2015年1月30日金曜日

マズア&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のメンデルスゾーン:序曲集(1974年録音)

ドイツの指揮者、
クルト・マズア(1927.7- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン(1809.2-1847.11)の
序曲集を聴きました。

マズア46歳の時(1974.2)の録音です。


メンデルスゾーン序曲集
1) 序曲《ルイ・ブラス》作品95
2) 序曲《フィンガルの洞窟》作品26
3) 序曲《トランペット》作品101
4) 序曲《美しいメルジーネの物語》作品32
5) 序曲《静かな海と楽しい航海》作品27

クルト・マズア(指揮)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音:1974年2月5-6日、25日、3月1日、ライプツィヒ贖罪教会
【KICC3655】

メンデルスゾーンの作品番号は
おおむね出版順に付されているのですが、

没後に出版された50曲近くの作品(Op.73~)にも同様に付されたため、
作曲年代を考える際は注意が必要です。

今回の収録曲を
作曲順に並べなおすと、

1826年…序曲《トランペット》作品101
1828年…序曲《静かな海と楽しい航海》作品27
1830年…序曲《フィンガルの洞窟》作品26
1835年…序曲《美しいメルジーネの物語》作品32
1839年…序曲《ルイ・ブラス》作品95

となります。

作曲者17歳(1826)から
30歳(1839)までの作品が収められていることになります。

17歳というと驚きますが、

有名な 序曲《夏の夜の夢》作品21
と同じ年に作曲されていることを知れば、
一概に早いとも言えないでしょう。


  ***

メンデルスゾーンの序曲は、
これまでそれほど注目して来なかったのですが、

今回の演奏でかなり見方を改めました。

ちょうどサヴァリッシュとドレスデン国立管弦楽団による
シューマンを聴いたときのような印象で、

オーケストラの豊穣な音色にまず心を奪われました。

響きの美しさにうっとりして身を任せているうちに、
先へ先へと曲が進んでいって、

明るい美しさに満ち溢れた
メンデルスゾーンの魅力に初めて気がつけたように思います。


マズアの指揮も、
特別な個性を強調するものではありませんが、

オケの美点を無理のない範囲で最大限に引き出していて、
その確かな手腕に驚かされました。


マズアの指揮はどこか楽観的というか、
底抜けに明るいところがあるので、

ベートーヴェンやブラームスでは
今一つ私の好みとズレがあったのですが、

メンデルスゾーンでは、
曲想がマズアの個性に合っているのか、
曲の良さを率直に感じ取ることができました。


どれも美しいのですが、
序曲《トランペット》と《ルイ・ブラス》は、
初めて聴く者にもわかりやすく、隠れた名曲に出会うことができました。


マズアとゲヴァントハウスのコンビで、
メンデルスゾーンの主要な作品を録音されているようなので、

これから1つずつ聴いていこうと思います。

2015年1月29日木曜日

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲第1・2番(2000年録音)

日本の指揮者
朝比奈隆(1908.7-2001.12)の指揮する
大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏で、

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770.12-1827.3)の
交響曲第1・2番を聴きました。

朝比奈隆の最晩年、
2000年に録音された7回目の交響曲全集からの分売です。

指揮者91-2歳(2000年3・7月)の時の録音です。


ベートーヴェン
交響曲第1番 ハ長調 作品21
交響曲第2番 ニ長調 作品36

大阪フィルハーモニー交響楽団
指揮:朝比奈隆
録音:2000年7月23日 東京、サントリーホール(第1番)
   2000年3月10日 大阪、フェスティバルホール(第2番)
【AVCL84002】※2014年11月発売。

