番はさらに輪をかけて素晴らしい仕上がりとなりました。

コバケンさんのベートーヴェンは、
古楽器風の新しい奏法に組みすることなく、
真正面から楽譜を読み込んで、昔ながらのオケの響きを重視して、
真摯に音楽を紡いでいく正攻法。

第3番では少々力が入り過ぎている感もあったのですが、
第2・5番はうまく力がぬけて、音楽的な、歌にあふれた演奏になっていました。

今回の第1番は、第2番と同じ路線。
かつてのブルーノ・ワルターを思い出しましたが、私はこちらのほうが好きです。


第7番は、驚きました。
ここまで立派な、しかし音楽的な演奏は聴いたことがありません。
やわらかい歌にあふれながら、
全体の構成感も揺るぎないのは流石です。

第5番のときの立派さに、
第3番のときの意志の強さをかけ合わせたような、
めったに聴かれない第7になりました。

今年の秋に第4・8番を取り上げて、
あとは第9を残すのみとなるはずなので、
ぜひとも完結させていただきたいです。

欲をいえば、
この成果をもとに、日本のオーケストラとも、
さらなる高みに達したベートーヴェン全集を作ってほしいな、
と願っております。