2018年8月26日日曜日

西崎崇子&ヤンドーのモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集その1(1994年録音)

名古屋生まれ、
香港在住のヴァイオリニスト
西崎崇子(にしざきたかこ, 1944年4月14日- )
の独奏、

ハンガリー出身のピアニスト
イェネ・ヤンドー(Jenő Jandó, 1952年2月- )
の伴奏で、

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756年1月27日-1791年12月5日)
ヴァイオリン・ソナタ集の1枚目を聴きました。


モーツァルト
ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 K.304
ヴァイオリン・ソナタ 第29番 イ長調 K.305
ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306
ヴァイオリン・ソナタ 第33番 ヘ長調 K.377

西崎崇子(ヴァイオリン)
イェネ・ヤンドー(ピアノ)

録音:1994年9月26-28日、the ABC Centre in Ultimo, シドニー
【NAXOS 8.553110】1995年11月発売

このCDには、

1778年11月にパリで
「作品1」として出版された
ヴァイオリン・ソナタ集
マンハイム・ソナタ》(全6曲)の
第4・5・6番目(K.304・305・306)と、

1781年11月にウィーンで
「作品2」として出版された
ヴァイオリン・ソナタ集
アウエルンハンマー・ソナタ》(全6曲)の
第3曲目(K.377)の計4曲が収録されています。

一番無難な
「旧モーツァルト全集」のヴァイオリン・ソナタの巻
(ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社、1879年刊行)
で付けられた通番とともに、
作品1と作品2の12曲を掲げておきます。

《マンハイム・ソナタ》作品1
 作品1-1 ト長調  K.301(293a)→「第25番」
 作品1-2 変ホ長調K.302(293b)→「第26番」
 作品1-3 ハ長調  K.303(293c)→「第27番」
 作品1-4 ホ短調  K.304(300c)→「第28番」
 作品1-5 イ長調  K.305(293d)→「第29番」
 作品1-6 ニ長調  K.306(300l)→「第30番」

《アウエルンハンマー・ソナタ》作品2
 作品2-1 ヘ長調  K.376(374d)→「第32番」
 作品2-2 ハ長調  K.296      →「第24番」
 作品2-3 ヘ長調  K.377(374e)→「第33番」
 作品2-4 変ロ長調K.378(317d)→「第34番」
 作品2-5 ト長調  K.379(373a)→「第35番」
 作品2-6 変ホ長調K.380(374f)→「第36番」

※海老澤敏・吉田泰輔(監修)『モーツァルト事典』(東京書籍、1991年11月)472-489頁参照。


  ***

Avexから再販された
ブラームスの協奏曲を聴いて、
その充実した内容に驚かされた
西崎崇子氏のヴァイオリン、

元々発売された Naxos にさかのぼって色々聴いてみたところ、
編集の加減か、Avex とは印象の異なるものが多く、

ブラームスすら Naxos の原盤では、
かなり大味な、野暮ったい演奏に聴こえました。

今一つ感動できる録音に出会えない中、

ハンガリーのピアニスト
イェネ・ヤンドーさんのピアノとともに収録した
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集は、
繰り返し聴きたくなる優れた演奏でした。

 ヤンドーさんのピアノ、
 何でも録音しすぎたためか、
 そこまでの評価を得ているとはいえませんが、

 古典のバッハと、
 お国もののリストが文句なしに素晴らしい。

 ピアノ・ソナタ全集を録音されている
 モーツァルトも、一聴バッハを聴いているような、
 独特の個性を放つ演奏ですが、変になよなよしない、
 強靭な意志の強さを感じさせる、お薦めの演奏です。


押しの強いヤンドーさんのピアノは、
西崎氏のわずかに弱い部分、
オーソドックスすぎて、時に
没個性に聴こえがちなところを補って、
バランスの良い充実したアンサンブルを聴かせています。

モーツァルトのヴァイオリン・ソナタは、
いざ聴いてみるとなかなかしっくりするものに出会えないことが多いのですが、

西崎崇子氏の録音は、
くり返し聴きこむに足る、
充実した名演奏だと思います。



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2018年8月21日火曜日

名古屋ボストン美術館の最終展「ハピネス~明日の幸せを求めて」

去る8月19日(日)に、
名古屋市中区金山にある名古屋ボストン美術館まで、

「名古屋ボストン美術館 最終展 ハピネス~明日の幸せを求めて」

を観に行って来ました。

主催は名古屋ボストン美術館とボストン美術館で、
2018年7月24日(火)から10月8日(月)まで
の開催となっていました。


ボストン美術館館長
マシュー・テイテルバウム氏から寄せられた
図録の「メッセージ」をみると、

「名古屋ボストン美術館との20年間におよぶ
 パートナーシップを締めくくる最後の展覧会
 (中略)へ、ようこそお越し下さいました。

 本展は、
 両館が姉妹館提携で育んできた精神―
 展覧会や教育普及活動でのコラボレーション、
 寛容な精神、学術的な研究、
 それぞれの文化への理解―を形にしたものです。

