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2015年11月9日月曜日

ヘフリガーのシューベルト:歌曲集《美しき水車小屋の娘》(1982年録音)

スイス出身のテノール歌手
エルンスト・ヘフリガー
(Ernst Haefliger 1919.7-2007.3)の歌唱、

スイス出身の鍵盤楽器奏者
イェルク・エーヴァルト・デーラー
(Jörg Ewald Dähler 1933.3-)の伴奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert 1797.1-1828.11)の
歌曲集《美しき水車小屋の娘》を聴きました。

ヘフリガー62歳の時(1982.6)の録音です。


フランツ・シューベルト
歌曲集《美しき水車小屋の娘》作品25 D795
~ヴィルヘルム・ミュラーの詩による連作歌曲

 1) さすらい
 2) どこへ?
 3) 止まれ!
 4) 小川に寄せる感謝の言葉
 5) 仕事を終えた宵の集いで
 6) 知りたがる男
 7) いらだち
 8) 朝の挨拶
 9) 粉ひき職人の花
10) 涙の雨
11) 僕のものだ!
12) 休息
13) リュートの緑色のリボンを手に
14) 狩人
15) 嫉妬と誇り
16) 好きな色
17) 邪悪な色
18) 枯れた花
19) 粉ひき職人と小川
20) 小川の子守歌

エルンスト・ヘフリガー(テノール)
イェルク・エーヴァルト・デーラー(ハンマーフリューゲル)
録音:1982年6月、ゼオン福音教会、スイス、アールガウ州
【KICC3710】

歌曲集《美しき水車小屋の娘》は、
シューベルトの三大歌曲集のうち最初のもので、
26歳の時(1823年5-11月)に作曲されました。

亡くなる1年前(1827年2-10月)に作曲された
歌曲集《冬の旅》の4年前にまとめられました。

  ***

秋に久しぶりに、
フィッシャー・ディースカウの
《冬の旅》を聴いて、

彼の歌唱でほかの歌曲集も聴こうと思っていたのですが、

つい最近、1枚1,000円ほどで
ヘフリガーの三大歌曲集が再販されたのを見かけたので、
1枚聴いてみることにしました。

するとこれが大正解!

ヘフリガーはテノールだからなのか、
(ディースカウはバリトン)

ディースカウのときより
軽く明るい声質が若々しい印象で、

初めて味わう
さわやかな感動のうちに
《美しき水車小屋の娘》を聴き通すことができました。

この作品が、
シューベルト20代半ば、
青春時代の作品であることを確認できました。

聴いてしばらくは、
ヘフリガーの若いころの録音だと思い込んでいたのですが、
調べてみると何と62歳(!)の録音で、
びっくりしました。

わかって聴き直してみると、
若々しい声質ながらも、若手にはまず不可能な、
きわめつくされた感のあるよく練られた解釈で、
確かに、若手の歌唱ではないなと納得しました。

しかし声の若々しさは驚くべきレベルで、
老いのかけらも感じさせません。

堂々とした覇気あふれる歌いっぷりに、
自然な感動に浸ることができました。


ちなみにヘフリガーは、
51歳の時(1970年11月30日、12月24・25日)にも、
小林道夫氏の伴奏で同曲を録音していますが、

試聴音源(各曲45秒ずつ)を聴く限りでは、
62歳の時よりずっと堅い印象で、年齢相応の歌唱になっていました。

それから10年後の歌唱のほうが、
ずっと若々しく聴こえるのはとても興味深かったです。


参考までに、

ドイツのバリトン歌手
ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
(1925.5-2012.5)の同曲録音は、
ディースカウ30代、40代の時でした。
(詳しくないので、他にもあるかもしれません。)

1961年12月録音
 ディースカウ 36歳
 ジェラルド・ムーア(ピアノ)……EMI

1971年12月録音
 ディースカウ 46歳
 ジェラルド・ムーア(ピアノ)……グラモフォン


※Wikipediaの「エルンスト・ヘフリガー」「Jörg Ewald Dähler 」「フランツ・シューベルト」「美しき水車小屋の娘」を参照。

2015年10月22日木曜日

ディースカウ&デムスのシューベルト:歌曲集《冬の旅》(1965年録音)

