2012年9月3日月曜日

ヘブラーのモーツァルト:ピアノ・ソナタ第1-5番(旧盤)

イングリット・ヘブラー(1926年6月生)さんが、
20代後半から30代はじめにかけて録音された

モーツァルト(1756 - 1791)の
ピアノ・ソナタ全集が久しぶりに再販されました。

新録音が好評だったからか、
しばらく見かけなかったのですが、

私には旧盤の方が思い出深い演奏だったので、
さっそく購入し、聴いてみました。

モーツァルト: ピアノ・ソナタ全曲

モーツァルト
1) ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 K.279
2) ピアノ・ソナタ 第2番 ヘ長調 K.280
3) ピアノ・ソナタ 第3番 変ロ長調 K.281
4) ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K.282
5) ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調 K.283

イングリット・ヘブラー(ピアノ)
録音:1963年9月(4)、1965年11月(2・3・5)、1967年6月(1)
【PROC-1201/5】CD1

モーツァルトの初期のソナタは、
20歳でピアノ協奏曲第6番(K.238)を手がける前年、
19歳のときに(1775年初め)、デュルニッツ伯爵の注文で、
第1番から第6番まで(K.279~284)が連作されました。

この6曲をまとめて、もしくは最後の
「第6番 ニ長調 K.284」1曲をさして、
「デュルニッツ・ソナタ」と呼ぶことがあります。

CD1には、第5番まで収録されています。


演奏は、

古典的な枠の中で、
適度に自由に振る舞いながら、

やわらかく清楚で、
明るくあたたかな気持ちにさせられるモーツァルトです。

さらさらと流れていくような所はありませんが、
野暮ったさを感じさせることもなく、
ほどほどに芯のある表現で、

私にとってのベスト演奏でした。


あとほんの少し、
押しの強いところがあったら言うことなしなのですが、
それは私の好みの問題なので、

現代ピアノで、
モーツァルトの楽譜を十分に活かした演奏
といって差し支えない、と思います。


新録音の方は、
じっくり聴く分には、決して悪くはないのですが、
多少リズムがもたつき、やぼったさを感じさせる所が、
私にはマイナスでした。

さらさら流れていくよりは全然いいのですが、
飛び跳ねるような絶妙なリズムの切れは、
モーツァルトに欠かせないものだと思うので、

私にはこちらの旧盤のほうが、
理想的なモーツァルト演奏になっていると思います。

宇野功芳さん大推薦の
リリー・クラウスさんのモーツァルトは、
動的に過ぎる感じが私の好みに合わないのか、
今ひとつ真価がつかめないでいるので、

今のところ、イングリット・ヘブラーさんの旧盤が、
私にとってのベスト演奏のようです。


※作品の基本情報については、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】
 を参照しました。

2012年8月28日火曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その5

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886 - 1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集
5枚目を聴きました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS
1) シューマン:劇音楽「マンフレッド」序曲 作品115
2) ブラームス:交響曲第3番ヘ長調 作品90
3) フォルトナー:ヴァイオリン協奏曲

ゲルハルト・タシュナー(ヴァイオリン)
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1949年12月18日
ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD5


CD5枚目には、

1949年12月18・19・20日に行われた
ベルリン・フィルの演奏会から、
初日(18日)の演奏が収録されています。

コンサートの曲目は、上記3曲に続いて、

ワーグナーの「ジークフリートの葬送行進曲」と、
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲

を演奏する若干変則的なプログラムでした。

ワーグナーの2曲は、CD6枚目に
コンサート2日目(19日)の演奏が収録されています。


CD5枚目には、
コンサートの順番通り、
ドイツの作曲家3人の作品が収められています。


1人目
ロベルト・シューマン(1810 - 1856)の
劇音楽「マンフレッド」序曲 作品115 は、
1852年、シューマンが42歳のときに初演された作品です。

