2018年10月21日日曜日

朝比奈隆&大阪フィルのベートーヴェン:交響曲第4番(2000年5月録音)

朝比奈隆(1908年7月9日-2001年12月)氏が亡くなる前年に、
大阪フィルハーモニー交響楽団とともに収録された

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven, 1770年12月-1827年3月)
交響曲全集から、第4番を聴きました。

朝比奈隆91歳の時(2000年5月3・10日)の録音です


ベートーヴェン
Disc1
①交響曲第4番 変ロ長調 作品60
~2000年5月3日 アクロス福岡・シンフォニーホール

Disc2
②交響曲第4番 変ロ長調 作品60
~2000年5月10日 大阪、ザ・シンフォニーホール

 大阪フィルハーモニー交響楽団
 朝比奈隆(指揮)
【OVCL-00023】※2000年7月発売


交響曲第4番 変ロ長調 作品60 は、
第3番の初演(1804年12月)から2年余りをへた、
ベートーヴェン36歳の時(1807年3月)に初演された作品です

ちなみに第5・6番が初演されたのは、
それから1年9ヶ月後(1808年12月)のことでした。


  ***

先に行われた〔Disc1〕福岡公演から、
完成度の高い充実した演奏が繰り広げられていますが、

福岡の一週間後に行われた〔Disc 2〕大阪公演は、
さらに隙のない完璧な仕上がりで、
指揮者の強い意志の伝わる熱い演奏に、
心から感動して全曲を聴き通すことができました。

晩年の朝比奈の最上レベルの演奏が聴ける、
お薦めの録音です。

個人的には、
5月10日の大阪公演(Disc 2)のほうが優れた演奏に聴こえますが、

エクストンから、
2008年12月に発売された全集のセット盤では、
5月3日の福岡公演(Disc 1)のほうが収録されています。

福岡公演も、充実した演奏ではあるので、
全国のいろいろな会場の録音を収録する方針があったのかもしれません。

大阪公演はもとの2枚組CDでしか聴くことはできないので、
細かな差異が気になる方は、
2枚組のほうも聴いてみることをお勧めします。





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2018年10月14日日曜日

ヨッフム&シュターツカペレ・ドレスデンのブルックナー:交響曲第2番(1980年録音)

ドイツの指揮者
オイゲン・ヨッフム
(Eugen Jochum, 1902年11月1日-87年3月26日)
の指揮する

ドイツのザクセン州立歌劇場
(ゼンパー・オーパー, Semperoper)専属のオーケストラ
シュターツカペレ・ドレスデン
(Sächsische Staatskapelle Dresden)
の演奏で、

オーストリアの作曲家
アントン・ブルックナー
(Anton Bruchner, 1824年9月4日-96年10月11日)
の交響曲全集を聴き進めていますが、

CD2枚目は、
交響曲第2番ハ短調を聴きました。

指揮者ヨッフム77歳の時(1980年3月)の録音です


 Disc2
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲第2番ハ短調 WAB.102(1877年版)
 シュターツカペレ・ドレスデン
 オイゲン・ヨッフム(指揮)
録音:1980年3月4-7日、ドレスデン、ルカ教会
【Warner Classics 5099998458325】2013年9月発売


交響曲第2番ハ短調 は、

47歳の秋(1871年)に着手、
48歳の時(72年9月)に完成され、
49歳の時(73年10月)に初演されました。

この1872年9月に完成された楽譜を、
第1稿「1872年稿」と呼んでいます

 「1872年縞」は長らく未出版でしたが、
 2005年にアメリカの音楽学者
 ウィリアム・キャラガン(William Carragan, 1937- )
 による校訂譜が出版されました。

 キャラガンの研究自体は
 1990年までにまとめられていたので、
 1991年には「キャラガン版」として録音、紹介されていました。 

完成の翌年に初演される際、
第1稿「1872年稿」そのままではなく、
すでに若干の改訂が行われていたことから、
この初演時(1873年10月)の版を「1873年稿」と呼ぶことがあります

さらに、
初演の1年4ヶ月後に再演される際(1876年2月)、
より大きな改訂が行われました。

この1876年の再演にもとづく改訂稿を、
第2稿「1877年稿」と呼んでいます


 ***

その後、
国際ブルックナー協会による校訂譜として、

1938年に出版されたハース版は、
「1877年稿」を基本としつつも、
適宜「1872年稿」の情報を織り込んだ楽譜となりました。

さらに、
1965年に出版されたノヴァーク版は、
ハース版から「1872年稿」の情報を削除する方針でしたが、
実際は、一部に「1872年稿」の情報を残したまま出版されました。

