2013年6月30日日曜日

朝比奈隆&都響のシューベルト:交響曲第9番《ザ・グレイト》(1995年)

フルトヴェングラー&ベルリン・フィルの
シューベルト《ザ・グレイト》が今ひとつだったので、

ほかに満足できる演奏はないか探していたところ、
最近タワーレコードで格安で手に入れた

朝比奈隆(1908.7-2001.12)指揮、
東京都交響楽団の演奏がとても良かったので紹介します。


フランツ・シューベルト(1797.1-1828.11)
交響曲第9番ハ長調 D.944《ザ・グレイト》

朝比奈隆(指揮)
東京都交響楽団
録音:1995年1月22日、東京芸術劇場
【FOCD-9359】

スケールの大きい雄渾な演奏です。

強奏時の響きが耳に心地よく、
素朴でのどかな感じもよく出ていて、

《グレイト》の魅力を存分に味わうことができました。


シューベルトの交響曲は、
オケの響きにそれなりに魅力がないと、
今ひとつ楽しめない側面があるように思いますが、

東京都交響楽団の機能性の高さも嬉しい驚きで、
絹のようになめらかな響きが美しく、
ライブでここまで聴かせてくれたら
私には十分なレベルでした。


この1年後、
朝比奈隆が87歳のときに大阪フィルをふった
同曲の演奏もCD化されています。


大阪フィルハーモニー交響楽団
朝比奈隆(指揮)
録音:1996年2月16日、愛知県芸術劇場
【PCCL-00388】

これは当日実演を聴くことができ、
大感動した記憶の残るCDなのですが、
久しぶりに聴き直してみたところ、

オケの響き自体は、ホールと一体化して
いい感じにやわらかく録れているのですが、

朝比奈が即興的にテンポをゆらしていたのか、
微妙にアンサンブルの縦の線がずれる部分があって、

今回はそれほど楽しめませんでした。


どちらかといえば、
大阪フィル盤のほうが
ライブならではの動的な側面が強いので、

都響盤の記憶が薄れたころに聴き直すと
違った感想になるかもしれません。

2013年6月24日月曜日

Bill Evans の 『Alone』 (1968年9・10月)

アメリカのジャズ・ピアニスト、
ビル・エヴァンス(1929.8-1980.9)が、
1968年9・10月(39歳のとき)に録音したアルバム

『アローン』を聴きました。


Alone
Bill Evans

1. Here's That Rainy Day (Burke/Van Heusen)
2. A Time for Love (Webster/Mandel)
3. Midnight Mood (Zawinul/Raleigh)
4. On a Clear Day(You Can See Forever) (Lemer/Lane)
5. Never Let Me Go (Evans/Livingston)

6. All the Things You Are~Midnight Mood (HammersteinⅡ/Kem~Zawinul/Raleigh)
7. A Time for Love(Webster/Mandel) (Alternate take)

Bill Evans, piano
Recorded September 23,24 & 30, October 8,14 & 21, 1968
at Webster Hall, NYC
【UCCU-5021】

先に、
実験的なアルバム『自己との対話』(1963年録音)を聴いて、
ピアノ1台でジャズというのは無理があるのかな、
と思っていたのですが、

これはいいです。


トリオのときに聴かれた、
穏やかで軽やかで楽しく美しい音楽が、
心地よく流れていきました。

個人的には、
3曲目『ミッドナイト・ムード』が出色で、

それを取り囲む
1・2・4曲目も十分に楽しめました。

エヴァンスのオリジナル曲
5曲目『ネヴァー・レット・ミー・ゴー』は今ひとつな印象。

エヴァンスのソロ・アルバムとしては、この他
『アローン2』と『ソロ・セッションズ1・2』があるようなので、

時間をみつけて1枚ずつ聴いていこうと思います。

2013年6月12日水曜日

シュナーベルのベートーヴェン:ピアノソナタ全集 その3

オーストリア出身のピアニスト
アルトゥル・シュナーベル
(Artur Schnabel 1882.4-1951.8)が、
50歳から53歳にかけて(1932-35)録音した

ドイツの作曲家
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
(Ludwig van Beethoven 1770.12-1827.3)の
ピアノソナタ全集の3枚目です。


ベートーヴェン・ピアノソナタ録音協会全集第3集

ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノソナタ 第7番 ニ長調 作品10-3
ピアノソナタ 第8番 ハ短調《悲愴》作品13
ピアノソナタ 第9番 ホ長調 作品14-1
ピアノソナタ 第10番 ト長調 作品14-2

アルトゥル・シュナーベル(ピアノ)
録音:1935年11月12日〔7番〕、1933年10月2日・1934年4月3日〔8番〕、1932年3月25日〔9番〕、1934年4月23日〔10番〕、EMIアビー・ロード第3スタジオ、ロンドン
【Naxos 8.110695】


ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 作品10-3 は、

27歳のとき(1798.9)に出版された
3つのピアノ・ソナタの最後の1曲です。

 第5番 ハ短調 作品10-1(3楽章)
 第6番 ヘ長調 作品10-2(3楽章)
 第7番 ニ長調 作品10-3(4楽章)

