ラディスラフ・スロヴァーク
(Ladislav Slovak, 1909年9月-99年7月)の指揮する
チェコ・スロヴァキア放送交響楽団
(Czecho-Sloval Radio Symphony Orchestra)の演奏で、
ロシア帝国最後の皇帝
ニコライ2世の治世下に生まれ、
ソビエト連邦の時代に活躍した作曲家
ドミトリー・ショスタコーヴィチ
(Dmitrii Shostakovich, 1906年9月-75年8月)の
交響曲第2番《十月革命に捧ぐ》と第15番を聴きました。
指揮者80歳(①)・79歳(②)の時の録音です。
※スロヴァキア放送交響楽団は、この録音当時、
「チェコ・スロヴァキア放送交響楽団」と呼ばれていましたが、
1993年にチェコ・スロヴァキア連邦共和国が、
チェコ共和国とスロヴァキア共和国に分離したため、
「スロヴァキア放送交響楽団」と呼ばれるようになりました。
首都プラティスラヴァの名をはさんで、
「スロヴァキア放送プラティスラヴァ交響楽団」と呼ぶこともあります。
ショスタコーヴィチ
①交響曲第2番 ロ短調《十月革命に捧ぐ》作品14
②交響曲第15番 イ長調 作品141
ラディスラフ・スロヴァーク(指揮)
スロヴァキア放送交響楽団
録音:1990年1月8-10日(①)、1989年2月5-12日(②)、スロヴァキア放送コンサートホール、プラティスラヴァ
【NAXOS 8.550624】1994年2月
第2番は1・3番と合わせて解説します。
交響曲第1番ヘ短調作品10 は、
レニングラード音楽院 作曲科の卒業作品として作曲され、
ショスタコーヴィチが19歳の時(1926年5月)に初演されました。
第1番は初演と同時に大きな成功を収め、
作曲家の名を世界に知らしめるきっかけになりましたが、
第1番の作風をそのまま発展させることはなく、
第2・3番でガラリと作風を変え、
当時の前衛的な作曲技法を盛り込んだ、
政治的な色合いの濃い歌詞を用いた
声楽入りの1楽章からなる「交響曲」を作曲しました。
交響曲第2番ロ短調《十月革命に捧ぐ》作品14 は、
作曲者が21歳のときに作曲、初演(1927年11月)された作品、
交響曲第3番変ホ長調《メーデー》作品20 は、
作曲者が23歳のときに作曲、初演(1930年1月)された作品です。
それから40年余りをへ、
亡くなる4年前に最後の交響曲が作曲されました。
交響曲第15番 イ長調 作品141 は、
作曲者64歳の時(1971年6・7月)に作曲され、
65歳の時(72年1月)に初演された作品です。
第12番以来の声楽を用いない交響曲であり、
ショスタコーヴィチの最後の交響曲となりました。
※以上、おもに千葉潤著『作曲家◎人と作品シリーズ ショスタコーヴィチ』(音楽之友社、2005年4月)を参照。
***
第1・3番を収めた1枚目につづくCD。
期待を裏切らない充実した内容でした。
第2番は、3番と同じく前衛的な作風で、
以前、バルシャイ&ケルン放送響による
演奏(CD)を聴いたときには、
何が良いのかさっぱりわかりませんでした。
しかしこのCDでは、
指揮者スロヴァークの深い楽譜の読みが利いて、
ただの不協和音の連続に聴こえた音楽が、
有機的に心地良くつながり、
最後まで興味深く聴き進めることができました。
やはり全体として
習作的な色合いの濃い作品ですが、
若きショスタコーヴィチによる
創意工夫の跡がわかる
佳曲であることがわかりました。
第15番は、名曲っぽいたたずまいに、
期待して聴いてみるとそこまで心を揺さぶられない、
今一つの演奏に
最近聴いたザンデリングやインバル、
ゲルギエフのCDは、きれいに整っているのですが、
曲の内容が上滑りしていくようで、
個人的にはあまりピンと来ませんでした。
バルシャイのCDは未聴。
今回のスロヴァーク&スロヴァキア・フィルの演奏は
技術的にそれほど上手いオケではないのですが、
指揮者の読み、曲への共感度が高いからか、
自らが作曲したかのように全体が有機的につながって、
最後まで集中して聴き進めることができました。
曲の内実に迫る演奏として、
満足のいく1枚となりました。
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