2016年11月21日月曜日

バーンスタイン&ウィーン・フィルのマーラー:交響曲第5番(1987年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン(1918.8-1990.10)が、
ウィーン・フィルを指揮して録音した

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第5番嬰ハ短調を聴きました。

指揮者69歳の時(1987年9月)の録音です


CD2
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 レナード・バーンスタイン(指揮)
 録音:1987年9月、フランクフルト、アルテ・オーパー
【UCCG-3767/8】2005年3月発売

交響曲第5番嬰ハ短調は、
マーラー44歳の時(1904年10月)に初演された作品です


山田一雄&N響のマラ5を聴いて、
しばらく忘れていたマーラー熱に火が着きました。

ヤマカズさんとN響の名演、
昔聴いたバーンスタイン&ウィーン・フィルに似ていたような気がして、
CDの棚から探し出して聴いてみました。

すると記憶していたのよりも、
指揮者の強い思いが空回りしている印象で、

無理やりオケを動かそうとして、
音楽の自然な流れが阻害される場面が目立ち、
最後まで聴き通すのがつらいレベルの演奏でした。

バーンスタイン&ウィーン・フィルのマラ5は、
超名演という評価を得ているはずなので、
リマスターによって印象が変わる可能性もありますが、

今回聴いたCDについていえば、
指揮者の気持ちのみが空回りして、
オケがそこまで共鳴している風でもないので、
お世辞にも名演とは言えないように感じました。

かつてはマーラーといえば
バーンスタインだと思い込んでいたのですが、
最近改めて聴き直してみると、
音楽の自然な流れを無視した強引な演奏も多く、
すべてを名演というわけにはいかないと思いました。

2016年11月14日月曜日

山田一雄&N響のモーツァルト:交響曲第38番&第41番(1985年&91年)

山田一雄(1912年10月-1991年8月)の指揮する
NHK交響楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-1791年12月)の
交響曲第38番と第41番を聴きました。

指揮者72歳と78歳の時(1985年2月&1990年11月)のライブ録音です



N響創立90周年シリーズ
Disc2
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
①交響曲第38番ニ長調K.504《プラハ》
②交響曲第41番ハ長調K.551《ジュピター》

山田一雄(指揮)
NHK交響楽団
録音:1985年2月13日(①)、1991年11月26日
【KKC2104/05】2016年10月発売

交響曲第38番《プラハ》は、
モーツァルトが30歳の時、1786年12月に完成

交響曲第41番《ジュピター》は、
32歳の時、1788年8月に完成されました


《プラハ》は今回初めて聴きました。
先月取り上げたマラ5と同じ日の演奏です。

マラ5と同じ編成で演奏したのではないかと思われる
分厚い弦の響きが印象的でした。

そのこと自体は悪くないのですが、
全体的におっとりのんびりした感じのあまり特徴のない演奏で、
さほど感銘は受けませんでした。

マラ5のほうに集中して、
リハーサルの時間が取れなかったのかもしれません。


名演は《ジュピター》のほうで、
テレビで何度も放映されたのをビデオ録画して、
テープが劣化するまで繰り返し観た記憶があります。

昔の記憶と比べると、弦が多少うすく聴こえ、
細部のつめの甘さが気になるところもあるのですが、

全体として《ジュピター》はこうでなければ!
と思わせられる理想的な名演で、

透明だけれども強い生命力にあふれた
モーツァルトの特別な音楽を満喫することが出来ました。

若い頃の刷り込みがあるので、
その点差し引いていただいて結構ですが、
個人的には《ジュピター》で、
これを超える演奏にはまだ出会えていません。

《ジュピター》を演奏した日には、
他にもモーツァルトの作品ばかり取り上げているはずなので、
そちらの演奏のみをCDでまとめても良かったように思いました。

2016年11月7日月曜日

松坂屋美術館の「平木コレクション 生誕220年 歌川広重の世界―保永堂版東海道五十三次と江戸の四季―」展

去る11月2日(水)、
秋休みの最終日に、
中区栄の松坂屋美術館まで、

「平木コレクション 生誕220年
 歌川広重の世界
 ―保永堂版東海道五十三次と江戸の四季―」展

を観に行ってきました。

 ※日程 2016年10月22日(土)~11月20日(日)
 ※主催 松坂屋美術館、日本経済新聞社、テレビ愛知、
     公益財団法人平木浮世絵財団
 ※企画協力 株式会社アートワン

歌川広重(1797-1858)の代表作
『東海道五十三次』をまとめて観る機会はこれまでなく、
しかも初摺(保永堂版)で観られるとのこと、
楽しみにしていたのですが、

これまで観てきた浮世絵の展示の中で、
一番といってよいレベルの質の高い作品がたくさん並んでいて、
非常に充実した時間を送ることができました。

ここ数年訪れてきた展示の中では、
疑いなくベストの内容でした。


  ***

歌川広重について、
最初に意識するようになったのは、

学生の時に、
田中英道著『日本美術全史』(講談社、1995年6月)を読んでからのことです。

「浮世絵の最後の名匠は
 一七九七年(寛政九年)生まれの
 歌川広重である。

 彼はすでに「明治維新」まで十年足らずの
 一八五八年(安政五年)に亡くなっているから、
 江戸時代の最後の画家と言うべき人物と言える。

 彼は北斎の世界の風景画のジャンルを、
 平明にしたといってもよいが、
 そこにさらにポエジー(詩情)を加えて、
 人気を博したといえるであろう。」

「一八三二年(天保三年)、
 広重は幕府の一行に随行して東海道を歩き、
 変化に富む沿道の様子をつぶさに見ることが出来た。

 そしてその実見をもとに一八三三年、
 保永堂版『東海道五拾三次』を出版した。

 彼が一幽斎より一立斎に名を改めたのも、
 これによって立とうとする心の表れかもしれない。

 これは広重が、
 北斎と異なった表現力を示した
 最初の傑作と呼べるものであろう。」

(以上、田中『日本美術史』344・348頁。改行はブログ編者による)

今回、実物を観てみると、
ハッとさせられる斬新な構図にまず目を奪われました。

風景画の構図からして
有無をいわせぬ説得力があるのは、
広重意外にあまり思い浮かびません。

斬新さは時に奇抜さのみを追い求める方向へ傾きがちですが、
広重の作品からはそうしたグロテスクな要素は感じません。

誰にでも受け入れられやすい平明さと、
すっきりとした清明な青色が印象に残りました。

観えるものをそのまま描く
西洋の印象派の風景画とは随分違いますが、

風景画家としての広重の存在は、
自分のなかでいっそう大きくなって来ました。


  ***

今回、展示された作品数が多すぎ、
観ているうちにお腹いっぱいになって、
自分にとって特別な作品を選ぶことは出来ませんでした。

展示期間中に、
ぜひもう一度来ようと思っていたのですが、
仕事が忙しく再訪はかないませんでした。

データ満載の図録は手元にあるので、
次の機会までくりかえし観返したいと思います。