コダーイ四重奏団による
オーストリアの作曲家
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(Franz Joseph Haydn 1732.3 - 1809.5)の
弦楽四重奏曲全集5枚目です。
ハイドン
弦楽四重奏曲第15番 ト長調 作品3-3〔Hob.Ⅲ-15〕
弦楽四重奏曲第16番変ロ長調作品3-4〔Hob.Ⅲ-16〕
弦楽四重奏曲第17番 ヘ長調 作品3-5〔Hob.Ⅲ-17〕
弦楽四重奏曲第18番 イ長調 作品3-6〔Hob.Ⅲ-18〕
コダーイ四重奏団
録音:2000年6月26-29日、ブダペスト、ユニテリアン教会
【Naxos 8.555704】
このCDには、
作品3の6曲から後半4曲が収録されています。
***
作品3の6曲は、
ハイドン45歳の時(1777)に出版されました。
ホーボーケン番号では、
Hob.Ⅲ-13~18 に分類されていますが、
これはハイドン69歳の時(1801)に、
弟子のプレイエル(1757-1831)がまとめた
最初の全集(全83曲)における通番(第13~18番)に従ったものです。
6曲まとめて、
楽章数のデータとともに掲げてみます。
ホ長調 作品3-1〔Hob.Ⅲ-13〕※4楽章
ハ長調 作品3-2〔Hob.Ⅲ-14〕※3楽章
ト長調 作品3-3〔Hob.Ⅲ-15〕※4楽章
変ロ長調 作品3-4〔Hob.Ⅲ-16〕※2楽章
ヘ長調 作品3-5〔Hob.Ⅲ-17〕※4楽章
イ長調 作品3-6〔Hob.Ⅲ-18〕※4楽章
全体的に楽章の構成がバラバラです。
特に 作品3-4 は2楽章しかなく、
完成された作品と見なすのは難しいです。
実際聴いてみても、
明らかに曲想がバラバラですので、
6曲からなる一連の曲集として、
一気に作曲されたとは考えられません。
そこで現在の有力な学説では、
出版譜の原版(作品3-1・2)において、
作曲者「ロマン・ホフシュテッター」の名を消した跡が見つかったことから、
ハイドンではなく、
修道士ホフシュテッターの作品であろうと推測されています。
ただし耳から聴くだけで、
ハイドンの作品ではないと判断できるのかといえば、
それは少々難しいように思われます。
出版譜の原版に
「ホフシュテッター」とあったとしても、
それが実際の作曲者を示していたと本当に断言できるのか。
もう詳しい判断材料がほしいと思いました。
出版社が主導して、
ハイドンが若いころに作った
弦楽四重奏曲を6曲集めてきて、
作品3 として出版してしまったのだと言われれば、
特に違和感はないようにも思われます。
***
ここまでで、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲を聴き終わったことになりますので、
ざっとまとめておきます。
ハイドンの弦楽四重奏曲は、
ハイドン生前中(1801年)に
弟子のプレイエル(1757-1831)によって
計83曲が全集としてまとめられました。
このプレイエル版において、
ハイドン初期の弦楽四重奏曲は、
◯第 1~ 6番 作品1-1~6〔Hob.Ⅲ-1~6〕
◯第 7~12番 作品2-1~6〔Hob.Ⅲ-7~12〕
◯第13~18番 作品3-1~6〔Hob.Ⅲ-13~18〕
と整理されました。
作品1・2はハイドンが33・34歳のとき(1765・66)、
作品3は45歳のとき(1777)に個別に出版され、
ハイドン最晩年(1805)の「ハイドン目録」でも、
ハイドン本人が認めていた作品なのですが、
その後の研究で、
◎作品1-1~4・6〔Hob.Ⅲ- 1~4・6〕
◎作品2-1・2・4・6〔Hob.Ⅲ- 7・8・10・12〕
の計9曲と、
◎5声のディヴェルティメント 変ホ長調〔Hob.Ⅱ-6〕
の1曲を合わせた計10曲のみが、
ハイドンの初期の弦楽四重奏曲として認められるようになりました。
***
コダーイ四重奏団の全集で、
作品1 から作品3 まで聴いてくると、
時々キラリと光る曲も紛れているものの、
全体として今ひとつ、
惹きつけられる魅力に乏しいように感じられました。
演奏会で全曲を取り上げる場合、
初期のものは計10曲のみに絞って取り上げるのも、
現実路線としてありだと思いました。
コダーイ四重奏団の演奏自体は、
曲の再現としてまずは申し分のない出来だったと思いますが、
初期の弦楽四重奏曲を続けて聴くのは、
少々退屈なところがありました。
次はまず作品9の6曲(第19-24番)を聴くことになりますが、
この時期からは、
ハイドン自らの意志で、
6曲ひとまとめになる曲集を作っている点、
それまでとは異なっています。
聴いてすぐにわかる違いがあるかどうか、
またじっくり聴いていこうと思います。
※wikipedia の「フランツ・ヨーゼフ・ハイドン」
「ハイドンの弦楽四重奏曲一覧」「イグナツ・プライエル」
「ローマン・ホフシュテッター」の各項目を参照。
※JAIRO でインターネット上に公開されている
飯森豊水の論文「J.ハイドン作『初期弦楽四重奏曲』の帰属ジャンルをめぐって」
(『哲學』第86集、昭和63年6月)を参照。
※中野博詞『ハイドン復活』(春秋社、平成7年11月)を参照。
※現代音楽作曲家・福田陽氏の
「ハイドン研究室」〈http://www.masque-music.com/haydn/index.htm〉を参照。
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