オイゲン・ヨッフム
(Eugen Jochum, 1902年11月1日-87年3月26日)
の指揮する
ドイツのザクセン州立歌劇場
(ゼンパー・オーパー, Semperoper)専属のオーケストラ
シュターツカペレ・ドレスデン
(Sächsische Staatskapelle Dresden)
の演奏で、
オーストリアの作曲家
アントン・ブルックナー
(Anton Bruchner, 1824年9月4日-96年10月11日)
の交響曲全集を聴き進めていますが、
CD2枚目は、
交響曲第2番ハ短調を聴きました。
指揮者ヨッフム77歳の時(1980年3月)の録音です。
Disc2
アントン・ブルックナー(1824-1896)
交響曲第2番ハ短調 WAB.102(1877年版)
シュターツカペレ・ドレスデン
オイゲン・ヨッフム(指揮)
録音:1980年3月4-7日、ドレスデン、ルカ教会
【Warner Classics 5099998458325】2013年9月発売
交響曲第2番ハ短調 は、
47歳の秋(1871年)に着手、
48歳の時(72年9月)に完成され、
49歳の時(73年10月)に初演されました。
この1872年9月に完成された楽譜を、
第1稿「1872年稿」と呼んでいます。
「1872年縞」は長らく未出版でしたが、
2005年にアメリカの音楽学者
ウィリアム・キャラガン(William Carragan, 1937- )
による校訂譜が出版されました。
キャラガンの研究自体は
1990年までにまとめられていたので、
1991年には「キャラガン版」として録音、紹介されていました。
完成の翌年に初演される際、
第1稿「1872年稿」そのままではなく、
すでに若干の改訂が行われていたことから、
この初演時(1873年10月)の版を「1873年稿」と呼ぶことがあります。
さらに、
初演の1年4ヶ月後に再演される際(1876年2月)、
より大きな改訂が行われました。
この1876年の再演にもとづく改訂稿を、
第2稿「1877年稿」と呼んでいます。
***
その後、
国際ブルックナー協会による校訂譜として、
1938年に出版されたハース版は、
「1877年稿」を基本としつつも、
適宜「1872年稿」の情報を織り込んだ楽譜となりました。
さらに、
1965年に出版されたノヴァーク版は、
ハース版から「1872年稿」の情報を削除する方針でしたが、
実際は、一部に「1872年稿」の情報を残したまま出版されました。
つまりノヴァーク版はハース版と同じく、
「1877年稿」を基本としつつも、
多少「1872年稿」の情報が残された楽譜となりました。
※以上、主に根岸一美(ねぎしかずみ)著『作曲家◎人と作品シリーズ ブルックナー』(音楽之友社、2006年6月)と、ノーヴァク著(大崎滋生訳)「序文」(ブルックナー作曲/ノーヴァク監修『OGT202 交響曲第二番ハ短調(1887年稿)』音楽之友社、1986年5月)を参照。
ただし実際、
ノヴァーク版を開いてみると、
指揮者の判断によって「1872年稿」の部分をカットし、
完全な「1877年稿」として演奏できるようになっています。
実際、ヨッフムはこのCDで、
ノヴァーク版から「1872年稿」の部分をのぞいて、
完全な「1877年稿」として演奏しています。
ただ「1877年稿」に従うと、
第4楽章に大幅なカットが生じてしまうので、
ノヴァーク版を用いていても、
カットなしのまま「1877(+72)年稿」の状態で
演奏されることのほうが多いようです。
***
ヨッフムの第2番、
長年の経験に裏づけられた共感度の高い演奏で、
すぐに耳になじんで最後まで聴き通すことができました。
今となっては珍しい、
終楽章に大幅なカットのある
「1877年稿」を忠実に再現した演奏です。
カットを悪とみて、
評価しない向きもあるかもしれませんが、
「1877年稿」本来の姿を知るのには有用な録音です。
本当にそれだけなの?と拍子抜けする感じで、
あっという間に終わってしまいますが、
ブルックナーの交響曲の終楽章には、
案外わかりにくいところがあるので、短く刈り込んである分、
飽きる間もなく聴き終えられるのは利点といえるかもしれません。
個人的には、第1番と同じく、
深遠な表情をみせる第2番の緩徐楽章が絶品で、
第7番や8番の緩徐楽章に比べて
あまり聴き慣れていないこともあって、
新鮮な感動のうちに聴き通すことができました。
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