2017年4月24日月曜日

ヘフリガーのシューベルト:歌曲集《白鳥の旅》(1985年録音)

スイス出身のテノール歌手
エルンスト・ヘフリガー
(Ernst Haefliger 1919.7-2007.3)の歌唱、

スイス出身の鍵盤楽器奏者
イェルク・エーヴァルト・デーラー
(Jörg Ewald Dähler 1933.3-)の伴奏で、

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert 1797.1-1828.11)の
歌曲集《白鳥の歌》を聴きました。

ヘフリガー65歳の時(1985年4月)の録音です


フランツ・シューベルト
歌曲集《白鳥の歌》D957

 1) 愛のたより
 2) 兵士の予感
 3) 春のあこがれ
 4) セレナード
 5) わが宿
 6) 遠い国で
 7) 別れ
 8) アトラス
 9) 彼女の絵姿
10) 漁師の娘
11) 都会
12) 海べで
13) 影法師
14) はとの使い

エルンスト・ヘフリガー(テノール)
イェルク・エーヴァルト・デーラー(ハンマーフリューゲル)
録音:1980年9月、ザーネン教会、スイス
【KICC3709】2015年10月発売

歌曲集《白鳥の歌》は、
シューベルトの3大歌曲集のうち最後のものです

ただし前作《冬の旅》が、
31歳で亡くなる(1828年11月)前後に出版されていたことから推察されるように、

 ※《冬の旅》第1部は生前の1828年1月、
  《冬の旅》第2部は没後の同年12月に出版。

シューベルト本人がまとめた連作歌曲集ではありません。

ウィーンの楽譜出版屋
ハスリンガー(Tobias Haskinger, 1787-1842)が、
シューベルトの没後半年をへた1829年5月に

シューベルトが前年(1828年)8月に作曲した13曲の歌曲と、
10月に作曲した最後の歌曲〈はとの使い〉をひとまとめにして、
《白鳥の歌》という題名で出版したものだそうです。

※音楽之友社編『作曲家別名曲解説ライブラリー⑰ シューベルト』(音楽之友社、1994年11月)301-308頁参照。


 ***

ヘフリガーによる
シューベルトの三大歌曲集、

《美しき水車小屋の娘》
《冬の旅》と順番に聴いて、

同じような感動が味わえるかと思って
《白鳥の歌》を聴いてみたところ、

統一感のない別々の曲が並んでいるだけだったので、
違和感が強く、がっかりして調べてみると、
そもそも連作歌曲集ではないことを知りました。

シューベルト本人が編集したわけではないので、
前の2つの歌曲集と比べると、
全体としての感動はかなり劣るのですが、

個々の作品が劣っているわけではないので、
しばらく聴き続けているとそれなりに馴染んで来て、
まずまず楽しめるようになって来ました。

ヘフリガーの歌唱も、
《美しき水車小屋の娘》や
《冬の旅》と同じ高い水準を保っていて、
60代ヘフリガーの若々しい歌声に、
心洗われる時間を過ごすことができました。

曲順を入れ換えたりすることで、
より演奏効果が上がるようにも思うので、
そんな録音はないか探してみると、

ペーター・シュライヤーと
アンドラーシュ・シフのコンビによる
《白鳥の歌》では、必要最小限度、
曲順の変更が行われているようなので、
近々手に入れて聴いてみようと思います。

2017年4月17日月曜日

バーンスタイン&ニューヨーク・フィルのマーラー:交響曲第7番《夜の歌》(1960年録音)

アメリカ合衆国の指揮者
レナード・バーンスタイン(1918.8-1990.10)が、
ニューヨーク・フィルを指揮して録音した

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第7番《夜の歌》を聴きました。

バーンスタイン47歳の時(1965年12月)の録音です


CD10
マーラー:交響曲第7番ホ短調《夜の歌》

レナード・バーンスタイン(指揮)
ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1965年12月14・15日、ニューヨーク、フィルハーモニー・ホール(現エイヴリー・フィッシャー・ホール)
【Sony Classical 88697943332】2012年6月発売。

第7番《夜の歌》は、
マーラー48歳の時(1908年9月)に初演された作品です


バーンスタイン&ニューヨーク・フィルによる
マーラーの交響曲全集、
第1番から第5番まで聴いて来ましたが、

期待の大きさから考えると、
多少肩透かしにあったような演奏が続いていました。

そこでこの第7番《夜の歌》も、
それほど期待はしていなかったのですが、
聴いてびっくりの名演でした。

斬新で実験的な要素が多い曲のせいか、
誰の演奏で聴いてもそこまで感動することはなかったのですが、
さすがバーンスタイン、

少し速めのテンポで、
すべての要素を有機的につなぎあわせ、
全体を生き生きとまとめ上げてあり、

この難解な交響曲を初めてわかりやすく、
感動的に聴き終えることができました。

録音も、
インバルの自然な音質とは違うのですが、
セッション録音の長所を十分に活かした、
どこも明晰に聴き取れる耳に心地よい録音で、
1960年代のものとして最上レベルだと思います。

実際のコンサートで、
これと同じ響きで聴こえることはなかったはずなので、
その点考慮する必要はありますが、

単純に聴こえてくる音から判断するなら、
私の中での《夜の歌》のベスト演奏となりそうです。

2017年4月10日月曜日

テイト&イギリス室内管のモーツァルト:交響曲全集 その1(1993・95年録音)

イギリスの指揮者
ジェフリー・テイト
(Jeffrey Tate, 1943年4月- )の指揮する
イギリス室内管弦楽団の演奏で、

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月-91年12月)の
交響曲全集(全12枚)の1枚目を聴きました。

