2014年7月31日木曜日

インキネン&ニュージーランド響のシベリウス:交響曲第2番(2008年録音)

フィンランドの指揮者
ピエタリ・インキネン(1980.4-)が指揮する
ニュージーランド交響楽団の演奏で、

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の
交響曲第2番カレリア組曲を聴きました。

シベ2はインキネン28歳の時(2008.10)、
カレリア組曲は30歳の時(2010.10)の録音です。


シベリウス
1) 交響曲第2番ニ長調作品43
2) カレリア組曲作品11

ニュージーランド交響楽団
ピエタリ・インキネン(指揮)
録音:2008年10月16-18日(1)、2010年7月27日(2)、ニュージーランド、ウェリントン、マイケル・ファーラー・センター
【NAXOS 8.572305】


1) 交響曲第2番ニ長調作品43 は、

第1番の初演から3年をへた
シベリウス36歳の時(1902.3)に、
作曲者本人の指揮によって初演された交響曲です。

次の第3番が初演されるのは、5年先の41歳の時(1907.9)のことになります。

2) カレリア組曲作品11 は、

シベリウス27歳の時(1893.11)に上演された
野外劇《カレリア》のための音楽にもとづく組曲で、

《カレリア》序曲作品10
《カレリア》組曲作品11

の2曲にまとめられています。
序曲は聴いたことがありません。

組曲の方は、
どこかで聴いたような気がしますが、
それほど強い印象はありません。

組曲は軽めの小品3曲で構成されています。


  ***

インキネンのシベリウス、
第1・3番が思いのほか良かったので、
第2番も期待していたのですが、

これは今一つの出来でした。

指揮者の思い入れが強すぎて、
本人の中でうまく整理しきれていない印象が残りました。

音楽の流れが滞りがちで、
全体の見通しがあまり良くない、

聴いているうちに段々冷めた感じになってくる、
残念な演奏でした。

第2番はよく知られた名曲ですが、
意外とまとめにくい所があるのかもしれません。

どちらかといえば、
後半の《カレリア》組曲のほうが
軽めの小品をほどよい加減でうまくまとめ上げていて、
好感が持てました。


※Wikipediaの「ピエタリ・インキネン」「ニュージーランド交響楽団」「ジャン・シベリウス」「交響曲第2番(シベリウス)」「カレリア(シベリウス)」を参照。

インキネン&ニュージーランド響のシベリウス:交響曲第1&3番(2009年録音)

フィンランドの指揮者
ピエタリ・インキネン(1980.4-)が指揮する
ニュージーランド交響楽団の演奏で、

フィンランドの作曲家
ジャン・シベリウス(1865.12-1957.9)の
交響曲第1番と第3番を聴きました。

インキネン28歳の時(2009.3)の録音です。


シベリウス
1) 交響曲第1番ホ短調作品39
2) 交響曲第3番ハ長調作品52

ニュージーランド交響楽団
ピエタリ・インキネン(指揮)
録音:2009年3月3-5日、ニュージーランド、ウェリントン、マイケル・ファーラー・センター
【NAXOS 8.572305】

