2012年11月8日木曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その5

アメリカのピアニスト
マレイ・ペライア(1947-)と
イギリス室内管弦楽団による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756.1-1791.12)の
ピアノ協奏曲全集、5枚目を聴きました。


モーツァルト
ピアノ協奏曲 第13番 ハ長調 K.415(387b)
ピアノ協奏曲 第14番 変ホ長調 K.449

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:1979年4月4日、Abbey Road Studio、ロンドン(第13番)
  1975年9月12・13・15日、EMI Studio、ロンドン(第14番)
【SONY MUSIC 88691914112】CD5


K.415(第13番) のピアノ協奏曲は、
27歳のとき(1783年3月)に初演された作品です。

K.413~415(第11~13番)のピアノ協奏曲〔3曲〕は、
ウィーンに定住してすぐ1782年から翌年にかけて、
自らの予約演奏会用に作曲されたと考えられています。


K.449(第14番) のピアノ協奏曲は、
28歳のとき(1784年2月3日)に完成された作品です。

弟子のバルバラ・プロイヤー嬢のために作曲されたので、
《プロイヤーのための協奏曲》 第1番と呼ばれることもあります。

同様のピアノ協奏曲としてもう1曲 K.453(第17番) があり、
こちらは 《プロイヤーのための協奏曲》 第2番と呼ばれることがあります。


K.449・450・451・453・456・459(第14~19番)の6曲は、
すべて1784年に、ウィーンで作曲されたと考えられています。


実際聴いてみると、
第13番と第14番のあいだには、
わずかですが明らかな深まりの跡が感じられようです。

第11~13番までは、
愉悦感に包まれた明るいモーツァルトの一面を現しているものの、
まだ深みには乏しく、ほんの少し軽い感じがありました。

しかし第14番では、
モーツァルト独特の孤独感が影を挟むようになり、
充実度がぐっと増したように感じられました。


ペライアの演奏は、
より一層の押しの強さがあっても良いかな、
とも思いますが、

聴いて飽きるようなところは全くなく、
曲本来の美しさは十分に引き出せていると思います。


楽しく美しく、時に物悲しい、
モーツァルトの音楽にひたることが出来ました。



※Wikipediaの「マレイ・ペライア」
 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」
 「ピアノ協奏曲第13番(モーツァルト)」
 「ピアノ協奏曲第14番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2012年11月7日水曜日

横山幸雄のショパン:ピアノ独奏曲全集 その6(2011年録音)

横山幸雄(1971-)さんによる

ポーランド出身の作曲家
フレデリック・フランソワ・ショパン
(1810-1849)のピアノ独奏曲全集
6枚目を聴きました。


プレイエルによる
ショパン・ピアノ独奏曲全曲集〈6〉

1) パリ時代初期の遺作のマズルカ5曲
  マズルカ ニ長調(1832)
  マズルカ 変ロ長調 WN41(1832)
  マズルカ ハ長調(1833)
  マズルカ 変イ長調 WN45(1833)
  マズルカ ハ長調 WN48(1835)

2) 4つのマズルカ 作品17(1833作曲)
  第1番 変ロ長調
  第2番 ホ短調
  第3番 変イ長調
  第4番 イ短調

3) 4つのマズルカ 作品24(1835作曲)
  第1番 ト短調
  第2番 ハ長調
  第3番 変イ長調
  第4番 変ロ短調

4) 12の練習曲 作品25(1832-36作曲)
  第1番 変イ長調「エオリアンハープ」
  第2番 ヘ短調
  第3番 ヘ長調
  第4番 イ短調
  第5番 ホ短調
  第6番 嬰ト短調
  第7番 嬰ハ短調
  第8番 変ニ長調
  第9番 変ト長調「蝶々」
  第10番 ロ短調
  第11番 イ短調「木枯らし」
  第12番 ハ短調「大洋」

