2017年1月23日月曜日

インバル&東京都響のマーラー:交響曲第5番嬰ハ短調(1995年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する
東京都交響楽団の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第5番嬰ハ短調を聴きました。

指揮者59歳の時(1995年4月)の録音です

こちらは近年、
2012年から2014年にかけて行われた
「インバル=都響/新・マーラー・ツィクルス」
から遡ること18年、

1994年から96年にかけて行われた
「インバル=都響/マーラー・サイクル」
の中から、第5番のみをCD化したものです。

「都響創立40周年記念シリーズ」と銘打って発売された中の1枚で、
かなりの高評価だったことから購入したものの、
あまり真面目に聴かないで、棚に置いてありました。


マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

エリアフ・インバル指揮
東京都交響楽団
福田善亮(トランペット)
笠松長久(ホルン)
録音:1995年4月15日、サントリーホール〔エリアフ・インバル/都響/マーラー・サイクル 1994-96 第Ⅱ期〕
【FOCD9244】2005年9月発売。

交響曲第5番嬰ハ短調は、
マーラー44歳の時(1904年10月)に初演された作品です


最近まとめて聴き直した中で、
山田一雄&N響と同格で感動したのは、
このインバル&都響の95年録音です

バーンスタインのように、
オケが崩壊するレベルでの無茶はしないのですが、
ブロムシュテットのように、
平穏無事に進行していく演奏でもなくて、

自然な流れを重視しつつも、
十分に熱い想いの伝わって来る情熱的な演奏で、
全体的な見通しもよく、通して聴いて、
とても感動しました。

インバルって、
こんなに熱い指揮者だったのかと、
目から鱗が落ちる演奏でした。

インバルのマーラーは、
 フランクフルト放送交響楽団との旧全集、
 東京都交響楽団の2度目のチクルスを録音した新全集
が有名ですが、

個人的に、
インバルの演奏でそこまで感動した記憶がなかったので、
あまり真剣には聴いて来ませんでした。

調べてみると、
フランクフルト放送交響楽団との旧全集
が、音の良い[Blu-spec CD]で1枚1,200円で手に入るようなので、
1枚ずつ購入して、聴いてみようと思います。

2017年1月16日月曜日

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルのマーラー:交響曲第4番(1960年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン(1918.8-1990.10)が、
ニューヨーク・フィルを指揮して録音した

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第4番嬰ト長調を聴きました。

指揮者41歳の時(1960年2月)の録音です


CD6
マーラー:交響曲第4番ト長調

 レリ・グリスト(ソプラノ)
 レナード・バーンスタイン(指揮)
 ニューヨーク・フィルハーモニック
 録音:1960年2月1日、ニューヨーク、セント・ジョージ・ホテル
【Sony Classical 88697943332】2012年6月発売。

交響曲第4番ト長調は、
マーラー41歳の時(1901年11月)に初演された作品です


先月、バーンスタインの
マーラー:交響曲全集(旧録音)から第5番を聴きました。

2年程前に、
第1番から第3番までは聴いて、
ブログにもアップしていたので、
この機会に、第4番も聴いてみることにしました。

宇野功芳氏の著書で、
バーンスタインのマラ4(旧盤)が名演であることは、
かなり前から知っていたのですが、
実際に聴く機会はなく、今回初めて聴くことになりました。

その結果、
マーラーの分裂的な気質をそのままに、
おもちゃ箱をひっくり返したような、
病的なまでに細部を拡大した演奏で、

若いバーンスタインが、
やりたいことをやり尽くした録音のように感じました。

落ち着かない演奏ではあるので、
正直なところそれほど感動はしないのですが、
ギリギリのところで全体が統一されているようにも聴こえるので、
私にはアリな、面白い演奏だと思いました。

かなりユニークに聴こえるので、
第1に推すつもりはありませんが、
やりたい放題のバーンスタインの個性が良い方に出た、
好演であることは確かだと思います。

2017年1月12日木曜日

松坂屋美術館の「ユトリロ回顧展」

去る1月3日(火)、
正月休みの最終日に、
中区栄の松坂屋美術館まで、

「パリの街角を描いた画家として、
 日本で最も人気のある画家のひとり」である
モーリス・ユトリロ(Maurice Utrillo, 1883.12-1955.11)
回顧展〔ユトリロ回顧展〕を観てきました(チラシより引用)。

 ※日程 2017年1月2日(月)~2月20日(月) 会期中無休
 ※主催 松坂屋美術館、日本経済新聞社、テレビ愛知、
 ※後援 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
 ※企画協力 IS ART INC.

 ◎「姫路展」(姫路市立美術館)
  日程:2017年4月8日~7月2日
  主催:姫路市立美術館、神戸新聞社


展示の図録〔ごあいさつ〕によると、

「本展は、人生のほぼすべてをユトリロの研究に捧げ、モーリス・ユトリロ美術館の館長やモーリス・ユトリロ協会の会長を歴任された、ジャン・ファブリス氏へ捧げる展覧会となります。ファブリス氏は昨年末、惜しまれつつも84歳で永眠されました。

 そしてこの展覧会は、新生モーリス・ユトリロ協会のセドリック・パイエ氏を監修者とし、ユトリロの初期から晩年までの代表作を国内外から一堂に集め展示することになりました。」

