2016年4月25日月曜日

クレンペラー&フィルハーモニア管のメンデルスゾーン:劇付随音楽《真夏の夜の夢》(1960年録音)

ドイツ帝国ブレスラウ(現ポーランド)出身の指揮者
オットー・クレンペラー
(1885.5-1973.7)の指揮する
イギリスのオーケストラ
フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン
(Felix Mendelssohn, 1809.2-1847.11)の
劇付随音楽《真夏の夜の夢》作品21&61(抜粋)を聴きました。

指揮者74歳の時(1960年1・2月)の録音です


メンデルスゾーン
劇付随音楽《真夏の夜の夢》作品61(抜粋)
 ①序曲 作品21
 ②スケルツォ 作品61-1
 ③妖精たちの行進 作品61-1a
 ④妖精の歌 作品61-3
 ⑤間奏曲 作品61-5
 ⑥夜想曲 作品61-7
 ⑦結婚行進曲 作品61-9
 ⑧葬送行進曲 作品61-10
 ⑨武骨者の舞踏 作品61-11
 ⑩終曲 作品61-13

⑪序曲《フィンガルの洞窟》作品26

オットー・クレンペラー(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
録音:1960年1・2月(夜の夢)、ロンドン、アビーロード No.1スタジオ。同年1月22・25・27日(洞窟)、ロンドン、キングスウェイ・ホール。
【PCD-419】2015年7月発売

廉価版なのに音が良いことに驚いた
キープ株式会社さんの復刻シリーズ、

クレンペラーの《スコットランド》に続いて、
《真夏の夜の夢》を聴きました。

こちらは音質以前に、
もともとあまりピンとこなかった作品なのですが、

シェイクスピアの原作を読んだり、
映画を観たりして、もとの戯曲のおもしろさを知るにつれ、
だんだんと曲の魅力に気がつくようになって来ました。

モーツァルトほどには毒のないメンデルスゾーンの良さは、
音楽本来のもつごく自然な美しさを感じ取れるかどうかであって、

オケを自然に響かせた時の「音」そのものに、
聴く人の心をとらえる魅力があるかどうかがポイントなんだと
気がついたのはごく最近のことです。


今回のこのCD、
心持ちゆっくりめのテンポで、
がっちりと丁寧に弾き込んだ真面目な演奏なのですが、
不思議とユーモアの感じられる、
いい意味でスキのある魅力的な演奏に仕上がっていると思います。

聴いて直ちにうっとりするような、
耳に心地のよい、ただ美しいだけの演奏ではないので、
最初の1枚としてお薦めするのは問題があるかもしれませんが、

LPレコードのざらざらした印象をそのままに、
私の心にほどよくひっかかってきて、
聴き込むほどに良さのわかる充実した演奏に仕上がっていました。

このCDをきっかけに、ほかの演奏も聴き込んで、
私にとっての名盤をほかにも探してみたいと思います。

なお、
余白に収録された序曲《フィンガルの洞窟》は、
クレンペラーの芸風と曲想がピッタリ一致していて、
《夏の夜の夢》以上に誰にもお薦めできる名演でした。

2016年4月18日月曜日

クレンペラー&フィルハーモニア管のベートーヴェン:交響曲第2・7番(1960年ライブ)

ドイツ帝国ブレスラウ
(現在のポーランドのヴロツワフ)生まれの指揮者
オットー・クレンペラー
(Otto Klemperer, 1885.5-1973.7)の指揮する

イギリスのオーケストラ
フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(1770.12-1827.3)の交響曲第2・7番を聴きました。

1960年のウィーン芸術週間ライブとして有名な全集で
Membranの10枚組CD の ◯DISC3 に収録されています。


◯DISC3
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
交響曲第2番ニ長調 作品36
 (録音:1960年5月29日)
交響曲第7番イ長調 作品92
 (録音:1960年6月2日)

オットー・クレンペラー(指揮)
フィルハーモニー管弦楽団
【Membran 10CD Collection /No.600135】2014年1月発売

交響曲第2番はベートーヴェン32歳の時(1803年4月)、
交響曲第7番は42歳の時(1813年12月8日)に初演された作品です。


何度か聴き直してみましたが、
この1枚のなかで第7番は
あまり出来が良くないように感じました。

第2番はそれなりに楽しく聴けるのですが、
第7番は縦の線も乱れがちで集中力に欠ける印象でした。

もともとがゆっくり目のテンポ設定なので、
少しでも集中に欠くところがあると、
ところどころダレた感じがして
聴き通すのが辛くなってしまいます。

録音の問題かもしれませんが、
この時の第7番はあまり成功していないように聴こえました。

ライブでは当然そんなこともあるでしょう。


第2番も、
似たタイプの演奏なので、
はじめのうちは第7番にひきずられて
凡演かと思いましたが、

よく聴くと、
ゆったりしながらも
きりりと引き締まったテンポ設定で、
ダレることなく不思議と耳が吸い寄せられる演奏で、
第1・3番と同じレベルの名演だと思います。


やはり全体的にそれほど音は良くないので、
誰にもお薦めとまでは言いかねますが、

普段着のクレンペラーを知る上で、
興味深い演奏だと思いました。


※Wikipediaの「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」「交響曲第2番(ベートーヴェン)」「交響曲第7番(ベートーヴェン)」を参照。

2016年4月11日月曜日

ケンプ&ケンペンのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番(1953年録音)