テイト50・52歳の時(1993・95年)の録音です


モーツァルト(1756–1791)
Disc1
①交響曲 第1番 変ホ長調 K.16
②交響曲 第4番 ニ長調 K.19
③交響曲 ヘ長調 K.19a/Anh.223
④交響曲 第5番 変ロ長調 K.22
⑤交響曲 ト長調 K.45a/K.Anh.221「ランバッハ」
⑥交響曲(第43番)ヘ長調 K.76/K.42a

イギリス室内管弦楽団
ジェフリー・テイト(指揮)
録音:1993・95年、ロンドン、アビー・ロード第1スタジオ
【Warner Classics 50999/9/84638/2/4】Disc1

CD1にはモーツァルトが8歳から11歳まで(1876-67年)に作曲された交響曲が収録されていました。

①交響曲 第1番 変ホ長調 K.16 は、
8歳の時(1764年)にロンドンで作曲。

②交響曲 第4番 ニ長調 K.19 は、
9歳の時(1765年)にロンドンで作曲〔異説あり〕。

③交響曲 ヘ長調 K.19a/Anh.223 は、
9歳の時(1765年)にロンドンで作曲〔異説あり〕。
 ※1981年10月にミュンヘンで再発見。

④交響曲 第5番 変ロ長調 K.22 は、
9歳の時(1765年12月)にハーグで作曲。

⑤交響曲 ト長調 K.45a/K.Anh.221「ランバッハ」は、
10歳の時(1766年)にハーグで作曲。
 ※1923年にオーストリアのランバッハで発見。

⑥交響曲(第43番) ヘ長調 K.76/K.42a は、
11歳の時(1767年秋)にウィーンで作曲〔異説・偽作説あり〕。


モーツァルトの交響曲では、1879-81年に
ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から刊行された
旧全集の通番(第1-41番)が今でも便宜上使われています。

これは1862年に
ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された
ルートヴィヒ・フォン・ケッヘル
(Ludwig von Köchel, 1800年1月- 1877年6月)による
『モーツァルト全音楽作品の年代別主題別目録 Chronologisch-thematisches Verzeichniss sämmtlicher Tonwerke Wolfgang Amade Mozart's 』にもとづく分類なので、

その後の研究で、偽作であることが確認された作品や、
新たに発見された作品の情報は、当然反映されていません。

このCDには、
旧全集における通番、
第1・4・5番と43番の4曲と、
ほか2曲の計6曲が収録されています。

未収録の第2・3番は偽作と断定されている作品です。
 交響曲第2番 変ロ長調 K.17/K.Anh.C11.02 (偽作)
 交響曲第3番 変ホ長調 K.18/K.Anh.A51 (偽作)


  ***

モーツァルトの交響曲全集を
手に入れたいなと思っていたところ、昔懐かしい
ジェフリー・テイト&イギリス室内管弦楽団のCDが、
12枚組3,000円で出ていたので購入してみました。

モーツァルトの交響曲、
後期の6曲を除くと途端に聴く機会が少なくなるので、
初期の番号のものはほとんど聴いたことがありません。

はじめに数回聴いたときには、
さすがに10歳前後に作られた曲なので、
BGMで聴き流すのにちょうど良い軽めの音楽で、
それほど面白い音楽には思えませんでした。

しかし何回か聴き込んで、
曲の流れが頭に入って来ると、
それで飽きるということもなく、
どんどん魅力が増して来ました。

それでもやはり、後期の6曲のように、
聴けばすぐに何番かわかるほどの個性は感じないのですが、
初期は初期なりの魅力があることを実感できたのは収穫でした。

テイトの紡ぎ出すイギリス室内管弦楽団は、
清楚で明るく鮮やかな印象で、
私が期待するモーツァルト像にぴったりの音色でした。

多少軽めに聴こえるので、
凄い何かに期待すると肩透かしにあうかもしれませんが、
繰り返し聴くに足る、充実した内容の1枚だと思いました。


※海老澤敏/吉田泰輔監修『モーツァルト事典』(東京書籍、1991年11月)の「交響曲」の章を参照。

2017年4月3日月曜日

インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第7番《夜の歌》(1986年録音)

イスラエルの指揮者
エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する

ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、

オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第7番《夜の歌》を聴きました。

指揮者50歳の時(1986年5月)の録音です


グスタフ・マーラー
交響曲第7番《夜の歌》

エリアフ・インバル指揮
フランクフルト放送交響楽団
マルティン・ゲス(テノール・ホルン)

録音:1986年5月14-17日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO73087】2010年8月発売。

交響曲第7番《夜の歌》は、
マーラーが48歳の時(1908年9月)に初演された作品です

音の良さに驚いた[Blu-spec CD]による
インバルのマーラー、
あまり得意でない第7番《夜の歌》を聴いてみました。

実際にホールで聴くのに近い、
ごく自然な響きを基調としながら、
オケの細かいところまで鮮明に聴き取れる、
美しい録音にまず聴き惚れました。

憑依するような過度な演出はないものの、
ザンデルリンクやスウィトナー、
ブロムシュテットのマーラーを聴く時のような、
一定の距離感がある演奏ではなく、

楽譜への深い共感をもとに、
すみずみまで丁寧に音にしている印象で、
オーソドックスな解釈による名演として、
今でも十分お薦めできる録音だと思いました。

全体的に、
真面目に手堅くまとめた演奏であって、
あとほんの少し枠からはみ出して
訴えかけて来る強さもあったらいいなと思うので、

都響との再録音のほうも、
近々聴いてみようと思います。