2014年9月30日火曜日

シェリングのバッハ:無伴奏Vn.のためのソナタとパルティータ(1955年録音)

ポーランド出身(1946年、メキシコに帰化)のヴァイオリニスト
ヘンリク・シェリング(1918.9-1988.3)の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685.3-1750.7)の
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1001-1006
を聴きました。

シェリング37歳の時(1955)の録音です。


ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ト短調 BWV1001
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第2番 イ短調 BWV1003
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004
無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006

ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)
録音:1955年、パリ
【SICC840-1】2007年11月発売

無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1001-1006
は、バッハ35歳の時(1720)に作曲された作品です。

バッハの自筆譜が現存しており、
インターネット上にも公開されています。


シェリングの無伴奏は、
48歳の時(1967.7)に再録音された新盤を持っていたので、
旧盤はこれまで聴いていませんでした。

新盤のほうは
折り目の正しい模範的な演奏で、
十分聴きごたえがあるのですが、

多少くどいというか、
粘着性のある重々しい演奏で、
疲れた時に聴くには多少重たい感じがしました。


旧盤はそれより10年ほど前の録音です。

若い頃のほうが、
力が抜けている上に技術的にも万全で、

聴いていて、
全体的にすっと抜けるような清々しさを感じる演奏でした。

奇をてらうことなく、
穏当なスタイルの端正なバッハなので、
音楽的にも十分な充実感があり、

オーソドックスなスタイルを極め尽くして、
最上レベルにつきぬけた演奏だと感じました。

フルニエのバッハ:無伴奏チェロ組曲と似たスタイルといえましょうか。


恐らく聴く人の体調などによって、
印象が異なってくると思いますが、

今の私は、
人間のどろどろした感情を
あからさまに見せつけるような演奏は、

それほど聴きたいと思わない状況なので、
シェリングの無伴奏・旧盤は、良い清涼剤となりました。



※Wikipediaの「ヘンリク・シェリング」「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を参照。

2014年9月29日月曜日

ウィーン室内合奏団のモーツァルト:ディヴェルティメント第10&7番(1991年録音)

オーストリアのザルツブルク生まれの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ディヴェルティメント第10番と第7番を、

ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めた
ユーゴスラヴィア生まれのヴァイオリニスト、
ゲルハルト・ヘッツェル(1940.4-1992.7)率いる
ウィーン室内合奏団の演奏で聴きました。


モーツァルト
1) 行進曲 ヘ長調 K.248
  ディヴェルティメント(第10番)ヘ長調 K.247
  (“第1ロドゥロン・ナハトムジーク”)

2) 行進曲 ニ長調 K.290(K6:167AB)
  ディヴェルティメント(第7番)ニ長調 K.205(K6:167A)

ウィーン室内合奏団
 ゲルハルト・ヘッツェル(第1ヴァイオリン)
 ヨーゼフ・ヘル(第2ヴァイオリン)*1〕
 ハット・バイエルレ(ヴィオラ)
 アーダルベルト・スコチッチ(チェロ)*1〕
 ヘルベルト・マイヤー(コントラバス)
 フランツ・ゼルナー(ホルン)
 フォルカー・アルトマン(ホルン)
 ミヒャエル・ヴェルバ(バスーン)*2〕

録音:1991年4月29日-5月4日、ウィーン、カジノ・ツェーガーニッツ
【COCO-73010】


行進曲 ヘ長調 K.248
ディヴェルティメント ヘ長調 K.247 は、

20歳の時(1776.6)に
エルンスト・ロドゥロン伯爵夫人の
聖命祝日のために作曲されたことが明らかな作品です。

「第1ロドゥロン・ナハトムジーク」と呼ばれることもあります。


行進曲 ニ長調 K.290(167AB) と、
ディヴェルティメント ニ長調 K.205(167A) は、

作曲の経緯が明らかでなく、
この2曲を続けて演奏した確証もありませんが、
作品研究の結果、

 1772年夏⇒ K.290
 1773年夏⇒ K.205

の順で、同じ時期に作曲された
同じ調性の作品として、合わせて演奏されています。

(竹内ふみ子氏のCD解説を参照。)


  ***

どちらも初めて聴いて、
1月ほどくりかえし聴いて来ました。

コンサートでじっくり聴くのも良いかもしれませんが、

勉強したり、本を読んだり、
何かしながらBGMとして聴くのにぴったりな2曲でした。

一聴明らかにモーツァルトなのですが、
曲ごとの個性が際立っているわけではないので、

少し聴いて、
何番のディヴェルティメントなのか、
わかるところまではいきませんでした。


へッツェル率いる
ウィーン室内合奏団の演奏、

変に出しゃばったところが微塵もない、
けれども細部まで奏者の神経がゆきわたっている
音楽的に充実した演奏で、

聴くほどに味わいが増してくるようです。


恐らく他の演奏も聴いてみたほうが、
こちらの価値がわかると思うので、

ディヴェルティメント残りの1枚を聴いたら、
他の団体の録音も来てみようと思います。


2014年9月20日土曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その12

アメリカのピアニスト
マレイ・ペライア(1947-)と
イギリス室内管弦楽団による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(1756.1.27-1791.12.5)のピアノ協奏曲全集
12枚目を聴きました。
最後の1枚です。


モーツァルト
ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595
ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調 K.382
ピアノと管弦楽のためのロンド イ長調 K.386

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:1979年6・9月(第27番)、EMIスタジオ、ロンドン。1983年10月6日(ロンド)、セント・ジョン・スミス・スクエア、ロンドン。
【SONY MUSIC 88691914112】CD12


