2012年5月29日火曜日

ハイドシェックのヘンデル:クラーヴィア組曲集〈4〉

ハイドシェエックさんのヘンデル:組曲集、
最後の1枚(4枚目)を聴きました。


CD-4
ヘンデル
 組曲 第9番 ト短調(第2集~第6番)HWV439
 組曲 第11番 ニ短調(第2集~第4番)HWV437
 組曲 第14番 ト長調(第2集~第8番)HWV441
 組曲 第12番 ホ短調(第2集~第5番)HWV438

エリック・ハイドシェック(ピアノ)
 録音:1977年頃
【CASSIOPEE 969 209】

長大な2つの組曲
ニ短調〈HWV437〉とト長調〈HWV441〉を真ん中におき、

短くまとまった
ト短調〈HWV439〉とホ短調〈HMV438〉
の2つの組曲を、前後に添えてある、

ほどよい構成の1枚です。


1曲目〈HWV439〉の魅惑的な出だしから、
あっという間に耳が吸いよせられ、

次から次へと心奪われるメロディの連続で、
存分に楽しませてもらいました。


バッハのように、
内へ内へと向かう作曲家ではないので、

ハイドシェックさんの名演に出会わなければ、
特に注目することはなかったと思いますが、

心洗われる飛びきりの名曲揃いであることは、
疑いないと思います。


バッハのパルティータは、
他にもいろいろな名演を挙げることが可能ですが、

ヘンデルの組曲は、
ハイドシェックさんとの相性が抜群によいので、

ぜひまとめて再録音をしていただけると嬉しいです。

2012年5月25日金曜日

柳家小三治13 落語名人会37 「初天神・時そば」(1988・94)

柳家小三治の落語、
落語名人会のシリーズ13枚目を聴きました。
「初天神」と「時そば」の組み合わせです。


落語名人会37
柳家小三治〈13〉

「初天神」(はつてんじん)
(1988年1月31日 鈴本演芸場 第9回柳家小三治独演会)
「時そば」(ときそば)
(1994年1月31日 鈴本演芸場 第31回柳家小三治独演会)

〔お囃子〕樋口ひさ/小口けい
〔ディレクター〕京須偕充
【SONY RECORDS/SRCL-3579】


小三治さんの「初天神」、
これは絶品です。

やんちゃ坊主と
親父のあいだでくり広げられる
絶妙な間合いの、面白おかしい語り口に、
存分に笑わせてもらいました。

「あれ買って、これ買って」は、
みな子どものころに、思い当たるフシのあることですから、

ただおかしいだけでなく、
聴き終えたあとで、昔をふりかえって、
家族っていいなあ、と思わせられる、
素敵な、暖かいお噺だと思いました。


「時そば」は
よく知られたお噺ですから、

小三治さんでなければ、
というものでもないかもしれませんが、

小三治さんならではの
ゆったりとした味わい深さを感じさせる、

模範的な口演だと思いました。


古典を味わい深く、
でも堅苦しいわけでなく、
軽さのある、明るいふわりとした笑いを、
絶妙の間で、楽しませてもらいました。


※柳家小三治
 「初天神」1988-1/31◎
 「時そば」1994-1/31◎

2012年5月21日月曜日

ヴァルヒャのバッハ:オルガン作品全集(旧盤)その4


J.S.バッハ:オルガン作品全集
CD-4
1) トッカータとフーガ(ドリア調) BWV538
2) トッカータとフーガ ヘ長調 BWV540
3) トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564
4) トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
5) トッカータとフーガ ホ長調 BWV566
6) パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582


ヘルムート・ヴァルヒャ(オルガン)
録音:1947年(3,4)、1950年(1,2)、1952年(5,6)
オルガン:リューベック、聖ヤコビ教会(4)
カッペル、聖ペテロ=パウロ教会(1-3、5-7)
【Membran 223489】CD-4


ヴァルヒャさんのバッハ:オルガン作品全集、
今月はCD4枚目を聴きました。

「トッカータとフーガ」5曲に、
「パッサカリアとフーガ」1曲を添える、
という構成になっております。


トッカータ、パッサカリアといっても、
耳で聴き分けられるほど馴染んでいる訳ではありませんが、

CD2・3枚目の「前奏曲とフーガ」よりも
変化に富んでいて、聴き映えのする曲が多く、

飽きずに聴き通すことができました。

こうして並べて聴いてみると、
有名な「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」が、
一等優れた作品であることも理解できます。