つまりノヴァーク版はハース版と同じく、
「1877年稿」を基本としつつも、
多少「1872年稿」の情報が残された楽譜となりました。


  ※以上、主に根岸一美(ねぎしかずみ)著『作曲家◎人と作品シリーズ ブルックナー』(音楽之友社、2006年6月)と、ノーヴァク著(大崎滋生訳)「序文」(ブルックナー作曲/ノーヴァク監修『OGT202 交響曲第二番ハ短調(1887年稿)』音楽之友社、1986年5月)を参照。


ただし実際、
ノヴァーク版を開いてみると、
指揮者の判断によって「1872年稿」の部分をカットし、
完全な「1877年稿」として演奏できるようになっています。

実際、ヨッフムはこのCDで、
ノヴァーク版から「1872年稿」の部分をのぞいて、
完全な「1877年稿」として演奏しています

ただ「1877年稿」に従うと、
第4楽章に大幅なカットが生じてしまうので、

ノヴァーク版を用いていても、
カットなしのまま「1877(+72)年稿」の状態で
演奏されることのほうが多いようです。


  ***

ヨッフムの第2番、
長年の経験に裏づけられた共感度の高い演奏で、
すぐに耳になじんで最後まで聴き通すことができました。

今となっては珍しい、
終楽章に大幅なカットのある
「1877年稿」を忠実に再現した演奏です。

カットを悪とみて、
評価しない向きもあるかもしれませんが、
「1877年稿」本来の姿を知るのには有用な録音です。

本当にそれだけなの?と拍子抜けする感じで、
あっという間に終わってしまいますが、
ブルックナーの交響曲の終楽章には、
案外わかりにくいところがあるので、短く刈り込んである分、
飽きる間もなく聴き終えられるのは利点といえるかもしれません。

個人的には、第1番と同じく、
深遠な表情をみせる第2番の緩徐楽章が絶品で、
第7番や8番の緩徐楽章に比べて
あまり聴き慣れていないこともあって、
新鮮な感動のうちに聴き通すことができました。



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2018年10月7日日曜日

ノイマン&チェコ・フィルのドヴォルザーク:交響曲第2番(1987年録音)

チェコの指揮者
ヴァーツラフ・ノイマン
(Václav Neumann, 1920年9月29日-95年9月2日)
の指揮する

チェコのオーケストラ
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
の演奏で、

チェコの作曲家
アントニン・ドヴォルザーク
(Antonín Dvořák, 1841年9月8日-1904年5月1日)の
交響曲第2番 変ロ長調 作品4 を聴きました。


ドヴォルザーク
交響曲第2番 変ロ長調 作品4 B.12

ヴァーツラフ・ノイマン指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1987年10月1-2日、プラハ、ルドルフィヌム(芸術家の家)
【COCO-70880】2008年12月発売


ドヴォルザークが23歳の時に
ドイツのコンクールに応募するために作曲され、
1865年3月24日に完成されたのが
交響曲第1番です。

第2番の作曲もすぐに取りかかり、
半年後の同年(1865)10月9日
ドヴォルザーク24歳の時に完成しました

第1番にも増して長大な作品であったため、
完成後間もなく、
第1・4楽章に大幅なカットを行うなど、
大幅な改訂が行われましたが、
しばらく演奏されることはありませんでした。

完成から20年余りをへた1887年5月に、
それまでに作曲された
 第3番 変ホ長調
 第4番 ニ短調
 第5番 ヘ長調
とともに出版の機会を探るべく、
改めて校訂が行われましたが、
ヘ長調の交響曲以外は出版に至りませんでした。

その翌年(1888)3月11日
さらに小規模のカットを施した上で、
ようやく(若いころに書かれた第1交響曲の紹介として)初演する機会を得ました。

楽譜は生前に出版されることはなく、
ドヴォルザークの没後55年をへた
1959年に初めて出版されました

 ※主に藤田由之氏のCD解説を参照。


  ***

ノイマン指揮の
第1交響曲が思いのほか楽しめたので、
期待して第2番も聴いてみました。

すると残念ながら、
個々に美しいメロディは見出されるものの、
全体としてまとまりに乏しく、
途中で飽きが来て、最後まで聴き通すのは辛い内容でした。

第1番は拙いなりに非凡な才能を感じさせ、
それなりに聴き通せる作品に仕上がっていたのですが、

第2番は第1番から時間をあけずに作曲され、
良いものを出し尽くしていたからなのか、
色々工夫した挙げ句どうにも収拾がつかなかった、
まとまりの悪い作品であるように感じました。

ある程度聴きなじんでいた第1番に比べ、
第2番はまったく初めて聴いたので、
今後印象が変わる可能性もありますが、
最初の感想はこんな風になりました。

今後よりおもしろい演奏に出会えることを祈りつつ、
第3番に進みたいと思います。



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