ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
(1886-1/25生 1954-11/30没)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集
4枚目を聴きました。
Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) ブルックナー:交響曲第8番ハ短調WAB108
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1949年3月15日
ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD4
CD4枚目には、
1949年3月13・14・15日に行われた
ベルリン・フィルの演奏会から、
最終日(15日)の演奏が収録されています。
演奏されたのはブラ8のみ1曲です。
ヨーゼフ・アントン・ブルックナー
(1824年9月生 1896年10月没)の交響曲第8番は、
ブルックナーが68歳のとき、
1892年12月に初演された交響曲です。
曲自体は5年前の1887年夏に、
第1稿がいったん完成していたものの、
演奏を拒否されたため、全面改訂が施され、
1890年に第2稿が完成しました。
楽譜の出版は、
初演と同年、1892年に行われておりますが、
これは第2稿によりつつ、
ブルックナーの弟子シャルクが勝手に改訂を加えた
「改訂版」であったため、
あらためて1939年に、
ハースが校訂した第2稿の「原典版」が出版されました。
詳しくは調べておりませんが、
フルトヴェングラーは「改訂版」も適宜参照しながら、
「原典版」で演奏しているそうです。
(宇野功芳『フルトヴェングラーの全名演名盤』
講談社+α文庫、269頁参照)
さらにこの後1955年には、
ノヴァークが校訂した第2稿の楽譜が出版され、
1972年には、
ノヴァークが校訂した第1稿の楽譜も出版されておりますが、
この演奏会が行われたのは1949年ですから、
ノヴァーク版はまだ見られなかったことになります。
さて演奏ですが、意外に良かったです。
意外にというのは、
これまでブルックナーは、フルトヴェングラーの
指揮スタイルとは相容れないような印象があって、
まったく聴いて来なかったからですが、
聴いてみると、意外に良くて驚きました。
ところどころ、
曲想に合わせてテンポを急変させるのが、
かえってスケールを小さくさせていて、
その点は短所だと思いますが、
オケの響きそのものは、ブルックナー独特の、
身を任せたくなるような心地良さ、奥深さがあって、
かなり面白く、全体を聴き通すことができました。
私にとっては、間延びした感のある
クレンペラーやチェリビダッケよりは
遥かに好きな演奏です。
一気呵成に、勢いで聴かせるところのある、
マタチッチよりも好きかもしれません。
スタイルとしては、
小林研一郎&チェコ・フィルの演奏に似たものを感じましたが、
チェコ・フィルの演奏のほうが、オケの響きは「軽め」です。
もう十年くらい長生きしていたら、
ベートーヴェンの「田園」で成し遂げたように、
テンポをほとんど動かさないで、
オケの響きの変化だけで全体を感動的に聴かせてしまう、
奇跡的なブルックナーを聴かせてくれたのではないか、
と想像するのも一興です。
最後に、
そうした感想を抱けたのは、
録音がたいへんすばらしかったからです。
適度な残響も聴き取れる、
モノラルの最上レベルの音質なので、
下手なステレオより心地良く聴くことが出来ました。
では次に進みましょう。
※曲の成立年代、版の問題については、
Wikipedia 「交響曲第8番(ブルックナー)」の項目を参照しました。
※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】
0 件のコメント:
コメントを投稿