ドイツのピアニスト
ヴィルヘルム・ケンプ
(Wilhelm Kempff, 1895.11-1991.5)の独奏、

オランダ出身のドイツの指揮者
パウル・ファン・ケンペン
(1893.5-1955.12)の指揮する

ドイツのオーケストラ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(Berliner Philharmoniker)の伴奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770.12-1827.3)
ピアノ協奏曲全集を聴いていきます。

ケンプ57歳の時(1953.5)に録音された全集です

まずは第1番から。


ヴィルヘルム・ケンプ名演集
CD3
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15
 パウル・ヴァン・ケンペン(指揮)
 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音:1953年5月、ベルリン、イエス・キリスト教会

ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 作品13《悲愴》
 録音:1956年(1・2楽章)1953年(3楽章)
【Membran 10CD Collection 233479】2013年2月発売

ピアノ協奏曲第1番は、
ベートーヴェンが24歳の時(1795)に初演され
30歳の時(1801)に出版された作品です。

後半に収録されている
ピアノ・ソナタ第8番《悲愴》は、
ベートーヴェンが28歳の時(1799)に出版された作品です

この10枚組CD、
安さに惹かれて買ったのですが、
ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は、
このままで十分聴ける音質です。

ケンペンの指揮するベルリン・フィルとの相性が良かったのか、
収録されている協奏曲のなかで際立った印象を受けました。

ベルリン・フィルの強靭な響きのなかに、
清明なケンプのピアノがくっきりと浮かび上がって、
耳に心地よい時間が続いていきます。

第1番が
20代前半の若々しい雰囲気に満ちた
名曲であることを再確認しました。

気分が落ち込みそうな時に聴くと、
晴れ晴れとした気分にさせられるので、
わりと耳にすることの多い作品です。

お二人とも過剰な演出はなしで
ひたすら音楽に奉仕するタイプの演奏で、

特別なことはしていないのに、
ひたひたと心の奥に入り込んでくる、
名曲の名演奏です。


協奏曲のあとに入っているソナタも秀逸。

協奏曲と比べると音質のこもりがちなのがマイナスですが、

曲の内側に入り込むよりは、
少し距離を置いたところからベストを尽くした感じの、
見通しの良く利いたわかりやすい演奏でした。


※Wikipediaの「ヴィルヘルム・ケンプ」「パウル・ファン・ケンペン」「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」を参照。

2016年4月4日月曜日

マゼール&バイエルン放送響のシューベルト:交響曲全集 その1(2001年録音)

フランス生まれ、アメリカ出身の指揮者
ロリン・マゼール(Lorin Maazel, 1930.3-2014.7)が指揮する

ドイツのオーケストラ
バイエルン放送交響楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト(Franz Schubert, 1797.1-1828.11)の
交響曲全集を聴いていきます。

マゼール71歳の時(2001年)のライブ録音です

まずはCD1枚目、
交響曲第1・2・6番を聴きました。



◯CD1
交響曲第1番ニ長調 D82(1813年10月完成)※16歳
交響曲第2番変ロ長調 D125 (1815年3月完成)※18歳
交響曲第6番ハ長調 D589(1818年2月完成)※21歳

ロリン・マゼール指揮
バイエルン放送交響楽団

録音:2001年3月13日(第1・2番)、同18日(第6番)
【BR KLASSIK 900712】2013年発売

シューベルトの交響曲全集は学生のころ、
ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン
廉価版のCDを手に入れたのが最初でした。

しかしこの時は、
どこが良いのかわからない退屈な音楽に聴こえてしまい、
その後しばらく交響曲から遠ざかるきっかけになってしまいました。

初めて聴くには、
ブロムシュテットの無作為なスタイルが
合わなかったようにも思いますが、

当時の廉価版にありがちな残念な音質で、
心に届いてこなかった可能性も大きいです。


その後、
インマゼール&アニマ・エテルナ
斬新で目の覚めるような演奏を聴いて、
シューベルトの交響曲の魅力に気がつけたのですが、
こちらはそれほどオーソドックスなスタイルとは言いかねる激しさなので、

やはり依然として、
現代のオーケストラがふつうに演奏して楽しめる曲とは違うように感じていました。


今回の
マゼール&バイエルン放送交響楽団の演奏、

彼にありがちな嫌味を感じるところが皆無で、
ひたすら音楽に奉仕してオーソドックスでありながら、
中身のつまった充実した演奏を聴かせてくれています。

少しだけ速めのテンポで、
指揮者の意志をしっかり通しながら
耳に心地よいオケの響きを引き出した快演です。

シューベルトってこんなに素敵な音楽を書いていたのかと、
再発見する瞬間にたくさん出会えました。


 ***

CD1の第1・2・6番は、
どれも同じレベルの充実した名演です。

まったく個人的な感想としては、
 第1番>第2番>第6番
の順で好きです。
あまり評価が高くありませんが、
シューベルト16歳、18歳の時に作られた
第1・2番はよく出来た名曲だと思います。

第6番は第1・2番に比べて
才気煥発なところがやや薄れているように感じました。
第3・4・5番を聴いてからもう一度戻ってくると印象が変わるかもしれません。

このCD、
1点だけ少し残念なのは、
実況用のライブ録音をそのままCD化している様子なので、
音質が最高レベルとは言いかねることでしょうか。

あとほんの少し分離がよければ言うことなしなのですが、ふつうのFMラジオから聴こえてくるライブ放送を聴く心持ちで聴けば、それほど気にならないようにも思います。