1) 交響曲第1番ホ短調作品39 は、

シベリウス33歳の時(1899.4)に、
作曲者本人の指揮によって初演された交響曲です。

26歳の時(1892.4)に、
声楽を伴う「クレルヴォ交響曲」が初演されているので、

それから7年をへて作曲された、
管弦楽のみによる初めての交響曲ということになります。


第1番から3年後、
36歳の時(1902.3)に交響曲第2番が初演されますが、

それからさらに5年半をへて、
41歳の時(1907.9)に初演されたのが、

2) 交響曲第3番ハ長調作品52 でした。


  ***

インキネンのシベリウス、
前から気になっていたのですが、

日本フィルと新しい全集も企画されているようなので、

そちらを聴く前に、
ニュージーランド交響楽団との全集を
聴いていこうと思います。

とりあえず、
第1番と第3番を収録した1枚を聴いてみました。

音質は、
若干分離の悪い印象もありますが、
コンサートホールでふつうに聴いている位には聴こえてきます。

オケのレベルは、
日本のふつうの地方オケくらいでしょうか。


オケの水準も、録音の水準も、
もっと上の演奏はあると思うのですが、

指揮者のシベリウスとの相性の良さでしょうか、

不思議と耳が吸い寄せられて、
最後まで一気に聴き通してしまいました。

ふだん冗長に感じやすい第1番も、
有機的に全体像が描かれていて、

第2番と同じタイプの
名曲であることがよくわかりました。


第3番は最近お気に入りになりつつあります。

3楽章のシンプルな構成の中に、
シベリウスの魅力がつまっているようで、

こんな美しい曲があったことに
新鮮な驚きを覚えています。


インキネン28歳の時の録音で、
まだまだ改良の余地はあるのしょうが、

それなりに興味深く、楽しませてもらいました。


※Wikipediaの「ピエタリ・インキネン」「ニュージーランド交響楽団」「ジャン・シベリウス」「交響曲第1番(シベリウス)」「交響曲第3番(シベリウス)」を参照。

2014年7月30日水曜日

ペライアのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集 その11

アメリカのピアニスト
マレイ・ペライア(1947-)と
イギリス室内管弦楽団による

オーストリアの作曲家
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
(1756.1-1791.12)のピアノ協奏曲全集
11枚目を聴きました。


モーツァルト
ピアノ協奏曲 第25番 ハ長調 K.503
ピアノ協奏曲 第26番 ニ長調 K.537

マレイ・ペライア(ピアノ、指揮)
イギリス室内管弦楽団
録音:1981年6月26日、(第25番)、1983年9月21・24・25(第26番)、セント・ジョン・スミス・スクエア、ロンドン
【SONY MUSIC 88691914112】CD11

29歳の時(1785)に第20・21・22番、
30歳の時(1786)に第23・24・25番
そして32歳の時(1788)に第26番が作曲されました。

1786年3月に

 第23番 イ長調 K.488
 第24番 ハ短調 K.491

の2曲が完成された後、
同年末の12月に完成されたのが

 第25番 ハ長調 K.503 の1曲でした。

その後1年をへて、
1788年2月に完成されたのが

 第26番 ニ長調 K.537 でした。


  ***

ペライアによるピアノ協奏曲全集、
いよいよ終わりに近づいて来ました。

どちらもなぜか私にとって、
それほど強い印象のない2曲ですが、

中庸を得たペライアのピアノで、
曲のほどよい魅力に気がつくことができました。

こうして並べて聴いてみると、

これまでそれほどじっくり聴いて来なかった
第25番のほうが名曲に聴こえて来ました。

ハ長調という調性によるものか、
堂々とした内実のともなう演奏に、

はじめてこの曲が理解できたように思いました。

もうひと押し、
ペライアならではの個性が刻印されていても
いいじゃないかと思いつつ、

全曲聴き通すだけの魅力があることは、
もうすぐ証明できそうです。


※Wikipediaの「マレイ・ペライア」
 「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」
 「モーツァルトの楽曲一覧」
 「ピアノ協奏曲第25番(モーツァルト)」
 「ピアノ協奏曲第26番(モーツァルト)」の各項目を参照。


※作品の基本情報について、
 ピティナ・ピアノ曲事典「モーツァルト」の項目
 【http://www.piano.or.jp/enc/composers/index/73】を参照。

2014年7月29日火曜日

アンセルメ&スイス・ロマンド管のチャイコフスキー:三大バレエ(1958年録音)

音質向上した
「DECCA The Best 1200」のシリーズ(2013.5発売)からもう1枚、

スイスの指揮者
エルネスト・アンセルメ(1883.11-1969.2)が
スイス・ロマンド管弦楽団を指揮して録音した

ロシアの作曲家
ピョートル・チャイコフスキー(1840.5-1893.11)の
三大バレエ(抜粋)を聴きました。

アンセルメ74歳の時(1958)の録音です。


チャイコフスキー
1) バレエ《白鳥の湖》作品20(抜粋)
2) バレエ《眠りの森の美女》作品66(抜粋)
3) バレエ組曲《くるみ割り人形》作品71a

スイス・ロマンド管弦楽団
エルネスト・アンセルメ(指揮)
録音:1958年3月29日-4月14日(2)、10月7日-11月11日(1・3)、ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
【UCCD-7249】

このうち

1) バレエ《白鳥の湖》作品20 は、

チャイコフスキー36歳の時(1877.3)に初演された作品です。

この《白鳥の湖》までに、

 交響曲第1番(1868.2)
 交響曲第2番(1873.1)
 交響曲第3番(1875.11)

