エルンスト・ヘフリガー
(Ernst Haefliger 1919.7-2007.3)の歌唱、
スイス出身の鍵盤楽器奏者
イェルク・エーヴァルト・デーラー
(Jörg Ewald Dähler 1933.3-)の伴奏で、
オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert 1797.1-1828.11)の
歌曲集《冬の旅》を聴きました。
ヘフリガー61歳の時(1980.9)の録音です。
フランツ・シューベルト
歌曲集《冬の旅》作品89 D911
~ヴィルヘルム・ミュラーの詩による連作歌曲
1) おやすみ
2) 風見
3) 凍った涙
4) 氷結
5) 菩提樹
6) 雪どけの水流
7) 川の上で
8) かえりみ
9) 鬼火
10) 休息
11) 春の夢
12) 孤独
13) 郵便馬車
14) 白い頭
15) 鴉
16) 最後の希望
17) 村にて
18) 風の朝
19) 幻
20) 道しるべ
21) 宿屋
22) 勇気を!
23) 幻日
24) ライアー回し
エルンスト・ヘフリガー(テノール)
イェルク・エーヴァルト・デーラー(ハンマーフリューゲル)
録音:1980年9月、ザーネン教会、スイス
【KICC3709】2015年10月発売
歌曲集《冬の旅》は、
シューベルトの3大歌曲集のうち2番目のものです。
第1部12曲、第2部12曲の計24曲からなりますが、
共に30歳の時(第1部=1827.2/第2部=1827.10)に作曲されました。
シューベルトは翌年(1828.11)、
31歳の時に亡くなっていますが、
第1部は生前の1828年1月、第2部は没後の同年12月に出版されています。
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《冬の旅》は少し前に、
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
(1925.5-2012.5)が40歳の時(1965年5月録音)に、
イェルク・デムスの伴奏で歌ったのを聴き込んでいたので、
しばらくは
ディースカウとの違いの方に耳が行きました。
ヘフリガーはテノールで、
ディースカウはバリトンということもありますが、
61歳の年齢を感じさせない軽めの若々しい歌声で、
ディースカウほど精神的に追いつめられる感じのない、
聴きやすい《冬の旅》に仕上がっていました。
その分、
ディースカウほどの完成度は望めませんし、
ディースカウのような凄みや深さにも欠けているのですが、
シューベルトが30歳の時に、
テノールのために作った歌集であることを思えば、
若々しくおおらかな、
でもほど良い品も感じられる
ヘフリガーの歌唱のほうが、
等身大の青年シューベルトの実像に近いようにも感じられました。
どちらか一枚を選ぶのであれば、
やはりより深いディースカウの方を手に取ると思いますが、
別の側面から、
《冬の旅》の魅力に気がつかせてくれる
ヘフリガーのこのCDも、
私にとって欠かせない一枚になりそうです。
ディースカウの《冬の旅》が、
深刻過ぎて聴きづらく感じられる場合は、
特にお薦めです。
※Wikipediaの「エルンスト・ヘフリガー」「Jörg Ewald Dähler 」「フランツ・シューベルト」「冬の旅」を参照。