第5・6番は、3楽章制で
コンパクトにまとめられていたのに対して、
第7番は4楽章制で、規模の大きなものとなっています。

しかし多少無理して大きくしたようなところがあって、

とくに物思いに沈み込んでいくような第2楽章は、
間延びした感じもあってまとめるのが難しそうでした。

何度も聴き返して、
2楽章が耳に馴染んでくると、

全体の構造も見えてきて、
それなりに楽しめるようになりました。


ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調《悲愴》作品13 は、

28歳のとき(1799秋)に出版された作品です。

いつからとは思い出せないのですが、
ピアノ教室の生徒が弾いていた記憶もあって、
よく知っている曲です。

それなりに集中して聴いたのは、
ハイドシェックさんのライブ録音以来でしょうか。

この曲は、
シュナーベルさんにとっても想い入れのある曲なのか、
また有名すぎて演奏しにくかったのか、

多少もって回ったようなところがあって、
耳に馴染むのに少し時間がかかりました。

珍しく半年ほど置いて、録り直しをしているので、
どこか意に満たないところがあったのかもしれません。

でも独特の節回しで、
細かいことは気にせずに、
曲の本質のみをつかんで語りかけてくる
シュナーベルのピアノは、

一聴の価値ありです。


ピアノ・ソナタ第9番 ホ長調 作品14-1
ピアノ・ソナタ第10番ト長調 作品14-2

は、29歳のとき(1799.12)に2曲合わせて出版されました。

3楽章構成で、品良くまとめられた作品です。

気持ちを前向きに、
明るく楽しい方へと導いてくれる作品です。

シュナーベルの演奏は2曲とも完璧です。

作品14の魅力を十二分に引き出していて、
初めていい曲だな、と思って聴き通すことができました。


CD3枚目は、
第9・10番の魅力を発見できたのが一番の収穫でした。
では4枚目に進みましょう。


※L.v.ベートーヴェン全作品目録(国立音楽大学 音楽研究所)
 【http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/bdb/bdb_index.html】を参照。

※ペティナ・ピアノ曲事典「ベートーヴェン」
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/61/】を参照。

※Wikipedia の「アルトゥル・シュナーベル」
 「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」
 「ベートーヴェンの楽曲一覧」を参照。


2013年6月11日火曜日

Audite のフルトヴェングラー&ベルリンpo 録音集 その10

Audite から復刻された
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)と
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音集、
10枚目を聴きました。


Live in Berlin
The Complete Recordings RIAS

フランツ・シューベルト
1) 交響曲第7番ロ短調《未完成》D759
2) 交響曲第8番ハ長調《ザ・グレート》D944

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1953年9月15日、ティタニア・パラスト、ベルリン
【audite 21.403】CD10

CD10には、
1953年9月15・16・17日に行われた
 シューベルト:劇付随音楽《ロザムンデ》序曲
 シューベルト:交響曲第8番《未完成》
 シューベルト:交響曲第9番《ザ・グレート》
の3曲からなる演奏会から、

15日に演奏された交響曲2曲を収録しています。
(残りの曲は、CD9に既収録。)

   ***

オーストリアの作曲家
フランツ・シューベルト
(Franz Schubert 1797.1-1828.11)の
交響曲第8番ロ短調《未完成》D759

は、シューベルトが25歳(1822)のときに

第1・2楽章まで完成したのち、
第3楽章の途中までで作曲をやめてしまったため、
生前は演奏されることなく、

没後37年をへた
1865年12月に初演されました。

《未完成》交響曲といえば
この1曲をさすくらい有名ですが、

シューベルトの交響曲のうち、
未完成に終わっているものは他にも5曲ほどあるようです。
いずれブログにまとめます。


交響曲第9番ハ長調《ザ・グレート》D944

は、シューベルトが29歳(1826)のときに完成された作品です。

生前は演奏されず、
没後10年をへた1839年3月に、
メンデルスゾーンの指揮で初演されました。

この曲も今では周知の名曲となっていますが、

1828年にシューベルトが亡くなってから、
1839年にシューマンが自筆譜を確認するまで、
10年はほぼ忘れ去られていたそうです。

  ***

《未完成》は、
最近ありがちな軽めの演奏ではなく、

大オーケストラで曲想をえぐりぬいた
重々しく深みのある演奏でした。

本来はもっと軽めに演奏させるのが正しい解釈なのかもしれませんが、

思っていたよりずっと深みのある曲だったのだな、
と、曲の真価を教えられた気がしました。

改めて他の演奏も聴いてみたいと思いました。


《ザ・グレート》は、
まずまず好きな曲ですが、

フルトヴェングラーの録音は、

オケが鳴りすぎたのか、
それなりに鮮明ではあるものの、
必ずしも美しいとは言いかねる威圧的な音で録れていて、
曲をそれほど堪能できないままで終わってしまいました。

フルトヴェングラーの解釈は、
一聴の価値ありと思いますが、

音質からいって、
他を押しのけてもこれを第一に推すのは気が引けます。


※Wikipediaの「フランツ・シューベルト」
 「シューベルトの楽曲一覧」の各項目を参照。

※フルトヴェングラーの演奏会記録については、
 仏ターラ社の ホームページ上にあるものを参照。
 【http://www.furtwangler.net/inmemoriam/data/conce_en.htm】