2015年12月14日月曜日

ヤンドーのハイドン:ピアノ・ソナタ全集 その10 (1982年録音)

ハンガリーのピアニスト
イエネ・ヤンドー(1952 - )さんの
ハイドン:ピアノ・ソナタ全集

10枚目は、
ウィーン原典版(旧版)の通し番号で、
第59-62番のソナタ4曲を聴きました。

確かまだ小品や変奏曲を収めた1枚が残っていますが、
ソナタはこれで最後です。


フランツ・ヨセフ・ハイドン(1732.3 - 1809.5)
 1) ピアノ・ソナタ 第59番 変ホ長調 作品66 Hob.XVI:49
 2) ピアノ・ソナタ 第60番 ハ長調 作品79 Hob.XVI:50
 3) ピアノ・ソナタ 第61番 ニ長調 作品93 Hob.XVI:51
 4) ピアノ・ソナタ 第62番 変ホ長調 作品82 Hob.XVI:52

イエネ・ヤンドー(ピアノ)
録音:1992年2月25-27日、ブダベスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.550657】

ハイドンのピアノ・ソナタ
最後の4曲が収録されています。

最後の3曲は
ハイドン2度目のイギリス滞在中、
1794年か1795年(62歳か63歳)のときに
ロンドンの女流ピアニスト
テレーゼ・ジャンセン・バルトロッツィのために
作曲されたことがわかっています。

ただしこの3曲がそれぞれ、
どういう順番で作曲されたのかはわかっていません。

ウィーン原典版(旧版)は
ホーボーケン番号と同じ順番で、
 Hob.XVI:50 第60番
 Hob.XVI:51 第61番
 Hob.XVI:52 第62番
となっていますが、

これを出版順に並べると、
 Hob.XVI:52 第62番…1798年出版(67歳)
 Hob.XVI:50 第60番…1801年出版(69歳)
 Hob.XVI:51 第61番…1805年出版(73歳)

作品番号順に並べると、
 作品79 Hob.XVI:50 第60番…1801年出版(69歳)
 作品82 Hob.XVI:52 第62番…1798年出版(67歳)
 作品93 Hob.XVI:51 第61番…1805年出版(73歳)
となっていて、

ホーボーケン番号の
Hob.XVI:50-52 の並びは、
出版順にも作品番号順にもよらないことがわかります。

出版順と作品番号順に従えば、
少なくとも Hob.XVI:51 第61番 は、
いちばん最後に置かれるべきだと思うのですが、

こちらは、2楽章からなる
ゆったりした感じの5分ほどの小品なので、
ソナタ全集の最後に配置するのを躊躇したのかもしれません。

また、Hob.XVI:50-52 を一連の3曲とみた場合、
 Hob.XVI:50 第60番 ハ長調
 Hob.XVI:51 第61番 ニ長調
 Hob.XVI:52 第62番 変ホ長調
という並び方(ハ→ニ→ホ)は、
一番聴き映えのする配置ではあるので、
内容的には違和感のない並べ方のように思われました。


この3曲をもう数年さかのぼって、
ハイドン59歳(1791)に出版されたのが、

 作品66 Hob.XVI:49 第59番 変ホ長調

でした。3楽章からなる充実した作品で、
個人的には最後の3曲よりもよく出来ているように感じました。


  ***

ハイドンのピアノ・ソナタ、
ラスト数曲だからといって、
ベートーヴェンやシューベルトのように、
何かを突き抜けた崇高な境地に達するわけではなく、

職業作曲家の熟練の技ともいえる、
明るく楽しい軽妙な作品が最後まで続いていました。

全曲を聴いてきて、
どちらかといえば、
コンサートで改まって聴くよりは、

一人で仕事をしたり、勉強したり、
何かしながら聴くのにぴったりの、
CD向きの音楽だと思いました。

嫌味のない明るさで、
こちらの思考を邪魔することなく、
気持ちを前向きな方向へ引っぱってくれる音楽は、
ハイドンならではだと思います。

ヤンドーさんは、
ハイドンのほかにも、
モーツァルトとベートーヴェンと
シューベルトのソナタ全集を録音していますが、

彼の個性に最も合っているのは、
ハイドンだと思います。

ちょっとゆっくり聴きすぎて、
全体像が見えにくくなってしまったようにも思うので、
このあたりでもう一度、
CD10枚聴き直してから、
全体をまとめ直したいと思っています。



※中野博司著『ハイドン復活』(春秋社、1995年11月)参照。

※Wikipediaの
 「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
 「ハイドンのピアノソナタ一覧」
 「ハイドンのピアノ曲一覧」
 「ホーボーケン番号」の各項目を参照。

※ピティナ・ピアノ曲事典の「ハイドン」を参照。

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