7回目の全集は、
各曲2回ずつの公演をそのままCD化するという
マニア向けの趣向だったので(2000年4月- 2001年5月発売)、

途中まで購入したものの全曲揃えるには至りませんでした。

2008年12月に改めて、
ふつうの全集仕様に編集したものが6枚組で発売されましたが、
高価なのでそのうちに買おうと思っているうちに、
今回の再販となりました。


  ***

第1番は初出時、
2000年7月21日と23日の演奏が両方ともCD化されていました。

今回のCDには、
2000年7月23日のライブ収録とあります。
恐らく23日の演奏をもとに微調整された音源ということだと思います。


同じように、第2番は初出時、
2000年3月10日と12日の演奏が両方ともCD化されていました。

今回のCDには、
2000年3月10日のライブ収録とあります。
恐らく10日の演奏をもとに微調整された音源ということだと思います。


  ***

さて今回、
一聴して気がつかされるのは、
これまで聴いてきたポニーキャニオンでの2回の全集とは、
明らかにオケの響きが違うことです。


それまでの録音では、
オケの各楽器が荒削りなままで突出する感じがあって、

良くいえば、豪快かつ攻撃的な印象、
悪くいえば、耳にうるさい粗雑な印象がありました。


新しい録音では、まずもって
美しくブレンドされたオケの豊穣な響きに耳を奪われます。

大阪フィルってこんなに美しい響きだったかなと驚くほどです。

個人的に、
朝比奈&大フィルを生で聴いた印象に近いのは、
今回のCDのほうだと思うので、

生のオーケストラを聴いた時の印象により近くなるように、
それまでと録音の方針を変えたのでしょうか。


これまでの素朴で豪快な音楽作りに加えて、
オーケストラの極上の音色を楽しむこともできるので、

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲全集のなかでも、
完成度の点で際立っているのではと思いますが、

たくさん出ている全集をすべて聴いたわけではないので、

これはこれで、
十分お薦めできるレベルの優れたCDであることは保証できます。


最近はあまり聴かれなくなった
オケを豪快に鳴らしきって演奏させるタイプの
第1・2番として、

くりかえし聴きたくなる魅力を備えた演奏だと思います。

2015年1月27日火曜日

ガンゼンハウザー&スロヴァキア放送響のラフマニノフ:交響曲第2番(1989年録音)

エイベックス・クラシックスの
ベスト・オブ・クラシックスからもう1枚、

アメリカの指揮者
スティーヴン・ガンゼンハウザー(1942.4-)の指揮する

スロヴァキアのオーケストラ
スロヴァキア放送ブラティスラヴァ交響楽団の演奏で、


ロシア帝国出身の作曲家
セルゲイ・ラフマニノフ(1873.4-1943.3)の
交響曲第2番 ホ短調 作品27 を聴きました。

作曲家34歳の時(1908.1)に初演された作品を、
指揮者47歳の時(1989.5)に録音しています。


セルゲイ・ラフマニノフ
交響曲第2番ホ短調作品27

スティーヴン・ガンゼンハウザー(指揮)
スロヴァキア放送ブラティスラヴァ交響楽団
録音:1989年5月 ブラティスラヴァ、スロヴァキア放送コンサートホール
【AVCL-25629】


ラフマニノフの交響曲第2番は、

美しいメロディに事欠かないものの、
曲全体の構成がつかみにくいところがあって、
今一つよくわからない感じのある曲です。
これまでに

 スヴェトラーノフ、
 プレヴィン、
 アシュケナージ、
 オーマンディ、
 秋山和慶、

と聴いてきましたが、
つかみどころのなさは残されたままでした。


このガンゼンハウザー盤、
オケの技量的に厳しいのではと思っていたのですが、

指揮者のよほどの得意曲なのか、
曲全体の構成が手に取るようにわかり、

共感度の高いオーケストラとともに
感動的な演奏を聴かせてくれました。


チャイコフスキーにつながるような、
ロシア的な荒々しい側面と、

ラフマニノフ独特の甘い旋律とが、
絶妙なバランスで構成されていて、

今回のCDで初めて、
この作品の本質がわかったように感じました。


若干オケが弱いので、
繰り返し聴いているとオケの粗さが目についてきますが、
たまに取り出して聴く分には何も問題ありません。

まとめにくい曲を相手に、
聴かせどころのつぼを良く心得た、
隠れた名盤といって良いと思います。


ガンゼンハウザー、
楽譜をかなり深く読み込んで、
個性的な解釈を聴かせる要注目の指揮者だと思います。


※Wikipediaの「セルゲイ・ラフマニノフ」「交響曲第2番(ラフマニノフ)」を参照。