もう1曲挙げるとしたら、
2曲目の「ヘ長調 BWV540」も、
今回初めて聴いたのですが、全体的なバランスの取れた、
優れた作品だと思いました。

長調で、明るい気持ちにさせられる点も好ましく、
「ニ短調 BWV565」よりも、今は好きかもしれません。


では5枚目に進みましょう。

2012年5月20日日曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その1


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS

ベートーヴェン
交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
交響曲第5番ハ短調 作品67

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1947年5月25日、ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD1

CD1枚目には、

1947年5月25・26・27日に行われた
ベルリン・フィルとのいわゆる歴史的復帰演奏会から、
初日(25日)の演奏が収録されています。

3日間の演奏会のうち、
1日目の「田園」「運命」と、
3日目の「運命」の録音が発売されているようです。

ベスト演奏として良く知られる3日目の「運命」は、
この録音集には収録されていません。

ただ1日目の演奏も、
基本的なスタンスに変わりわなく、
めったにない熱さを感じさせる演奏がくり広げられております。


歴史的な価値のある録音ですが、
残念なのは、音質が今一つであることです。

おそらく元々の録音に問題があるのでしょう、
かなり聴きやすく調整されていますが、

フルトヴェングラーにこだわりのある方でなければ、
あえて選ぶ必要のない音質かもしれません。


とはいえ、「田園」も「運命」も、
一度聴き出すと止まらない独特の面白さがあることも事実です。

どちらも、
今の私はより落ちついた、
どっしりした深みのある演奏のほうが好みですが、

これだけテンポを揺らしながら、
決して空虚な感じがせずに最後まで
感慨をもって聴き通せるのは、
さすがです。

音質からいえば、
「運命」は多少情熱が空回りしているように聴こえ、
「田園」のほうが、貧弱ながら不思議と心にひっかかる、
興味深い演奏でした。


ほぼひと月
聴いておりましたので、
CD2枚目に進みます。



※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】


2012年5月19日土曜日

広上淳一指揮&日本フィルの伊福部昭の芸術(1995)その2


伊福部昭の芸術2
響― 伊福部昭 交響楽の世界
1) シンフォニア・タプカーラ(1954/79)
2) 管弦楽のための「日本組曲」(1934/91)

広上淳一指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
録音:1995年8月22-24日、29-31日、9月1日
東京、セシオン杉並ホール
【KICC176】

広上淳一さんの指揮する
日本フィルハーモニー交響楽団の演奏による

伊福部昭のシリーズ2枚目は、
「シンフォニア・タプカーラ」と「日本組曲」の組み合わせです。


「シンフォニア・タプカーラ」は、
大正3年(1914)生まれの伊福部さんが、

昭和29年(1954)、
40歳のときに作曲、初演された唯一の交響曲です。

初演後 改訂が加えられ、
25年後の昭和54年(1979)に改訂稿が完成しています。


伊福部さんの管弦楽曲の中で、
1曲だけ挙げるのなら、私はこれを挙げます。

演奏は他にも優れたものはありますが、
セッションで、すべてがよく聴き取れるように、
ほどよいバランスで収録されている中で、

十分に熱さも感じ取れる演奏なので、
まず聴いておくべき録音だと思います。

叙情的な部分での健闘が光ります。


管弦楽のための「日本組曲」は、
昭和8年(1933)、19歳のときに作曲された「ピアノ組曲」を、
平成3年(1991)に管弦楽に編曲したものです。

日本の素材がそのままシンプルに生かされているからか、
以前は聴いていて恥ずかしいような気がしていたのですが、

年齢を重ねてきたからか、
今回は素直に楽しむことができました。


先に取り上げた小林研一郎さんと新響との演奏が、
今ひとつうまくオケを鳴らせていない感じだったのですが、

これは万全です。
良いバランスで、曲そのものを楽しむことができました。

ただし、とてもシンプルに聴こえる曲なので、
ライブでうまく聴かせるのは難しいのかもしれません。


※作品の成立については、CD解説
(伊福部昭「自作を語る」、片山素秀「曲目解説」)を参照しました。

2012年5月5日土曜日

柳家小三治12 落語名人会36 「宗論・出来心」(1988.8)

