渡邉暁雄(1919.6-1990.6)の指揮する
日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で、
フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(Jean Sibelius 1865.12-1957.9)の
交響曲全集を聴いていきます。
渡邉暁雄と日本フィルは、
シベリウスの交響曲全集を、
1962年と1981年の2回録音しています。
渡邉氏42-3歳そして62-3歳のときの録音です。
今回聴くのは旧盤(1962)のほうです。
私の渡邉氏に対する印象を、
大きく改めるきっかけになったCDです。
渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(第1回録音)
シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
〔録音:1962年5月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
〔録音:1962年、杉並公会堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
〔録音:1962年8月7・8日、東京文化会館〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
〔録音:1962年6月20・21日、東京文化会館〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
〔録音:1962年2月18日、文京公会堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
〔録音:1962年、文京公会堂〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
〔録音:1962年3月7日、杉並公会堂〕
渡邊暁雄(指揮I
日本フィルハーモニー交響楽団
【TWCO-29/32】※2007年5月発売
旧盤より早く、
新盤(1981)のほうを手に入れていたのですが、
新盤はオケのレベルによるのか、
あるいは始まったばかりのデジタル録音で、
録音する側の不慣れなところが影響したのか、
フォルテは暴力的で耳にうるさく、
ピアノも胸に響いてこない、
残響も何もない即物的な録音で、
どれも聴き通すことができませんでした。
リマスターし直せば、
違った印象になる可能性もありますが、
私が所有している盤(2007年発売)についていえば、
歴史的な価値以上のものは見出し難かったです。
初めてシベリウスの全集に挑戦される場合、
新盤(1981)は避けたほうが賢明です。
渡邊暁雄&日本フィル
シベリウス交響曲全集(デジタル再録音盤)
シベリウス
交響曲第1番 ホ短調 Op.39
〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第2番 ニ長調 Op.43
〔録音:1981年6月25日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第3番 ハ長調 Op.52
〔録音:1981年6月19日、習志野文化ホール〕
交響曲第4番 イ短調 Op.63
〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第5番 変ホ長調 Op.82
〔録音:1981年7月2日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響曲第6番 ニ短調 Op.104
〔録音:1981年6月22日、習志野文化ホール〕
交響曲第7番 ハ長調 Op.105
〔録音:1981年7月1日、昭和女子大学人見記念講堂〕
交響詩「トゥオネラの白鳥」Op.22-2
〔録音:1981年9月8日、昭和女子大学人見記念講堂〕
悲しきワルツ Op.44-1
〔録音:1981年9月9日、昭和女子大学人見記念講堂〕
渡邊暁雄(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
【COCQ-84283-6】※2007年5月発売
***
そもそも渡邉氏のシベリウスは、
京都市交響楽団とのセッション録音を聴いたのが初めてでした。
シベリウス
劇付随音楽「テンペスト」第1組曲 Op.109
交響曲第2番ニ長調Op.43
渡邉暁雄(指揮)
京都市交響楽団
録音:1972年4月、奈良県文化会館
【TOCE-6321】1990年9月発売
《テンペスト》は全くピンと来なかったのですが、
第2番はそれなりに好感のもてる誠実で丁寧な演奏でした。
とはいえ
セッション録音ゆえか生き生きとした情感には乏しく、
職人的に淡々と仕事をこなしているようにも聴こえました。
その後、
ヘルシンキ・フィルとのライブ録音を聴きました。
シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
悲しきワルツOp.44
渡邉暁雄(指揮)
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1982年1月28日、福岡サンパレス
【TDK-OC012】2003年4月発売
各誌絶賛だったのでかなり期待していたのですが、
ライブならではのキズは仕方ないにしても、
何より解釈面でお互いに手探り状態のまま演奏に臨み、
不完全燃焼なまま終わってしまったように感じました。
こちらの演奏が今ひとつだったので、
同時に発売された第4・7番のCDはまだ聴いていません。
初めてシベリウスを聴くのであれば、
それなりに満足できる演奏だとは思うのですが、
渡邉氏のベスト演奏だとはとても言えないと思いました。
それから、
東京都響とのライブ録音も聴きました。
シベリウス
交響曲第1番ホ短調Op.39
交響曲第2番ニ長調Op.43
渡邉暁雄(指揮)
東京都交響楽団
録音:1972年4月28日(第1番)、1973年4月17日(第2番)、東京文化会館
【TFMC-0010/11】2004年7月発売
こちらも、
当時の日本のオケの水準を知る上では有用な演奏で、
同曲のライブを聴きに行って、
これくらいの演奏が聴ければふつうに満足できるレベルではあるのですが、
ほかの名演をさしおいて、
このCDを選びたいかといえば、
それほど特別な魅力は感じませんでした。
***
ここまで聴いてきた上で、
先の日本フィルとの新全集(1981)で、
耳にうるさく響く残念なCDを聴いてしまったので、
渡邉暁雄氏のシベリウスについて、
あまり肯定的な印象は持っていませんでした。
そんな私の、
渡邉氏に対するマイナス・イメージを
一気に覆させてくれたのが、
日本フィルとの旧全集(1961)でした。
40代の渡邉氏が、
まさかこれほど覇気にあふれた
熱い演奏を聴かせていたとは思いもよりませんでした。
シベリウスの楽譜への深い読みと、
壮年期の渡辺氏による核心に満ちた解釈で、
ぐいぐいと惹き込まれる魅力のある演奏が繰り広げられていました。
驚かされるのは、
ライブでもなかなか聴けないほどの
「熱さ」が伝わって来ることで、
セッション録音で、
どんな魔法を使ったのかしらと大いに感心させられました。
分裂前の日本フィルの実力も相当なものです。
日本で、音響設備の整った
最新のホールができる前の録音なので
最新の優れた音響のCDに比べれば、
響きに若干の弱さがあることは否めないのですが、
どんな強奏でも無機的に響かず、
意味のある音楽として心に伝わって来るのはなかなかないことです。
シベリウスの交響曲を聴いて、
初めてに近い、新鮮な感動を味わうことができました。
タイプが似ているのは、
ベルグルンド&ボーンマス響
の録音(1975-75)でしょうか。
ベルグルンドの第1回目の全集は、
のちの全集よりも若々しい生命力にあふれた演奏となっていますが、
これをさらに迫力一杯にした感じで、
全然負けていません。
渡邉氏の旧全集は、
初めてシベリウスの全集を聴く方にも、
安心してお薦めできる名盤だと思います。
※Wikipediaの「ジャン・シベリウス」「日本フィルハーモニー交響楽団」を参照。
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