ドイツのバリトン歌手
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
(1925.5.28-2012.5)の歌、

オーストリアのピアニスト、
イェルク・デムス(1928.12- )の伴奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(1797.1-1828.11)の
歌曲集《冬の歌》を聴きました。

ディースカウ39歳の時(1965.5.11-15)の録音です。


フランツ・シューベルト
歌曲集《冬の旅 Winterreise 》作品89 D911
~ヴィルヘルム・ミュラーの詩による連作歌曲
 第1部
 1) おやすみ
 2) 風見
 3) 凍った涙
 4) 氷結
 5) 菩提樹
 6) 雪どけの水流
 7) 川の上で
 8) かえりみ
 9) 鬼火
 10) 休息
 11) 春の夢
 12) 孤独
 第2部
 13) 郵便馬車
 14) 白い頭
 15) 鴉
 16) 最後の希望
 17) 村にて
 18) 嵐の朝
 19) 幻
 20) 道しるべ
 21) 宿屋
 22) 勇気を!
 23) 幻日
 24) ライアー回し

ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
イェルク・デムス(ピアノ)
録音:1965年5月11-15日、ベルリン
【UCCG-5080】※2006年11月

歌曲集《冬の歌》は
30歳の時(1827)に作曲されました。

30というとまだ若書きのように感じられますが、
この翌年(1828.11)には亡くなっています。

第1部は1828年1月、
第2部は没後間もなくの28年12月に出版されました。


  ***

外国語の歌は、予習なしでは
歌詞の意味がよくわかりませんし、

対訳でおおまかな意味をつかんでも、
日本語の歌のように、
歌詞の一語一語に深く共感することは難しいので、

それほど積極的には聴いていません。

歌があってこその音楽なので、
それではいけないのでしょうが、

外国語の歌にはまだかなり距離があります。


  ***

シューベルトの《冬の旅》は、

十代後半のころに、
フィッシャー=ディースカウの来日公演(1987年?)を
テレビで観たのが初めだったように記憶しています。

細かな記憶は消え去っていますが、
ディースカウの圧倒的な歌唱力とともに、

シューベルトの歌曲の、
それまで聴いたことのないレベルでの、
絶望的な暗さに驚いたことを覚えています。

歌といえば、
人の心を明るく元気にするものだと思い込んでいましたので、

こんなに暗い歌を、
どうしてわざわざ聴かないといけないのだろうと思い、

その後しばらく、
シューベルトの歌曲を聴くことはなくなっていました。

最近、古本屋で偶然、
ディースカウの《冬の旅》を見かけ、
久しぶりに聴いてみることにしました。


  ***

ドイツ語の歌詞はわからないままですが、

ほの暗くも美しい
シューベルトの音楽が心にすっと入り込んできて、

思っていたよりも深く共感しながら
全曲を聴き通すことができました。

昔は絶望的過ぎて
今一つ良さがわからなかった歌曲集も、

それなりに年齢を重ねてきたからか、

シューベルト特有の
和声のうつろいを感じ取れるようになって、

単に暗いだけではない、
独特な力強さ、深さをそなえた歌曲のおもしろさに浸ることが出来ました。


ディースカウの歌はやはり別格に上手いですね。
声を聴いているだけでも惚れ惚れします。

時に上手すぎるというか、
圧倒的な表現力がかえって耳につくところもあるのですが、

これだけ聴かせてくれれば
私には十分以上の出来でした。


デムスのピアノは
軽やかで淡々とした印象で、
ディースカウとは方向性が違うようですが、

シューベルトには一家言ある方なので、
不思議と説得力があって、

全体として程良い調和感のある、
聴きやすい《冬の旅》に仕上がっていると思いました。

良い機会なので、
シューベルトやシューマンなどの
ほかの有名なドイツ歌曲も聴いてみたいと思っています。


※Wikipediaの「ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ」「イェルク・デームス 」「フランツ・シューベルト」「冬の旅」を参照。