横山幸雄(ピアノ)
使用楽器:プレイエル(1910年製)
録音:2011年3月9・10日
上野学園 石橋メモリアルホール
【KICC-918】

CD6では、
ショパン22歳から26歳、
1832年から36年にかけて作曲された
マズルカと練習曲をまとめて取り上げています。

ショパンは
20歳(1830年)のときにワルシャワからウィーン、
21歳(1831年)のときにウィーンからパリに移住し、
パリで大成功をおさめます。

パリに移住し数年のうちに作曲された
20代前半の作品ということになります。


CD5では、
同じ時期に作曲された
ノクターンとポロネーズとバラードを取り上げていました。

このときは、
横山さんとノクターンの組み合わせが、
ほんの少しミスマッチな印象を受けたのですが、


CD6のマズルカも練習曲も、
横山さんと相性がとても良いようで、
感心しながら全体を聴き終えることができました。

マズルカは、
ポーランド特有のリズムにこだわるよりは、
横山さんが心に感じるところをすなおに表現してある演奏で、
わかりやすく、曲本来の美しさに感動しました。

これまでマズルカ集を聴いて
いいなと思えたことはなかったのですが、
横山さんのマズルカは、どれも曲そのものの良さが引き出されていて、楽しめました。


練習曲は、もう完全に
曲が横山さんの中に入っているようで、

完璧なテクニックに支えられた
驚くほど詩情にあふれる演奏で、

技術的なことを忘れて、
曲そのものの美しさに聴き入りました。


それでは次はCD7に進みましょう。

※Wikipediaの「横山幸雄」「フレデリック・ショパン」「ショパンの楽曲一覧」

2012年11月4日日曜日

ヘブラーのモーツァルト:ピアノ・ソナタ第6-8番(旧盤)

オーストリア出身のピアニスト
イングリット・ヘブラー(1926-)による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)の
ピアノソナタ全集、2枚目を聴きました。


モーツァルト: ピアノ・ソナタ全曲

モーツァルト
ピアノ・ソナタ 第6番 ニ長調 K.284
ピアノ・ソナタ 第7番 ハ長調 K.309
ピアノ・ソナタ 第8番 イ短調 K.310

イングリット・ヘブラー(ピアノ)
録音:1967年6月(第6番)、1964年12月(第7番)、1963年4月(第8番)
【PROC-1201/5】CD2


K.284(第6番)は、
モーツァルトが19歳のとき(1775年)、
デュルニッツ男爵のために作曲した
《デュルニッツ・ソナタ》(全6曲)の最後を締めくくる1曲です。

この1曲のみをさして《デュルニッツ》と呼ぶこともあります。


K.309(第7番)は、
モーツァルトが21歳のとき(1777年)、
母アンナとともにザルツブルグからパリへと向かう
旅の途中で滞在したマンハイムで作曲されました。

CD3に収録の K.311(第9番)も、
ほぼ同時に作曲されたことが確認されています。


K.310(第8番)は、
珍しく短調で書かれた作品で、
1778年7月に母アンナをパリで亡くした
経験が反映されたと推測されていますが、
史料の確証はありません。

K.309~311(第7~9番)のソナタは、
まとめて「作品4」として1781年に
パリで出版されているので、

K.310 もそれまでに作曲されたことは確かです。


第1~6番までは、
モーツァルト10代最後に書かれたソナタ、

第7~9番までは
20代前半に書かれたソナタとして、

まとめて考えることができそうです。


   ***

さて実際に聴いてみると、

第6番と第7番とのあいだに、
それほど明瞭な違いが聴き取れるわけではありませんが、

何となく成長しているようでもあります。


第8番は、明らかに
モーツァルトの内面的な深まりを見せている作品で、
それまでとは異質な世界が描かれているように感じます。

モーツァルトの絶望と孤独とが、
ピアノ・ソナタの簡素な様式の中で、
花開いているように感じました。


ヘブラーのピアノは、
ほんの少し迫力不足に聴こえるところもありますが、

古典の枠をはみ出さない範囲で、
最大限自由に、モーツァルトの楽譜を活かした演奏で、

清楚で典雅な雰囲気の中で、
聴くごとに味わいを増す絶妙な演奏に仕上がっていると思います。


それではCD3へと進みましょう。


※Wikipediaの「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」「イングリット・ヘブラー」
 「ピアノ・ソナタ第6番(モーツァルト)」「ピアノ・ソナタ第7番(モーツァルト)」
 「ピアノ・ソナタ第8番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。