久しぶりに柳家小三治さんの落語CDを聴きました。
落語名人会のシリーズ12枚目です。


落語名人会36
柳家小三治〈12〉

「宗論」(しゅうろん)
「出来心」(できごころ)
(1988年8月31日 鈴本演芸場 第12回柳家小三治独演会)

〔お囃子〕樋口ひさ/小口けい
〔ディレクター〕京須偕充
【SONY RECORDS/SRCL-3559】


「宗論」と「出来心」
どちらも他の口演を聴いたことがありません。
聴いてすぐに魅せられることはなかったのですが、
聴きこむうちに、好きになって来ました。


「宗論」は若者が一時期、
宗教かぶれになるようなところを風刺して、
ニヤリとさせられる軽めのお笑いです。

はじめ聴いたときは、
宗教を笑う、という発想が馴染めず、
何が良いのかわからなかったのですが、

動画で小三治さんが
「宗論」を演ずるのをみて、
ああそうかと納得してからは、

軽めのお笑いとして、
楽しめるようになりました。

もともとは
「仏教内の宗論」のお話だったそうなので、
そちらでも聴いてみたいと思いました。
(京須偕充氏のCD解説を参照)


「出来心」は、
下手な泥棒と親分の掛け合いの場面、
改めて泥棒を試みる場面、
「花色木綿」の掛け合いの場面と、

長めの話が三つつながっているので、
間延びする感も若干ありました。

ようやく話しの流れがつかめて来て、
それなりに楽しめるようになって来ました。


この1枚は、
正直なところ話自体が
それほど魅力的には思えませんでした。

ただ小三治さんの色んなネタが聴きたい
一ファンとしてはそれなりに楽しめました。


※柳家小三治
 「宗論」1988-8/31◯
 「出来心」1988-8/31◯

2012年5月3日木曜日

広上淳一指揮&日本フィルの伊福部昭の芸術(1995)その1


伊福部昭の芸術1
譚― 伊福部昭 初期管弦楽
1) 日本狂詩曲(1935)
2) 土俗的三連画(1937)
3) 交響譚詩(1943)

広上淳一指揮
日本フィルハーモニー交響楽団
録音:1995年8月22-24日、29-31日、9月1日
東京、セシオン杉並ホール
【KICC175】

昔の記憶では、
セッション録音で
伊福部氏の作品を聴いたのが初めてだったからか、
若干、違和感を感じていたはずなのですが、

今回聴きなおしてみると、
広上淳一氏と日本フィルのコンビが、
予想以上によい仕事をしていたことに気がつきました。


楽譜の音がよいバランスで
すべて聴こえて来る心地よさはもちろんですが、

セッション録音としては
めったにないレベルの「熱さ」も感じられ、
これらの曲の模範的演奏といってよい出来だと思います。


1曲目の「日本狂詩曲」は、
大正3年(1914)生まれの伊福部さんが、

昭和10年(1935)、21歳のときに完成し、
アメリカで、チェレプニン賞第1位を受賞した
大管弦楽のための作品です。

伊福部さんの出世作です。

叙情あふれる「夜曲」と、リズムが躍動する「祭」の2曲が
よい対照をなしており、実際、魅力的な作品だと思います。


2曲目の「土俗的三連画」は、
昭和12年(1937)、23歳のときに完成した
室内オーケストラのための作品です。

良くまとまっている楽しい作品ですが、
めったにコンサートで取り上げられることはないようです。
斬新でありながらしみじみと胸にしみる名曲です。


3曲目の「交響譚詩」は、
昭和18年(1943)、29歳のときに完成した管弦楽曲です。
前年に亡くなったお兄さんへの追悼曲として作られました。

伊福部さんの作品で、
私が最初に引きこまれたのが、
この「交響譚詩」と「シンフォニア・タプカーラ」です。

今回の録音のように、
細部まで丁寧に、よく聴き取れるように演奏されても、
やはり良く出来た名曲だと思いました。