モーツァルト32歳の時(1788.2)、

 第26番 ニ長調 K.537

が完成した後、

35歳を目前にひかえ完成されたのが(1791.1.5)、

 第27番 変ロ長調 K.595 でした。

モーツァルトはこの年の12月に亡くなるので、
これが最後のピアノ協奏曲となりました。


最後に収められている
2つのロンドは初めて聴きました。

ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調 K.382 は、

26歳の時(1782.3)に、
ピアノ協奏曲第5番ニ長調 K.175
の新たな最終楽章として作曲されました。

第5番は、
17歳の時(1773.12)に作曲された
最初のオリジナルなピアノ協奏曲です。


ピアノと管弦楽のためのロンド ニ長調 K.382 は、

同じく26歳の時(1782.10)に、
ピアノ協奏曲第12番イ長調 K.414
の新たな最終楽章として構想されました。

第12番は、このロンドと
ほぼ同時期(1782秋)に作曲されています。


  ***

とうとう最後まで到達しました。
第27番のピアノ協奏曲です。

これまでと同じく、
ごく穏当なスタイルの演奏です。

ペライアのモーツァルトは、

穏当なスタイルの中にも、
キラリと光るものが感じられることが多かったのですが、

今回はそれも今一つのように感じました。


録音の加減か、

ピアノの弱音を聴き取りやすくすると、
オケの強奏が耳にうるさくなり、

逆に、
オケの強奏を程良いレベルにすると、
ピアノの微妙なタッチが聴こえなくなるので、

ただなだらかに流れていくだけの演奏になっていました。

復刻の仕方によっては、
見違えって聴こえるかもしれません。



終わりに収められていた2つのロンドは、
もっと鮮明な音質でした。

もともと
ほかのピアノ協奏曲の最終楽章として
作曲されていたそうで、

そんな感じの音楽として
ふつうに聴ける内容でしたが、

特別に耳をひきつけられる
魅力的なメロディがあふれているわけでもなく、

独立した1曲としてコンサート等で取り上げるのには、
曲自体が少し弱いように感じました。


  ***

さて、
モーツァルトの協奏曲、
全曲をじっくり聴いて来たわけですが、

かなり若い時期の作品から、
モーツァルトらしい魅力にあふれていて、
習作だと感じるものはほとんどありませんでした。

とても有意義な時間を送ることができました。

ただ20数曲もあると、
それぞれの曲の個性をまだつかみきれていないのが正直なところです。


どちらかといえば、
ペライアよりもう少し押しの強い、
意志的な強さのある演奏のほうが好みなので、

改めて始めから、
次は内田光子の旧盤で聴き直していこうかな、
と考えているところです。


※Wikipediaの「マレイ・ペライア」
 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」
 「モーツァルトの協奏曲」
 「ピアノ協奏曲第27番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2014年9月15日月曜日

リヒター&ミュンヘン・バッハ管のバッハ:マタイ受難曲(1958年録音)

ドイツの指揮者
カール・リヒター(1926.10-1981.2)の指揮する
ミュンヘン・バッハ管弦楽団 等の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685.3-1750.7)の
「マタイ受難曲 BWV244」を聴きました。

リヒター31歳の時(1958.6-8)の録音です。


J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244

エルンスト・ヘフリガー(福音史家、アリア:テノール)
キート・エンゲン(イエス:バス)
アントニー・ファーベルク(第1の女、ピラトの妻:ソプラノ)
イルムガルト・ゼーフリート(アリア:ソプラノ)
ヘルタ・テッパー(第2の女、アリア:アルト)
マックス・プレープストル(ユダ、ペテロ、ピラト、司祭の長:バス)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(アリア:バス)
ミュンヘン少年合唱団
ミュンヘン・バッハ合唱団
ミュンヘン・バッハ管弦楽団
指揮:カール・リヒター

録音:1958年6-8月 ミュンヘン、ヘルクレスザール(ステレオ)
【Archiv Produktion 463 635-2】2001年1月発売


マタイ受難曲 BWW244 は、
バッハ42歳の時(1727.4)に初演された作品です。

言わずと知れた名曲なので、
リヒターの抜粋盤は持っていたのですが、
3枚組だと結構なお値段になるので、
買いそびれていました。

最近といっても2年程前ですが、

「Profil」という所から、
1958年録音のリヒターのマタイ受難曲が復刻され、
各所で絶賛されていました。

値段も2000円台だったので、
お盆に購入してみました。


【Profil PH12008】2012年4月発売

リヒターの指揮する「マタイ受難曲」、
悪かろうはずはないのですが、

「Profil」の復刻で聴くと、
あれっ、こんな録音だったかな、
と肩透かしにあったような印象も受けました。


大きめのコンサートホールで聴くような、
全体として聴きやすい、
耳に心地よい音質に調整してあるのですが、

その分、リヒター独特の、
胸の奥に切り込んでくるような、
意志の強さを感じさせるところが大きく減っていて、
残念な気持ちになりました。


そもそも、
それほど悪い録音ではなかったはずだと思い、

1,000円台に値下げしていた
「The Originals」の復刻盤を手に入れて聴き直してみたところ、

これが大正解でした。


分離のよい、
しかし耳にうるさく響くことのない滑らかな音質で、

リヒターらしく、
心に切り込んでくる
意志の強さを感じさせる録音で、

抜粋盤の記憶が良い方向によみがえりました。


「マタイ受難曲」のみ何種類も購入し、
聴き比べしているわけではなく、
あくまで私の主観になりますが、

「Profil」と「The Originals」を比べるなら、
圧倒的に後者のほうをお薦めします。


まだ内容を云々できるほど聴き込んでいないのですが、

このリヒター盤なら、
飽きることなく全体をくりかえし聴き込むことができるので、

くりかえし聴き込んで、
全体の流れを頭に入れておこうと思います。


※Wikipediaの「ヨハン・ゼバスティアン・バッハ」「マタイ受難曲」を参照。