2012年8月21日火曜日
名古屋市美術館 特別展 「大エルミタージュ美術館展」
お盆休みの8月17日(金)、
名古屋ボストン美術館を満喫したその足で、
金山から伏見へと移動し、
名古屋市美術館の特別展
「大エルミタージュ美術館展 ~ 世紀の顔・西欧絵画の400年」
を観て参りました。
金曜日だけでも、
夜8時まで開いているのは、
この暑い時期とてもありがたかったです。
エルミタージュ美術館の名は、
これまで何度も聞いたことがあった筈ですが、
サンクトペテルブルク
(もとは帝政ロシアの首都、いまはレニングラード州の州都)
にある、
ロシアを代表する国立美術館であるとは、
恥ずかしながら、今回初めて知りました。
設立の歴史的な背景については、
もう少し勉強してから書くことにします。
300万点をこえる所蔵品の中から、
1500年代から1900年代に至る400年間の
西欧絵画の名品89点が出品されています。
何かを論評できるほどの
知識は持ちあわせておりませんが、
特に心に残った作品を記録しておこうと思います。
Ⅰ 16世紀 ルネサンス:人間の世紀
全体的に、
調和のとれたバランスの中で、
明るい鮮やかな色彩が浮かび上がるのが、
印象に残りました。
この中では、とくに
バルトロメオ・スケドーニ(1576-1615)作
「聖家族と洗礼者ヨハネ」【図録No.13】
の調和のとれた美の世界に、
強い感銘を受けました(製作:16世紀末-17世紀初)。
Ⅱ 17世紀 バロック:黄金の世紀
この時期の若干自由で、騒々しい、
でも古典的な落ち着きと力強さをもあわせ持った、
独特な雰囲気について、
何となくわかって来たような、
でもまだしっくり来ないような、
そんな現状です。
この中では、
レンブラント・ファン・レイン(1606-1669)作
「老婦人の肖像」【No.29】
の、落ちついた雰囲気の中に、
力強さをも伝える絵の力に強い印象を受けました(制作:1654年)。
もう1点、
ダニエル・セーヘルス(1590-1661)と
トマス・ウィレボルツ・ボスハールト(1613/14-1654)が描いた
「花飾りに囲まれた幼子キリストと洗礼者ヨハネ」【No.22】
の、清新で明るい花飾りの絵に感銘を受けました(制作:1650年代前半)。
花飾りはセーヘルス、
その中の幼子はボスハールトの手になるそうですが、
私にはこの幼子にほんの少し違和感がありました。
Ⅲ 18世紀 ロココと新古典派:革命の世紀
この中に、私が
特別な感銘を受けた作品はありませんでした。
しかし、
エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755-1842)作
「自画像」【No.46】
の素朴な人柄を感じさせる絵には、
好感が持てました(制作:1800年)。
Ⅳ 19世紀 ロマン派からポスト印象派まで:進化する世紀
この辺りからは、
日本にいても割りと目にする機会はあるので、
馴染みのある画家も何人か出てきます。
大きな感銘を受ける
というのとも少し違うのですが、
カミーユ・コロー(1796-1875)作
「森の中の沼」【No.60】
と(制作:1865-1870年)、
テオドール・ルソー(1812-1867)作
「グランヴィル近郊の眺め」【No.61】
は(制作:1857年)、
むかしは風景画としては
素朴にすぎる感じがしていたのですが、
今回は素朴な中にも、
独特の味わい深さがあることを感じることができました。
これからより好きになるかもしれない、と思いました。
その他、
ジュール・ルフェーヴル(1836-1902)作
「洞窟のマグダラのマリア」【No.65】
は、今回出品された裸婦像の中で、
もっともバランスのとれた、
完成度の高い作品だと思いました(制作:1876年頃)。
あと1点、
芸術的な価値は今ひとつかもしれませんが、
個人的に好きな画家、
アルフレッド・シスレー(1839-1899)作
「ヴィルヌーヴ=ラ=ガレンヌ風景」【No.69】
が観られたのは嬉しかったです(制作:1872年)。
シスレーのより優れた風景画を観て、
彼のファンになりました。
これもふつうの風景画ですが、
好きな絵です。
Ⅴ 20世紀 マティスとその周辺:アヴァンギャルドの世紀
それほど印象に残る作品は、
出品されていませんでした。
1点あげるのであれば、
アンリ・マティス(1869-1954)作
「赤い部屋(赤のハーモニー)」【No.84】
でしょう(制作:1908年)。
赤を基調とした中に、
大画面で、全体として不思議な統一感をもった、
暖かみのある作品でした。
ひとつの美術館の所蔵品だけで、
各時代ごとに、名品をそれなりの数あつめることは、
どこでも可能なことではないと思うので、
たいへん有意義なひと時となりました。
※展覧会の図録を参照しました。
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