は、すでに初演されていました。

次の《眠りの森の美女》までに、

 交響曲第4番(1878.2)
 マンフレッド交響曲(1886.3)
 交響曲第5番(1888.11)

が初演されました。


2) バレエ《眠りの森の美女》作品66 は、

チャイコフスキー49歳の時(1890.1)に初演された作品です。

3) バレエ組曲《くるみ割り人形》作品71a は、

チャイコフスキー52歳の時(1892.12)に初演された作品です。

この翌年、亡くなる直前に

 交響曲第6番(1893.10)

が初演されました。


  ***

アンセルメは、
今聴くには音質がもう一つの印象があって、
これまで聴いて来なかったのですが、

音質向上している今回のシリーズなら印象が異なるかもと思い、
まず1枚聴いてみることにしました。

予想以上に良かったです。


オケの鳴らし方が独特で、
ロシア音楽にありがちな重々しいところはなく、

縦の線が若干そろわないところもある中、

逆にそれが魅力になって
軽やかだけど良く鳴っている印象でした。

あんまりピタリと合い過ぎないほうが、
音楽に推進力が生まれるようで、


軽やかな活き活きとしたリズムに
実際バレエを踊りたくなるような楽しい演奏でした。


チャイコフスキーの三大バレエには
それほどこだわりがないので、

たくさん聴いて来たわけではありませんが、
自分の中ではこれまででベストの演奏です。


※Wikipediaの「エルネスト・アンセルメ」「スイス・ロマンド管弦楽団」「ピョートル・チャイコフスキー」を参照。

マゼール&ウィーン・フィルのブルックナー:交響曲第5番(1974年録音)

音質向上した
「DECCA The Best 1200」のシリーズ(2013.5発売)からもう1枚、

フランス生まれ、アメリカ育ちの指揮者
ロリン・マゼール(1930.3-2014.7)が、

オースリアのオーケストラ
ウィーン・フィルを指揮して録音した

オースリアの作曲家
アントン・ブルックナー(1824.9-1896.10)の
交響曲第5番変ロ長調を聴きました。

先日84歳で亡くなられた
マゼール44歳の時(1974.3)の録音です。


アントン・ブルックナー
交響曲第5番変ロ長調(ノヴァーク版)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ロリン・マゼール(指揮)
録音:1974年3月25-28日、ウィーン、ゾフィエンザール
【UCCD-7211】

交響曲第5番変ロ長調 は、

ブルックナーが51-54歳(1875-1878)の時に作曲されました。

ブルックナーが70歳(1894.4)の時に、
フランツ・シャルクによって初演されましたが、

これはシャルクの改訂稿によるもので、
ブルックナー本人は聴いていません。

1878年時の完成稿(原典版)にもとづく初演は、
ブルックナーの没後39年をへた1935年10月に行われました。

つまりブルックナー本人は、
シャルク改訂稿も原典版も実演を耳にする機会はなかったことになります。


 ***

マゼールとの相性は良くないようで、
さほど熱心に聴いて来なかったこともありますが、

これまで1枚も、
感動するCDに出会ったことはありませんでした。

いろいろ仕掛けてくる割には、
いつもどこか冷めた感じがあって、
単純に、聴いていて楽しくない演奏が多かった印象です。

今回のブルックナー、
それほど期待はしていなかったのですが、
思いのほか完成度が高く、びっくりしました。


第5の楽譜を、
ここまで立派に鳴らしきった演奏には
なかなか出会えないと思います。

やはりどこまでも冷めた印象はあるのですが、
まだ40代半ばなので気力は十分。

ウィーン・フィルの美しい音色も味方して、
楽譜のすみずみまで完璧に鳴らしきった、
見事なブルックナーだと思いました。

同じ時期のシベリウスやチャイコフスキーと
同じタイプの演奏なのですが、

音楽の自然な流れをさえぎることもなく、
まずは理想的なブル5の演奏だと思います。


マゼールのブルックナー、
その後の演奏がどうなのかはしばらく置いておきますが、

この1枚にはたいへん感心しました。


※Wikipediaの「ロリン・マゼール」「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」「アントン・ブルックナー」「交響曲第5番(ブルックナー)」を参照。