カナダのオーケストラ
トロント交響楽団の演奏で、
フランスの作曲家
エクトル・ベルリオーズ(1808.12.11-1869.3)の
幻想交響曲を聴きました。
小澤征爾31歳の時(1966.12)の録音です。
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14
小澤征爾(指揮)
トロント交響楽団
録音:1966年12月1・3日、トロント、マッセイ・ホール
【SICC-1839】2015年5月発売
幻想交響曲は、
ベルリーズ21歳の時に作曲され、
22歳になる直前の1830年12月5日に初演された作品です。
調べてみて、
かなり若い時期の作品であることにびっくりしました。
でも言われてみれば、
それほど深みのある作品でもないので、
腑に落ちるような気がしました。
***
若き日の小澤氏による
意外な名演に驚きました。
幻想交響曲は今まで
あまり得意な曲ではなかったのですが、
初めて違和感なく最後まで、
感動のうちに聴き終えることができました。
小澤氏らしく大きな踏み外しのない、
軽めの美しい演奏ではあるのですが、
のりのりのオーケストラとともに、
ところどころ楽譜からはみ出た
やんちゃな表現を聴かせていて、
とても新鮮な印象を受けました。
小澤氏の5、60代以降の
安定性重視の録音ばかり聴いて来たせいか、
31歳のこの録音は印象がまったく違っていて、
嬉しい驚きでした。
名演の誉れ高いミュンシュの録音は、
オケを自在にドライブし過ぎた印象で、
元はどんな曲だったのかわかりにくいように感じていました。
凄くはあるけれども、
元々こんな曲だったのかしらと。
初めて聴くにはあまり向かない演奏だと思いました。
幻想交響曲で一番聴き馴染んだのは
小林研一郎さんの演奏なのですが、
ハンガリー国立交響楽団、
チェコ・フィルのCD、
名フィルとの実演などで聴いた限りでは、
叙情性にあふれる共感度の高い演奏ではあるものの、
若きベルリオーズの狂気を感じるかといえば、
表現の幅がいたって常識的で、
勇み足のほとんどない所が多少物足りなく思っていました。
まだまだ聴いていない演奏が多いので、
より一層の名演も聴き逃しているとは思いますが、
若きベルリオーズがこの曲に込めた
初々しいまでの魅力を存分に引き出した演奏として、
十分にお薦めできる録音です。
小澤氏は、この後ボストン交響楽団と1回、
サイトウ・キネン・オーケストラと2回録音しているので、
そちらとも聴き比べてみようと思います。
※Wikipediaの「エクトル・ベルリオーズ」「幻想交響曲」の各項目を参照。