17枚目は「死神(しにがみ)」を聴きました。
小三治52歳の時(1992.5)の口演です。
この1枚だけ手もとになかったので、
前の「鼠穴(ねずみあな)」からは
ずいぶん時間がたってしまいました。
落語名人会41
柳家小三治17
「死神(しにがみ)」
録音:1992年5月31日、鈴本演芸場
第26回柳家小三治独演会
〔お囃子〕植田ひさ/小口けい
【SRCL-3613】
「死神(しにがみ)」は、
三遊亭圓朝(えんちょう 1839-1900)の作です。
グリム童話に似た噺(「死神の名付け親」)があるので、
西欧の死神についての寓話を、圓朝が翻案したものと推測されています。
京須偕充(きょうすともみつ 1942- )氏のCD解説によると、
圓朝作の「死神」は、
弟子の初代三遊亭圓左(えんさ 1848-1909)と
初代三遊亭圓遊(えんゆう 1850-1907)に伝えられました。
圓左のは原作通りでしたが、
圓遊のは「陽気な滑稽噺」に改作されていたそうです。
圓朝―圓左系の正統な「死神」は、
2代目三遊亭金馬(きんば 1868-1926)に伝えられ、
金馬を経由して、
6代目三遊亭圓生(えんしょう 1900-1979)に伝えられました。
「圓生在世時代、『死神』といえばこの人のものという印象が圧倒的だった」そうです。
京須氏は明記していませんが、
10代目柳家小三治の「死神」は、
6代目三遊亭圓生の正統路線を引き継ぎつつ、
独自の解釈を加えたものと言えるようです。
***
さて、小三治さんの「死神」は、
もう少し若いころのCDを聴いて、
その完成度の高さに驚き、
小三治さんのファンになるきっかけになった演目でもあるのですが、
このCDは、
そのときの口演に比べると、
珍しく流れが悪いというか、
全体的に間の悪いところがあって、
畳みかけるような切れ味の鋭さが陰をひそめており、
意外な感がしました。
凡百の口演に比べれば
ふつうにおもしろく、楽しめることは確かなのですが、
もっとすごいのを知っているだけに、
多少もどかしさが残りました。
ただしいつもいつも
超絶名演が成し遂げられるはずはないので、
小三治さんのこの時期の「日常」を切り取ってある、
といえるのかもしれません。
※Wikipediaの「三遊亭圓朝」「死神(落語)」「死神の名付け親」「三遊亭圓左」「三遊亭圓遊」「三遊亭金馬(2代目)」「三遊亭圓生(6代目)」の各項目を参照。
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