演奏についてお伝えする以前に、
私はこの曲をそれほど聴く機会がなく、
まだよくわからないのが正直な所です。

フルトヴェングラーならば、
と期待しましたが、やっぱり今ひとつ、
わからないまま終わってしまいました。

私にとってシューマンとは
大好きなのと、よくわからないのとが混在する
作曲家のようです。


2人目
シューマンの弟子でもあった
ヨハネス・ブラームス(1833 - 1897)の
交響曲第3番ヘ長調 作品90は
1883年、ブラームスが50歳のときに初演された作品です。

音とに若干割れがあるので、
音質を重視する場合は、さけても良いと思いますが、

心に響いてくる熱いブラームスが好みの場合は、
ぜひ聴いておくと良い演奏です。

熱いけれども深くもある、
フルトヴェングラーの長所が感じられる録音だと思います。


3人目
現代作曲家
ヴォルフガング・フォルトナー(1907 - 1987)の
1946年、フォルトナーが39歳のときに、
今回と同じ、タシュナーの独奏によって初演され、
タシュナーに献呈された作品です。

これが一番良い音で録れており、
共感に満ちた優れた演奏が繰り広げられていると思います。

ただし、私にはよくわからない、魅力の感じられない曲でした。
戦後の騒然とした時代でのみ、受け入れられた曲のような気がします。


全体として、
2曲目のブラームスについてのみ、
私には価値のある1枚でした。



※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
 仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照しました。
 【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】

※作品については、Wikipediaの
 「シューマン」「マンフレッド(シューマン)」
 「ブラームス」「交響曲第3番(ブラームス)」
 「ヴォルフガング・フォルトナー」の各項目を参照しました。


※フォルトナーのヴァイオリン協奏曲については、
HMVのHP上のCDレヴューも参照しました。
【http://www.hmv.co.jp/artist_Beethoven-Fortner_000000000199110】


ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その3

マレイ・ペライア(1947生)さんによる
モーツァルト(1756年1月生 1791年12月没)の
ピアノ協奏曲全集、3枚目を聴きました。



モーツァルト
ピアノ協奏曲 第8番 ハ長調 K.246「リュッツオウ」
ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271「ジュノム」
2台のピアノのための協奏曲 第10番 変ホ長調 K.365(316a)

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
ラドゥ・ルプー(第10番 ピアノ)
イギリス室内管弦楽団

録音:〔第8番〕1979年4月1日、ヘンリー ウッド・ホール、ロンドン。〔第9番〕1976年9月20日、EMIスタジオ、ロンドン。〔第10番〕1988年6月23日、スネイプ モルティングス・コンサートホール、オールドバラ。
【SONY MUSIC/8 86919 141122】CD3


K.246のピアノ協奏曲は、
モーツァルトが20歳のときに(1776年4月)、
父レオポルドの弟子
アントーニア・リュッツオウ伯爵夫人のために作曲されたことから、
「リュッツオウ」協奏曲とも呼ばれています。

K.271の協奏曲は、
21歳のとき(1777年1月)に作曲され、
この曲を注文した
フランスの女性ピアニスト、
ヴィクトワール・ジュナミにちなんで、
「ジュノム」協奏曲とも呼ばれています。

K.365の協奏曲は、
23歳のとき(1779年初め)に作曲された
2台のピアノのための協奏曲で、
姉ネルソンと協演するために作曲されたと推測されています。


一聴して、2枚めよりも
さらに曲の内容が深まっていることがわかるのは、
順番に聴いていくメリットでしょう。

「リュッツオウ」の方は、どちらかと言えば、
まだ前作2曲(K.238&242)の範疇を出ていない感じもあるのですが、

とくに「ジュノム」の独創性は明らかで、

初期のピアノ協奏曲の中で、
独立して演奏されることが多いのも肯けます。

2楽章でみせる絶望感と、
1・3楽章でみせる明るく飛翔する魂の対比が見事です。


K.365 の協奏曲も、
緩徐楽章の天国的な美しさは、
前の2台のための協奏曲(K.242)には聴かれなかったもので、

繰り返し聴くに値する名曲だと思いました。
K.365はこれまでほとんど聴く機会がなかったので、
今回の一番の収穫でした。


この夏は、ずっとこれを聴いていましたので、
そろそろ次へと進みましょうか。



※作品の基本情報については、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】
 を参照しました。