 名古屋ボストン美術館は1999年に開館して以来、
 ボストン美術館の深く幅広い百科事典的なコレクションから
 50件以上の展覧会を開催し、
 1200点以上の作品を修復しつつ、
 ボストン美術館のコレクションを紹介し、
 40冊以上の展覧会カタログも制作しました。

 本展では、
 これまでに名古屋ボストン美術館で展示し、
 かつ人気を集めた作品を含む75件に及ぶ作品を選びました。
 これからの作品は、「幸せ」の表現という側面から、
 時代や文化を超えた、我々人類の類似性や繋がり、
 そして違いを見せてくれるものです。

 特に修復を終えたばかりの
 奇才の絵師・曾我蕭白の《琴棋書画図》
 を皆様にご覧いただけることを楽しみにしています。」

等とありました(※改行はブログ編者による)。

全体の構成は、
 第1章 愛から生まれる幸せ―日常の情景から―
 第2章 日本美術にみえる幸せ―自然と人間―
 第3章 ことほぎの美術
 第4章 アメリカ美術にみえる美術
 第5章 アートの世界につつまれて
とされていました。


この一つ前の展覧会
「ボストン美術館の至宝展」
にとても感銘を受けたので、
今回の最終展もかなり期待して観に行きました。

ただ「幸せ」という言葉のもつイメージは、
国によって時代によって幅がありすぎるのか、

展示作品を目で追うのみだと、
統一感に欠ける印象が強く残って、
何が言いたいのかあまり伝わってこない、
個人的には残念な展示となりました。

恐らく「幸せ」という言葉について、
多方面からの博物学的な興味をもっている方が、
解説をじっくり読みながら観るのなら、
ピッタリ来る展示だろうと思います。

まあそんな細かなことは言わないで、
平成11年から平成30年まで、
ちょうど20年の続いた美術館の閉館を惜しめば良いのでしょう。

名古屋ボストン美術館に、
年に何回か訪れるようになったのは、
仕事が落ちついたこの5、6年のことなので、
それ以前の面白そうな展示にいろいろ行けていないのが
心残りです。

地元にいながら、
世界レベルの美術品を観られる場所が、
一つ減ってしまうのは残念です。



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2018年8月12日日曜日

ヘルビヒ&ベルリン響のブラームス交響曲第4番(1977-79年録音)

チェコスロヴァキア出身の指揮者
ギュンター・ヘルビヒ
(Günther Herbig, 1931年11月- )の指揮する

1952年に東ドイツで設立されたオーケストラ
ベルリン交響楽団
(Berliner Sinfonie-Orchester)の演奏で、

ドイツの作曲家
ヨハネス・ブラームス
(Johannes Brahms, 1833年5月7日-1897年4月3日)
交響曲第4番(①)ハイドン変奏曲(②)を聴きました。

指揮者46・47歳の時に
(①1978年9月/②79年7月)
録音されました。

 ※ベルリン交響楽団
  (Berliner Sinfonie-Orchester)
  は、2006年から、
  ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団
  (Konzerthausorchester Berlin)
  と呼ばれています。


CD3
ブラームス:
①交響曲第4番ホ短調 Op.98
②ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a

ベルリン交響楽団
ギュンター・ヘルビヒ(指揮)

録音:1978年9月(①)、79年7月(②)、キリスト教会、ベルリン。
【Berlin Classics 885470009117】2017年3月発売

交響曲第4番ホ短調 Op.98 は、
ブラームス52歳の時(1885年10月25日)に初演された作品です。

ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a は、
50歳の時(1883年11月2日)に初演された作品です。
もともと2台のピアノのための作品で、
40歳の時(1873年)に完成されていました。


  ***

第1-3番の、耳にやさしく聴きやすい、
調和の取れた穏やかな演奏という評価はそのままに、

第4番では弦を中心に「熱さ」が加わって、
稀に聴く名演に仕上がっていると思いました。

この第2楽章は、大好きだけれども、
なかなか納得のいく演奏に出会えて来なかったのですが、

亡くなる直前の石丸寛氏が、
九州交響楽団と収録した録音(1997年10月16日)以来、
はじめて同じレベルの感動を味わうことができました。

もしかしたら3枚目で、
オケの独特な響きに耳がなれてきた面があるかもしれないので、
もう少し時間をおいてからまた聴き直してみますが、

今回、何度か聴きいて、
これまでになかった感動を味わえたのは確かなので、
私にとって、ヘルビヒへの評価を改める1枚になりそうです。

ハイドン変奏曲は、
あまりこれだけ取り上げて聴く機会がないのですが、
第4番を聴き終えたばかりの悲痛な心持ちを、
すっと明るくしてくれるので、
ふつうのコンサートでもこの組み合わせは良いかもしれない、と思いました。



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