去る1月3日(火)、
正月休みの最終日に、
中区栄の松坂屋美術館まで、
「パリの街角を描いた画家として、
日本で最も人気のある画家のひとり」である
モーリス・ユトリロ(Maurice Utrillo, 1883.12-1955.11)の
回顧展〔ユトリロ回顧展〕を観てきました(チラシより引用)。
※日程 2017年1月2日(月)~2月20日(月) 会期中無休
※主催 松坂屋美術館、日本経済新聞社、テレビ愛知、
※後援 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
※企画協力 IS ART INC.
◎「姫路展」(姫路市立美術館)
日程:2017年4月8日~7月2日
主催:姫路市立美術館、神戸新聞社
展示の図録〔ごあいさつ〕によると、
「本展は、人生のほぼすべてをユトリロの研究に捧げ、モーリス・ユトリロ美術館の館長やモーリス・ユトリロ協会の会長を歴任された、ジャン・ファブリス氏へ捧げる展覧会となります。ファブリス氏は昨年末、惜しまれつつも84歳で永眠されました。
そしてこの展覧会は、新生モーリス・ユトリロ協会のセドリック・パイエ氏を監修者とし、ユトリロの初期から晩年までの代表作を国内外から一堂に集め展示することになりました。」
と記してありました。
ユトリロの絵画に出会ったのは、
美術館に通うようになった学生の頃だったと思いますが、
いつが初めだったのかはよく覚えていません。
ユトリロに独特な、薄曇りの空を背景に、
大きな建物を中心に据えたシンプルな絵画は、
孤独で寂しい雰囲気が醸し出されていて、
それなりに興味深くはあったものの、
色彩豊かな明るい絵のほうを好んだ
20代前半の私の心をとらえるには至りませんでした。
今回70点をこえるユトリロの絵画をまとめて観て、
ユトリロの寂しい風景画の中にも、
独特な暖かさがあることに気がつきました。
個人的には、
建物=人工物(冷たいもの)というイメージだったので、
どうしてこんなに建物ばかり描いたのか不思議だったのですが、
10代後半からアルコール依存症になり、
対人関係等にさまざまな問題を抱えていた彼の、
孤独な心の取りどころ(安定の場)が、
作品の真ん中に大きく描かれた建物だったのだろうなと感じました。
日常生活では得られなかった
心の安定の場として彼の描く建物をみると、
そのどっしりとした暖かな雰囲気が理解できるように思われました。
生活面での困難さを考えると、
彼の絵の中に、
精神的な歪みや異常性を感じさせるところが
少しも見当たらないのも驚きでした。
展示の最後に、
母親シュザンヌ・ヴァラドン
(Suzanne Valadon, 1865-1938)の絵画3点と、
友人でのちに母親の夫になったアンドレ・ユッテル
(André Utter, 1886-1948)の絵画5点が掲げられていたのですが、
ユトリロよりもこの2人の作品のほうが、
観ていてよっぽど不快な気持ちにさせられました。
***
全体を観て、ユトリロの作品の
どれが特に優れているのだろうと考えたのですが、
好感触の作品がずらりと並んでいるからか、
どれかが特別に良いといった感想には至りませんでした。
そばにいたら困ると思いますが、
パリの建物を描くことが大好きだった
アル中のおじさんの絵画をまずは楽しんだら良いのだろうと思いました。
生涯に6,000点もの作品を描いたそうなので、
また次に機会があれば、ユトリロのほかの作品も観てみたいです。
大ファンとまではいえませんが、
ゴッホやゴーギャンと比べたら好きなタイプの作品が多く、
今回の展示で、ファンになりかけました。
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