と記してありました。

ユトリロの絵画に出会ったのは、
美術館に通うようになった学生の頃だったと思いますが、
いつが初めだったのかはよく覚えていません。

ユトリロに独特な、薄曇りの空を背景に、
大きな建物を中心に据えたシンプルな絵画は、

孤独で寂しい雰囲気が醸し出されていて、
それなりに興味深くはあったものの、
色彩豊かな明るい絵のほうを好んだ
20代前半の私の心をとらえるには至りませんでした。

今回70点をこえるユトリロの絵画をまとめて観て、
ユトリロの寂しい風景画の中にも、
独特な暖かさがあることに気がつきました。

個人的には、
建物=人工物(冷たいもの)というイメージだったので、
どうしてこんなに建物ばかり描いたのか不思議だったのですが、

10代後半からアルコール依存症になり、
対人関係等にさまざまな問題を抱えていた彼の、
孤独な心の取りどころ(安定の場)が、
作品の真ん中に大きく描かれた建物だったのだろうなと感じました。

日常生活では得られなかった
心の安定の場として彼の描く建物をみると、
そのどっしりとした暖かな雰囲気が理解できるように思われました。

生活面での困難さを考えると、
彼の絵の中に、
精神的な歪みや異常性を感じさせるところが
少しも見当たらないのも驚きでした。

展示の最後に、
母親シュザンヌ・ヴァラドン
(Suzanne Valadon, 1865-1938)の絵画3点と、
友人でのちに母親の夫になったアンドレ・ユッテル
(André Utter, 1886-1948)の絵画5点が掲げられていたのですが、

ユトリロよりもこの2人の作品のほうが、
観ていてよっぽど不快な気持ちにさせられました。


  ***

全体を観て、ユトリロの作品の
どれが特に優れているのだろうと考えたのですが、

好感触の作品がずらりと並んでいるからか、
どれかが特別に良いといった感想には至りませんでした。

そばにいたら困ると思いますが、
パリの建物を描くことが大好きだった
アル中のおじさんの絵画をまずは楽しんだら良いのだろうと思いました。

生涯に6,000点もの作品を描いたそうなので、
また次に機会があれば、ユトリロのほかの作品も観てみたいです。

大ファンとまではいえませんが、
ゴッホやゴーギャンと比べたら好きなタイプの作品が多く、
今回の展示で、ファンになりかけました。



にほんブログ村 美術ブログ 美術館・アートミュージアムへ

2017年1月2日月曜日

ミュンヒンガー&ウィーン・フィルのモーツァルト:協奏曲集K299(K297c)&K622

ドイツの指揮者
カール・ミュンヒンガー
(Karl Münchinger, 1915.5-1990.3)の指揮する
オーストリアのオーケストラ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756.1-1791.12)の
フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299 (K.297c)
クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
を聴きました。

独奏はそれぞれウィーン・フィルのメンバーが担当しており、

フルート独奏はウェルナー・トリップ
(Werner Tripp, 1930.4-2003.12)、
ハープ独奏はフーベルト・イェリネク
(Hubert Jellinek, 1909- )、
クラリネット独奏はアルフレート・プリンツ
(Alfred Prinz, 1930.6-2014.9)、

の3名が担当しています。


モーツァルト
①フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299(K.297c)
 ウェルナー・トリップ(フルート)
 フーベルト・イェルネク(ハープ)

②クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
 アルフレート・プリンツ(クラリネット)
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 カール・ミュンヒンガー(指揮)
録音:1962年9月、ウィーン、ゾフィエンザール
【PCD-429】2015年7月発売

フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299(K.297c) は、
モーツァルト22歳の時(1778年4月)に作曲されました

クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 は、
35歳の時(1791年9-11月)に作曲されました

モーツァルトは同年12月に亡くなっているので、
クラリネット協奏曲は、
亡くなる直前に作曲された作品の一つということになります。


   ***

学生の頃に、
宇野功芳氏の著書で存在を知った有名な録音ですが、
そのころ出ていた音の悪い廉価盤CDで聴いて、
何が良いのかわからなかった演奏です。

今回、廉価盤なのに意外な音の良さで驚かされている
キープ株式会社さんのシリーズで聴き直してみたところ、
これが大正解。

雑味を含んだ
ウィーン・フィル独特のざらざらした音色に、
独奏楽器がくっきりと浮かび上がって、
初めてその真価を知ることが出来ました。

解釈はウィーンの流儀に従ったオーソドックスなものですが、

音像がくっきり鮮やかになることで、
モーツァルトの典雅な世界が確信をもって雰囲気が広がって行き、
感動を新たにすることができました。

個人的に、
フルートとハープのための協奏曲には
さほどこだわりがないのですが、
この録音なら聴ける、と初めて思いました。

私にとって大ヒットだったのは、
プリンツ独奏のクラリネット協奏曲のほうで、

プリンツはこの録音の10年後(1972年9月)に
ベームの指揮するウィーン・フィルと再録音しているのですが、

分厚いオケの響きにプリンツのソロが埋もれがちで、
もどかしい思いをする新録音となっていました。

まさか旧録音のほうが、
これほど新鮮な印象の快演になっているとは思わずに、
ベームとの録音のほうをいろいろな復刻CDで聴き比べていました。

まだまだ聴き逃している名演は多いはずですが、
今回のプリンツ独奏による旧録音は、
十分に満足できるクラリネット協奏曲の演奏となりました。

ここにさらに、
晩年のモーツァルト特有の枯れた味わいが加われば
鬼に金棒なのでしょうが、

それは今後の楽しみに残しておくことにします。