名古屋市東区にある愛知県美術館まで、
「開館25周年記念
長沢芦雪展
京のエンターテイナー」
を観に行って来ました。
「会期:平成29年10月 6日(金)
~11月19日(日)
会場:愛知県美術館
主催:愛知県美術館、中日新聞社、日本経済新聞社、テレビ愛知」
図録のあいさつをみると、
「江戸時代半ば、十八世紀の京都では、
経済力を蓄え美意識を高めた町人たちに支えられて、
池大雅や与謝蕪村、円山応挙、
伊藤若冲、曾我蕭白といった画家たちが活躍し、
百花繚乱の相を呈していました。」
という書き出しで(※改行はブログ編者による)、
2013年に愛知県美術館で、
「円山応挙展―江戸時代絵画 真の実力者」
を開催したことを踏まえて、
これに続く企画として、
応挙の弟子である長澤芦雪(ながさわろせつ)が
取り上げられたそうです。
「長澤芦雪(1754-1799)は
応挙の門下で若くして高い画力を身につけ、
さらに大胆奇妙な発想によって個性を発揮しました。
芦雪は人を驚かせ楽しませようとするサービス精神に富み、
今日では若冲や蕭白と並んで「奇想」の画家と称されて」
いるそうです(※改行はブログ編者による)。
全体の構成
第1章 氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
第2章 大海を得た魚:南紀で筆を揮う
第3章 芦雪の気質と奇質
第4章 充実と円熟:寛政前・中期
第5章 画境の深化:寛政後期
にしたがって、
それぞれ個人的に感銘を受けた作品を整理しておきます。
***
第1章 氷中の魚:応挙門下に龍の片鱗を現す
からは、
13「花鳥図」1幅
※天明前期(1781-85)頃
14「躑躅群雀図」1幅
※天明年間(1781-89)
の精緻さと素朴さが同居する
温かみのある作品に感銘を受けました。
あと少し奇抜さに流れてはいるものの、
19「牛図」1幅
※天明6年(1786)以前または寛政前期
の力感あふれる黒牛も心に残りました。
なお、興味深かったのは
応挙と芦雪の同じテーマの作品を並べて展示してあったことです。
8「牡丹孔雀図」1幅〔円山応挙作〕
※安永3年(1774)
9「牡丹孔雀図」1幅
※天明前期(1781-85)頃
9だけを観たらそれで十分に美しいのですが、
ほぼ同じ構図の8を並べられると、
師匠である応挙のほうが、
作品から強い緊張感が伝わって来て、
応挙の画家としての技量の確かさを感じさせていました。
同じことは
33「双鹿図屏風」2曲1双〔円山応挙作〕
※天明3年(1783)
34「双鹿図」1幅
※寛政4年(1792)頃
37「狗之子図」1幅〔円山応挙作〕
※安永年間(1772-81)
36「狗児図」1幅
※寛政前期(1789-93)
38「薔薇蝶狗子図」
※寛政後期(1794-99)頃
でも言えていて、
芦雪の絵だけをみれば、
それでまずまず満足できるのですが、
応挙と比べてしまうと、
芦雪にはどこか散漫な印象があって、
どうもぴりっとしない、
弛緩したところのある作品のように感じました。
第2章 大海を得た魚:南紀で筆を揮う
は、
この展示の目玉でもある
無量寺の襖絵に感銘を受けました。
21「龍図襖」6面
22「虎図襖」6面
23「薔薇に鶏・猫襖」8面
24「唐子遊図襖」8面
※天明6年(1786)
圧倒的なのは
21・22の龍虎図ですが、
両脇を包むように配置される
23・24と合わせて観ると、
より感慨深いものがありました。
ただ23・24はこれだけ取り上げられるなら、
そこまで強い印象は残らなかったかもしれません。
21-24に匹敵するのが
高山寺の2点、
31「寒山拾得図」1幅
32「朝顔に蛙図襖」6面
※天明7年(1787)
で、特に31から受ける大迫力は、
21・22をしのいでいるようにすら思えました。
32もバランス感覚に優れた見事な作品ですが、
感動にはあと一歩足りないように感じました。
第3章 芦雪の気質と奇質
では、
35「酔虎図」1幅
※天明7年(1787)
の猫っぽい少しいい加減な感じの虎に愛着がわきました。
感動とは違いますが、憎めない好きな絵でした。
さてこの後、
第4章 充実と円熟:寛政前・中期
第5章 画境の深化:寛政後期
と続くのですが、
個人的にはどうしても、あと一歩、
絵から受ける印象に緊張感を欠き、
深い感銘を受けるには至りませんでした。
「充実」「円熟」「深化」とはありますが、
私には中だるみの弛緩した印象を受けました。
芸術家としてはまだこれからといえる
45歳で亡くなっているので、
大成する時間的な猶予がなかったのかもしれません。
今回の展示で、
芦雪の二、三十代の作品の中に、
飛び切り優れたものがあることを発見できました。
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