エリアフ・インバル(Eliahu Inbal, 1936年2月- )の指揮する
ドイツのオーケストラ
フランクフルト放送交響楽団
(2005年にhr交響楽団に改称)の演奏で、
オーストリア帝国の作曲家
グスタフ・マーラー(1860.7-1911.5)の
交響曲第1番《巨人》を聴きました。
指揮者49歳の時(1985年2・3月)の録音です。
グスタフ・マーラー
交響曲第1番《巨人》
エリアフ・インバル(指揮)
フランクフルト放送交響楽団
録音:1985年2月28日-3月1日、フランクフルト、アルテ・オーバー
【COCO-73117】2010年9月発売。
交響曲第1番は、
2部構成〔1部1-3楽章/2部4・5楽章〕
からなる「交響詩」の第1稿として、
マーラー29歳の時(1889年11月)に、
作曲者本人の指揮するブダペスト・フィルによって初演されました。
→この第1稿は「ブダペスト稿」とも呼ばれていますが、
楽譜は現存していません。
この初演はうまく行かなかったので、
第2・3・5楽章に改訂を施した第2稿を、
「交響曲様式による音詩《巨人》」として
33歳の時(1893年10月)に演奏しましたが、
成功を収めるには至りませんでした。
→この第2稿は、
93年10月にハンブルクで演奏された後、
翌年7月にヴァイマルでも再演されました。
両者の細かな変更点を問題とする場合、
「ハンブルク稿」「ヴァイマル稿」と分けて呼ぶことがあります。
その2年半後、
マーラーが35歳の時(1896年3月)に、
第2楽章の〈花の章〉が削除され、
初めて全4楽章の「交響曲」として演奏されました。
この3ヶ月ほど前(1895年12月)に、
第2「交響曲」が全曲初演されているので、
同様の取り組み方をしてきた《巨人》が、
マーラー本人にとっての第1「交響曲」であることを、
宣言する意図があったのかもしれません。
以上、Wikipediaの「交響曲第1番(マーラー)」を参照。
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Blu-spec CD 仕様で、
2010・12年に再販された
インバル&フランクフルト放送響のマーラー、
第3番から第10番までは
《大地の歌》も含めて聴き終えて、
残るは最初の第1・2番のみとなりました。
旧版との音質の差異は、
すべてを聴き比べたわけではありませんが、
Blue-spec CD のほうが瑞々しく、
いかにもホールで鳴り響いている自然なオケの音に近い印象で、
無機的な印象のあったインバルのマーラーを、
再評価するきっかけになりました。
第1番は、
後の番号に比べて音楽的にうすい印象があるので、
楽譜に忠実なインバルの路線では満足できないかもと心配しましたが、
繊細ながらも若々しさを感じさせる美しい演奏で、
久しぶり新鮮な感動のうちに《巨人》を聴き終えることができました。
しばらく遠ざかっていましたが、
他の指揮者の《巨人》も聞いてみたくなりました。
特別なことをしている風ではないのに、
ああ美しい曲だなと思っているうちに
最後まで聴き進められたので、
曲自体も十分魅力的なんだと再認識しました。